このブログについて

国立大学法人山形大学工学部教授の吉田司のブログです。2050年までのカーボンニュートラル社会実現に向けて、色々な情報や個人的思いを発信します。発言に責任を持つためにも、立場と名前は公開しますが、山形大学の意見を代弁するものではありません。一市民、一日本国民、一地球人として自由な発言をするためにも、所在は完全に学外です。山形大学はこのブログの内容について一切その責任を負いません。

2021年6月29日火曜日

カラフルアップサイクル繊維

 内丸もと子さんという方が設立した「カラーループ」というベンチャー会社が、再生繊維からカラフルなプロダクトを生み出す、アップサイクル事業を始めたレポートを見ました。

リサイクルをカラフルに!|おはBiz キーワード解説|NHK NEWS WEB

このNHKのレポートだけでなく、以下のレポートも御覧ください。

テキスタイルデザイナーが起業 廃棄繊維を色で分別しアップサイクル | 繊研新聞 (senken.co.jp)

この内丸もと子さんのインタビューが印象的です。元々服飾のデザイナーさんだったそうですが、作って、売り、使われて、まだ使えても捨てられてゴミになり、消費され続ける衣類に対して「ひょっとして私はゴミを沢山作っているのか?」と疑問に思ったとのこと。そして、子育てが終わったのを機に京都工繊大の博士課程に入学し、このカラフルアップサイクル技術を研究されたそうです。苦節5年で完成させた(まだ高いのが問題の様ですけど)そうで、なんと素晴らしい。

家具などでスカンジナビアンデザインはそれ自体がブランド化していますけど、再生繊維をプレスして作った厚手のフェルトを座面にした椅子とかなかなかカッコ良くて、上手いなあと思いました(例えばこれ)。とは言え、このレポートの通りで、全部の繊維を一緒にして再生すると、中間的な色であるグレーになっちゃうんですよね。もし何度でもリサイクルを繰り返せば、世の中の繊維製品は全部グレー一色になっちゃいます。やはり色というのは、デザインの基本中の基本なので、まずは色が選べるというだけでも凄いですよね。恐らく模様を入れるところまでは行っていないのかな、とは思いましたけど。ゼロから新品を作るなら、どんな色でも模様でも入れられますけど、リサイクルという前提になると、これは容易ではない。そこに目を付けたということですね。服を長らくデザインされてきた人からすれば当然のことなのかなと想像します。それにしても、先日話題にした柿コーヒーも女性社長でした。エコロジーに対するセンスと行動力は明らかに女性の方が優れていますね。

しかーし、結局のところ、まずはリサイクルの対象になる廃品を色分けしている様子がビデオに出てきますよね。それも人力で。それは大変だし、コストが上がるのも当然です。ゴミを減らすのは良いけど、リサイクルがあまりにも高くついてしまうと、リサイクルしたというバリューがあっても合理化出来ません。ここを何とか省力化、自動化出来ると良いですよね。瞬時に色だけでなくて繊維の種類も映像から判別して、自動仕分けする様な設備を開発すれば、リサイクル品をもっとカラフルに出来るかも知れませんね。

2021年6月27日日曜日

EVシフトを考える⑭

 長らく続いた未来ネット「EV推進の嘘」のシリーズも、遂に第11回、最終回が公開されました。

『EV推進の嘘 #11』EV車とガソリン車 これから買うべきクルマは?(加藤康子・池田直渡・岡崎五朗) - YouTube

私は結局全部見ましたけど、結論としては賛同できない部分が多く、おススメは出来ません。ただ、私の主張に懐疑的な方は、御覧になるのも良いと思います。異なる視点があって当たり前です。

最初のうちは、中立的と思える語り方でしたし、データを元にした議論も「ナルホド!」と思わせる説得力もありました。メディアが報道する表面的な内容や、短時間で分かりやすいけど実はかなり歪んだ政治家の発言などに惑わされてはならない、と認識を新たにしたところです。しかし・・・総合すると、あまりにもこのご三方はナショナリスト的過ぎると思いました。自動車好きというのは良いんですけど、自分たちの都合の良いように他者に攻撃的になっています。さらに、気候変動の問題も、本当には信じていない人たちであるとも思いました。岡崎五郎さん、ファンだったけど、残念です。加藤康子さんは、グレタトゥンベリさんを「インチキ」の様に言ってましたね。

最終回の話、結論が傑作です。これだけ議論を尽くしてきたはずなのに、「国は何も規制をするな」みたいになっている。開いた口が塞がらない。それでいいわけないです。何のための議論?さらに、加藤康子さんの「どのクルマを買ったら良い?」の問いに、「好きなクルマを買ったら良い」なのも、いかにも自動車ジャーナリストらしい無責任回答でした。クルマが庶民の憧れの対象だったり、自分を表現するライフスタイルアイテムだったり、純粋にこれを趣味とする人が沢山いたりしたのは、ずっと以前のことであり、それらは全て終わっているんです。大半の人は、「(趣味として)欲しい」クルマを買っているわけではなくて、経済的条件や使用条件に最適なクルマを選んでいるだけです。それぐらい、ある意味日本における自動車の位置づけは成熟したとも言えるでしょう。そうすると、日常の使用環境(ガソリンスタンドか充電スタンドか、ガソリン代VS電気代はどうか、税制上の違いや補助金の有無は?)などが、車の大きさやタイプなどの他に重要な判断材料になります。すなわち、過剰なほどにでも政府がEVを優遇する様な事があれば、EVが優位になり、そちらに消費者が流れるのは当然ですし、それをどう誘導するのか、したいのか、したいならそれは何故か、正しいのか、をはっきりさせなくてはならない、ということです。岡崎さんの言う「俺は6リッターのV12に乗りたいんだ!」なんてことを思うのは、旧時代からの生き残り、もうすぐ死滅する恐竜世代だけで、その嗜好は未来の世代には全く影響を与えません。本来なら、そういうクルマに乗りたい人には重税ではなくて、e-Fuelを義務付けて、リッターあたり1000円の燃料代を払ってもらうのが一番良いと思いますが、世の中から安いガソリンを無くすわけにはいかず、安いガソリンが趣味の馬鹿野郎に悪用されてしまいます。何故安いガソリンが必要かと言えば、農機具や軽トラ、除雪機などの道具を動かすためです。田舎に来たら分かります。生活の足にも使われているけど、軽トラが本当に生活、仕事を支えている事実が。軽トラをEVにするなんて、しばらくは考えられません。除雪機も、あれだけのパワーを出すにはガソリンしかありません。そして、それらは安い燃料で動かせることが、まだこの先20年以上必要になるでしょう。だからガソリンスタンドは無くなっては困りますし、ガソリン価格も超重税をかけて高くされては困るのです(田舎の人が生活できなくなる)。一方で、都会に生息するその6リッターV12のアストンマーチンだかフェラーリだかは今すぐやめてもらう必要があります。リッター150円の安いガソリンで3キロぐらいしか走らないクルマね。ならば、やっぱり年間500万円ぐらいの重税とかで責任をとってもらうしかないですかね?

自動車ジャーナリストは、趣味としての自動車を信じていますし、クルマを好きだからこそ、やれこれからEVなんでしょ?とかHVとディーゼルのどっちが良いの?とか気にせずに「好きなのに乗ったら良いんだよ!」と言いたくなる気持ちも分かります。私自身はクルマ好きですから、その気持ちはとても分かります。しかし、EVシフトの是非の議論は自動車好きのためにしているんじゃないんです。そして、恐らく95%以上の人は、自動車に物凄くこだわったりしていません。それでも、自動車の保有率は高いのです。それは国民が皆自動車好きだからではなくて、本当に自動車が必要とされているからです。私が、それを確信を持って主張出来るのは、さらに趣味性が圧倒的に高く、実用上は全く不要な二輪車をこよなく愛する馬鹿であり、その愛する二輪車が絶滅寸前の状況になっていることを知っているからです。

日本におけるバイク(原付除く)の販売台数は最盛期の1/3程度に低下しました。さらに傑作なのは、購入する人の平均年齢が、二年ごとに調べられる統計で毎回ほぼ二歳ずつ上がっているということです。2020年の調査では、なんと54.7歳です!

国産車新規購入ユーザーの平均年齢が54.7歳に【自工会 二輪車市場動向調査】│WEBヤングマシン|最新バイク情報 (young-machine.com)

サザエさんのお父さんの波平さんの設定年齢が54歳だそうです。だから「バイク乗りは波平さん」と言われています。かく言う私はそれより一つ年上の55歳。保有するバイクは4台(1200のロードバイク、450のオフロードバイク、125のスポーツバイク、125のカブ)。ね、ドンピシャでしょ?要するに、私の世代でバイク趣味ってのは既に終わったのです。今や「バイクって良いものだよ!」という声には誰も反応してくれませんし、全く周囲は共感してくれません。いまどきバイクに乗る若い子は、かなり変わった子ですよ(偉いぞー!)。

バイクは、その小ささ、軽さゆえに、走行距離あたりの燃料消費は四輪車よりもはるかに少ないです。しかも、基本的にマニュアル、とっても趣味性の高い乗り物で、相応の身体能力が無いと安全に乗ることも出来ません。例えば、うちの1200のバイク、リッター30キロぐらいは普通に走りますよ。カブに至っては50キロ以上。どんなエコカーを持ってきてもこれらには敵わないでしょう。しかも、純粋に趣味で乗っています。だから、そういう趣味としての乗り物が欲しい人は、こういう選択肢だってあるのです。さらには、電動キックスケーターとか、先日紹介の三輪車Noslisuとか、バイクの良さを電動化することで、もっと環境に良いミニマルな移動手段ってのは可能で、二輪車を見直しても良いハズと個人的には思っています。まあそれはさておき・・・。

結局、この二輪車が辿った運命は、これから先にそうした趣味性の高い四輪車が辿るであろう運命を示しています。つまり、それが新たに生産されることは無いでしょうし(バイクの新型車は実質旧モデルの改良程度が多い)、求める人も極めて少ない。そして、それで良いんです。四輪車は特に趣味性など関係ない(自動車も大好きな私としてはとても寂しいですけど)。必要だから買っている人の方が圧倒的に多いわけですから。とするなら、それをどの様に変えていくのか、脱炭素を見据えた誘導をしていくのか、これは政府だけでなく、自動車産業に関わる人たち全てが真剣に取り組まなくてはならない課題です。両者は対立していてはいけません。協力しつつ、脱炭素時代のモビリティーをどうするのか、そこにどの様な先進的取組みをするのか、を考えてすぐに実行してもらいたいです。EUやアメリカがEVどんどんやっているから、EVで追いつき追い越す、ではないのです。日本が出遅れたのに、今さら同じことを考えて焦ることではないでしょう。日本の得意とする軽規格を基準として、例えばバッテリー容量を15 kWh以下に制限する代わりに税金ゼロのマイクロEVカテゴリーを新設すべきと私は思います。

趣味の自動車は・・・?博物館行きです。クローズドコースで、e-Fuel使って遊んだらいいじゃないですか。趣味でクルマに乗りたい人のためには、それらを末永く使える環境は残しておいて欲しいですね。バイクもフル電動化は難しいし、そもそも需要が無い(実用性で乗るものではない)ので、今のバイクはやっぱり博物館行きです。マイクロEVや電気スクーター、電動キックスケーターなどに置き換えられ、生活はそれで大丈夫です。極力小さいバッテリーで、発電所を沢山作る必要もなく電化を進めるのが一番スマートじゃないですか?水素製造は日本では土地が足らなくなりますから、それこそ日射条件の良い国で大量に生産してもらい、それを輸入するスタイルになるでしょう。そしてFCVが長距離レンジ、バス、トラックなどを担うことになります。さらには、船舶や航空機も水素で行けるでしょう。平地の少ない日本の環境を逆手にとった独自の戦略が日本には必要と思います。

