このブログについて

国立大学法人山形大学工学部教授の吉田司のブログです。2050年までのカーボンニュートラル社会実現に向けて、色々な情報や個人的思いを発信します。発言に責任を持つためにも、立場と名前は公開しますが、山形大学の意見を代弁するものではありません。一市民、一日本国民、一地球人として自由な発言をするためにも、所在は完全に学外です。山形大学はこのブログの内容について一切その責任を負いません。

2021年7月30日金曜日

その魚、どうするの?

 今朝見たこのニュースに唖然としました。

福島第一原発 放出濃度の処理水で魚の飼育試験 実施へ | 福島第一原発 | NHKニュース

海洋投棄される予定のトリチウム汚染水(を規定の濃度に薄めたもの)の中で、ヒラメなどの魚を飼育して、安全性を確認するというのです。いかにも、らしい、と言えばその通り。これが全く意味をなさない、無力なことだと当事者は分かっていると信じたいです。こんなことで、風評被害が無くなるとか低減されると思ったら大間違い。

万一魚に異常が起こるとかだと、これはもちろん「やべェ」わけですが、恐らく魚は育ってくれるかな。で、その魚はどうなるのでしょう?恐らくは切り刻まれ、放射線量を測定されるだけで、捨てられるのでしょう。それは虐待ですよ。命をもてあそんでいる。放射線量に問題が無いとして・・・じゃあ食べますか?東京電力の社員食堂で提供する予定?社長さんが役所の人との会食で一緒に食べる?それやったら、恐らく多くの人が東京電力を退職しますよね。要するに、みんな絶対食べたくないと思っているわけで、それこそが風評被害なのです。放射線量がどうのこうの、ではない。放射線量に問題が無いのに拒絶されるのは正しくない、と本気で思うなら、やっぱり社員食堂で出してください。例えば日本海側のヒラメの半額でそれを出してみるとかね。

前にも書きましたが、風評被害は絶対無くなりません。そして、その被害に対して金さえ払っておけば良いというのも大きな間違いです。漁業者が求めているのは、一生懸命働ける環境を取り戻すこと。美味しい魚をとって、提供する自らの仕事に誇りを持って取り組めることです。お金さえもらえれば良いとは誰も思わないでしょう。だから、取れる方法はただ一つ、トリチウム分離回収技術が確立されるまで、汚染水を貯め続けるしかありません。その現実に向き合い、原発と共に生きる未来は無いのだと認めることです。

まだ反発する向きもあるでしょう。しかし、では「私の責任」とばかりにヒーロー気取って東電の幹部の方がそのヒラメを食べたとします。でも、それをあなたたちの可愛い孫にも食べさせますか?ためらいはありませんか?それが風評被害なのです。他人事にして片付けないで、自分ごととして考えたら誰にでも分かることではないですか?

2021年7月29日木曜日

水素技術競争力世界ランキング

本当にそうなるかどうかはまだまだ分からないとは思いますが、脱炭素時代の燃料として一番有望視されているのが水素です。それをどの様にして得るのか、貯蔵運搬するのか、そして利用するのかについては、様々な関連する技術開発がありますが、その技術競争力の世界ランキングが報じられていました。

水素技術「総合的競争力ランキング」トップ10にトヨタほか日本4社。専門家は「特許数への慢心」に警鐘 | Business Insider Japan

その競争力をどう評価するの?と思いますが、実際このランキングは特許の数だけです。どれだけ水素関連の技術開発に熱心であるかの指標にはなるかと思いますが、本当の意味での競争力をこれだけで評価するのは適切ではないでしょう。とは言え、このランキングを見ていると、気づかされることがあります。

まず、国別のランキング。圧倒的1位が日本です。10年間でその数ほぼ1000万。凄いですね。中国、アメリカ、韓国、ドイツと続きます。意外に思ったのが10位にランクインしたデンマーク。デンマークって、人口600万人に満たない小国ですよ。自動車メーカーもない。自動車メーカーのあるイタリアや、同様に人口が少ないスウェーデンを差し置いてランクインしているというのは、それだけ水素に対して熱心だということでしょうか?

メーカー別で見ると、日本の約1000万のうちの225万がトヨタ自動車。日産とホンダを合わせると40%が自動車メーカー。その他、電池関連の材料化学メーカーが多数日本からランクインしていますね。他国でも自動車メーカーが多く、やはりモビリティーが水素の技術開発を牽引していることが明らかです。興味深いのは、5位の中国科技院。日本のNIMSみたいな存在ですが、産業と密接につながっているので実質AISTに近い存在か?中国ではメーカーが自ら研究開発をすることはあまり無くて、大学等の研究機関が製品開発レベルに踏み込んで研究開発するみたいです(嫁さんのハナシによる)。それを背後でコントロールしているのはもちろん中国共産党です。18位にランクインしている精華大学も同様ですね。前言覆しますが、20位の「中国石化」は中国で一番大きい石油会社です。やっぱりエネルギー関連産業は研究開発も担っているということか、あるいは単なるパテントホルダーなのかも知れません。9位のフランスの組織は原発関係、EDFですね。フランスは原発で脱炭素が既にかなり進んでいるわけですけど、次は一足飛びに太陽光発電ではなくて、太陽光水素なのでしょう。それで、日本からは産総研、NIMS、東大、東工大とかは全くランクインしておりません。研究機関がやることではなくて、やはり産業技術開発は民間企業が主体ということですね。それが正しいと私は思います。特に日本の場合、学者に産業のセンスはまるでありません。大学のリーダーに経営感覚がありません(特に国大)。だから、そういうのには手を出さないのが賢明と思います。新しい技術は是非民間に(日本限定)タダであげるべきだと思います。特許出しても良いけど、日本企業に対してはライセンス料ゼロで。それって国際問題になりますか?

で、このレポートで警鐘を鳴らしていますけど、特許の数を驕るなということですよね。電機業界の過去の失敗が取り上げられていますけど、日本のオジサン(おじいさん、村の長老)に任せておいたら、きっと同じようなことが繰り返されます。囲い込みをして、勝ったつもりになってしまう。それはとりもなおさず、交渉力とかコミュニケーション力が無いからです。異質なものからは学ぼうとせず、排除する方向に動く。自分の周囲を自分にAgreeする人ばかりで固めようとする。同じ空気じゃないとイヤ。経産省も「オールジャパン」とかいう言葉が大好き。オールジャパンで良いですよ、日本に税金を納めてくれる組織に儲けてもらわなくちゃ。でも日本人である必要はありません。男性である必要も、年長者である必要もありません。むしろ逆で、自らを多様性に満ちた集団とし、それを機能させるリーダーシップがあったならば、持ち前の真面目さと創造力の高さを発揮して、もっと日本の産業は強くなれることでしょう。

日産自動車のすったもんだも見苦しかったですよね。幹部でさえ、基本的にガイジンを嫌っていたことが良く分かりました。そういう日本人の弱さが国際的なオープンイノベーションに乗っていけない、ついていけない一番の問題なのだろうと思います。だから、若い人、それから女性にはどんどん遠慮しないで広い世界に飛び出して欲しいです。そして老人はまず交代。オッサン退場。自分には理解できないものを歓迎する度量を持ちましょう!

2021年7月27日火曜日

投稿100回目!

