このブログについて

国立大学法人山形大学工学部教授の吉田司のブログです。2050年までのカーボンニュートラル社会実現に向けて、色々な情報や個人的思いを発信します。発言に責任を持つためにも、立場と名前は公開しますが、山形大学の意見を代弁するものではありません。一市民、一日本国民、一地球人として自由な発言をするためにも、所在は完全に学外です。山形大学はこのブログの内容について一切その責任を負いません。
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2023年1月30日月曜日

プラスチックを食べる微生物

 最近、あちこちで、特に子供向けに海洋プラスチックごみの話をしました。持続可能性を脅かす数々の問題の一つに過ぎないとは言え、プラスチックを餌と間違えて食べて死んでしまう海の生き物のことを知ったりすると、それは衝撃で、身近な目に見える問題なので、例えば温室効果ガスの濃度が増えて異常気象が多発する、その原因と結果の因果関係とかよりもストレートに分かりやすく、特に子供の関心を引く「つかみ」としては大変有効ではありました。毎年800万トンものプラごみが海に流れ出し、このままだと2050年には海のプラごみの重量が魚全部の重量よりも多くなる、なんて聞いたらショックですよね。

丈夫で軽いプラスチックはとても便利で、容器や道具としてだけでなくて、衣服として着てもいますが、そもそも化学合成的に極めて丈夫な高分子を作り出しているわけですから、勝手に分解したりしない。プラスチックをやめて紙や木に変えれば良いというものでもなくて、紙を作るにもたくさん水、薬品、エネルギーを使います。プラスチックを使った包装が無ければ、スーパーとかコンビニとか絶対成立しませんから、プラスチック万歳!なのです。中身を取り出したらすぐにその包装紙(プラスチック容器など)を捨ててしまうこと、毎日それを繰り返していることに罪悪感は感じますけどね。だからってやめられない。大半のプラごみはサーマルリサイクルされます。単に燃やして燃料にします。これをリサイクルと呼んで良いかどうかについては異論もあるでしょうが、最新の高温焼却炉では僅かな灰分がガラス状に無毒化されますし、CO2になってしまうこと以外には問題とはならないでしょう。今はそのCO2が問題なんですけどね。

しかし、心無い人が捨てたのか、風で飛ばされたのか、理由は何であれ、我々がこれだけ大量のプラスチックを作り、利用しているわけですから、当然環境中への流出は避けられません。お魚大好きなうちの娘も、そりゃあ悲しむわけです。すぐに分解されて消滅する生分解性プラスチックとかは、用途が限られてしまいます。一方丈夫なポリエチレンとかPET樹脂とかは流出すると微小なマイクロプラスチックになるだけで分解されず、それが上記の問題を引き起こしているというわけです。しかし、その後はどうなっちゃうの?と思っていました。ゆっくりとはであっても、自然環境の中で加水分解されたり、酸化されてやっぱり消滅するのかなあと思っていました。しかし、どうやらもっと凄いことも起こっているようなんです。なんと、プラスチックを分解する微生物がいるんです。

プラスチックを「食べる」スーパー酵素はプラスチック問題を解決できるか | CAS

そんなの常識でしょ!?という方もあるんでしょうね。私が知らなかっただけかも。上記には結構詳しく発見までの経緯や最近の研究について説明されています。2016年にプラスチックのリサイクル場で、PET樹脂を分解して、それを代謝して増殖する微生物が日本で発見されたそうで、プラスチックリサイクルの一助となるのでは、ということでその分解力を向上させるバイオテクノロジー研究が進展しているようです。腸内にこのプラスチック分解微生物を飼っている虫まで見つかっているみたいです。コイツはプラスチック容器をかじったりするんですかね?