まだまだ考えるべきことはあるし、行動を起こし、変化を導くことが政府や技術者の責任です。大学の我々も未来を先導する立場だし、その責任がある。未来ネットのお三方は、そういう意味で思考停止してしまっています。そして怒りの矛先を他国にばかり向けるナショナリストぶりを発揮しているので、ちょっと最後はガッカリでした。

2021年6月25日金曜日

新彊ウイグルの多結晶シリコン輸入禁止、米国

 ウイグル族の人たちの(児童労働を含むと疑われる)強制労働、ジェノサイドに抗議するための経済制裁が拡大しています。先日はユニクロが制裁対象になりましたが(強制労働による綿花を使っている疑い)、そうした農産品に限らず、いわゆるハイテク産業も制裁対象になっているようです。今回はその中でも大変影響の大きい制裁で、太陽電池パネルの生産に必須となる多結晶シリコンとそれを含む製品が禁輸対象になりました。

米国、中国・新疆で生産の太陽光パネル関連製品の一部を輸入禁止 - Bloomberg

まず驚きなのは、世界の太陽電池用多結晶シリコンの半分以上が新疆ウイグルで生産されているということです。今回ジェノサイドが疑われ、禁輸対象になったのはHoshine Silicon Industryという会社の製品ですが、調査の行方次第ではさらに他メーカーへも拡大する可能性があります。これは、機能しているグローバルサプライチェーンを自ら破壊する行為なので、今後関連産業が代替のポリシリコンの供給を模索することになります。そして恐らく極めて安価になった太陽電池の価格が上昇することにつながり得るでしょう。

もちろん、ジェノサイドを見過ごすわけにはいきません(中国はこれを強く否定しています)。先日話題にしたコーヒーやカカオ豆と同じで、貧しい農家をいじめまくった結果の児童労働なわけです。何故ポリシリコンの半分以上が新疆ウイグルで生産される状況に至ったのか?これこそ、ルールなど二の次三の次で金を増やすことだけを追求する資本主義経済の競争が生み出した結果です。無理や矛盾を押し付けられる先が、弱者であるウイグル族の人になり、求められる品質と激安価格のポリシリコンの供給を可能とし、太陽光パネルの価格破壊が一気に進んだわけです。すなわち、持続性とか公正性の観点からは全くそれを無視した成長(膨張)であったことを受け入れなくてはなりません。

果たして、アメリカの言う正義が本当に正義か?という疑問は当然残ります。中国の主張も疑わざるを得ません。フェアトレードをすればコーヒー一杯の価格が上がるように、正当な対価を受け取らず強制労働させられるウイグル族の人を利用しなければ、太陽電池の価格も上がります。一方での脱炭素への動き、再エネの頂点に存在する太陽光発電。今や圧倒的に安価な発電手段となった太陽電池は脱炭素への頼みでもあります。しかし脱炭素は持続可能な社会の実現のためであり、それを持続不可能な手段で達成するということもあり得ないでしょう。日本や欧米のメーカーが新疆ウイグル産と同じ価格でポリシリコンを提供することは絶対にできないでしょうね。今後どうなっていくのか注目されます。

2021年6月23日水曜日

ASEAN脱炭素協力の裏話?

 つい先日話題にした、ASEAN諸国の脱炭素を進めるために日本が1兆円を超える資金提供と技術供与を行う、という話にオマケがありました。

脱炭素 CO2地中貯留などの技術 東南アジア各国と協力し普及へ | 環境 | NHKニュース

ASEAN諸国は化石燃料への依存度が高く(それを日本が誘導している?)、脱炭素を進めるにはCCUSが不可欠、それを協力して進めましょう、というのがASEAN諸国エネルギー担当相オンライン会議における梶山経産大臣からの話の続きでした。

そもそも、私はCCSについて懐疑的です。一方CCUはほとんど確立されておらず(ポリカーボネートぐらいですか?)。高圧の地中に注入された二酸化炭素はすぐに炭酸塩として鉱物化するから大丈夫、ということなんですけど、ケミストリーの感覚からすると、炭酸塩なんて可逆的に溶解して二酸化炭素に簡単に戻りそう。果たして本当に何千年も何万年も埋まったままでいてくれるのでしょうか?CCSにはかなりお金がかかるそうですけど、それはとりもなおさず、高圧で二酸化炭素を注入するには相当なエネルギーを要するということ。二酸化炭素を始末するのに新たに二酸化炭素を作っていてはどうしようもないですよね。そんなこと素人に指摘されるまでもなく、当然収支としてはCCSで始末出来る二酸化炭素よりもずっと少ない二酸化炭素の発生で済むわけでしょうけど、万一でも戻ってきてしまえばCCSをやった分だけ環境には二酸化炭素が無用に増えるわけです。

まあ技術的信頼性については、これを推進する研究者の主張を信じるしかないです。とは言え、上記のASEANとの交渉については、日本政府の脱炭素への貢献アピールがひも付きなんだなと分かります。「日本の近海だと漁業関係者との調整が難しいので」というのがヒドイ話です。経済的に弱い立場のASEAN諸国なら、日本のゴミを受け取るしかないわけですか?それって、プラゴミの輸出と変わらないメンタリティー?日本近海にも相当なCCSポテンシャルがあるという話でしたけど、東南アジア全域で捨てやすいところを探したい、そこに日本の二酸化炭素も投棄したい、というのが本音なわけですね。

先日のYU-SDGs cafeでお話頂いた九州大学の辻先生がおっしゃっていた「石炭火力の推進のためにCCSをやっているとは思われたくない。とにかく時間稼ぎのためにもCCSが必要なんです。」が思い出されます。CCSを石炭火力継続の免罪に使われたら、悪の手先みたいに思われますよね。ただ、やっぱり地球のことなので、100%大丈夫か、と言えばそれは分からないけど、何千年と言う程度では恐らく大丈夫、ならば時間稼ぎにはなる、ということのようです。

しかしまあ、本当に世界各地でCCSが大規模に行われ、その人為的CO2注入によって炭酸塩の鉱物層が形成される様になれば、将来本当にそれは「人新世」を記憶する地層になるんですかね?

2021年6月22日火曜日

2035年北極海の氷が消滅!?

 ドイツの調査船Polarsternが北極海を1年ほどかけて調査し、帰港したそうです。それによると、130年前と比較して氷の厚さは半分ほどになり、面積も半分以下に縮小、ホッキョクグマの生息域が急激に縮小しているそうです。ドイツ語ですけど、そのレポートは以下のZDFのウェブページで見ることが出来ます。

北極の氷の減少を懸念する極地の研究者 - ZDFheute

氷の厚さを推定するのは簡単ではないようで、人工衛星から海面と氷山の高低差を見積もることは出来ても、上に積もった雪がどの程度なのかよく分からないみたいです。軽い雪が大きく堆積していると、高く見えても実際の氷の厚さはそれほどでもない、ということになります。最新の研究において、より高精度に雪の厚さを見積もったところ、氷の厚さの減少は従来推定されていたよりも倍ぐらい速く進んでいることが分かったそうです。

Arctic sea ice thinning faster than expected (phys.org)

先日も話題にしましたが、北極海の氷が溶けて船が通れるようになると、特にヨーロッパと中国、日本への海運を短縮出来て、結果的にGHG排出も低減できるというメリットがあるとは言えます。一方では、氷が溶けたことで石油、ガス、レアメタルなどの海底資源へのアクセスが可能となり、ロシアはそれに期待しているわけです(GHGは増える)。

いずれにせよ、状況は急速に変わってしまうかも知れません。何しろ、早ければ2035年には、北極海の氷が消滅するかも知れないというのです。

Arctic summer sea ice could be gone by as early as 2035 (nationalgeographic.com)

今からたったの14年ですよ。そんなことになれば、本当にシロクマに会えるのは動物園だけになってしまうかも知れません。宇宙から見て、北極の白い氷が黒い海に変われば、それだけ太陽光の吸収が増えて地球はより熱せられることになります。シベリアの永久凍土の融解とメタンの大量放出にしても、そこには誰も住んでいませんから、よく分からないことだらけだと思いますが、温暖化の暴走は我々が思う以上に速く進行しているのかも知れません。

果たして、我々にはどれぐらいの時間が残されているのか?2035年に北極海の氷が無くなりそうならば、2030年にGHG半減ではとても追いつかないのではないかと心配です。実際、上記レポートでも、脱炭素だけでは不十分で、大気中からのGHG除去が必要と言われています。本当のところはなかなか分からないので、あまり悪い方のシナリオでは考えたくないですけど、万一こんなことが現実となれば、その時にはきっと打つ手がない状態になるでしょう。だから、最悪の状況さえ心配して、行動を取る必要があります。取り越し苦労で済むなら、それは嬉しいことです。無駄だったということじゃないでしょう。

2021年6月21日月曜日

ASEAN諸国の脱炭素へ資金・技術供与

 今日、ASEAN諸国のエネルギー相のオンライン会議が開かれ、梶山経済産業大臣は、脱石炭等を含めた途上国、新興国の脱炭素化に対して、今後日本が1兆円規模の資金供与と、技術協力を行う考えを示したそうです。パチパチパチ!

梶山経産相 アジア各国の脱炭素化へ資金や技術面の支援を提案 | 環境 | NHKニュース

石炭依存が高く、それをやめるどころか輸出産業にしようとする日本に対して不名誉な「化石賞」が贈られるなど、嘆かわしい状況が続いていましたが、ここにきてこういう宣言が出てきたことは素直に喜びたいです。とは言え、日本だけの問題でなくて、世界各国が苦しんでいるとはいうものの、コロナウイルス感染拡大で疲弊しきった国民からすると、「ウチにそんな余裕あるの?だったら助けてよ!」と言いたくもなるかも知れませんよね。でも、ポストコロナ、脱炭素の未来っていうのは、もはやお金の大小だけではないだろうと思います。隣人も幸せそうにしている世界でなければ、我々だけが幸せそうにしている、なんていう状況はないですよ。気候変動が進んでしまえば、その未来には勝者は誰もいないだろうと思います。

しかしですね、一方ではこれらアジアの隣国に対して日本はプラスチックゴミを輸出しているのですよ。日本で始末するよりも、その方が安上がりだから。他国にプラスチックゴミを押し付けることは国際法で禁止されたそうですが、つい先日もこんな事件がありました。

汚れたプラスチック輸出規制で事業者に行政指導 環境省 | 環境 | NHKニュース

技術供与、資金供与といっても、一方でこんなことがあっては、隣国から恨まれるだけで感謝やリスペクトは得られませんよね。

2021年6月20日日曜日

トリチウム分離技術公募

 福島第一原発で問題となっている、大量のトリチウム汚染水からトリチウムを分離する技術開発を東京電力が公募しています。

東電 トリチウム分離技術を公募 福島原発の処理水問題で | 福島第一原発 処理水 | NHKニュース

公募はNine Sigmaを通じて行われています。公募情報のページは以下です。

NineSights Community - Need Gallery: ‪NineSigma Asia Pacific Gallery‬

様々な放射性物質を含む汚水は、多核種除去装置によって処理され、重い放射性物質を除去したALPS処理水となり、これがあの多数のタンクに貯蔵されています。しかし、三重水素、トリチウムは水分子に取り込まれ、HTO(分子量20)として存在し、H2O(分子量18)に混ざっていますから、これを短時間で大量に、効果的に除去する方法が確立されていません。ゆえに、海洋投棄しかない、という政府の決定になっているわけです。トリチウムは半減期12.3年でベータ崩壊して安定なヘリウムの同位体3He(通常のヘリウムより軽い)になります。

(3)T ➝ (3)He + e- + ν (18.6 keV)