 4月27日に立ち上げたこのブログですが、およそ3カ月経った今回で投稿100回目となりました。出来るだけ毎日と思って更新してきましたが、本当に話題が尽きないです。脱炭素社会に向けた世界の大変革が起こっていることを実感します。今後この大きな潮流は変わってはならないし、止まらないだろうと思います。何しろ問題は日々深刻化する一方であり、解決への道のりは長く険しいからです。

情報源はインターネット上にあるものがほとんどで、自分自身が直接関係することは限られますが、関心を持って向き合えば、それら情報にアクセスすることが可能な便利な世界になりました。それを自分の頭で考えて、フィルターを通じた自分のコメントを書くことがやっていることです。感想文、日記の様なものです。読んで頂いた方には、共感することもあるかも知れませんが、疑問に思うことや反発を感じることがあるかも知れません。それで良いです。それが望ましいことだと思います。自ら考えて行動することこそが大切だと思います。一人一人の境遇や立場が異なることで、問題の見え方やその善し悪しが変わることは当然で、それを乗り越えて脱炭素への協力協調を進めることが大切です。読んだ人が関心を持ち、自ら考えるきっかけとなることを願い、元の情報源を共有する様にしています。自分で探してくるのは面倒ですから、少しでもこの問題に向き合うための助けとなれば本望です。

自分の立場上、訴えかける相手として一番意識しているのは、理系の大学生ですね。脱炭素に向けた技術的課題は多くありますから、それを担い、これからの30年の主役となる皆さんには、危機意識と同時にこの社会の大変革を担うことへの大きな夢と希望を持って欲しいと思います。しかし同時に、知れば知るほど、考えれば考えるほど、技術だけで解決できる生易しい問題ではないこと、社会を構成する全ての人たちが巻き込まれる問題であると感じます。技術的ソリューションを生み出すだけで、知らないうちに解決しているようにはとても出来そうにありません。本当はその方が楽なのですけど、80億の人々の暮らしを変えることなく、知らないうちに問題解決とはならないでしょう。だから、脱炭素社会の実現が人類共通の願いとなることが必要なのです。そのための呼びかけ、訴えを続けることが何より大切です。人生100年だったとしても、たったの30億秒であることを考えると、80億人への呼びかけなど出来るはずもありません。だから、ちっぽけでも良いんです。地域の空気が変われば、それは伝染して社会を変える大きな波となるでしょう。そして、それはもちろん私たちだけがしていることではなくて、同時多発的に世界のいたるところで既に起こっています。仲間は沢山います。それが希望でもあり、心の支えになっています。「望めば必ず夢は叶う」と信じます。

これからも、力のある限り、声のある限り、脱炭素社会の実現に向けた草の根の活動を続けていきたいと思います。

2021年7月26日月曜日

ガソリンをつくるプランクトン!

 生命の多様性は、この難局を乗り越えるための希望なのかも知れません。海洋研究開発機構(JAMSTEC)の調査船が8年前の北極海航海で採取したプランクトンが、ガソリンやディーゼル燃料と同じ成分を体内で生成する能力を持つことが明らかになったそうです。

ガソリンと同じ成分作る植物プランクトン発見 | 環境 | NHKニュース

生成されている量は微量とのことですが、その能力を拡大する改良(遺伝子操作?)をすることで、藻類によって直接自動車等に使える燃料を製造することが可能になるかも知れません。

火星への移住を真剣に語る様な宇宙探査には賛同出来ませんが、まあそういう宇宙探査も含めて、フロンティアを調べる取組みがとても大切だということをあらためて実感させるニュースですね。「宝探し」なんていう下世話なことではないんです。何も見つからなくても、未知の世界を探索し続けようとするのは、人間の飽くなき探求心の成せる業です。深海だとか、極地の海だとか、あるいは地中奥深くとか、人が踏み入れたことの無い世界を調べることで、思いもよらなかった発見があるかも知れません。

神様は人間に、自分たちの大切な家を破壊してしまう程にその活動を拡大する知恵を授けてしまいましたが、同時にそれを解決するためのヒントもこの世界に準備してくれている、そう信じたいですね。

2021年7月21日水曜日

「炭素クレジット」への懸念

 経済的な仕組みの中でGHG排出量の低減を進める手段として、GHG排出削減量をお金に換算して売買する「炭素クレジット」が検討されています。

「二国間クレジット制度」は日本にも途上国にも地球にもうれしい温暖化対策|スペシャルコンテンツ|資源エネルギー庁 (meti.go.jp)

上記の環境省のちょっと古い説明では、日本と途上国の間での二国間取引を例としています。例えば日本が資金と技術が伴わない途上国の開発のために、低炭素、脱炭素なインフラ等を導入するための資金、技術供与を行い、その結果削減されたGHG排出量を日本の削減にカウントする、というもので、Win-Winの関係である、と説明しています。これは、安倍政権の時から日本が狙っていた戦略で、日本の技術の売り先を拡大しつつ、日本はGHGを削減したことにしてもらう、という一石二鳥です(地球全体でもGHG減るんだから一石三鳥だろ、という言い分ですけど)。これを国際社会から認めてもらおうとしていたわけですけど、NOを叩きつけられ、低炭素ではなくて脱炭素が目標となったわけです(炭素クレジットでは脱炭素にはなりませんよね、取引する炭素が無いと機能しない)。

で、上記はGHGをお金にカウントするところまでは行っていないですけど、さらに小口なものも含め、あらゆる手段でのGHG削減量をお金でカウントし、それを取引することが拡大していく、というレポートがありました。

温暖化対策の炭素クレジット 需要急増で注目 国内外企業が活用 | 環境 | NHKニュース

そのうち動画も出るかも知れませんけど、色々な事例がこのレポート中でも取り上げられています。GHG削減を売ることが出来れば、これをビジネスとして積極的に取組める。また、何らかの理由によって、自らGHG削減を果たすことが困難な事業体は、炭素クレジットを購入することで、GHG排出量から購入分をオフセット出来ます。良いことずくめ?

しかし、この炭素クレジット取引で、本当にGHGが低減されるかは大いに疑問です。常に適正な取引ばかりであれば良いのですけど、商業取引の闇の部分として、如何に利益を拡大するかが常に優先され、粗悪品でも売れさえすれば良い、となってしまうからです。例えば上記NHKレポートには、アメリカの農家が収穫しない作物を栽培して、それを炭素吸収量として売る、という話が出てきます。そもそも、農機具を使い、水を撒き、化学肥料を撒き、農薬を使う現代農業は、GHGを大量排出する営みであり、光合成によって植物が成長することによる吸収分など全く取るに足りません。さらに、収穫しなければ、一旦固定化された炭素は再び環境中に戻ることになり、一番良くても「ニュートラル」にしかなりません。せめてそれをバイオ燃料にでもすれば、ニュートラルなエネルギーになって他のGHG排出を伴うエネルギーの使用を削減出来ますが、放置すれば肥料になったとしてもいずれCO2になります。すなわち、例え農機具や化学肥料を使わなかったとしても、最良でニュートラルであり、それを削減量として売るのは間違っているし、買ったとしてもGHGを「削減」したことにはならないです。森林の吸収にしても同じです。ニュートラルでは意味がなくて、「マイナスカーボン」になっていれば売り物になり、買った側の排出量から引き算しても良いことになります。でも、バイオマスでマイナスにはなりませんよね。実際には投入エネルギーゼロとはなりませんから、農業では常にGHGはプラスです。