プラスチックを食べる幼虫をカナダの大学が発見。マイクロプラ除去システム開発に貢献か | 世界のソーシャルグッドなアイデアマガジン | IDEAS FOR GOOD

泥臭いケミストリーしか知らない私は心底驚き、生き物の能力の凄さに感銘を覚えました。この微生物が直ちに海洋プラスチックごみの問題を解決してくれる様なことは恐らく無いんだろうと思います。今まで通りプラスチックをバンバン使って、そのゴミを虫に食べさせて、その虫を食べる???いや気持ち悪いなんて言ってられないです。人の身勝手な行動で生じた問題を自然が解決してくれるなんて、ちょっと都合良すぎ。もちろん、この微生物を人の目的に合わせて改良して、ゴミの解決と再資源化に活かす可能性を探る研究は良いと思うし、ワクワクしますね。

しかしまあ、このことを知って思ったのは「風の谷のナウシカ」の世界観なんですよ。宮崎駿さんって、本当に凄いな。終末戦争で荒廃し、汚染されきった地球(?)は腐海と呼ばれる毒ガスを出す植物(菌類みたいなやつ)に覆われ、それを守る巨大昆虫が共生している世界ですが、ナウシカはその腐海が水や大地を元の綺麗な姿に戻していることを見つけるんですよね。自然との共生の大切さを訴える、良く出来たドラマだと思います。そしてこの、プラスチックを食べる生き物の存在。これって、太古の昔から生存していたのでしょうか?PETが発明されたのが1941年、広く流通したのは戦後ですから、それまでは自然にはPET樹脂なんて存在しなかったハズです。そうすると、それを餌にする生き物がいるとも考えにくいですよね。ひょっとして、人間が大量のプラスチックごみを生むようになってから、それを食べる生き物が進化によって生まれたのですか?火を付けたら燃える化学エネルギーですから、それをエネルギー源にすると生きられるよ、という能力を新たに獲得するってこともある?まさに、ナウシカの世界ですよね。人が荒らしまくった世界を元通りにしようとする生き物が生れてくる?だとしたら、自然の力って本当に凄いです。ただ、それに甘えていたら、きっと人類は絶滅するんですよ。仮にそのプラスチックを食べる生き物が新たに生まれてきたのだとしても、それは愚かな人間を救うために生まれてきたのではなくて、この地球環境を守るために生まれてきたんです。でもまあ、とにかく自然の偉大さにただただ感心するばかりです。久々に、重苦しい嫌な話でなくて、夢のある話題でした。

2023年1月26日木曜日

イノベーション

 このところ、ずっと経済学の話が続いてきたように思います。経済学のみならず、国際的な情勢を分かっていること、歴史認識、理系の人たちにも大切だと思います。テクノロジーは、特に今の世の中においては人の強欲さを満たす手段として用いられ、ぼーっとしていると全く社会的意義の無いこと、もっと悪い場合は害を及ぼすことにさえ手を貸してしまうことになりかねません。理系の人の多くは素直過ぎて、社会を支配する層が示す基準に盲目的に従い、議論を戦わせることもなく(研究のこと以外議論が下手)、そういうふうだから社会の動向にも無知(無関心)でナイーブなところがあります。学者でさえも世界がどうあって欲しいと思うのか、成すべきこと、すべきでないことに対する基準が自分自身の中に明確では無いから、いきおい論文の数、インパクトファクター、外部資金とか、自分自身の価値の定量評価に使われる数字が気になり(理系は数字には敏感!)、学問の社会的意義を見失って翻弄され続け、挙句の果てはバーンアウトしてしまうか、あるいは世捨て人の様に自分の研究の世界の中に逃げ込んで、その社会的意義など考えなくなるように思います。どっちも良くないですね。

ということで、経済学というか、世の中の仕組み、人が辿ってきた歴史についても貪欲に学び、人の内面にも向き合ってこれから起こるであろうことを想像し、今の時代感覚を持って成すべきことに気付き、行動することも理系学者が学者らしくあるために必要だと思うのです。何もそれは学者に限ったことではなくて、テクノロジーに関わる全ての人について言えることです。単に利用される存在とならず、自分の行動に自らその意義を与えられることは大切です。学者になってからのこの30年あまり、科学の進歩に伴って業界は細分化され、専門性が問われる傾向が強かったと思います。専門領域で秀でることが個々の存在意義として求められてきました。しかしそういう細分化が進んだことで、互いの関係が見えなくなり、果ては自分自身の学問が世界とどう繋がっているのかさえよく分からなくなってしまい、分野を越えた協力というのを難しくしていました(YUCaNでの苦労でそれを痛感しています)。今再び、レオナルド・ダ・ヴィンチ的な博識の人が求められている様に感じます。失われた世界の絆を取戻すには、知識や理論だけでもない、実践と経験だけでもない、両方を兼ね備えつつ本当の意味で世界を俯瞰し、自分の周囲の都合や常識に流されない存在が必要です。それを目指してんだけど、自分の能力的になかなかそんなこと出来ません…。