なので、高濃度になれば当然危険です。通常の運転であっても、原子炉では常にトリチウムは生成しており、これを除去することが出来ないので、全ての原子力発電所からはトリチウムが海洋投棄されています。だから福島第一原発の汚染水についても、海洋投棄はやむなし、という考えなわけです。

しかし、以前も話題にしたとおり、だから問題ナシで、トリチウムが投棄された海から獲れた魚を喜んで食べるよ、とは誰も思わないわけです。「風評被害を防ぐために丁寧な説明をして」というのが全く無力であることに、ようやく気付いたのでしょうか。出来る出来ないでは許されず、出来るまで挑戦しろ、ということです。思考停止してはいけませんね。

電気化学的な反応とか、H+とT+を分離できる高分子電解質とか、何か出来ることはあるかも?もしトリチウム分離に成功すれば、事故の後処理だけではなくて、世界中の原発からのトリチウム排出を無くせるかも知れません。機会があるならば挑戦したい課題ではあります。今科学を学ぶ皆さんも、是非一緒に考えましょう。

2021年6月19日土曜日

コミュタン福島

 

今日は福島県三春町にある「コミュタン福島」に家族で行ってきました。

コミュタン福島-福島県環境創造センター交流棟| (com-fukushima.jp)

5年ほど前にオープンした施設だそうですが、皆さんご存知でした?恥ずかしながら、私知りませんでした。原発事故からの福島の復興拠点の一つとして、同じ敷地に国立環境研究所(NIES)と日本原子力研究開発機構(JAEA)の研究施設、福島県の施設もあります。福島第一原発から直線距離でおよそ50キロ。トンデモナイど田舎にあるので、通りがかりにたまたま見かけることは絶対にないと思います。探して行かないとたどり着きません。行ったことが無い方、超おススメです。是非行くと良いと思います。特に子供連れで。

原発事故の罪滅ぼし的に作られた施設であることは明らかです。特に子供に向けて、原発事故がどんなに大変だったかの記録を残すことと(でもホラー的展示ではないのでご安心を)、原発に頼らない未来への福島の再生を展望する(反省よりも希望)様な施設で、事故後の放射線量や野生動物生態の変遷、温暖化が進むことの地域環境への影響などをデータを元に見ることが出来ます。気候変動とか脱炭素はメインテーマではないですけど、やはり原発のない未来ということで、それらの課題は展示にかなり入っています。最先端の映像施設、インタラクティブな展示などがあります。ど田舎としては想像を絶する立派な施設があり、しかも無料です。今日は天気も悪く、折からのコロナ蔓延の影響もあって、来場者はまばら(両手で足りる程で、ほぼ貸し切り状態)、恐らく説明員の人数の方が多かったです。とても綺麗な施設で、掃除も行き届いており、相当なランニングコストがかかっていることは間違いありません。しかも、データも新しいものでは2020年時点のもので、作りっぱなしでアップデートされていないわけではありません。

というわけで、色々考えさせられてしまう施設ではあるのですけど(存続できるかな?)、あって良いか悪いかでいったら、当然良いです。誰も来ないとしたら全くもったいないです。アクセスは決して良くないですけど、行ったことない方は是非どうぞ。家族でエネルギーの未来、持続可能な社会を考えるとても良い機会になるでしょう。もちろん、学生さん同士で行くのも良いと思いますよ!

以下、少し写真です。

入口すぐのところに、事故後の福島第一原発の模型があります。綺麗なジオラマではなくて、滅茶苦茶に壊れた施設の状態を再現しているところが良い。
この球状シアターが圧巻です。直径12.8メートルの球体スクリーンの中に入ります(廊下がガラス張り)。360度全方位のスクリーンに映像が映し出され、音響も素晴らしく、没入感が凄いです。5歳の息子はあまりの迫力に怖がってしまいました。今日のお話は2本、地球の中心への旅(地震のメカニズム)と、宇宙誕生の歴史でした。最初のナレーションはピーターバラカンさん、二本目のナレーションは竹中直人さんだったと思う(声がそうだった)のですけど、そうですか?この映像体験だけでも500円ぐらい取られるのが普通と思いますが、無料だなんて、凄いです!
放射線に関わる展示も多数ありますが、注目はやっぱり再エネです。色々インタラクティブな仕掛けがあり、子供は大喜びです。説明はほぼバイリンガルですから、今度留学生が来た時には絶対連れて行きます。
極めつけはプロジェクションマッピングによる3Dフクシマ。少し低いところから水平に近く見ると、本当に立体的に浮き上がって見えます。この10年間での放射線量の分布や野生動物の生態域の変遷、再エネ施設の拡大などが投影されます。




2021年6月18日金曜日

船舶も低炭素義務化

 普段の生活で意識することはないですが、船舶は世界中の物流を担っています。先日のスエズ運河での座礁事故でも、物流が止まって大変だったことが報じられました。みんなお世話になっているということです。自動車の様に大きい工業製品、衣類、食料など様々なものが国から国へと海を通って運ばれています。

ビジネス特集 スエズ座礁事故 原因は?責任は? 今後の焦点 | NHKニュース

船舶も大型の移動機械ですから、当然ながらエネルギーを消費していて、帆船でもない限り大抵は化石燃料であって、GHGを大量に排出しているわけです。脱炭素の波は当然そこにも押し寄せ、GHG排出を削減する新たな国際ルールが決まったことが報じられました。

船舶の温室効果ガス削減義務づける 新たな国際ルールを採択 | 環境 | NHKニュース

どれぐらいの規制なのか、レポートには数字は示されていませんけど、2023年からその運用が始まり、それは新たに建造される船舶についてだけでなく、既に就航しているものにも適用されるそうです。でもどうやって?内訳を見ると、速度を制限することなどによって、とあります。つまり省燃費運転を心がけてください、ということですね。輸送コストを下げるためには、出来るだけ速く運びたいことでしょう。船の場合も、やっぱり全速力で動くと燃費が悪くなるということなんでしょうね。

より抜本的な解決策としては、LNG船(低炭素)、アンモニア、水素船(ブルー、グリーン燃料ならば脱炭素)が検討されています。日本郵船は、自動車輸送用にLNG船を12隻新造する計画を発表しています。

日本郵船/LNG燃料自動車専用船12隻を連続建造 ─ 物流ニュースのLNEWS (lnews.jp)

従来の重油を使う船に比べて40%ぐらいCO2排出を低減させられるそうです。もちろん、やるのは良いことですけど、日本郵船が公表しているGHG削減目標が、「2050年で今の半分」なんですよね。それじゃカーボンニュートラルにならないじゃないですか!もちろん、他のことでオフセットして、全体としてカーボンニュートラルを実現する、ということも出来るのかも知れませんけど、それほどまでに船舶の脱炭素は容易ではないということなんですね。LNGが現状最良であって、アンモニアや水素を待てないという事情はあるのかも知れません。ただ、大型船舶は数年使って入れ替える様なものではなくて、大変長期間運用されるでしょうから、化石燃料を使う船をあまり沢山は新たに作らない方が良いようには思いますよね。

とは言っても、アンモニアや水素で動くエンジン(あるいは燃料電池)はまだまだ開発途上ですし、そもそも再エネからアンモニアや水素を安価に大量に作る技術が確立されていません。蓄電池では無理で、やはりエネルギー密度の高い化学燃料が必要。太陽光からアンモニアや水素を作る技術確立が急がれます。

2021年6月17日木曜日

堅達京子さん

本日、日本WPA(水なし印刷協会)さんが開催した、「本気でめざそう! 脱炭素社会」と題したオンラインセミナーで、NHKエンタープライズプロデューサーの堅達京子(げんだつきょうこ)さんのご講演を拝聴しました。 堅達さんは、気候変動やエネルギー問題、生物多様性、海洋プラスチック問題、脱炭素革命などのテーマで、NHKスペシャル等の番組作成をされた方です。 私、いつもそういう番組は欠かさず見ています。先日環境研のセミナーでお話しされていて、そのお名前で検索していて、たまたま今日のセミナーを発見し、滑り込みで登録出来ました。 喜んではいけないですけど、コロナのためにオンラインセミナーが増えて、東京に行かなくてもこういうお話を聞けるのは嬉しいことです。 

堅達さんは色々講演活動もされているようです。 別のセミナーですけど、以下のページにプロフィール等ありました。 本も書かれています。

真のパラダイムシフトで地球環境を守ろう! :堅達 京子 氏 | 市民のための環境公開講座2020 (sompo-ef.org)

それで、お話の内容はもっともで、一応情報を集めまくっている私にとっては特に新しくはなかったですけど、一番気になることとして、どうしたら一般の関心を高くすることが出来るのか? 自分はいつも堅達さんの番組を見ているけど、現役の工学部の学生が全く無関心!アドバイスもらえませんか?という質問を投げかけたら、お答えいただけました。

今の若い世代にとってはテレビは過去のもの。 見てもらえないのも仕方ない、だからYouTubeチャンネルで無料のダイジェスト版を提供している。 それで関心を持ってもらい、全部を見てくれることに期待している、ということでした。 「地球のミライ」というYouTubeチャンネルがあって、そこにNスぺ等のダイジェスト版があります。

#地球のミライ - YouTube

学生さん、是非ご覧になってください! 堅達さんからは、東大の未来ビジョン研究センター様に、是非全国の大学でカーボンニュートラルへの研究センターとか学部とか作って欲しいですね、というコメントもあり、「今山形大学でカーボンニュートラル研究センター準備してます! 」と回答したところ「頑張ってください! 」と激励頂きました。 はい、頑張りましょう!YUCaN研究センターが立派になったら、取材してもらえると嬉しいですねえ。メディアの力は絶大だと思います。「人の行動のティッピングポイント」にも触れられていて、3.5%の人が新しいことを始めると、他のみんなもやるようになるんだそうです。今はまだ0.1%ぐらいの感じかなあ?脱炭素社会をみんなが求める様になったら、きっと変わりますよ。だから、そのさきがけとなる人が今必要なんです。山形は、先に変わりましょう!

2021年6月16日水曜日

NO YOUTH NO JAPAN

 このオジサンが知らなかっただけで、未来志向の行動力を持った若者は、当然知っているのでしょうか?

NO YOUTH NO JAPAN

慶応大学学生の能條桃子さんが代表を務める団体で、U30世代が日本の未来に対して、政治や社会問題について考え、もっと声をあげようと自らを啓発する活動をされています。オジサンやオバサンは口出ししてはいけませんが、覗いてみても叱られないと思います(叱らないでくださいね)。誕生して2年足らずの団体で、どうも学生さん4名だけで運営しているみたいですが、既に4.5万人のフォロワーがいるとのことで、活動に共感する同世代がいるということですよね。

大学の先生、オッサン中のオッサンの私からすると、「素晴らしいね!」と賛辞を送りたくなります。本当に、心からそう思います。その活動の内容を批評したりするつもりも毛頭ありません。ウェブを検索すると、この活動を批判する様な同世代からのコメントもありましたが、行動している彼女たちは立派だと思います。文句があるなら、意見を戦わせたらいい。そうして互いが鍛えられるものでしょう。また、私も言葉に気を付けたいですが、「うーん、微笑ましいですね」みたいな茶化した態度を年上の世代は慎むべきでしょう。自ら考え、行動する。それ以上のことがあるでしょうか。

NYNJの発する言葉で考えさせられたのは、「政治や社会問題について話すと『意識高いね』と言われてしまう」(だから声を発しにくい)というものです。普通に考えると『意識高いね』は、「高い意識を持っているあなたは素晴らしいから友達になりたいし、見習いたい存在だ」ということだと思うんですけど、どうも違う。「ふーん、意識高いんだねー(目立ちたいのかお前、嫌なヤツ)」というネガの反応のこと(らしい)です。いわゆる「空気の読めないヤツ」って見られちゃうから、周囲に埋没していた方が良い、人と違うことなんてしなくていい、ということ?困ったな―。意識高くて大いに結構じゃないですか!