大気中からCO2を回収する事業やCCSの様な事業は、本質的に「マイナスカーボン」を生産している(そのハズ)わけで、これならば売っても良い炭素クレジットと認められるわけですけど、今後色々とそういう類いの事業者が出てきた時に、それがどこまで本物か、という疑問が残ります。GHGの削減効果を精密に正しく評価することは極めて困難です。例えばCCSにはCO2を圧縮して地中に注入するのに大量のエネルギーが必要で、下手すると埋められるCO2の半分の量のCO2を発生させてしまうと聞きました。だとすると、埋めたCO2の全量相当分を炭素クレジットとして販売したら、CCSを行った業者は大量にCO2を発生してしまったことになります(半分量を売るならニュートラル)。あくまで、本当に削減している量だけが販売できる炭素クレジットです。炭素クレジットを稼ぎ出そうとする試みにおいて、真の削減量をきちんと評価する第三者にも透明なプロセスが無くてはなりません。

果たして国際的に統一された基準を作り、それを元にしたフェアトレードを実現できるでしょうか?世界中で取引される色々な商品の例を見れば明らかですが、炭素クレジットを沢山販売しようとすれば、それこそ値引き合戦が始まっても不思議ではありません。激安だけど粗悪品(実際のGHG削減効果が少ない、とか、最悪削減していない、増加している、などなど)みたいなものが出回ることを禁止出来るでしょうか?もしもそんなことが横行すれば、表向きは「うちはGHGを○○%削減しました!」の様な事を言いながら、実態としては全く減っていないという状況に陥りかねません。それは、ゴミ問題で、ゴミを貧困国に輸出して目の前から消し去り「処分した」と主張しているのと同じ様に聞こえます。その輸出されたプラゴミは、貧困国で適正に処分されているのではなく、放火されて有毒ガスになっているのですよ!

残念ながら、人のこれまでの行動パターン、そこに見える本性を考えると、炭素クレジット取引は詐欺の温床になり、悪用された挙句気候変動問題をより深刻化させかねないと大変心配になります。例えば、某国のコロナワクチンが全く効かないことが問題になっています。ワクチン外交でプレゼントしている(恩を着せられるのでこれもタダではないですけど)場合もありますが、買っている国もあるのです(きっと有名なアレよりもずっとお安いのでしょうね)。粗悪品を売りつける。でも安ければ買う人はいる。アマ〇ンで売ってる危険なB級リチウムイオン電池みたい…。GHG削減が少しでも本物ならばまだいいですけど、全くの詐欺が登場する可能性さえ考えておいた方が良いように思います。

2021年7月19日月曜日

メルケル首相洪水被害を視察

 ドイツ西部を中心として、大規模な洪水被害が発生しました。メルケル首相が現地を視察したとのことです。

独メルケル首相が洪水被災地を訪問 気候変動対策の必要性訴え | NHKニュース

稀に見る大雨と気候変動の関係を指摘し、気候変動対策を急ぐ必要を表明したとのことです。ドイツ一国が頑張っても気候変動は収まらないわけで、国際社会での訴えが強まるのも当然です。地球全体でGHGを減らさないことには、こういう災害はどこで起こっても不思議ではありません。一国、一地域の利害を越えた協調が必要ですよね。

さて、先日の熱海の土砂災害も当然大雨によるものであり、その現場を菅首相も視察しています。

菅首相 熱海 土石流の被災地視察 “大規模災害への対策強化” | 大雨情報(7月) | NHKニュース

記者に対して、災害対策の強化や、線状降水帯発生の予測に関する研究を進めることは表明したものの、こうした異常気象の多発のそもそもの原因である気候変動や、その根源にあるGHG大量排出の問題には言及しないんですね。そういうところが日本らしい。いまだに「いや、確定した事実というわけではないですから、直接的に同じ問題ということではありません」とでも言うのでしょうか?

対処法を検討するだけではダメだと思います。気候変動対策にはとても時間がかかります。時間をかけて深刻化してきた問題なのですから、短時間で簡単に解決できないのも当然でしょう。GHG排出と気候変動と災害多発の因果関係を認めて、脱炭素を正面に捉えて今後の全ての政策を再検討して欲しいものです。

2021年7月18日日曜日

メガソーラーによる土砂災害リスク

 先日の熱海での土砂崩れによる災害ではいまだに行方不明者の捜索が続けられています。今年もまた、九州や山陰、東海などで集中豪雨が発生し、多くの被害が出ました。熱海の災害では、土砂崩れが起こった箇所のすぐ近く、山の尾根に沿う様にしてメガソーラー発電所があり、保水力の低下が土砂崩れ発生の要因になったのではないかと指摘されています。静岡県の調査では直接の因果関係は認められない、ということになっている様ではあります。とは言え、日当たりの良い山の斜面にメガソーラーを建設するとなると、当然日射を遮る木を広範囲に渡って切る必要があり、土砂を支える木々が失われることで土砂が流出しやすくなるであろうことは想像できます。

ここに来て、改めてメガソーラーの土砂災害リスクの評価が進められているようです。NHKからまとまったレポートが出されました。

太陽光発電施設の立地を分析 1100か所余に土砂災害リスク | 環境 | NHKニュース

驚くのは、9800あまりの調査個所の10%以上に災害リスクがあるという実態です。そして、この10年で20倍近く増大したということで、急速に開発が進む中でリスク評価や対応が後回しにされてきたことが明らかです。

2030年時点でGHG46%削減のためには、今後これまで以上に太陽光発電の拡大を急加速させなくてはならない状況です。少々変換効率が上がったところで(実際にはそれも難しい)かなりの土地をメガソーラー向けに開発する必要があります。平地の少ない日本ではとても重要な問題で、農地に太陽電池を設置するソーラーシェアリングや建物の壁面や窓までを太陽電池にするBIPVの普及を進めなくてはならないでしょう。人の管理の行き届いた場所に太陽光発電を設置するこれらの方法の方が、山を切り開いてメガソーラーを建設するよりは災害を未然に防げる様に思います。

2021年7月15日木曜日

EUに学ぶ?政治のリーダーシップとは?

 気候変動対策を理由に国際社会での発言権を高め、ルールメーカーとして自らが優位となる国際的秩序の形成(新たなる帝国主義)に躍起になるEUは、2035年までのEU域内でのガソリン、ディーゼル車の販売禁止(HVも含む、すなわちEVかFCVに限定するということ)と金属、セメントなどの素材をはじめに国境炭素税を導入することの議論を加速しています。

EU、気候対策を大幅加速-自動車や貿易など全産業で抜本的改革 - Bloomberg

トヨタやホンダは販売する自動車のおよそ80%を2030年までに電動化することを表明していますが、それは「電気を使って走る」という意味であって「電気だけで走る」ではありません。すなわち、HV(ハイブリッド車)やPHV(プラグインハイブリッド車)を含むので、バッテリーに貯めた電気で走るBEVや燃料電池で発電した電気で走るFCVは恐らく20%にも満たない状況しかまだ想定していないでしょう。それが適正であり、無暗にコストが高く、希少資源を使いまくるBEVやFCVを増やすべきではありません。LCA的観点では現状最も低炭素なHVを主力にしようとする日本の戦略は正しいと思います。EUが出来るというなら、やってごらんなさい、日本は自動車を供給しませんよ、なんて喧嘩腰になるのも感心出来ませんが、自動車メーカーとしては今後の行方が大変気になることでしょう。

しかし、これは根底にあるEUの(もっと言えば、ドイツ、フランスの)策略が表面化した一部に過ぎないでしょう。繰り返し指摘している、「善人の顔をして悪事を働きまくる欧州人」らしいやり方です。それをもっと冷静に分析し、問題を的確に指摘している以下のコラムには全く共感します。

ルールメイカーを気取る欧州の「国境炭素税」に勝算はあるか? 気候変動対策に前のめりのEUと米中や資源国の綱引きが始まる(1/4) | JBpress (ジェイビープレス) (ismedia.jp)