テレビっ子(死語)の私は、活字を読むのが苦手で、スピード感も無いのでテレビとかメディアの情報を大量に仕入れます。ただ、いつも批判的にそれらを見ているので鵜呑みにはせず、そこから考え始めます。ここ最近の記事に一番影響を与えたのは、今年の正月に放送されたNHK BS1スペシャルのこの番組です。

欲望の資本主義2023 逆転のトライアングルに賭ける時 - BS1スペシャル - NHK

繰り返し見てしまうほど、中身が濃かったです。先日話題にした「労働力のステルス値上げ」もこの番組の中で渡辺努先生が言っていたことでした。色んな人が話をしていますが、多くがフランスの経済学者。やっぱり私、フランス好きだなあ。大勢の考えとか空気に引きずられている様なところが全く無くて、日本人と対極的です。とても説得力があり、うならされるのですけど、これらの経済学者が語るテクノロジーや産業は、やっぱり机上の話になっていると感じるところもあります。それは、実際にそれらに関わった経験が無いからでしょうね。例えば太陽電池やリチウムイオン電池を作るための産業技術がどれぐらいダーティーであるのかについてのインプットがされていない感じがします。まあ、良い番組だと思いました。再放送もまたあると思いますし、NHKオンデマンドでも見れますから是非ご覧になると色々考えさせられると思います。

さて、この番組でもしきりと「イノベーション」という言葉が登場していました。イノベーションとは何か、まずその定義から確認しましょう。

イノベーション - Wikipedia

イノベーションは新しい技術の発明、Invention(インベンション)ではないんです。用いられる技術というのは陳腐で古臭いものであっても構わない。新しい切り口、とか言われていますけど、要は社会的意義が重要であって技術をどの様に用いてより良い社会づくりに貢献するのかという意志が無いとイノベーションは起こらないわけです。極論すれば、イノベーションにサイエンスは不要かも知れません。自分の学術的関心やそれを溺愛してしまうことはイノベーションの妨げですらあるでしょう(古いタイプの理系にありがち)。

果たして、政治家も、役人も、企業経営者も、もっとイノベーションを!と叫ぶわけですけど、実態はどうか。上記の経済学者の多くも指摘していますが、イノベーションを最初に定義したシュンペーター的なイノベーションが、社会の発展や豊かさ、幸福度を向上させてきた時期があったとしながらも、最近は社会的意義のためではなく、単にライバルに打ち勝ち、淘汰するための手段として、本来必要でもないものを必要と思わせる新しいネタ探し、アイデア出しの様になってしまっている、そうした悪いイノベーションが良いイノベーションを殺している、というのです。それ、分かります。深圳のB級ベンチャーなんて完全にそうですし、日本も怪しいものです。それをイノベーションと言いつつ、一体どういう理念があり、どの様に良い社会形成に貢献するのか、という社会的意義のためではなくて、如何に商業的に成功するか、競争に打ち勝ち、利益を上げるかという経済的意義だけが新しいモノやサービスを生み出す動機になっているところがあります。もっと酷いのは、圧勝する巨大企業が誕生したことで、イノベーションを阻止する動きまであるということです。例えばアマゾンやマイクロソフトなどは、元々はイノベーションを起こして社会変革を起こした、アメリカの発展の原動力でした。ところが、企業買収、いわゆるM&Aを通じたライバル潰し、邪魔な存在だとしても重要なオルタナティブであったはずの同業他社潰しが進行し、進化の原理である代謝のメカニズムが破壊されてしまいました。さらには、そうした民間会社が病院、学校、交通など、公共性の高い事業にまで手を出し、そうした公共サービスの健全性さえ危ぶまれています。