で、結局そこに見えるのは日本特有の「空気の支配」ですねえ。出る杭は打たれる。人と違うことをすればいじめの対象になる。村八分になる。空気の支配は、大人の世代でもっとひどいんですけど、それが若者の自由を奪い、行動を規制するところまで浸透している。それを肌で感じているから、先の『意識高いね』という言葉が発せられるんでしょうね。彼女たちはそれを乗り越えて、声を発し、行動することを始めたわけです。

「今の若い世代は・・・」は世代を越えて繰り返されてきたセリフです。私自身も、大学生の不勉強ぶりや無関心ぶりに落胆して、つい苦言を呈してしまいますが、昔はそう言われたほうです。空気が読めなくて苦労したことも多かった(未だにそうかも?)。結局若者をそういう状況に押し込めているのは社会をコントロールしている世代(特にオッサン)ですよ。だから、それを変える努力をしていないオッサンは文句は言えない。責任は年寄り世代にある。この逆境にも負けずに頑張っているんだから、最大限の賛辞を送りたいですね。

しかし、お願いもあります。そんな年寄りたちが自らの問題に気づくためにも、是非世代を越えた対話を大切にしてください。遠慮なんてしなくていいです。エラそうなこと言って、君たちを抑圧する人がいたら「どうせ先に死ぬんだ」と心の中でつぶやいて、許してやってください。同調はしなくていいです。年寄りにも色々います。年寄りはなかなか変われないけど、全く変われないわけじゃないです。それから、こうした若者のムーブメントは、継続性というところが課題になりますよね。果たしてこのNYNJが3年後にどうなっているかですけど、まあ無くなってしまっても構わない。でもその代わりになるものがきっと出来ていますよ。この能條さんだって、別に自分自身がレジェンドになりたい、自分のレガシーを残したいと思ってやっているわけではないのだと思います。こういう経験を通じて自らが成長していくだけです。きっと素敵な大人になっていることでしょう。

柿の種コーヒー

 柿の種からコーヒーを作れるそうです。いや、コーヒー味の柿の種とか、コーヒーによく合う柿の種とかではありません(ちなみに、カフェオレ味の柿の種は売っていました。モーニングサービスで有名な岐阜のコーヒー文化ですが(私の故郷は岐阜です)、モーニングの時間帯以外ではコーヒーに柿の種の小袋が付いてくるのは当たり前です。つまり、元々柿の種はコーヒーに合うということ?)。岐阜県海津市にある、地元の富有柿から柿酢をつくるリバークレスという会社が、余ってゴミになってしまう柿の種(本当に、「種子」の意味)からコーヒー(のような)飲み物を作って販売している、という話です。

柿の種で焙煎コーヒー ノンカフェインで酸味ある味わい、リバークレスが商品化 | 岐阜新聞Web (gifu-np.co.jp)

富有柿の“柿の種”コーヒー 2年かけ完成 女性社長「ストーブの上の“種”」見て思いつく フルーティーな味わい 岐阜・海津市 : 中京テレビNEWS (ctv.co.jp)

そもそも、コーヒーって、コーヒーチェリーと呼ばれるサクランボにも似た果実の種で、それを乾燥、焙煎し、挽いてお湯で抽出したものです。ちなみに、コーヒーチェリーの生の実も食べることが出来るそうですよ。

この柿の種コーヒーを開発した伊藤由紀社長は、使い道が無くて捨てるしかなかった柿の種をたまたまストーブの上にのせて焙ったら、いい香りがしてくるので、これでコーヒーが作れるのでは?と思ったそうです。コーヒー豆と同じようにはいかず、焙煎方法を試行錯誤して製品化に至ったとのこと。今は試験的な販売とあって、1杯分が432円とかなりお高いですが、これが普及したら廃棄物の柿の種を減らせるだけでなくて、コーヒー豆の消費量を減らすことも出来るかも知れませんね。というのも、コーヒーがどこで生産されているかご存知でしょうか?

コーヒー豆の生産量国別ランキング!世界1位の国は? | DRIP POD (drip-pod.jp)

私は一日中コーヒーが欠かせない人なんですが、安くておいしいので、AEONのトップバリュー品をいつも飲んでいます。しかしそのコーヒーがどこから来るのか知りません(ベトナム、ブラジルと書いてありました)。綿花やカカオ豆でもよく話題になりますが、果たして生産者にちゃんとした対価が渡っているのか心配です。経済の拡大に伴い、特に中国ではコーヒーの消費量が大きく伸びていて、コーヒーの生産量も増え続けています。資本主義経済の競争原理の当然の結果として、より良い品質を求める一方で、その付加価値は可能な限り低く見積もられます。すなわち、強者(買い付ける側)による価格の支配が起こり、生産者は極めて厳しい状況に追い込まれ、大変な無理をして生産を続けることになります。土地にも大変な負担を強いることになります。農薬や化学肥料の大量使用、そして児童労働の問題。明らかに持続性が無い上に、貧困国のコーヒー農場で労働する子供たちは学校にも行けず、その国を将来豊かにするための学習の機会を奪われてしまうのです。だから、これは廃棄物の利用が出来て良かったね、ということを遥かに超えて、素晴らしい取組みだと思いました。コーヒー豆の消費が減ったら貧困国が余計に困るじゃないか、という心配は無用です。まずは、生産者をいじめたりしないフェアトレードが必要ですし、消費者(EUが1位、米国2位)は持続可能な生産方法をとらない生産者からは買わない、そのために必要な出資をする、などして必要な対価が生産者に行きわたることが必要です。そうすれば、生産者も豊かになり、子供たちは学校に行き、将来自らの地域を発展させるための力になります。一次農産品の生産だけでなく、加工品にも取り組んでより付加価値の高い生産に取組むことも可能になります(但し発展のための発展でなくて、持続可能であることが大切ですよね)。

さて、山形で何が出来ますかね?山形も庄内柿が有名でしたね。おっと、種無しだった!種がゴミにならないからもっとエコですか?サクランボ?種がいっぱいですね。チェリーだけど、コーヒーチェリーとは全然違うな。山形の農業関係の皆さん、何かお困りのことはありませんか?

2021年6月15日火曜日

環境分野ノーベル賞、平田仁子氏

 環境分野のノーベル賞とも言われる、アメリカの「ゴールドマン環境賞」を今年、京都の環境NGO「気候ネットワーク」理事の平田仁子(ひらたきみこ)氏が受賞したそうです。

「環境分野のノーベル賞」 日本のNGOの平田仁子さんが選ばれる | 環境 | NHKニュース

受賞理由は、日本の石炭火力発電拡大への動きに反対する活動を展開し、2011年の福島第一原子力発電所の事故以降に計画された50基の石炭火力発電所新造計画について、13基の計画を中止に追い込み、計画全体の見直しや、脱炭素への動きへと転じさせたことへの貢献とのことです。素晴らしい功績だと思います。おめでとうございます。ありがとうございます。

と言いつつ、この報を受けて私自身の無知さを恥じると共に、脱炭素への変化の遅さとその達成の困難さへの焦燥感が募りました。まず、ゴールドマン環境賞という賞を知りませんでした。アメリカのゴールドマン夫妻が1990年に設立した、環境保護への功績を称える賞だそうです。そして、気候ネットワークの存在も、平田さんの活動や功績も、全く知りませんでした。さらには、原発事故後に50基もの石炭火力が計画されたという事実も知りませんでした。全くもってお恥ずかしい。自分自身は、常に環境エネルギー問題に高い意識を持ち、それに貢献することを目指して研究教育活動を行ってきたという自負があったのですが、これらを知らないということだけでも、社会から白眼視されてしまいそうです。しかし、言い訳ではないのですが、そんな立場にいる私でさえこれらを知らなかったという状況が生まれること自体が、脱炭素への機運がまだまだであることを示している様にも思うのです。事実、YouTubeで「平田仁子」で検索すると、ご講演されているビデオが多数出てきますが、その視聴回数が数十回程度なのです。それぐらい認知度が低いわけですから、私が知らなくても当然かと思いますし(言い訳です!)、その認知度の低さを考えると今回の受賞ってなぜ?とさえ思えてきます(失礼!)。上記レポートの内容を見る限り、平田さんの果たした功績はとても重要と思います。しかしそれがメディア等で報じられる機会は少なかったと思います。

このことを通じてあらためて考えるのは、脱炭素への社会全体の大変革を成し遂げるために絶対に必要な、社会の全ての人々がそれをより良い社会への変化であると考え、それを求める努力としてこれに貢献したい、という社会的気運を生むことの難しさです。このところ話題にした、G7で鮮明化した国際的対立は大きなスケールでの協調、全ての人類の参加に対する大きい障害ですが、自分の周囲や足元を見ても全セクターが参画共同する環境を醸成することは極めて困難と感じます。大半の人にとっては、いまだもって気候変動は全く他人事です。ここ数年の巨大台風等による甚大な被害を経験して、それに備えるための強靭な防災対策が始まり、個人としての防災への備えの意識を高めることにはなっている様に思いますが、その根底にあるGHGの環境への放出の問題を自分事として捉え、進んでこの根本問題の解決に取組もうとする変化を生じるには至っていないと感じられます。その点で、石炭火力の拡大に強く反対し、その功績が国際的に評価されて今回の受賞に至ったことは、市民に出来ることの重大さを証明しているのですが、国民の関心を呼ぶ大きなニュースにもなっていません。環境NGOという団体は、一部のファナティックな人たち、例えば道端にゴミを捨てる人を烈火のごとく叱りつける説教臭い人の集団、の様に思われてしまいがちです。そのせいで、その声に耳を傾けてもらい、周囲の人たちが自らを考える機会を拡大することにあまり貢献できていないのではないでしょうか。要するに、波及効果が無いのです。YUCaN研究センターの活動やこのブログでの訴えもまだ始まったばかりではありますが、果たしてどこまで貢献出来るのか、心配です。

未来志向で、懸命に課題に取組み、発信しようとしている人たちは、この国の中にもいるのですけど、それらがつながりあって、大きなうねりを生むところまでは行っていない、ということですよね。バラバラだと変な団体に見えてしまいますが、団結したら、それが新しい社会を構築するための最新トレンドなのだ、という影響力を発揮できると思います。産官学を越えて、環境エネルギー問題に取組む団体のネットワーキングを進めて、相互のその活動を見える化することが必要と思います。微力ながら、少しずつでも変化を起こしていきたいと思います。

NATO、中国への軍事的牽制を鮮明に

 先日のG7サミットレビューの続報の様になります。バイデン大統領は、先日のG7に続きブリュッセルで開催されたNATO北大西洋条約機構首脳会合に出席しました。トランプ大統領の時に乱れた関係を修復し、組織の連携を強めることが課題ですが、それも差し迫る脅威とされる中国への包囲網を強固なものにしたいという思惑があってのことです。

NATO首脳、中国の脅威に対抗宣言 バイデン氏が結束再確認 (msn.com)

NATO、露だけでなく中国を「脅威」に位置付け…宇宙空間も集団的自衛権の対象 (msn.com)

そもそもNATOの最大の仮想敵国はロシア(GHG排出世界4位)というか以前のソビエト連邦と東ヨーロッパや他地域の共産主義国の軍事連合でした。中国(GHG排出世界1位)は軍事的脅威と見られていなかったのですが、その様相はここ数年で完全に変わったと思います。最新の世論調査では、日本国民の8割が中国を軍事的脅威と感じているとのことです。

中国の安全保障面の脅威 8割が「感じる」 NHK世論調査 | 選挙 | NHKニュース

日本はもちろんNATOの様な軍事同盟には組していませんが、日米安保の関係からはアメリカに同調協調する立場にあります。恐らく国民の大半はNATOが対中国で結束を強めることを歓迎しているのではないかと思います。当然ながら、中国は即座に反発しています。

NATOサミットに反発「中国脅威論をあおるな」 (msn.com)

中国に言わせれば、軍事力の拡大はどの国も行使している主権の範囲内での活動であるし、台湾や香港、新彊ウイグルのことは内政問題であって、諸外国が口を出すことではない、となります。これらを理由に中国の軍事的脅威をあおり、軍事的対立の構図を鮮明化しようとすることは不当だというわけです。

実際、「どこまでやるつもり?」と疑問に思います。中国も喧嘩を売られたら、買わざるを得なくなるでしょう。自制をして欲しいとは思いますし、世界の平和と協調が大切であることは中国のリーダーもよく分かっているはずですから、一連の反応を見て、自身のとる行動が中国の将来にとって得策ではないと判断して欲しいものです。しかし、一方のバイデン大統領も(あるいは日本の首相も)こうして圧力をかければ相手が反省し、「あ、そうですか、すいませんでした」と悔い改めるとは思わない方が良いと思います。この時代、いざとなれば、刺し違えても、などという考えは一切あり得ないのです。民主主義は正義であり、人が人として生きるために守られるべきものと私自身も思いますが、だからと言っていずれは全ての国や地域が民主化されるのが当然である、と思うのは間違いです。異なる思想、システムや主義主張があるのは当然という多様性を認めることは、共存共栄への条件です。今、気候変動抑制のための脱炭素への挑戦においては、世界の全ての国や地域が協力することが必要なのです。G7、NATOの一連の会議は、それをより困難にしたと感じます。GHG排出世界1位の中国と4位のロシアと敵対して、どうやってゼロカーボンの世界を実現するのですか?