気候変動問題を盾に取られると、反対しにくいので、まさにそこに付け込むのがEUの狙いですけど、根底にある本当の狙いを読み取れないほどみんなバカではありません。表向きは多国間主義、自由経済と多様性の尊重を標榜しておきながら、実際には保護主義的な仕組み(独り勝ち状態)を導入しようとするEUの魂胆は、既に多くの国から反発を買っています。実際のところ、EUはその域内でも経済格差や社会構造の違いが大きく、とても一枚岩にはなれないだろうとも思います。この新帝国主義も、EUのリーダー格の国家には同意出来ても、そうでない国家からは賛同が得られない可能性が高く、足元から崩れていくことも予想出来ます。日本は米国とだけではなくて、中国やロシア、ASEANとも協調して、本当に公正な国際的ルールとその下での脱炭素の実現に向けた働きかけをすべきと思います。

この暴走気味とさえ言えるEUの動きは、脱炭素に向けた国際協調をまとめ上げるどころか、国家間の対立を顕在化させ、世界を分断に導き、大きな混乱を生んで脱炭素を遠のかせるのではないかと心配になります。いい加減、自分たちだけが正義であるかの様な考え方を捨てて、本当の意味で多様性を認め、異なる事情を持った人たちを受け入れて同じ目線で対話することを学ばないとなりません。それはEUに限った話ではありません。アメリカも、中国も、そしてかつて帝国主義に邁進した日本も、肝に銘じておかなくてはならないことです。

とは言え、実態はそんなレベルには程遠いですね。特に日本では場当たり的な対応しかしない、次の選挙のことしか頭にない政治家のリーダーシップの欠如が甚だしいです。それと対比すると、野心むき出しのEUの方が政治が機能していると思えます。その意味では、決してそれに怯んではなりません。日本もしっかりと国際的な場で主張すべきことは主張しなくてはなりません。でも、EU、アメリカ、中国、ロシア、それぞれの野心に対して、日本がその野心をむき出しにして戦ったのでは、上記のとおりで世界の分断が進みます。もっと未来志向で一つの地球、一つの世界におけるリーダーシップが大切ですよね。とっても難しい。

サハラ砂漠をソーラーパネルで覆ったら?

 面白い記事を見つけました。

サハラ砂漠全体をソーラーパネルで覆い尽くすと何が起こるのか? - GIGAZINE

地球上で一番日射の強い場所は、砂漠です。そして最も大きい砂漠は北部アフリカに広がるサハラ砂漠で、その大きさは中国全土と同じくらいだそうです。最も日射が強い部分では、日照時間が4000時間/年を超えるそうで、一年(8760時間)のほぼ半分お日様に照らされているということです。つまり、毎日晴れだということですね。日射は強いですけど、極度に乾燥していますから、雲が発生することも無いわけです。そこに太陽電池を置いたら、一番沢山発電しますし、時々発電量が低下する雨の日や曇りの日があることも心配しなくて良いので、計画発電にも向いていそうな感じがします。

実際、上記レポートからリンクされているビデオでは、サハラ砂漠に太陽電池を敷き詰めた場合にどれ程の発電量が期待できるのかが説明されています。サハラ砂漠全体を太陽電池で覆ったら、およそ80億の人類が使うエネルギー、それは電力だけでなくて、全てのエネルギーの7倍以上の電力になるそうです。逆に言えば、サハラ砂漠の1/7を太陽電池で覆ったら、全人類が他のエネルギーを全く使わなくても生活できるということですね。サハラ砂漠は広大ですけど、それでも地球全体から見たらごく一部です。そこに降り注ぐ日射を20%程度の効率で電力に変換するだけでも、他のエネルギーは使わずに済むわけですから、やはり太陽のエネルギーというのは莫大です。

しかし、当然ながらメデタシ、メデタシ、じゃあどんどん砂漠に太陽電池を置きましょう、とはいかないわけです。沢山太陽電池を作るのが大変というのもあるでしょうけど、何より道路さえなく、砂だらけの荒涼とした大地にどうやってソーラーファームを建設するのか、という問題があります。そして、電力をどうやって人の居る地域まで(物凄い長距離を)輸送するのか、という問題もあります。ただ、これらについては、砂漠の周辺部など、建設しやすい場所から徐々にソーラーファームを拡大していくことで、建設は可能でしょう。長距離の送電も不可能ではありません。さらには、太陽光発電の電力による水電解、その水素を使ったアンモニア、メタン、e-Fuel合成とパイプラインやタンカーによる輸送で、世界中にエネルギーを供給することも不可能ではないと思います。さらには、太陽光による熱を利用して、珪砂を溶かし、太陽光発電の電力で電解還元して溶融シリコンを作って、新しい太陽電池を作る、ソーラーブリーダーも作れば、現地で太陽光の力を使って太陽電池を増やし続けることも可能?そうできたら、素晴らしいですよね。

しかし、ここでまだ心配があります。上記ビデオ中でも最後の方で出てきますが、広大な砂漠を太陽電池で覆うことによる気候変動です。太陽電池の変換効率は20%程度ですから、残りの80%は熱になるということです。でも、太陽電池が無ければ日射の大半は恐らく反射され、一部が大地に吸収されて、やっぱり熱になって輻射されます。むき出しの砂漠と、太陽電池に覆われた表面のどちらがより温められるのか、そこが良く分かりません。ビデオ中の説明では、後者の方がより熱くなり、上昇気流が生じて砂漠に雨が降り、砂漠が緑化されるだろう、ということです。本当に?だとしたら、CO2の吸収能力も向上、さらには食糧生産さえ可能になり、一石三鳥でしょうか?ただ、それってちょっと楽観的過ぎる様にも思えます。

超大規模太陽光発電を、地球上の局所に配置した場合の地球規模の気候に対する影響の予測、これ面白いですね。JAMSTECの先生方、是非ご検討頂けませんか?


2021年7月12日月曜日

太陽光発電が最も安価な発電に(やっと日本でも・・・)

 日本における2030年時点での発電コスト予測が総合資源エネルギー調査会に提出され、日本でも初めて太陽光発電が最も安価となり、原発を3割以上下回るという予測が示されました。今後、エネルギー基本政策の見直しにおいて、この資料が根拠とされると思います。

2030年の電源別発電コスト試算、太陽光発電(事業用)が原発発電を3割近く下回る。経産省が試算で初めて認める。今夏のエネルギー基本計画に反映の方向(RIEF) | 一般社団法人環境金融研究機構 (rief-jp.org)

同ページからもリンクがありますが、大元の資料(膨大!)は以下のリンクで入手出来ます。

07_05.pdf (meti.go.jp)

いやはや、こういう資料を作る方の根気良さに脱帽です。私なら絶対途中で嫌になってしまいます。どうやってモティベーションを保つんでしょうね?「これが日本の未来を決する重要な判断材料なのだから!」という使命感でしょうか。でも、それにしては最初から結論ありきの様なところが散見される様に思えてなりません。

そもそも、グローバルにはとっくの昔に太陽光発電が最も安価な発電方式になっていました。海外では既に2円/kWhを切る例も多数報じられています。日照条件が違うから、とかではなくて、再エネ拡大で出遅れた日本では何かとコストがかかり過ぎているというだけだと思います。日本だけの事情などというのは早々に関係なくなりますから、基準はグローバルなものであるべきでしょう。LNGを安価に見積るのも、グローバルスタンダードに反している様に思います。化石燃料については、炭素税をどうするかだけで形勢は大きく変わるでしょう。CCSも全然確立されたとは言えない。そして、原発。安全対策だけではなくて、放射性廃棄物の最終処分をどうするのか、トリチウム汚染水をどうするのか、などについて解の無い状態で、どうコスト見積もりが出来るというのでしょうか?福島の後片付けに、一体あとどれだけの時間と費用がかかるのか、それさえ明らかではないですよね。「絶対安全」などという線引きはそもそも不可能なのかも知れませんが、核ミサイルの直撃を受けても大丈夫なぐらいに安全対策をした場合、どれぐらいのコストになるのでしょう?それを国民が原発再稼働の条件としたら、どうなりますか?

