このブログについて

国立大学法人山形大学工学部教授の吉田司のブログです。2050年までのカーボンニュートラル社会実現に向けて、色々な情報や個人的思いを発信します。発言に責任を持つためにも、立場と名前は公開しますが、山形大学の意見を代弁するものではありません。一市民、一日本国民、一地球人として自由な発言をするためにも、所在は完全に学外です。山形大学はこのブログの内容について一切その責任を負いません。

2022年3月19日土曜日

ウクライナ4

 ウクライナ戦争終結への進展が全く見られません。こうしているうちにも、人々は恐怖と苦痛に耐え、尊い命が失われているのです。列強は互いの正義を主張し合っているだけで、ウクライナの罪のない人たちを救うことに無力であるということを認めなくてはなりません。

3月16日に、ウクライナのゼレンスキー大統領は、アメリカ連邦議会に向けてオンラインで演説を行いました(私はライブで見ていました)。その全文日本語訳は以下にあります。

【演説全文】ウクライナ ゼレンスキー大統領 米議会で演説 | ウクライナ情勢 | NHKニュース

ウクライナへの強力な軍事支援を求めています。それでは戦争は終わらず、長期化して、より国土が荒廃し、より多くの人命が失われるだけです。経済制裁の強化も求めていますが、鉄のカーテンを下ろして取引も対話もしない、世界にロシアは要らないとでも言うのでしょうか?その先にあるのは何ですか?この世界からロシアを葬り去れば世界の平和と秩序は保たれるのですか?プーチン大統領が失脚し、あるいは暗殺されれば問題は解決しますか?プーチン大統領が狂人であり、悪魔の様な人だから今回の戦争になったのでしょうか?ロシアを擁護しているのではありません。ウクライナの主権を無視して、軍事侵攻して一般市民を殺害していることは、どんな基準を持っても許されることではありません。ただ、「ロシアにはこの代償の大きさを思い知らせる」という正義感に燃える(日本を含めた)列強が多くのウクライナ人を死に追いやっていることを認識しなくてはなりませんし、ロシアの孤立を深め、対話も拒絶し、ロシア人を死に追いやる未来を平和というのではありません。極端な善悪論に走る人の多くは、インターナショナルである、とはどういうことなのかを理解していない、経験が足らない人なのだろうと思います。あなたの言う「敵」はあなたとほとんど同じことを考えている「人」ですよ。違いを見出し、違いを誇張することで喜ぶ人たちが多いですけど、同じであることを確認し、共感し尊重し合える関係を築くことがインターナショナルである、ということです。

さて、先のゼレンスキー大統領の演説に戻ります。NHKがこの演説を第二次世界大戦中の英国首相チャーチルのアメリカ議会での演説になぞらえていたことに衝撃を覚えました。日本人はそこまでバカになってしまったんでしょうか?「チャーチルの演説によって、悪の帝国を滅ぼすために世界が団結し、平和が守られた歴史的出来事」だと。その悪の帝国とはどの国?ナチスドイツと我が国、日本のことです。演説に登場する「世界」とは何?英国とアメリカのことでしょう。さらに言えば、当時のソビエトと中国も共同してドイツと日本をせん滅するのです。ゼレンスキー大統領の演説をよく見て下さい、真珠湾攻撃のことを話していますよ(アメリカ人の正義感を揺さぶるから)。

以前も書いたかと思いますが、岸田首相が繰り返し使う「国際社会と連携し・・・」の国際社会とは何か?といつも思います。それは今日の日本においてはアメリカと同義ですね。中国も、ロシアも、インドも入っていない(インドはちょっと微妙だけど)。これらの国の人口を足しただけでも世界人口の半分近くになりますよ。それは国際社会ではないとでも言うのですか?歴史は、自らに都合の良いように記録され、記憶されるものです。歴史の分岐点となったチャーチルの演説は、明らかにアメリカ、イギリスに都合良く説明されています。「世界が団結し、悪の帝国日本に正義の鉄拳を浴びせ、世界の平和を取り戻した!」なんです。私は、決してかつての日本の帝国主義を賛美しているのではありませんし、正当化しているのではありません。あれは大きな過ちであり、恥ずべき野蛮な行為です。中国・韓国・インドシナを侵略し、その民を二級国民として大日本帝国に従わせることが大東亜共栄圏構想の目標となってしまいました(最初からではないけど)。それは、今ロシアがウクライナに対して行っていることとどう違うのでしょう?民族の一体性とか、ウクライナ人を虐殺するテロから民衆を開放するとか、それをほぼ全部当時の日本の嘘に置き換えられますよね。そして、それを止めた戦争の勝者側の演説に、今回のゼレンスキー大統領の演説を重ね合わせてNHKは報じたわけです。だって、今回は日本はアメリカの子分として、正義の側ですからね。そんな日本の過去を全く知ることもなく、国際社会を勝手に定義し、正義感に燃えている人は少なくないんじゃないかと思います。だから、こんなことでは同じことが繰り返されてしまいます。世界大戦になり、あっという間に世界はその終わりを迎えます。共存、共生するというのは簡単なことじゃありません。利害が対立したとしても、相手が自分を騙そうとしているのではないかと疑っても、それでも相手を尊重して、侵さず、共存共栄する寛容さと力量を持つことが、インターナショナルである、ということです。

しつこく言いますが、私は日本の過去を肯定しているのではありませんし、ロシアを支持しているのでもありません。でもアメリカも支持していないですし、EUが武器供与していることも支持できないです。人道支援、難民受け入れに大きな自己犠牲を払うポーランドを始めとする東ヨーロッパの隣国には大いなる敬意を表します。中国やインドも非難しません。むしろアメリカが唯一の正義であるかのような誤解に世界の人々が巻き込まれないように、カウンターバランスとして頑張って主張して欲しい(戦争協力は絶対しないで欲しい)。但し、その主張が自国の利益のためだけであれば、誰の心も動かしませんよ。恒久的な平和を追求するための主張です。世界の全ての人がミッキーマウスの方がチェブラーシカより可愛いと思うわけじゃない、と言っていいんです。そして何よりも、ウクライナの人々に心で寄り添い、一刻も早く苦しみから解放されることを願っています。

週明けの3月23日18時から、ゼレンスキー大統領は日本の国会でオンライン演説する予定だそうです。「日本も武器を出して」とか言うの?もちろん、ダメですよ。経済支援、人道支援は可能な限りしましょう。ただし、そのお金が武器に使われることのないように。そして、中国、ロシアと対話しましょう。アメリカに出来なくて、日本に出来ることはあるはずです。

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