2021年6月14日月曜日

多様性を認めない世界へ、G7サミット閉幕

 コロナウイルス感染が収束に向かう中、久しぶりに各国首脳が集まり、対面形式で行われた今回のG7サミットが、3日間の協議日程を終えて閉幕しました。菅総理からは、その成果について帰国後記者会見があると思います。日本政府としてその成果をどう評価しているのかは、その時に明らかにされると思います。会議の主要な成果や合意内容については以下に簡単にまとめられています。

G7閉幕 首脳宣言 “台湾海峡”に初の言及 五輪開催への支持も | G7サミット | NHKニュース

そもそも、自らを世界の主要国と言ってはばからないG7ですが、これをもって世界の方針が決定されたということではありません。強大な力を持った国家の仲良しクラブの会合であって、それを世界に示すことで反論できない仕組みを作ろうとする試み、と非難されても仕方がないところがあります。国連では逆に何も決めることが出来ない状況に陥るのが常であり、いかに世界には多様な考え方や事情が存在するのか、ある地域にとっては「当然のこと」が他の地域にとって「受け入れ難いこと」になるわけで、どちらが正しいなどとも言えないということを前提にこれらを読み解き評価する必要があると思います。

さて、今後一層具体的な変化が現れるのだろうと思いますが、就任以来「多国間主義」「アメリカによる国際秩序の回復」を掲げてきたバイデン大統領にとって初のサミット、その成果をバイデン氏自身高く評価しているようです。

バイデン大統領 “厳しい姿勢示せた” 対中国でG7各国の反応は | G7サミット | NHKニュース

新彊ウイグルや香港での人権問題非難、台湾海峡の平和と安定の重要性に言及、東シナ海の実行支配を強める動きへの警戒、「一帯一路」構想に対抗する途上国へのインフラ支援への合意、政治的な条件付けの無い途上国へのワクチン供与、など、多岐に渡って中国を非難し、これに対抗するという合意内容が報じられています。インフラ投資やワクチン供与など、豊かな国が当然果たすべき役割も含まれています。日本からは、これらを半ば当然のこととして、肯定的に評価する報道が多い様に感じられます。しかし、実はG7も一枚岩ではなくて、フランスのマクロン大統領は「G7は中国に敵対するクラブではない」と釘をさし、イタリアのドラギ首相は「地球温暖化やパンデミック後の復興については中国と協力する必要がある」など、特にEU諸国からは中国との関係をあまり悪化させたくない、という姿勢がうかがえます。さらに親中なのは、特に自動車業界が中国に多額の資本を投じているドイツだと思いますが、メルケル首相はバイデン大統領のアメリカがG7での協調路線に復帰したことを歓迎し、「素晴らしい」とコメントしたとのことです。トランプ大統領の時がひど過ぎましたからね。

さてさて、あからさまに中国非難を強めた今回のG7ですが、まあ事前の予想通りだったとは言えます。しかし、それ故に今後世界は協調どころか分断に向けて一層動くのではないかと心配になります。中国共産党からの正式な反発はまだ報じられていませんが、強く反発することでしょう。会議中には、開催国イギリスの中国大使館から「少数の国で操作されるべきではない」という反発コメントが発せられたようです。

G7サミット 最終日の討議始まる 中国への対応が焦点 | G7サミット | NHKニュース

これは、立場を変えて見れば当然のことであり、第三者的にも全くもって正当な主張と言えます。世界第二位の経済大国であり、15億とも言われる人口を抱える中国をさしおいて、自らを「主要国」と名乗るG7に対して、中国を非難し、指図する立場ではない、と言いたいわけです。G7では、北朝鮮の非核化問題やミャンマーの人権問題、そしてロシアの人権問題や平和を乱す行為に対する非難も発せられています。正直なところ、北朝鮮やミャンマーはこういう問題が無ければ議論の遡上にも上らない弱小国ですが、ロシアは歴史的に見てもG7とは異なる立場をとる大国です。これらを一方的に非難し、異なる立場に対しての理解を全く示さない上での国際秩序と平和を守る多国間主義というのは本当に可能なのでしょうか?特に中国からすれば、秩序を乱しているのはあなたの方ではないのか?となりますし、一方的に非難された上で「温暖化では協力を」と言われて協調路線が取れるとは思えません。互いの非難の応酬になってしまい、脱炭素が大きく遠のいてしまうことが心配です。そもそも中国が世界のGHGの3割を排出する様になったのは、世界中にMade in Chinaが溢れているからであり、GHG排出も含めて採算性の悪い製造業がどんどん中国に移り、様々な矛盾を中国が請け負うことで世界経済が急速発展した冷戦後の世界の構造にあります。もちろん、中国が経済的に大きく成長し、潤ったことは事実ですが、世界の工場として様々なDirty Workを請け負ってもらったという側面があることも忘れてはなりません。それがG7を含むその他の世界にとって必要なパートナーシップであるとするなら(そうでしょうね)、中国抜きの対話において中国を一方的に非難することは出来ないでしょう。民主主義対専制主義の対決であり、台湾や香港、新疆ウイグル問題など、個人を全く尊重しない中国の体制にはもちろん私も反発します。しかしその戦いをどこまで続けるつもりでしょうか?相手が降参して悔い改めるまでやるつもりならば、戦争になります。自らの主義主張とは異なったとしても、それが世界の多様性であると認めることは必要であり、一般通念に照らし合わせた人権問題に対する危惧の表明などは、国連に任せておくべきでしょう。

私には中国に住む中国人の義兄弟や義母、甥っこがいます(嫁さんは帰化したので日本人ですけど)。研究上で親密な付き合いのある中国の友人も多数います。その人たちは、邪悪なことを考えている悪の帝国の手先ではありませんよ。ほとんど私と変わることのない、普通に自分自身の成功や家族の幸せを願う心暖かい人たちです。確かにシステムとしての共産党一党独裁が引き起こす問題はあるとは思いますが、相互理解を深め、共存共栄の道を探るためには、15億もの個性がある中国を一つにまとめて非難する様なことを言うべきではありません。自分たちは見下され、尊重されていないと感じれば、どうやって対話の席につくことが出来るでしょうか?

さて、菅総理は自身の外交成果をどう説明するでしょうね?私は日本がアメリカへの同調を強め過ぎることには大きな懸念を抱き、不安を感じます。

2021年6月12日土曜日

Kawasaki Noslisu

 マイクロ電動モビリティの話題です。オートバイで有名な川崎重工(Kawasaki)から、Noslisu(ノスリス)というヘンテコな名前の三輪車が発売されました(現状では限定販売)。

noslisu | ノスリス

その使用レポートは以下にあります。

先行販売は即日完売…川崎重工の電動三輪車「ノスリス」 実際に試乗してみた (1/2ページ) - SankeiBiz(サンケイビズ):自分を磨く経済情報サイト

コンパクトでパワフルなLiイオン電池が広まったお陰で、電動モビリティーの幅は一気に広がりつつあります。世間では従来の自動車よりも静かでパワフルなEVばかりが注目されている感じですが、むしろ電動化のメリットが大きいのは軽くて小さく、少人数+ちょっとの荷物+ちょっとそこまで、という使い方に適した乗り物だろうと思います。先日話題にした、電動キックスケーターはその最たるもので、折りたたんで小脇に抱えられる様なものであれば、電車やバスとの併用も可能です。

さて、このノスリスですが、Kawasakiブランドのバイク技術がフィードバックされているところが魅力的です。見かけこそ、よくおばあちゃんが乗っていた三輪自転車(最近は電動アシスト付きもあり)と同じに見えますけど、走行のメカニズムが違います。前二輪はヤマハトリシティの様に平行に傾き、ライダーもオートバイの様に体を傾けて(リーンして)曲がることになります。プロモーションビデオの走行状態を見ると、オートバイみたいでちょっとスポーティーな感じですよね。前二輪はリンク機構によってストロークしますから、片輪が段差に乗り上げた時ももう一つの車輪が地面を捉える様になっています。要はトリシティのコンセプトと同じで、転倒しにくいというところが大きな安心感になります。この前輪の間には大きなカゴがあって、20キロまで荷物を積めるそうです。スーパーでコメを2袋買えますね!

かなり大きな車体の様にも見えますが、重量は40キロにも満たない様ですので、かなり軽量と言えます。先日紹介のGlafitと同様、自転車のパーツをうまく使っています(硬そうなサドルはちょっと・・・)。バッテリーの容量や航続距離はアナウンスされていませんが、重量は4キロとのこと。まあ、そこはある程度自由度があるでしょう。満充電で50キロ走れたら恐らく十分ですよね。小さいバッテリーは充電も速いということを忘れてはなりません。まあ、ここはサイズの違うバッテリーを用意するとかも良いでしょう。ペダルで漕ぐ電動アシストタイプは誰でも乗れて、モーターだけのEVタイプはマイクロカー登録で、普通免許が必要、けど二輪車ではないのでヘルメットの着用義務はナシ、となるようです。時速40キロも出るそうですよ。ただ、現行法を適用するのにもそろそろ限界があるので、法整備等も含めた環境整備が必要と思われます。

三輪車なら、未舗装路の様な滑りやすい路面、それこそ少々の雪の上でも転びにくそうなので、山形には合っているかも知れませんね!とにかく、こういうコンパクトモビリティーが普及することは、無用に大きい自動車(仮にEVであっても)を利用したりする機会を減らし、低炭素化に大きく貢献すると思います。そのためには、車両登録や税制、免許の要不要、ヘルメット着用の義務、道路走行帯、車道右折の可不可、など新種の登場に合わせて変える必要があるでしょう。出来れば、そうしたマイクロモビリティーの専用走行レーンを整備するとか、混雑した都市部への自動車の乗り入れ制限をするとか、電動コンパクトモビリティー(マイクロEV含め)を税制上大きく優遇するとか、そういう環境整備によってその普及拡大を後押しして欲しいですね。今は実験的な車両が色々出始めている段階ですが、法整備を急いできちんとした車両カテゴリーに育て上げて、輸出産業としても強いものにしていくべきと思います。