だから、以前もそういうことを書きましたけど、どうにも、導いて欲しい結論の方向性が既に決まっていて、それに合わせてこういう試算を準備した様に思えてならないんです。結局再エネは安くなったし、大幅に拡大していきましょう、でも原発も、石炭LNG火力もやめるわけにはいかない、だから「ベストミックスですよ」という結論が議論の前から準備されている感じがします。

失敗するわけにはいかないから、出来るだけ精度の高い予測をするんです、とばかりに、多くの優秀な研究者を動員して、一生懸命この超長いペーパーを準備したんでしょうね。ご苦労様です。でも、その優秀な人材にこんなこといつまでも計算させてももったいないんじゃないかなー。原発には未来ナシ。CCSも急場しのぎで根本的解決にはならず、で、再エネ発電+蓄電、そしてグリーン燃料サイクルへと一直線に向かった方が良い様に思う。変に道草を食うと、またしてもEUに先に行かれてしまいますよ。優秀な研究者を集めて作った太陽光発電のロードマップ、PV2030が見事に外れたことは、以前書いたとおりです。どんなに優秀でも、グローバルな変動を予測することなんて不可能です。需要のあるところには必ずソリューションが提供され、求める人が多ければコストは下がり、競争が激化する、は常に繰り返されることです。その変化の力は、技術革新による変化を大きく凌駕しているように思います。

最後にある電力貯蔵のコストも気になりました。レドックスフローがリチウムイオンの倍ぐらいコスト高に見積もられています。しかしそれもリチウムイオン電池が完成技術であるのに対して、レドックスフローがまだ途上にあるからでしょう。それと、電池の寿命が試算に反映されているのか疑問です(リチウムイオンはせいぜい5年、レドックスフローは20年以上)。そもそも規模がまだ数十MWh程度ですから、実際に必要とされる蓄電設備(将来的には数十GWhレベルではないでしょうか)とは数桁違います。NaSも高いことになっています。必要な規模を展望すると、リチウムイオン電池の様なマテリアルコストの高い技術には将来性が無いと思います。

2021年7月9日金曜日

ペロブスカイト太陽電池実用化?

 このブログでペロブスカイト太陽電池のことを話題にするのは初めてではないでしょうか?「へえー」と思う記事があったので、紹介します。有料なので、一部しか見れませんけど。

MIT Tech Review: ペロブスカイト太陽光電池、実用化へ数社が名乗り (technologyreview.jp)

2010年頃に登場して、一気に研究ブームが沸き起こったペロブスカイト太陽電池ですが、ここにきて実用化の見通しが得られた、というのです。読める部分で取り上げられているのは、ポーランドにあるSaule Technologiesというベンチャー会社です。

Saule Technologies – Inkjet-Printed Perovskite Solar Cells

インクジェットで製膜する特徴があるみたいで、フィルム型で変換効率は10%ぐらいとのこと。一体何に使うんでしょうね?ウェアラブルとか、エナジーハーベストとか、人の近くで使うものであれば、有毒ですぐ分解する鉛化合物の太陽電池はちょっと使いたくないです。ピラピラのフィルム状太陽電池を屋外で連続使用することは考えにくいですから、建材と一体化して窓とか壁面に使う、BIPVですかね。でも効率10%では低すぎる。

今や脱炭素は譲れない目標であり、日本の様に平地面積が少なく、建設にかかる人件費も高い国では変換効率が高い程(建設費節約できる)優位ですから、安ければ変換効率は低くても良い、とはなりません。かつて有機太陽電池の研究をしてきた私がそんなことを言うなんて恥ずかしい。「変換効率が低くても、カラフル、フレキシブルだぜ!」とアピールしていた張本人です(大爆笑)。しかし、今や事態は完全に変わりました。

まあ、変換効率よりも、ペロブスカイト太陽電池の大問題は、その耐久性の無さと材料の毒性です。悪名高いカドミウムを使ったCdTe太陽電池が広く実用化されたことを思えば、鉛の毒性など問題ではない、とか、鉛蓄電池をみんな使っているじゃないか、ということを言う人がいますが、見当違いです。CdTeは滅茶苦茶安定な化合物で、水に溶けたりしません。ところが2価の鉛の化合物(CH3NH3PbI3の様な組成です)であるペロブスカイトは、ジャンジャン水と反応します。鉛蓄電池に使われている、Pb, PbSO4, PbO2は全部水に不溶です(電解液は希硫酸水溶液です)。だから、自動車事故で鉛汚染が広がった、などというハナシは聞かないわけです。そもそもね、無機材料化学をやっている者の常識として、生成エネルギーの小さい化合物は作りやすくて壊れやすいのですよ。どうしてペロブスカイト太陽電池があんなに高い効率になるかと言えば、その結晶クオリティーの高さです。反応しやすいので、溶液からの結晶化でほとんど欠陥の無い結晶が得られますから、キャリア寿命が長く、モビリティーが高いのです。だから、溶液プロセスでも良い太陽電池が出来る。ただし、それは瞬間芸。作りやすさは壊れやすさの裏返しです。水じゃなくて、熱でも分解するのが致命的だなあ・・・。

まあ、そういうことをつらつら考え、実際に一度はちょっとだけペロブスカイト太陽電池を研究したんですけど、「これは未来無いわ」と思って手を引いた過去があります(私のこと)。そうこうしているうちに、結晶シリコン太陽電池の価格が劇的に低下して、そもそも代替太陽電池を研究する理由が無くなっちゃいました。皆さん、流行りだから研究費は取れるし、論文はハイインパクト誌に出るから、一生懸命やっている人もいますけどね。どこまで本物になると信じているのかは疑わしい。流行もそろそろ終わり、と思っていたら、こんな記事があったので、「へえー」と思ったわけです。

この記事に登場する、NRELのJoseph Berryさん、私の共同研究者であるバーモント大学のMatthew Whiteさんの友達なので、学会で一緒になり、ピザ一緒に食べてた記憶があります(3年くらい前のこと)。良い人ですし、真面目な研究者ですよ。

Joseph J. Berry | NREL

「大丈夫って自分も信じたいし、自分にそう言って欲しいっていう人も多いんだけど、正直確信は出来ないんです」とは正直な答えだと思います。アカデミック研究の対象として、この鉛ハライドペロブスカイトが大変面白い材料であることは疑い無いですよ。簡単に作れるし、よく光るし。でも、実用材料としてはどうかな。

もしも20%超の単結晶シリコン太陽電池上に塗布して、30%超のタンデム太陽電池をちょっとだけのコスト増で作れるならば、大変有用だとは思います。上記の通りで、土地を節約出来ますし、ガラスに封入していれば水分劣化は心配ないですからね。しかし、このポーランドの会社はきっと5年後には無くなっていることでしょうね。フレキシブル太陽電池のマーケットってさほど無いだろうと思いますし、そこにこの材料は不向きで、まだ有機薄膜や色素増感の方がメリットあります。

ペロブスカイト太陽電池を一生懸命やっている人には悪口になってすいませんが、この通りだと思います。早く他のこと、特に水素やアンモニア、CO2還元と蓄電やった方が良いですよ!一緒にやりましょう!