科学技術による人類の前進を信じて、自然科学と工学技術を志した理系の同胞、もちろん学生諸君にも呼びかけたい。そんな単なる金儲けの手段に利用されることは嫌ではないですか?声高にイノベーションを主張する人がいたとして、それがどんな理念に基づくのか、そこはしっかりと自分で判断した方が良いです。というか、自らが理念を持つことが必要であり、だからこそ世界に目が見開かれていることが大切だと思うのです。何度も言っていますけど、知ること(学ぶこと)はまず大前提です。無知からは何も生まれません。しかし、批判的精神をもってそれを咀嚼し、知ったことから想像力を働かせ、気づくことが自分を導く本当のチカラになります。それを怠ると、とりあえず強そうな人についていこう、となってしまいます。その先に地獄が待っていたとしても。良い物(知識とか技術とか)を持っていたとしても、それをどう使ったら良いのか分からない(アイデアが無い)。だからそれを悪用しようとする人にさえ協力してしまうかも知れない。世間知らずのマジメな理系の悲しい末路です。

(経済)成長の無い時代、世界の分断と気候変動によって今までの当たり前を維持することが困難となる時代において、幸福な社会の形成に資する社会的意義の高いイノベーションが求められています。それは、再び巨大なマネーを生む金儲けであったり、気候変動を無関係にしたり、有り余る程のモノに溢れた世界を実現するためでないことは明らかです。火星移住でもありません。成長(膨張)よりも持続する幸せが最も高い目標となった今、イノベーションの意義を取戻し、本来の、本物のイノベーションを起こす人たちが救世主となります。創業時はイノベーター集団であっても、一度成功拡大し、その経済的価値を保つことに必死になっている大企業(とそれに従属する弱い理系)にはイノベーションは起こせないでしょうね。イノベーションへの熱い情熱を持った人は、自ら起業すべきだと思います。サイエンスが足らないのは何とかなりますが、世間知らずにはイノベーションは起こせませんね。新しい挑戦者を社会が後押しして欲しいですね。寛容にね。

2022年7月13日水曜日

リアクト米沢訪問

 米沢市役所の計らいで、米沢市にある「リアクト米沢」さんを見学してきました。

reactyonezawa.com

近隣で飼育される家畜(乳牛)の糞尿や、スーパーで廃棄されてしまった農作物等からバイオガスを生成し、これを用いた発電に取組んでいます。同時に生成される堆肥は地域の農作に利用されていて、ゴミを出さない循環型農業のモデル事業です。


「はまだ牧場」の乳牛さんたち

見学の最初は、「はまだ牧場」です。広い牛舎の中で、沢山の乳牛がエサを食べていました。一部土の様なモノを食べていたので、何か尋ねると、ゼオライトだそうです。お腹の調子を整えているそうで、自発的に食べるんだとか。生まれて間もない子牛も別の牛舎にいて、可愛かった。

搬出される牛糞

当然ながら、牛たちは沢山ウンチをします。それをもみ殻と混ぜて、トラックで運びだします。もみ殻も一緒に発酵されますが、混ぜるのは水分(オシッコも混ざっているので)を吸収させて、搬送途中で盛大に漏れ出さない様にするためだそうです。

リアクト米沢の施設外観

はまだ牧場から500メートルぐらい離れたところにある、リアクト米沢さんに到着しました。写真に見える様な発酵槽が2基、大きいのと小さいのがありました。

廃棄物を砕いて混ぜるミル、ミキサー

搬入口を入ると、牛のウンチだけでなくて、廃棄された野菜なども全部混ぜて粉々にするミキサーがありました。緑色っぽいのはキャベツでした。これ、写真では分かりませんけど、猛烈に臭かったです!まあ、そりゃそうですよね。

分離された固形分は堆肥として利用

ドロドロになった廃棄物は、洗濯の脱水機の様な仕掛けで固形分と消化液に分離されます。固形分は全く臭わず、これが近隣の農家のアスパラガス栽培などの肥料に用いられているそうです。

発酵槽、中央上部に見える赤いのは攪拌用モーター

消化液は地下に埋設された管を通って発酵槽に入り、嫌気性細菌によってメタンガスへと分解されます。硫化水素の生成を抑制するために多少空気を入れるそうですが、酸素があると二酸化炭素と水まで行っちゃいますから、酸素は基本的には遮断されています。温度は43℃ぐらいが良いそうです。攪拌する方が良いのか、しない方が良いのかなどは色々テストするそうです。この攪拌モーターの電力は、ここで発電された電力を使っているそうです。発酵で温度が上るわけでもないそうで、寒い時は温めるそうです(それも、施設内で生み出した電力による)。大体数週間で完全にクリーンになって、そのまま下水に流すことが出来るので、いっぱいになって止まってしまうことは無いそうです。生成したメタンは上部の半球形ドームで回収されます。