2021年6月11日金曜日

G7サミット

 今日からG7サミットが英国で開催されます。G7のGって、Group of 7の意味、サミットって「主要国首脳会議」で日、米、英、仏、独、伊、加です。以前はロシアも入っていて、G8と呼ばれていた時もあります。自らを「主要国」と言うわけですから、そもそも格差の象徴と言えなくもないですが、世界を取り巻く様々な課題への対応について、意志の疎通と協調をしたいということではあります。今回のサミットの特に注目すべき点などについては以下の記事でも参考にしてください。

G7サミット開幕へ コロナや中国対抗策で結束した対応出せるか | NHKニュース

特に重要なのは、アメリカ、バイデン大統領がアメリカを中心とした国際秩序をどこまで取り戻せるかでしょうかね。自由で開かれた世界と人権の尊重において共通した価値観を持つ各国との連携を深めて、対中国包囲網を築き上げたいというのが明白です。日本の様々な社説を見ていると、それに同調し、日米の強固な連携と共に日本もその支配する側に入りたいし、それが認められる方向を願う意見が大半と読み取れます。しかし、EUは中国との対立を望んでいませんから、アメリカに完全には同調しないだろうと思います。そして、日本にとっても中国との敵対姿勢を鮮明にすることは好ましくないと思います。

気候変動問題に対しては、世界全体が協力しあうことが大切です。中国抜きでも世界経済の発展を可能と出来るように、半導体や電池などに日米欧だけのサプライチェーンを築きたいとか、互いに経済制裁を課し合う激しい対立関係をエスカレートさせる一方で(さらには軍事的対立さえエスカレートし)、気候変動では協力ね、とそんな事が出来るとは思えません。

中国やロシアに対して「あいつらおかしい、間違っている」で、対話を放棄し「君たちが考えを改めないと世界から孤立しますよ」という圧力をかけるやり方は、きっと混乱を深めて気候変動抑制の成功を遠ざけることにしかならないと思います。どれだけ難しくとも、人としての共通の価値観はあるのですから、対話姿勢を崩してはならないと私は思います。本当は、少なくとも中国、ロシア、インドを加えたG10でなくてはならないと思いますけど、何も決められなくなるでしょうね(ちなみに、カナダの人口って3800万人いないですよ。国土は大きいけど。GDPは世界9位)。G7だけが世界の「主要国」であって、中国やロシアはその決定に従う側というのは都合良すぎるというか、はっきり誤った態度だと思います。反発されて当たり前。

さあ、どういう展開になるでしょうかね?注視していきたいと思います。

2021年6月10日木曜日

EVシフトを考える⑬

 前々回の⑪のハナシは、閲覧数が多いんですよ。面白かったですかね?というか、かなり刺激的というか、辛辣な言い方もしましたので、読んでて腹が立った人もあるかも知れません。いつか言いたいと思っていたことを一気に書いたので、長くなりましたけど。正しくないこともあるかと思いますし、友達無くす様な書き方だったかも知れません。立場が変わると見え方が変わってくるのは事実で、誰かにとっての正義がみんなの正義とは限らないということです。

さて、今回はちょっとテクニカルなことに言及しつつ、何故今日EVこそが自動車の未来と思われる様になったのか(それは全面的に正しいわけでは無い、というのはこれまでの主張通りですが)について書きたいと思います。自動車技術のことについて興味の無い人にはつまらないかも知れません。私は自動車の専門家ではありませんが、大好きなので、そこそこ知っています。クリーンビークルにかかる色々な技術をレビューし、どういう過程を経て今EVが注目されるのか、です。そういうことを書こうとおもったのは、2015年に発覚したフォルクスワーゲンによるディーゼル車排気ガスの検査不正について、新たな報道があったからです。この事件、覚えていますか?自動車史上最悪の不正事件と言っても良いぐらいと思います。

フォルクスワーゲン元CEO 偽証罪でも起訴 “排ガス不正”問題 | NHKニュース

まず最初に、自動車の低炭素化と脱炭素化は違うことを確認しなくてはなりません。色々な動力発生装置があるわけですけど、例えばEVやFCVにしたら脱炭素になるかと言えばそうではありませんし、逆に内燃エンジンで脱炭素が不可能なわけではありません。電気や水素を化石燃料から得たらGHGは出ますが、太陽光等で得たグリーン水素を水素エンジンで燃やすとか、そこからe-Fuelを合成したら普通のエンジンでも脱炭素になります。いや、実際にはゼロっていうのはかなり難しくて、大量の鉄や樹脂、EVなら化学品も沢山使う自動車の製造には大量のエネルギーを要します。その生産や廃棄リサイクルにかかるエネルギーもグリーン化して、それでもゼロにならない分は別のGHG削減策でオフセットして、やっと「ゼロ」と言えるわけですから、本当の脱炭素というのは並大抵のことではないです。現実的には将来一次エネルギーを太陽光や風力などの再エネに完全に置き換えて脱炭素達成を展望しつつ、今は可能な限りの低炭素化を進めて行く、ということになります。そしてその方法論は色々あるわけで、今EVにしたら即脱炭素、にはならないです。

ガソリンを内燃エンジンで燃やす自動車の効率を上げて、低炭素化を進める代表がHVです。ブレーキをかけた時や坂道を下る時に運動エネルギーから発電し、普通のより少し大きめのバッテリーに蓄電(エネルギー回生)して、走る時に電気モーターでアシストする(燃料消費を減らす)仕組みですね。それが無いと、ブレーキで運動エネルギーは熱に変わってしまいます。その仕組みを搭載した車両を最初に市販したのがトヨタで、「21世紀に間に合いました!」と鉄腕アトムが広告した1997年市販の初代プリウスです。エネルギー回生とかモーターアシストというのはかなり難しいエンジン、ブレーキ、電気の連携をしていて、初代プリウスは高価でしたけど、まあヒドイ乗り物でした。ブレーキがスイッチの様で、全然調節が効かなかったのに衝撃を受けました。しかしまあ、今日では言われないと気づかない程制御が上手になり、特別な意識もなくHVを選べる様になりましたよね。車種もプリウス以外、そして他メーカーからも沢山選べる様になりました。お陰で自動車の平均燃費は大幅に向上して、ガソリン販売量がはっきり低下する程日本では自動車の低炭素化は進んでいるのです。

一方HVで出遅れたEU、特にその中心であるドイツの自動車業界、すなわちVWは、ディーゼルエンジンで勝負に出ます。何故ディーゼルだと低炭素になるのか?ガソリンより燃えやすい軽油を使うディーゼルエンジンには、着火するためのスパークプラグがありません。ディーゼルエンジンは圧縮比が高く、混合気を高圧にすると温度が上がり、自発的に爆発するのです。スパークプラグを使うガソリンエンジンでは、ピストンが上に上がり、一番圧縮された上死点と言われるところに近づいた時に火花で着火しますが、その一点から火炎が広がるため、燃焼が不完全になりやすいのです。だから効率が悪いですが、ディーゼルは一様に燃えるので効率が良い、というわけです。ちなみに、ガソリンの自着火を(ほぼ)実現したSkyactive-Xというエンジンを市販しているのが、燃焼オタク集団のマツダです(みんな知らないよねー、売れてません)。じゃあみんなディーゼルにした方が良さそうですけど、そうもいきません。まず、エンジン自体が高額になってしまいます。燃焼温度が低いと、燃え残りのスス、いわゆるパーティキュレートという有害物質が出ます。最近はほぼ消滅しましたけど、昔のディーゼルは真っ黒な排気ガスを出して臭かった。では燃え尽きる様に燃焼温度を上げると、空気中の窒素まで酸化されて、光化学スモッグの原因になるNOxが出ます。排ガスが汚いのがディーゼルの泣き所。VW含め、最近のマツダのクリーンディーゼルなどは、どうしているかと言えば、気筒内噴射(直噴と言われる技術)やターボ過給などで燃焼制御を徹底的にしたうえで、それでも出てくるパーティキュレートはフィルターでこし分け、NOxは尿素水でトラップする、などして綺麗にしています。ただ、これはコストがかかる上に、徹底すれば効率の低下も招きます。日本ではかつて光化学スモッグの大きな公害問題が発生したこともあり、ディーゼルに対しては冷ややかでした。トラックやバスなどはディーゼルでしたが、一般車両ではほとんど使われず、石原東京都知事の時には東京からディーゼルを締め出すと言い始めたほどでした。一方自動車の密度が日本ほど高くないこともあって、EUではディーゼルは好調でした。特に低回転から力持ちのディーゼルは乗っても楽しく、EUのマーケットでは成功をおさめます。ちなみに、EUではガソリンと軽油の値段はほとんど同じです。日本だと1 Lあたり10円以上安いですが、それは製造コストではなくて、商用車に多いディーゼルを優遇するための税率の違いです。

はい、既に長くなってますが、そのディーゼルを低炭素の世界戦略への切り札として、VWはトヨタの販売台数を抜こうと(一時抜いたはず)どんどんディーゼルをプロモーションしていきます。同時に、今も続く小排気量ガソリンエンジンにターボ過給するダウンサイジングターボも低炭素技術として発展しますが、そっちは安いクルマ向け、より高級なのはディーゼル、でした。そこにきて、実は排ガス検査を不正にパスしていたことが発覚したのです。凄く手の込んだことをやっていて、コンピューターに予め検査場でのテストモードを感知する機能を仕込み、「今テストされてる!」と判断すると、パワーをぐんと落として排ガスを綺麗にする運転モードにプログラムを切り替える仕組みだったのです。排ガステストの時は走りませんから、パワーが規定通り出ていないことなんて関係ありません。これは、明らかに騙すことを目的にした、組織ぐるみの犯行ですから、CEO辞任で済むはずもなく、4兆円を超す賠償問題になったわけです。この事件後、検査方式自体も見直されて、実際に走っている状態で、燃費、パワー、排ガスなど測る方式も開発されているみたいです。まったく、お客さんを騙すなんてひどい話でしょ!

まあ、そんな悪事を働く企業はこの世から消滅してもらった方が良いですけど(ちなみに当時、私はVWのシャランというミニバンに乗っていました!ディーゼルじゃないけど)、そこはドイツにとってとても大切なVWですから、東京電力がつぶれないのと同じ様に政府からしっかり守ってもらい、今も存在しているわけです。生き残っているっていう元気の無い状態じゃなくて、新しい手で再びトヨタ殺しを企んでいるのが今日のVWです。

さて、ここでハナシは同じEUでもお隣フランスのルノーについて。ルノーは今でこそ民営ですが、長らく国営企業だったメーカーで、日本の自動車黎明期にはトラックで有名な日野自動車が「日野ルノー」というクルマをノックダウン生産していた時期もあり、自動車の作り方を日本に教えてくれた先生です。ゴーンさんのこととか、日産を買収したとかで、最近だと日本でちょっとイメージ悪いですか?で、ルノーがとった戦略がEVで、かなり早期から取組み始めました。ルノーに救ってもらった日産からリーフが登場するわけですが、ルノー自身もZOEというコンパクトEVを2012年から販売しています。当時から「ハハーン」と思っていましたが、EV戦略はHVで日本に敵わないからではなくて(それも少しある?)、原発です。EUで電力不安が無く、電気を輸出できるほど作っているのがフランスです。カナダのフランス語圏であるケベック州では水力で大量に電力が得られるので、Alcanというアルミの会社もありますが、電気化学の世界でもフランスには溶融塩電解の研究者がまだ居たりして、電気のフランス、なわけです。要するに、ヨーロッパの自動車がどんどんEVになると嬉しいのはフランス、ということですね。原発をやめ、石炭も減らさざるを得ないドイツだと取れない戦略です。同じフランスのPSAグループ(プジョー、シトロエン)もEVにかなり熱心で、先日私は最新モデルのプジョーe208というコンパクトEVを運転しましたが、とても良い乗り物ではありました。

さてさて、とは言ってもEUの地域は広大で、各国のエネルギー事情も違いますから、どんどんEVに、とはなかなか行きません。充電ステーションも都市部の整備がやっとでしょう。1日に1000キロ走ることだってあるかの地の自動車の使い方では、巨大バッテリーと言ってもそう簡単ではない。アメリカではEVのピックアップトラックも売り出されるみたいですが、使用環境に合う人以外、手を出しにくいでしょう。いくら充電ステーション増やしても、アメリカ広大です。それでも、パリ議定書以来、オールEUでのEV化を推し進めようというのが今の状態だと思います。ガソリンをやめるとは言っていませんし、ディーゼルも復権しつつあるし、HVやPHEVも日本より下手だけどやっています。そして、ドイツ(特にアウディ)は一足飛びにe-Fuelを進めようとしています。それはフランスに頼りたくないからでしょうけど、ソーラーや風力を大量に導入したドイツでは、電気が余ってしまうことが多くなっています。余った時には隣国に使ってもらい、足らない時はフランスの原子力の電気やポーランドの石炭火力の電気を買っているのです。表向き、環境先進国ですが、それは地続きのEU域内で調節出来て、マズい部分を肩代わりしてもらっているからです。ズルいぞドイツ!