山梨産グリーン水素

 昨日のUAE産グレーアンモニアに対して、これは国産グリーン水素のことです。

山梨県、グリーン水素をENEOS水素ステーションに供給: 日本経済新聞 (nikkei.com)

山梨県は晴天率が高く、全国有数の日照時間の長さで、太陽光発電の導入が盛んです。耕作放棄地が多いから、という裏の理由や、景観を損ねたり土砂崩れの原因になるから、これ以上メガソーラーの乱開発を進めないで!という困った事情も実はあります(この話は別の機会に)。とは言え、燃料電池で有名な山梨大学(ソーラーでも有名ですけど)もあって、再エネ先進県と言えるでしょうね。

それで、その太陽光発電の電力で作るグリーン水素をENEOSの水素ステーション用に供給する、ということです。お試し出荷だから、ではあるのでしょうけど、供給量は600立米(常温常圧)。東京オリパラの燃料電池車500台に供給、だそうですけど、トヨタミライの水素タンクは141 L(常温常圧)ですから、それぞれを8.5回満タンにする分、ってことですね。それだけの水素を作るのに必要な電気量は1.44 MAhになります。うーん、大変。

急に増やせないのは当然で、太陽光発電の電力の価格はともかく、水電解には貴金属触媒が必要ですから、グリーン水素はとても高くつきます。高いってことは、結局まだ環境にも良くないということになってしまいますけど、それでもやらなくてはならないのはこちらです。褐炭由来のグレー水素が大量に出回って、それが価格の基準を作ってしまったりすると、グリーン水素が市場に入り込みにくくなってしまいます。太陽光で作った水素でクルマが走っているというのは、結局太陽の力でクルマが走っているということですからね。素晴らしい!頑張って欲しいと思います。

2021年7月8日木曜日

UAE産アンモニアで脱炭素?

 こういう報道はとっても気になります。アラブ首長国連合(UAE)からアンモニアの供給を受けて、燃やしてもCO2を発生しないアンモニア火力発電に、JERAが本格的に取組むということが「脱炭素に向けた」アクションとして報道されているのです。

“アンモニアで火力発電” 脱炭素へ日本事業者がUAE企業と連携 | 環境 | NHKニュース

これを聞いて、本当にCO2を出さないアンモニア火力発電の時代が始まる、と誤解する人があっても不思議じゃありません。INPEXがUAEの国営石油会社と協力して天然ガスを原料に現地でアンモニアを製造します」とキッパリと書いてあります。そのうえで「脱炭素」であるとも。それのどこが脱炭素なのでしょう?
天然ガスを原料とするアンモニア製造とは、長年続けられているハーバー・ボッシュ法によるアンモニア製造に他ならず、その過程で盛大にCO2が発生します。すなわち、グレーアンモニアなわけです。日本に輸入されたアンモニアで発電する時にはCO2は発生しないでしょうけど、UAEでアンモニアを製造している時にCO2を出しているわけですから、ちっとも脱炭素じゃないですよね。CO2分子にはMade in Japanか、Made in UAEかは書いてありませんし、温室効果という点では全く相違ありません。レポート中の表現だと、あたかも日本はCO2排出量を削減した様に見えるでしょうけど、明らかにインチキですよね。
もちろん、いずれは太陽光発電による水電解で製造した水素を使って、グリーンアンモニアにすれば本当に脱炭素になるわけで、ひとまずアンモニア火力発電の技術確立を急ぐためにも、グレーアンモニアでも良いから事業を始めて、順次グリーン化するから今全てが完璧である必要はない。そういう主張は、もちろん分からないではないですし、一定の合理性がある様にも思えます。しかし、世の常として、一旦動き始めると、当然このUAEでのアンモニア製造は採算性のある事業になるでしょうし、安定的取引が始まってグローバルな資金の流れの一部に組み入れられます。そうすると、その存在がグリーンアンモニアへの変化を妨げることになるでしょう。だから、明らかに健全ではないやり方については、最初からアンタッチャブルなものとして、手を出さない方が良いのではないかと思うのです。

2021年7月7日水曜日

新潟大八木先生水酸化触媒!

 新潟放送のSDGs特集で、水素エネルギーが取り上げられ、その中で新潟大学工学部の八木政行先生の水電解触媒の研究が紹介されていました。

水素エネルギーと脱炭素社会(後編)効率化へ新発明(BSN新潟放送) - Yahoo!ニュース

脱炭素社会におけるエネルギーキャリアとして、最も有望視されているのが水素です。水素は地球上に大量に存在しますが、その大半は水素の酸化物(燃焼後生成物)であるところの「水」としてであり、どこかを掘ると水素ガスが出てくるという鉱脈はありません。すなわち燃料となる水素は、人の手で作るしかないわけで、水を電気分解して酸素と水素に分けることによります。この反応は外部からエネルギーを注入することによってしか起こりません。CO2を還元して有機燃料を得る場合も同じですね。そこに石炭や天然ガスなどの化石燃料のエネルギーを使ったらCO2は増えるばかりになりますから、エネルギー源は太陽光などの再生可能なものでなくてはなりません。

太陽光エネルギーでCO2から有機燃料を作ることは人工光合成と呼ばれますが、太陽光で水電解して水素を作ることも広義には人工光合成と言っていいでしょう。水素は必ずしも水素の状態で貯蔵・輸送・利用する必要はなくて、より貯蔵しやすいアンモニアやe-Fuelに転化しても良いです。大切なのは、燃えカスであるCO2やH2Oから再び燃焼出来る高エネルギー物質を得る時に、そのエネルギーが再エネ由来であるということで、それを果たせばそれらは全て「グリーン燃料」と言うことが出来ます。水素や炭素はエネルギーの運び手(エネルギーキャリア)なわけです。カーボンニュートラルを達成するためには、出してしまったのと同じだけのCO2を化学燃料に戻すのが一番分かりやすいですけど、水素をキャリアにしてそもそもCO2を出さない様にしても同じです。さらに言えば、エネルギーキャリアは炭素や水素に限定されるわけでもありません。例えばアルミはどうでしょうか?アルミは地殻中に大変豊富な元素です。その酸化還元電位は大きくネガティブなので、アルミー空気電池は大変大きい電圧になります。また、1個のアルミ原子から3個の電子が出てきます。ゆえに可逆サイクルで大量のエネルギー貯蔵、取り出しが可能な元素の一つがアルミです。実際には色々な技術課題はあるのですけど、それはさておき、そういう視点で元素の周期律表を眺めると、どんなエネルギー貯蔵技術があるだろうか、と想像をめぐらせることが出来ると思います。

さて、話を八木先生に戻します。八木先生は私と同じ研究室の出身(で私よりも優秀な)先生です。人工光合成にかける熱い思いでずっと関連の研究を続けてこられて、遂に物凄い性能の酸素発生触媒の開発に成功されました。1年ほど前に米沢でもご講演頂きました。途中で太陽電池に浮気した吉田との差ですね!やっぱり専心、献身が大切。上記人工光合成では、CO2の還元や、水を還元して水素を得るところが重要と思われがちですが、一番大切なのは、水を酸化して電子を得る反応です。CO2や水を還元するのに十分な電位に電子を持ち上げるのは、太陽電池などを使えば良いわけですけど、その電子がどこから来るのかが大切で、それは水の酸化でなければ再生可能な系にならないのです。ですから、八木先生はいかに小さいエネルギー損失で水を酸化するか、非貴金属系の触媒開発を進めて、今回の発明に至ったというわけです。電圧1.5ボルトの乾電池1個で、理論電圧が1.23ボルトの水の電気分解を実演されていました。素晴らしいですね!