ガス分離装置

生成するガスはメタンだけではありません。余計なガスがエンジンに入るとエンジンが壊れるので、このガス分離装置で純化するそうです。

発電機のエンジン、写真に写るのは案内して下さった、株式会社ハイポテックの高橋さん、ハイポテックがこのバイオガス発電プラントの運用をしています。

そして、生産されたメタンガスは、御覧のエンジンの燃料になり、発電機を動かします。エンジンの回転軸は発電用のダイナモに直結されていて、負荷はマグネットで制御する仕組みだそうです。最大出力は470 kWとのことです。てっきりガスタービンエンジンだと思っていましたが、普通のレシプロエンジンでした。片バンク6気筒、V型の12気筒エンジンで(チェコ製だとか)、スパークプラグも見えました。効率悪そうにも思うのですけど、恐らく小型の設備についてはガスタービンよりも良いんでしょうね。燃焼すると、当然二酸化炭素が出るわけですが、元々バイオマス由来ですから、完全カーボンニュートラル、というわけです。燃料さえカーボンニュートラルならば、いままで通りエンジンを使ったら良いです!自動車だって、何も全部EVにする必要はナシ!
こんなに先進的なバイオガス発電施設が米沢にあるということが驚きでした。全国でもこういう施設はまだまだ少ないそうで、連日全国から視察があるようです。設備のほとんどは輸入部品で構成されていますが、設備の設計や施工は独自にされたそうです。こういう施設を見るのは初めてでしたので、スゴイなあ、という印象ではありましたが、ヨーロッパで大規模に取組まれている施設と比較すると、可愛いモノだそうです。実際、470 kWというのは、これだけの設備にして「まあそんなもの」という小ささです。同じ敷地に太陽電池を敷き詰めてもそれぐらい発電出来そう。
でも、そういうことじゃないんです。循環型農業、さらにはカーボンニュートラルな電力生産の取組み、素敵じゃないですか!ご案内頂いた濱田さんや高橋さんの生き生きした表情も大変印象に残りました。我々が何らかの形で、こうした取組みの進化や拡大に貢献出来たら良いなあと思います。リアクト米沢さんの場合、効率的な運用方法は独自に研究検討していて、大学等と共同しているわけではないそうです。エライ!(っていうか、役に立つことが出来ていない大学の研究者が情けない!?)
ここまでやっても、まだまだ道半ばであることの一つとしては、最初に出てきた牛さんたちが食べている穀物飼料や干し草は、やっぱり全部輸入品なんだそうです(外国の土壌、お日様で育った穀物を燃料を使って輸送している)。昔の牧畜というのは、餌も地域で生産し、家畜が育ち、廃棄物は再び土壌に戻るという完全循環でしたが、今は安い輸入穀物飼料を使う効率的な大規模生産が当然になってしまいました。国産は高い上に品質が安定しない、雨が多いせいで牧草がカビたりする、というのが国産飼料にはなかなか切り替えられない理由だそうです。しかし、稲わらの飼料など研究はされているそうですよ。出来ることなら、地域で生産された飼料で家畜が育ち、そこから食料とエネルギー両方を頂いて、再びそれが土壌に戻って飼料を育てる完全循環、その全てが太陽の光の力で回っている、という仕組みを実現したいものですね。
そしたら、国産家畜飼料の話題が先日放送されていました。
鹿児島、指宿での飼料の国産化の取組みです。天候不順による不作、ウクライナ紛争、急激な円安、コロナによる物流停滞などで、輸入穀物飼料の価格が急騰しているために、早くから取り組んできた国産飼料が十分現実的競争力を持つようになったそうです。上記のカミチクホールディングスさんがスゴイのは、餌づくりに始まって、最後に食肉が提供される外食産業まで多角的に取組んでいるところです。でも、そうした方が、入口と出口がつながって、循環する仕組みを作りやすい様にも思いますね。大変ではあるけれど、分業による効率化よりも、連携によるシステム化が今後の鍵でしょうか。これからは、コストだけではなくて、持続可能であることが優先されるべきファクターになると思います。もちろん、採算性が全くないことには取り組めないので、一歩ずつ理想形に近づいて行って、いつかは東北地域から食料とエネルギー両方を全国に供給できる様になったら良いなあと思います。









2021年10月11日月曜日

NTTが推進するIOWNとは何?