それで、実際には販売の中心では全くないのですけど、EV版ゴルフといった感じのid3なるクルマをデビューさせ、「EVこそゲームチェンジャーだ!」みたいなことを声高に言っているわけです。恐らく来年ぐらいには日本にも上陸するでしょうね。どこまで本気かは疑わしいですが、株価をつり上げることには成功しているみたいです。さあ、そうしてEUはEVシフトをどんどん進めるのか?と思ったら、EU内にまともな電池メーカーが無いことに気付くわけです。それでVWが設立したのがNorth Volt社、というわけです。北欧が選ばれるのは水力によるグリーン電力が豊富なためであることは先日お伝えした通り。そして、ノルウェーでのテスラ対中国EVメーカーのバトルも、さらにボルボは中国の吉利(ジーリー)に買収されてEV化を熱心に進めていて、EV化の震源はスカンジナビアになりそうですね。

脱炭素をめぐる世界的取り決めで、EUの思惑通りにCFPを基準にして炭素税をかけることが可能になれば、EU製品を保護し、中国や日本の製品をシャットアウトすることが可能になります。それが目論見でしょう。パリ協定以来EUでは電源のクリーン化を大きく進めて、その準備が整いつつあります。対して目先の金を優先した中国やキョロキョロしてるだけでEUのしたたかな戦略を読み切れず、さっさと原発たたんで再エネの大幅拡大に取組まなかった日本は、今かなり不利な状況に置かれています。だから、EUのさらに先を行く改革に一刻も早く着手しなくてはならないんです。原発使うなら時限を決めて、それをたたむまでに再エネ80%以上を、それこそ2035年くらいまでには達成する勢いが必要です。日本製太陽電池の生産ラインも復活させたら?中国製品に関税かけて(不正だー!)。それから日本ではデカいEVには補助金出さない。マイクロEVカテゴリーを新設、優遇して輸出産業に育てましょう。これには他国は文句は言えません。長距離に実用的で低炭素に最強なのは、世界一の日本のHVです。しばらくはそれ(レンタル+シェア)を使い、その後グリーン水素によるFCVへの置換を進めます。都市部や日常使用なら航続距離150キロのEVで十分。長距離の移動が必要な時や、トラックにはFCVが最適。私が環境相ならそうするんだけどなー。どうでしょう、進次郎さん!

本当は、全固体Liイオン電池の問題(製造技術上大型化、量産が困難)も書きたかったけど、このへんでやめときます。


人新世

 最近この「人新世」(じんしんせい、Anthropocene、アントロポセン)という言葉をよく耳にする様になりました。地質学の年代として、人類の活動が地質に影響を及ぼす様になった年代として、従来の完新世(Holocene)に次ぐ時代として定義することが2000年頃に提唱されたようです。その始まりは、諸説あるみたいですけど、太平洋戦争の末期に、アメリカが世界初の原子爆弾、トリニティをさく裂させた時、とするのが有力みたいです。確かに、あれを境にして世界は変わってしまったと言っても過言ではない出来事ですよね。詳しい話はWikipediaの説明をどうぞ。

人新世 - Wikipedia

それで、人類の活動が地質に影響を及ぼすって、どういうこと?と思いますよね。例えば、温暖化によって地上から氷床が失われたり、人為的なCO2排出によって炭酸塩の形成が促進されたり、というのは地球の自然なバランスを人類の活動が変えてしまっていると言えます。さらにもっと分かりやすい説明として、以下の記事を見つけました。有料なので全部は見れませんけど。

地球に人類が爪痕残す…「人新世」はどんな時代? : 科学・IT : ニュース : 読売新聞オンライン (yomiuri.co.jp)

人は金属を作り、色々な産業機械を作ったり、コンクリートで建物を作ったり、道路の表面をアスファルトで覆ったり、人間が生活しやすい様に地球の環境を作り変えていったわけです。それらを作る原料は鉱物資源で、そこに大量の化石エネルギーをつぎ込んでプロセスしたわけで、大元は地球に存在した物質なわけですけど、これら人の手によって生み出された金属やコンクリートなどの物質、その総重量が1兆トンを超え、2020年に地球上の全生物の総重量を上回ったそうです。そしてあと20年でそれはさらに2倍に増えるという予想。これ、凄いですよね。確かにそうであるならば、地球という星のあり様を変えてしまう程の影響を人類が与えたということになります。

20世紀初頭には人工物の重量は生物の3%にも満たなかったそうですから、100年あまりのうちに、地球は大きく変貌してしまったわけです。私は1966年ですから人新世の生まれですが、当時の世界人口は35億人、今はもうすぐ80億人と2倍以上に増えていますから、僅か50年のこれまでの人生で、既に大きな世界の変化を目撃した思いです。実際、子供の頃(名古屋でした)オンボロの家の前の道は未舗装でしたよ。空は広くてスカスカ、虫や魚をとったり、泥んこになって遊んでいました。写真も残っているし、ついこの前のことの様に思えてしまうこともあるのですけど、テレビは小さい白黒だったし、エアコン無かったし、当然スマホなんて誰も持っていなかったし、今日を基準にすると本当に何もなかったですねえ。それでも、誰も困っていませんでしたよ。不幸せだと思ったこともありませんでした。

学術上の地質世は、短くても数千年の期間で区分されていますが、果たしてこの人新世はあと何年続くのでしょうか?続くことが出来るのでしょうか?自分たちの行動をそうして客観視して定義する様な知恵を得るところまで人類が発展したのは立派ですが、それを最後の世代とはせず、自らを持続可能とすることに成功する知恵も持っていると信じたいです。


2021年6月9日水曜日

脱炭素へ2030年までのロードマップ

脱炭素社会実現に向け、2030年(-46%削減目標)までに行う集中的取組みなどをまとめたロードマップが示されました。
2030年までの電力でのゼロカーボンを先行して達成する全国100か所の地域を設定することが盛り込まれ、秋田県の風力発電電力を購入している横浜市の喫茶店の例や、屋久島の水力発電などがレポートされています。計画の詳細については4月20日に環境相がリリースした資料が参考になります。
補助金争奪戦の匂いもしなくはありませんが、地域が取り組もうと動き始める仕組みを作ることは良いことだと思います。民間のESG投資も動くと思いますよ。脱炭素は国に任せるということではなくて、変化はむしろ地域から先に起こるべきでしょう。特に屋久島などは、ゼロカーボンを実現することが地域の誇りになると思います。島民が自らそれをより良い地域の姿と認識し、動き始めればその力は凄いことになります。米沢市や鶴岡市の取組みも、是非100の先行地域に採択されると良いですね。山形大学もお手伝い出来たら嬉しいです。
今回報じられた内容では、とにかく再エネの拡大であって、原発のことには一切触れられていないのはちょっと安心しました。実は今日あった環境研の脱炭素セミナーで、私がいつも苦言を呈している、政策ペーパーのあちこちに「原発再稼働、50年越えても運転」みたいなことが書いてあるが、先に政府は国民に原発をどうしたいのかを問うべきでは?という質問を(環境省の和田さんに)投げかけたところ、セミナーを視聴していた方(600人以上登録者があったそうです)から沢山の「いいね」を頂きまして、質問の1番人気になり、パネリストの方から問いかけに対する回答を得ることが出来ました(さすがに和田さんに答えさせるわけにはいかず、そちらには振りませんでしたけど)。ゼロカーボン技術の具体計画、コスト試算などをされている環境研の増井先生からは「原発を前提としないシナリオも準備している」というお話しでした(良かった!)。そしてそれを示した上で、選ぶのは国民であるべきと。座長の江守先生からも、「民意を問うのは民主主義の原則からいっても当然」「今度選挙があるから、それが民意を反映するチャンスになるのでは」というコメントがありました。ただ、こんな状況になってもまだ、エネルギーの問題が選挙の争点にはなかなかならないんですよね。我々の語り掛けが足らないんだと思います。
国政選挙はもちろんですが、そういう距離の遠いところだけじゃなくて、地元の市長さんや、県知事さんにも「あなたは脱炭素のために何をやってくれるんですか?」と是非問いかけましょう!変化は地域からです!

カーボンニュートラルを担う未来のリーダー

 資本主義経済がもたらした膨張を基本とした社会活動の拡大と脱炭素社会は両立するわけもありません。しかし国籍や人種、宗教などとは無関係に共通する人類の願いは発展的で健やか、自分自身の成長を実感出来て、未来への夢と希望を持ち続けることの出来る社会であり、どれだけ沢山(使いもしないものを)所有しているかなどではなくて、どれぐらい世界は良くなり、自分自身はより良い人として成長出来るのか、にかかっています。これは今までにやったことが無い変革へのチャレンジであって、それをこれからの30年で達成したいと言っているわけです。

30年という時間は、既に55歳となってしまった私には、責任を果たすことの出来る制限時間を越えてしまっています。30年後も生きているかも知れないけど、既に傍観者(社会のお荷物?)と化していることでしょう。一方、今学生をやっている人たち(このブログを見てくれていると良いのですが)は30年経ってようやく今の私の年齢に達します。つまり、この大変革を実行する、その人たちです。

しかし、カーボンニュートラル社会の実現というのが、如何に多くの課題を含み、それらが複雑に絡み合い、全てのセクターからの参加と協力が欠かせないことであるのかは、これまでに取り上げてきたいくつかの事例を見るだけでも明らかです。創エネとか省エネとかそういう技術課題だけでなくて、食料生産だとか、社会の物流システムだとか、それらを運用する社会のルール作りであるとか、全てを変革していかなくてはなりません。そして、どうやったらカーボンニュートラルになりますよ、という答えを年寄の世代が持っているわけではない、ということも覚えていて欲しいことです。「先生、どうしたら良いんですか?」「先生、答えは合っていますか?」といういつもの問いかけに対しては、返事が来ません。過去の世代がしくじったからこそ、今までこの流れ、持続しない形での社会の膨張を止められなかったわけで、古い世代はその問題に一緒に取組み、考えること、なぜそうなってしまったのかを振り返ること、これは出来るかも知れませんが、これから30年の挑戦を担い、実現していくのは、今学生である世代だと思います。