これで、耐久性を担保して、スケールアップを果たせればグリーン水素の安価な量産に展望が開かれるかも知れません。

2021年7月4日日曜日

熱海、土石流

 皆さん、既に衝撃の映像をご覧になったと思います。

逃げる人や車が映像に・・・熱海市で大規模土石流(2021年7月3日) - YouTube

本当に起こったこととは俄に信じ難く、土石流がその強大な力で一瞬のうちに街を飲み込む様子が生々しく報じられました。土石流の被害は繰り返されていて、過去にも実際こういう恐ろしい事が起こり、多くの人命が失われ、生活が破壊されたということなのでしょう。それが起こる瞬間が記録されることは稀でしたけど、みんなが小型ビデオカメラ(スマホ)を常時携帯する様になって、こういう記録が残される様になりましたね。この映像の力は凄いです。呆然とし、同時に脱炭素への思いを新たにしました。

被害の実態は未だ良く分かっていないようですが、既に亡くなった方があり、さらに数多く安否の分からない方があるようです。亡くなった方のご冥福とご遺族へのお悔みを申し上げますと共に、不明者が一刻も早く救出されることを願います。また、警察、消防、自衛隊等危険な現場で救助にあたる方々、二次災害に遭わぬようにして頑張ってください。ありがとうございます。

不謹慎かも知れませんが、昨年の熊本、一昨年の長野(その他広域)の集中豪雨被害がありましたので、「今年は一体どこに?」などと言っていました。残念なことに、現実にそれが起こり、東海地区を中心とした記録的集中豪雨が発生してしまいました。土石流が起こった熱海でも、平年の7月一か月分以上の雨が2日間で降ったそうです。今まで発生することがなく、治水工事上も想定されていないレベルの豪雨となることで、この様な大規模災害が発生するということですね。

もちろん、自然現象ですから、気候変動問題が取り沙汰される以前から、豪雨、洪水、土砂崩れの被害は繰り返されてきました。その頻度が増し、規模が大きくなっていることに適応するために、防災の強化が進められています。ただ、その根本にある気候変動問題については、災害との関係性が直接的でないこともあって、この頻発する自然災害が実は不運な自然災害であったとは100%は言い切れず、人が自らの活動によって招いた災難であると認識されてはいない様に思います。しかし、ここ数年その因果関係を十分以上に認識させるだけ悲劇が繰り返されているのではないでしょうか。

コロナウイルスでも「経済より命!」が叫ばれています。気候変動と災害も同様ではないでしょうか?災害に遭い、折角創り上げた生活が破壊され、さらに人命が失われ・・・気候変動に対して本気の行動を取ることは、経済的損失を伴うので積極的にはなれない、未だそういう反応が多い様に思います。他の何を置いても進めるべきことではないでしょうか?脱炭素は我慢ではないのです。積極的に我々の社会を良くするためのチャレンジです。

2021年7月2日金曜日

EVシフトを考える⑮

 日産自動車が英国サンダーランド工場でのEV生産能力を大幅に引き上げる(年間10万台)投資をすることを表明しました。

日産、英国に大規模EVバッテリー工場新設へ (msn.com)

日産は、アリア(ARIYA)と言う名前のSUV型EVを既に発表していて、EVのラインナップ拡充を進めています。このアリアは91 kWhのバカげたサイズのバッテリーを積むヘビー級EVで、660-790万円とかなり高価でもあります。

日産:日産アリア[NISSAN ARIYA]特設ページ

日本でも発売が予定されていますけど、こんなクルマに補助金を出すべきではありません。これまで再三書いている通り、こういうヘビー級EVは早々に淘汰されることになると思います。ポルシェタイカンやテスラロードスターの様なキチガイEVが欲しい人は、スーパーカーを買う様な人たちなので、一定の需要はあるでしょう。けど、このアリアは中途半端、一般ユーザーは高い割にメリットの無いこのクルマの問題にすぐ気づくことでしょう。

上記レポートではボリス・ジョンソン首相が今回の投資を「EUを離脱した英国への信頼を裏付けるもの」、として得意げです。何しろこのサンダーランド工場はBREXITのために閉鎖の危機が噂されていた欧州での日産の製造拠点でした。計画では、EVの生産だけでなく、バッテリーの生産も現地で行うということですが、それは例の中国メーカー、エンビジョンAESCです。日本の報道では、あたかも日本メーカーの海外進出の様に伝えられていますけど、エンビジョンAESCは中国資本です。

全体を眺めると分かるのは、自動車産業のグローバル化がいかに進んでいるかということです。まあそれは自動車産業に限らないことでしょうね。日産自動車はその出自が日本であり、名前も日本語であって、日本のメーカーという認識が定着しているわけですけど、生産、販売の全てがグローバルに展開していて、もはや日本出身であるということはほぼ関係ありません。実際、ルノーグループの一員ですよね。ルノーは2030年までに全販売数の80%をEV化することを表明しています。その大きな戦略の一翼を日産ブランドが担うということであって、日産製のEVにちょっと化粧直しして、ルノーのバッジを付けたクルマが売られることでしょう。そして、バッテリー関係の利益は中国がコントロールすることになります。日産のクルマづくりの技術はルノーに流れ、NECのバッテリー技術はエンビジョンに流れます。結局、日産ブランドがこの様にしてEVを増産したところで、それはほぼ日本国外での出来事であって、日本人の仕事にはならないし、利益は日本には来ません。それがグローバル化の実態。

これこそ、豊田章男自工会会長が憂いていた日本のモノづくりが無くなるということでしょう。自動車メーカーについては、その先兵が日産です(国内でも作ってるけどね)。ホンダは鈴鹿工場を全部軽自動車の生産に充てましたが、それは日本にしか市場の無い軽自動車を作ることで、日本での自動車生産を守ろうとする意志の現れです。マツダも広島で頑張って生産を続けています。日本からどんどんモノづくり産業が流出すれば、いずれ自動車の様な工業製品を作れない国に転落することでしょうね。

「日産は脱炭素のためにEVシフトに積極的だね!」とかいう明るいニュースでは全く無い、それが今回の真相だと思いました。

2021年7月1日木曜日

劣化が止まらない!?チャイナバブル?

 脱炭素のハナシと全然関係ないみたいですけど、それがとてつもなく困難だろうな、と思わせるに十分なほど、世界の異常さを憂いてしまうニュースがありました。いや、実は中国出身の奥さんのお陰で、中国で起こっている信じ難い出来事については日本で報道されるよりもずっと早く知っていたりしますが、今朝のNHKニュースで話題にされていたので、この機会に取り上げます。中国の有名な強いお酒、「白酒」(バイジュウ)の中のトップブランドである茅台(マオタイ)に行き場を失った有り余るマネーが流れ込んでいるというニュースです。

中国 あふれるマネーが向かう先 - おはBiz - NHK NEWS おはよう日本 - NHK

1本300万円!売上年間1兆6000億円!会社の時価総額45兆円でトヨタ自動車を上回る!いずれも信じられない数字です。なんでこんなことになるのか?コロナウイルス感染拡大の影響もあり、モノやカネの動きが鈍る中で、行き場を失った投機マネーが株価を押し上げているようです。但しそれはほぼ完全に中国国内での出来事と思います。