 ちょっと前にニュースになっていて、気になっていました。NTTは政府の目標である2050年よりも10年前倒しで、2040年にNTTグループとしてカーボンニュートラルを達成すると宣言したのです。

NTT 光技術で2040年度までに温室効果ガス排出量 実質ゼロ目標 | 環境 | NHKニュース

NTTがグリーン燃料を創出する事業に進出するのかと言えば、そういうことではなさそうです。IOWN(アイオンと読んで欲しいみたいです)と名付けられた新しい光通信技術の導入を進めることで、ネットワークが消費するエネルギーを大幅に削減することが出来るというものです。確かに、先日取り上げたように、情報ネットワークが消費する電力は莫大なものになっているようです。

カーボンニュートラル2050: ICTで気候変動は加速する? (carbonneutral2050.blogspot.com)

今のところ、電線の中を流れる電気信号が情報伝達を行っていて、特に長距離だとその損失はとても大きくなりますから、これを光に変えると損失が低減されるということでしょう。しかし、無線通信はどうするの?詳しくは分かりませんが、NTTはこのIOWNコンセプト(インテル、SONYとの共同)を解説する詳しい情報ページを公開しています。

IOWN|NTT R&D Website (rd.ntt)

端末の直前まで全部光で通信するということのようですが、パワーは?出来れば送電線も無くして、光でエネルギーを供給して、端末側で光から電気に変換できないですかね?それも視野には入っているみたいで、エネルギーのことについてはこのページに解説があります。

IOWNが変える社会インフラ MaaSとエネルギーの革新|NTT R&D Website (rd.ntt)

MaaS (Mobility as a Service)とかってのは、普通は情報伝達の部分だけのハナシだとは思いますが、出来ることならば車両側にバッテリーなどエネルギー貯蔵の必要を無くして、光なのか、電磁波なのか(やっぱり損失が問題になってしまうけど)でエネルギーを常時供給して動ける様になったらいいんですけどね。実際、電車はそうでしょ。電線ですけど、バッテリーは積んでいない。蒸気機関車は石炭を積み、ディーゼル車両は軽油を積んでいて、それで航続可能距離が制限されますが、電車は電気が来る限り走り続けられます。

それでもなお、エネルギーの使用効率を上げて、使用量を減らすだけではゼロカーボンにはなりませんよねえ。生み出すところは他から買ってくるというだけじゃなくて、是非そこもお願いします!


2021年10月5日火曜日

ノーベル物理学賞 気候変動研究の真鍋淑郎氏が受賞!

 今年のノーベル物理学賞をプリンストン大学の真鍋淑郎さんが受賞されました。

ノーベル物理学賞に真鍋淑郎氏 研究者「とんでもなくすごい」 | ノーベル賞2021 | NHKニュース

ノーベル賞2021 NHK特設サイト

私は分野違いで、その偉業を知っていたわけではないので、何かを語れる立場にはありませんが、現在に至る気候変動の数値モデル化に初めて取組んだ先生だそうです(その世界では知らない人がいないというぐらい有名な先生)。YUCaN研究センターでも多大なご協力を頂いているJAMSTECのフェローも務められていて、山形俊男先生も良くご存知のハズです。全く僭越ではございますが、私からもお祝いさせて頂きたいと思います。おめでとうございます!とんでもなく遠い世界の出来事ですけど、ちょっとだけでもご縁が出来たことを大変嬉しく思います。

詳しくは(というほど詳しいわけでも無いでしょうけど)上記のニュースリンクをご覧ください。これまで、ノーベル物理学賞は、素粒子とか純粋物理の研究が受賞することが多かったと思いますが、気候変動モデルが受賞というのは今の状況を反映してのことと思います。それぐらい、身近な問題として認識されるようになり、これに対峙する研究の重大性が認められたということでしょう。当然ですね。

真鍋先生の研究は、今にも至る気候研究の礎となっているそうです。素晴らしいですね。その研究を始めたのは私がまだ小学生にもなっていない1960年代とのこと。当時はまだ気候変動に対する危機感など全く無かったことでしょう。そこに先見の明があったというか、流行りを追いかけるのではなくて、独自の着眼点と発想で研究されたことが、この受賞に至ったわけです。お金がとれるからとか論文出やすいからとかで流行りの研究をやってはいけません。もう強い人がいるのなら、そこに群がるんじゃなくて、任せたらいいじゃないですか。自分も給料もらって、税金使って研究させてもらうなら、自分ならではの研究に挑戦すべきでしょう。何が将来役に立つのかなど、到底分かりません。それは決して無責任ということじゃなくて、自分なりに一生懸命考えて、学んできたことをしっかり書き残すということだと思います。是非我々も、そして自然科学を志す若い世代の研究者も、これを見習うべきでしょう。

カーボンニュートラル社会への挑戦、これでさらに勢いづきますよ!

2021年9月1日水曜日

貴金属フリー水素生成触媒?

 東工大のグループが、ごく低温でアンモニアから水素を生成する、貴金属フリーの触媒を開発したと報じられました。

貴金属フリーでアンモニアから水素を生成する高性能触媒、東工大が開発 | TECH+ (mynavi.jp)

かの有名な細野秀雄先生らのグループです。アンモニアを窒素と水素に分けるのですから、別にエネルギーを生産しているわけではないのですけど、少し冷やすか圧力をかければ簡単に液化するアンモニアは、水素に比べたらはるかに貯蔵輸送しやすいです。しかし、アンモニアを直接利用する燃料電池は触媒の不活化の問題があり、直接燃焼する場合もNOxの生成を抑制しなくてはならないなど、燃料としては水素の方が扱いやすい、という事情もあります。簡単なコンバーターで、液体アンモニアから水素を抽出できるようになれば、水素酸素燃料電池や水素エンジンを搭載した移動機械には大きなメリットになりますよね。

ポイントは、CaNH(カルシウムイミド)という物質の表面に、アンモニア分解触媒として知られるNiナノ粒子を担持したことにあるようです。CaNHにはNH2-が欠損した欠陥があり(水酸化物になっている?あるいはフリーエレクトロンがある?)そこにNH3が捕捉され、NがNiに強く引き付けられて低温での分解が進行する様になる、ということらしいです。NH2-はアンモニアから脱プロトンした化学種ですから、それを安定化するカルシウムイオンが大切で、NH2-の欠損したサイトにNH3が水素を放出しながら吸着され、Ni上でN2が生成するということでしょうか。

しかし、気になるデータが示されています。繰り返し実験でNH3が吸着されて水素が生成しているのは最初の3回ぐらいで、すぐに反応しなくなっています。同時に、欠陥に由来する黄色い着色が反応後に無くなっています。NH2-欠陥が無くなると、NH3は吸着しなくなると説明されています。だとしたら、それを触媒と呼んで良いのでしょうか?単なる化学反応であって、物質が消費されてしまっています。これは50℃くらいの低温での実験データなので、高温動作させれば欠陥が再生するのであれば、まあ触媒になるのかも知れませんけどね。この欠陥の挙動と末路を理解することが大切そうです。

2021年8月27日金曜日

本物の「ソーラー水素」製造

 これぞ本当の脱炭素クリーンエネルギーと言える研究成果がNEDOからプレスリリースされました。

世界初、人工光合成により100m2規模でソーラー水素を製造する実証試験に成功 | NEDO

次世代エネルギーの本命と目される水素については、色々な話がありますが、よく調べると石炭や天然ガスから製造した水素(CO2が出てしまう)だったりします。しかしこれは太陽光のエネルギーで直接水を酸素と水素に分解し、その水素を回収する大規模実験に成功したというニュースです。人工光合成もついにここまで来ました!太陽光と水から燃料を作れるんですよ!