そんなに滅茶苦茶美味しいお酒だからなのか?いや、好きな人もいるんでしょうけど、だからって飲んだら無くなるお酒にそれほどの価値がありますか?そういうことじゃなくて、中国では賄賂の代わりに使われることが多いそうです。お金を渡したらかの地でも罰せられますから、茅台酒を差し上げてお金に換えて頂く、と。立派に賄賂ですね。何も生み出さないまま、その酒がグルグル回っているうちに数字だけは上がり続ける。レポートに登場する投資家も、「あと3年したら2倍だよ!」と鼻息荒いですね。それを世間ではバブルというのです。リアルな価値が生み出されていないのに、短時間で価値が急上昇するから、それに皆が飛びつき、さらに価値を押し上げる。その急こう配を数年先に外挿して、今1000万円出せば数年後には倍になる!と夢想するわけです。

茅台酒については、さらに呆れる話があります。このお酒の品質管理をしている(テスター、ソムリエ、なんとでも言え)女性が、中国の学者の最も栄誉ある称号である「院士」に推薦されたのが実は大ニュースになっていました。もちろん、良いニュースとして、ではありません。

「中国の小話」その247―銘酒「茅台(マオタイ)」の話題―-笹川陽平ブログ(日本財団会長) (canpan.info)

呆れちゃうでしょ?一応学者の端くれである私としても、もしこれが日本で起こったら怒ります。この一件については、中国の俳優さんのLin JiさんのYouTubeビデオが面白かったです(日本語上手!)。

マオタイ酒エンジニアがノミネートされた院士とは? - YouTube

まあ、怒ったり笑ったりせずに、淡々とこの馬鹿馬鹿しさをお話されていて、心の中の嘲笑と嘆きが良く分かります。嫁さんにこのネタをブログに書くと言ったら「そんな役に立たないことはやめなさい」と叱られました。が、私は本当の世界を知るという意味で、象徴的な出来事なのかなと思いました。

世界の脱炭素に向けて、自由経済と民主主義の仕組みが苦戦しています。コロナウイルスを見事に抑え込んだことや、量の点では最大の再エネ国でもある中国。宇宙ステーション、火星探索をどんどん実現する中国。脱炭素という難題についても、その専制政治と計画経済の仕組みが強みを発揮するのではないか、と思っていたのですけど。本当にその計画が機能するのであれば、こんな無駄なことにお金が動いたりしないハズでは?少なくとも、中国の特殊性が鮮明になる出来事ですね。この違いを互いに非難しあったりするのではなくて、本当に協業、連携して共通の重大課題である脱炭素が実現されることを心から願っています。

でも、学者がそこまでコケにされたら、やってらんねえ!本当は怒り心頭でも、何も言えない中国の学者の友達が可哀そうです。

佐藤ゆかり議員、e-Fuel推し!?

 自民党の経産部会長佐藤ゆかり議員のインタビュー記事がありました。

自民党 経産部会長佐藤ゆかり氏に直撃 「e-fuel」は経済戦略の決定打になるや?ならざるや??(ベストカーWeb) - Yahoo!ニュース

環境・エネルギーと産業問題に明るい方なので、佐藤さんが環境大臣でも良い様にも思うのですけど、必ずしも豊田章男モリゾー社長のファンだからとかではなくて、未来のエネルギー問題を幅広い視野で見ておられる様に思いました。例の水素エンジンレースカーのことも話題にしていますけど、自動車の電動化で問題解決とかそんな簡単なことではないし、そういう「究極はコレ」みたいな暴走に与さない姿勢が鮮明です。

これは、まあ例のEV推進の嘘でも取り上げられていたところで、EV化するにあたって電力どうするの?電池に必要な希少元素どうするの?など様々な課題があり、日本の産業構造を根本から揺るがしかねないという指摘は全くもってその通り。EVをやっちゃいけないわけではもちろんなくて、EVは重要な選択肢の一つではあるけど、それ一本じゃないですよ、ということでしょう。水素はもちろん、アンモニアもエネルギーキャリアとして注目されますし、自動車、船舶、航空機などにより親和性が高いグリーン燃料はe-Fuelだ、というわけです。

もちろん、グリーン水素やグリーンアンモニアに対して懐疑的な人もいます。さらに言えばCCSに対しても懐疑的、炭素税はとても受け入れられない税率になるとして、現状を「脱炭素バブル」と称し、それは必ず破綻するとおっしゃる池田信夫氏、はっきり言わないけど(ズルい)、総合すると「私は脱炭素なんて絶対無理だと思いますよ」と表明しているとしか思えません。

「脱炭素バブル」が必ず崩壊する理由(JBpress) - Yahoo!ニュース

じゃあどうするっていうの?脱炭素はどうせ無理だから、破滅への道をスローダウンするぐらいしか出来ないと言う?やりたい放題やって、欲しいものは全部手に入れて、もうじき死ぬ人はそういうことを言うかも知れません。でも、知った顔してそんな事をエラそうに言うあなたもこの状況を放置して、変えることの出来なかった無力な大人の一人ではないですか?

どんな時も、どうなっても、諦めたりしてはなりません。そんな無責任な発言を若い人を諭す様に言うものではありません。人を男か女かで分けたくないけど、どうにも私の同類である男は破壊が好きで困ったものだと感じます。「気候変動の大津波が来るから覚悟しろ!」と言うことを勇敢だと思いません。それを勇敢だと言うなら、私は勇敢じゃなくていいです。次の世代にもそう言う。思い切り怖がっても恥ずかしくなんかない。持続可能であること、守ることへの真心と情熱においては、常に女性が勝って見える今日この頃です。

さて、e-Fuelに話を戻しますけど、技術的には大変なことです。「大気中のCO2を回収して」なんてのはずっと先のことで、まずは火力発電から出てくるCO2とグリーン水素からメタンを作る「メタネーション」でしょうね。

脱炭素化 合成メタン作る「メタネーション」技術開発強化へ | 環境 | NHKニュース

これまた、CO2とH2があれば出来るんですけど、水電解でH2を作るところに貴金属触媒が必要になるので、低価格化が難しいところです。だから吉田研では有機触媒で水素を作る研究をやっているんですよ!それから、e-Fuelの様な液体の有機燃料を得るにはCOとH2を原料とするFischer-Tropsch反応があり、それは第二次世界大戦ぐらいからやっているそうですけど、COはCO2還元で、H2は水を還元して作る必要があります。そして、その電力は再エネにしなくてはならないし、触媒は貴金属ダメです。なので、やっぱり吉田研では有機触媒でCO2を還元することもやっているんですよ!CO2を流通した水の中で、COとH2を1:1の量論比ぴったりのファラデー効率で発生させる触媒とか出来れば、連続でF-T反応に接続してe-Fuelを量産出来るでしょう。金属を含まないけど水素結合性の導電性高分子は水電解やCO2還元の触媒になるんですよ。今研究のホットトピックスになっています!

だから、手段が無いわけではないんです。でも大変困難で、コストはかかるしスケールアップも難しい。難しいからやらないというのはダメです。無理だとか言わず、チャレンジするんです。技術の完成を2030年までには果たして、e-Fuelが実用出来る環境を整えないとなりません。佐藤議員には、是非可能性のある技術開発を幅広く(東大とかメジャー大学だけに任せない)支援して欲しいものです。EVはそんな未来までのつなぎですかね?e-Fuelを誰でも手に入れられる様になったら、エンジンの雄叫びが復活する?

125

 「125」この数字が意味するのは何でしょう?はい、私はオートバイが大好きで、特に手に余らず、使い切れるパワーで軽量な125ccクラスのバイクが好きです。高速道路は乗れないけど、バイクで高速道路走っても、ちっとも面白くないし、二人乗りだって出来るし、燃費良くて維持費安いし。今ウチ...