で、エネルギー問題は解決!とは残念ながらいかないんです。今回の実験で得られた太陽光から水素へのエネルギー変換効率は最大で0.76%とあります。一般的な太陽電池による太陽光から電気エネルギーへの変換効率が15から20%ですから、とても低い。しかしこの光触媒の反応量子効率はほぼ100%なんだそうです。量子効率と変換効率の区別が付かない人のためにちょっとだけ説明しますと、量子効率とは光触媒が吸収した光がどれだけ目的の反応に使われたか、の効率ということです。一方の変換効率は降り注いできた太陽光のエネルギーをどれだけ水素のエネルギーに変換できたか、の効率です。植物の光合成も量子収率はほとんど100%ですが、変換効率は0.3%程度です。それは自分が作ったエネルギーのほとんどを生きるために使ってしまうからで、食べたり燃料に転化出来たりする有機物への変換効率は非常に低いということですね。

一方、今回の光触媒の変換効率が低い理由は明らかです。写真を見て、パネルが真っ白なことから分かりますが、太陽光の主成分である可視光線を全く使えていません。使用されているチタン酸ストロンチウムという半導体は、太陽光に僅かに含まれている紫外線しか吸収できないのです。今後可視光も利用できる改良を進め(色が付くということです)、変換効率を5-10%程度に向上することが目標、とあります。もちろんね、でもそれが容易じゃないんです。恐らくは、太陽光発電の電力を使って水を電気分解する方がエネルギー変換効率はずっと高くなります。光から直接水を分解しようとするから効率が低くなる。

でも、どっちにしてもまだまだ問題があります。水電解の装置(光は使わない)は既に完成されていますが、その触媒には貴金属が使用されます。今回の人工光合成システムも、植物の様に有機物を使っているわけではなくて、全部無機材料です。チタン酸ストロンチウムの表面には、水の酸化と還元を起こすための反応の場所になる助触媒として、その表面にRh, Cr, Coの化合物が微量修飾されています。微量であっても、将来必要となるスケールを考えたら貴金属の使用は許容出来ません。しかし水の酸化と還元というのはかなり厳しい反応で、大抵の物質は水を分解しないで自らが反応して失われてしまうのです。それが貴金属を必要としている理由で、容易に代替物質は見つからないわけです。

今は貴金属を使ったとしても、実証をある程度のスケールで行い、展望を与えることが重要でしょうね。グレー水素が混ざったとしても、海外から水素を輸入して使用するインフラ整備を進めて、いずれ太陽光を利用したグリーン水素のコストが石炭やLNGに匹敵する状況を目指す。より現実的な取組みとしては、NEDOの支援と民間主体でそれが進められています。

NEDO、水素の輸入や発電を支援 CO2削減後押し: 日本経済新聞 (nikkei.com)

太陽光による安価な水素(あるいはアンモニア、ハイドロカーボン)の大量製造に向けては解決できるかまだ分からない問題が多く残されているわけですが、本当にサステイナブルな世界を実現するには絶対に避けられない課題なわけで、日本は真面目にそれに取組んでいるわけです。間に合うかどうかが大変な問題ですねえ。


2021年7月26日月曜日

ガソリンをつくるプランクトン!

 生命の多様性は、この難局を乗り越えるための希望なのかも知れません。海洋研究開発機構(JAMSTEC)の調査船が8年前の北極海航海で採取したプランクトンが、ガソリンやディーゼル燃料と同じ成分を体内で生成する能力を持つことが明らかになったそうです。

ガソリンと同じ成分作る植物プランクトン発見 | 環境 | NHKニュース

生成されている量は微量とのことですが、その能力を拡大する改良(遺伝子操作?)をすることで、藻類によって直接自動車等に使える燃料を製造することが可能になるかも知れません。

火星への移住を真剣に語る様な宇宙探査には賛同出来ませんが、まあそういう宇宙探査も含めて、フロンティアを調べる取組みがとても大切だということをあらためて実感させるニュースですね。「宝探し」なんていう下世話なことではないんです。何も見つからなくても、未知の世界を探索し続けようとするのは、人間の飽くなき探求心の成せる業です。深海だとか、極地の海だとか、あるいは地中奥深くとか、人が踏み入れたことの無い世界を調べることで、思いもよらなかった発見があるかも知れません。

神様は人間に、自分たちの大切な家を破壊してしまう程にその活動を拡大する知恵を授けてしまいましたが、同時にそれを解決するためのヒントもこの世界に準備してくれている、そう信じたいですね。

還暦

 私、1966年生まれ、丙午(ひのえうま)です。2026年になりましたので、還暦を迎えました。すなわち、今1歳です。あと何年生きられるでしょうか?ひとまず、60年で色々経験させてもらい、色々なことを学び、考え、行動することが出来るようになりました。出来ることが増えた一方で出来なく...