そうすると、様々な分野において、高度な知識と技能を持った主導的立場を担う人の存在が欠かせません。すぐに年上に甘えて、助けを求める様な、ついていくだけの弱っちい若者ばかりでは困ります。大きな課題、チャレンジであると同時に、それを担い率いるスーパーヒーローを社会が求めているわけで、それこそ我が人生と前に突き進むパワーを持った次世代が強く求められています。言うまでも無く、大学院博士課程で学び、高度な専門性を持った人材です。未来志向の気持ちだけで出来ることではありません。一方で社会活動に直結しなくても「学問は人類の文化ですから」と言っていられた過去の博士課程(私の時代)とも違います。本当の意味で、社会のリーダーになる人、そういう人には高度な知識、技能、見識を持っていてもらわないと、その役割が務められません。なので、以前よりも博士課程人材は社会的実践的役割を担う人としてリアルに求められています。

そして、そのことを当然政府も意識していて、有識者会議から政府に対して博士課程学生の経済的支援を拡充(自己負担ゼロで学問の集中できる環境の整備)するよう申し入れがされました。

博士課程の学生に経済支援を ”若者が活躍できる社会”で提言 | NHKニュース

全ての分野が重要ですが、特に理工系における女子比率の向上が期待されています。それは、歴史的に女性を排除してきた負の遺産を清算するということであって、活用の機会を逃していた人材に道を開くという意味があるでしょう。

博士課程人材はどう変化しているのか、それは5年ごとにまとめられて、公表されています。

科学技術政策担当大臣等政務三役と総合科学技術・イノベーション会議有識者議員との会合 (cao.go.jp)

H18年度をピークとして、微減しています。H30年度でも7万4千人あまりで全体数はほぼ横ばいと言っていいですが、実は内訳が大きく変化しています。会社員をし、給料をもらいながら博士課程にも在籍する、いわゆる社会人ドクターが44%にも達する程増加していて、反対に留学生を含むコースドクターはピーク時の5万5千人から大きく下がって4万2千人ぐらいに縮小しています。少し古い2015年データですが、8大学理工系について、博士課程学生2200名のうち、半数は留学生で、特に理工系分野は留学生によって支えられていると言っても良い状況です。

PowerPoint プレゼンテーション (meti.go.jp)

受入側の問題、学位を有する高度人材を日本の社会が十分に活用できていないことから、留学生からも見捨てられる傾向にあり、ちっとも増えていないのが大きな問題です(留学生は稼げるかどうかで判断する)。入れ物は作り、施設は拡充しても、肝心の担い手はやってこない。社会システムの一部として博士課程が機能出来ていないというのが問題ですね。

しかし、それがゆえにこの現状が変わっていくということを確信を持って伝えることが出来ます。今、博士課程への進学を迷っている学生さんへ、「絶対に進学した方が良い」です。もちろん、高い志と情熱、特に今後30年の社会変革を率いるリーダーとなるのだ、という決意の下に学び、努力貢献してください。あなたに全ての期待がかかり、全てのチャンスが回ってきます。それ以上エキサイティングな人生があるでしょうか?社会人ドクターなんて、絶対やめてください。私は何人も見ていますが、社会問題に対する現状認識がしっかりしていたり、自分が必要とするスキルに対するイメージが具体的であったりする一方、考え方に全くダイナミックさがなく、リーダーになれる人が居ません(飼い慣らされた人だから無理もない)。コースドクターは、危ない橋を渡ったからこそ、自分を信頼して挑戦出来るのです。「戻るところ」がある人なんて、伸びませんよ。社会人は目的がいわゆる箔を付けることだけなので、その学問をどう飛躍させるとかいう考え方が無い。だから、今学生の諸君は、奨学金だけもらって(私の時代はそれも無かった)、何の保証もない世界に飛び込んで、チャレンジしてください。そこから自分の生き方を見つけられるかどうかは自分次第です。それをしない限り、本物にはなりません。今世界はそういう人を求めているのです。「経済的にどうの・・・」なんて絶対に言い訳に使っちゃダメですよ。志あるところに道は拓かれます。



2021年6月8日火曜日

EVシフトを考える⑫

 先日⑨で話題にした、EV用充電スタンドの数を15万基に増やす、という目標に対して、横浜市では道路脇に充電スタンドを設置する実験が始まったと報道されました。

電気自動車の充電スタンド 道路脇に設置 利便性など検証 横浜 | 電気自動車 | NHKニュース

その詳しい内容については、これを推進しているe-Mobility Powerという会社のプレスリリースがあります。

20210608_EV充電器の公道設置に関する実証実験の開始について.pdf (e-mobipower.co.jp)

道路脇に、ピットインする様な感じで充電器があり、最大2台同時充電できる仕組みの様です。これの運用状況を見て、渋滞を発生させたりすることが無いか、など検証を進めるとのことです。

幹線道路を走っていたら、数キロごとにこういう充電設備がある、という様な感じならば、イザという時も空きの充電器は必ず見つかりますよね。ただ、急速充電でも30分ぐらいはかかるわけで、その間何をしたら良いんですかね?道路脇に止まっていても、何もやることがありませんよ。せめて飲み物の自動販売機ぐらい併設しないと利用客増えないかもしれません。フリーのWiFiを設置しといて欲しいな。そういうのアリとナシで利用状況を比較してみる、というのもいいんじゃないでしょうか。

そういえば、EV充電スタンドの拡大については、ただ数を増やすんじゃなくて、必要なところに行きわたるように、と豊田章男自工会会長も釘を刺してましたね。

“EV充電スタンド 必要な場所選んで設置を” 自工会 豊田会長 | NHKニュース

今回の道路脇実証は、そういう意味では良い取組みになるかと思います。道路インフラの一部ですよ。

果てしなき覇権争い

 G7を控えて、特にアメリカのバイデン大統領がアメリカの復権、アメリカを中心とした国際秩序の回復に躍起になっている様に思われます。特に中国との対立の構図が如実ですが、これは前回も書いた様に、ある意味アメリカと中国は似た者同士、どちらも世界の覇権を握りたいのだけど、そのアプローチが全く異なり、どっちが勝つのかの喧嘩になりつつありますよね。

まず、国内的には半導体や電池を中国に握らせてはマズいということ、脱炭素で主導的立場をとりたいという思惑から、研究開発投資の拡充を宣言しました。

米バイデン政権 投資拡大呼びかけ 国内生産や研究開発優遇へ | 米 バイデン大統領 | NHKニュース

これはウェルカムですね。私の共同研究相手(米の)も、特に脱炭素に向けた研究が加速するでしょうから(トランプ時代は冷え切った)、一緒に頑張りたいものです。当然、中国はこういう国際共同研究からシャットアウトしたいという思惑でしょうけど、最近は必ずどこかでつながっていますよね。

もう一つは、国外、特に途上国のインフラ整備に関する大規模な投資です。

米バイデン大統領 途上国のインフラ整備支援 新構想打ち出しへ | 米 バイデン大統領 | NHKニュース

こちらもやはり想定する敵は中国で、例の「一帯一路」だの、「海のシルクロード」だの、好き勝手にさせてたまるか、という敵意が見え見えです。日本を防波堤として、中国を封じ込める包囲網の形成、今度のG7でそれがさらにくっきりしてくるのではないかと思います。

一方で気候変動対策については、米中は協力関係にあるということなのですけど、

気候変動サミット 米中両国が気候変動対策では協力姿勢示す | 環境 | NHKニュース

本当に大丈夫ですかね?冷戦時代のソ連とアメリカが協力するとか言っているのと同じです。騙し合いになりはしないか、気候変動対策が骨抜きにならないか、心配ではあります。

2021年6月7日月曜日

EVシフトを考える⑪

 EVシフトについて考える上で、これまで大変に参考にしてきたのが以前にも紹介したYouTubeチャンネル、未来ネットの「EV推進の嘘」という座談会で、軟らかく厳しい指摘を出来るその語り口に感心してしまう、モータージャーナリストの岡崎五郎さんなどがEVシフトで世間が大騒ぎしているところに、それに関わる問題点などを鋭く指摘しています。この座談会自体、座長を務める加藤康子さんの意志ゆえだと思うのですけど、ちょっとナショナリズムに過ぎる印象は最初からありました。ただ、大体6回目ぐらいまではその内容にはほぼ全面的に同意、受け入れでしたけど、7回目ぐらいからちょっとおかしくなり、8回目、9回目はちょっとヤバイかなというぐらい右寄りのコメントが出始めています。

まあ、そもそも各国の政府が自国民の利益のために仕事をするというのは、ごく普通のことです。そこへもってきて、特に安倍政権に対して現政権が後退している、国際社会に対する妥協が過ぎると感じる人がいるのは、感じていますし、そういう思想の持主はきっと不満に思っていることでしょう。そしてまた、同時に日本人のお人よしぶりを非難する(同時にちょっと自尊する)様なコメントが散見されます。「私たちは世界のためにこんなに良くしているのに、それが認められない。また、その日本人のお人よしぶりゆえにに世界の列強は日本からどんどん搾取している。」こういうことを真顔で言う愚か者は、全く珍しくありません。「日本は戦後中国や韓国に対して財政支援したり、技術支援したりして、こんなにも良くしてきたのに、どうして連中は未だに我々をそうも嫌うのか、私には理解できない」そういうことを言う、愚か者です。世間知らずも甚だしく、世界が全く見えていない大バカ者です。スポーツの国際試合の後にスタジアムでゴミ拾いする日本人を報道したがる日本のメディアと、それを見て「日本人はエライ!」と感激するナショナリスティックな日本人・・・私はそれを見ると、日本が戦争を繰り返すことへの不安に襲われます。

日本という国は、特に隣人の各国に対しては搾取という搾取を繰り返し、極東の支配者として振舞ってきた恥ずべき過去があります。良心に基づくとして、大東亜共栄圏構想を正当化していますよね。西欧の列強が散々世界中でやってきたんだから、日本はアジアの覇者として、西欧の干渉は受けず、アジアはアジアで、優等国日本を頂点とする平和と秩序を構築する権利があるのだ、そういう愚かさが、330万人の日本人の命を奪う太平洋戦争へと日本を導いたのです。日本という国が、日本人が、本当にそんなお人よしだと思いますか?黎明期の日本は、韓国や中国から散々テクノロジーを搾取し、恩を仇で返す様に朝鮮に出兵し、関東軍が中国を侵略し、満州国が建国を宣言するわけです。戦後は、自動車や電機業界が欧米にスパイを送り込み、コピー品、リバースエンジニアリングを繰り返してのし上がっていくわけです。そしてまた、恩を仇で返す様に、ホンダは何も産業を持っていないオハイオ州政府に「工場建ててやるから土地をタダでよこせ」という人の足元を見た交渉を平然とやり、勝ち取るわけです。そして、そうしたガメツイ無反省な日本企業軍は世界侵略を果たし、銃後の日本人を潤してきました。満州建国と銃後の日本、時代とやり方は少し異なっても、思想には何の変化もないように思います。それは、お人よしがすることですか?本当に?そんなこと言えば、ナイーブ過ぎますよね。自分たちの強欲さから目をそらしてはなりません。誰か他の人がしたことだから、私には関係ない、私に責任は無いのだと思うのも卑怯です。いつの時代も、(日本の場合は特に強い雄たちが世界侵略の兵隊となって)そうして家族に餌を運び続けることだけを考えるのです。だから、今日の強欲極まりない中国も非難出来ません。いつか日本が来た道を辿っているだけです。時代背景とか環境がちょっと異なりますけどね。

で、それが当たり前だからって、そういうことを繰り返すことを、私は決して支持出来ません。忌み嫌う対象です。それを今日のEUがまだやろうとしている。LCA手法で算出されるCFPを基準とした産業を国際基準としようとするところの背景にある、西洋人が最も得意としてきた、「善人の顔をして悪事を働きまくる」、いつものやり方と重なって見えるわけです。カーボンニュートラルにしないと世界の終わりが来るから、それに対してEUは最も先進的に取組んできたんですよ、感謝してください。だから、これからの産業については我々がルールを決めます。反対は無いですよね?(出来ないよね?)ってことで、CFPの多い日本製品や中国製品はEU圏内で売ることが出来なくなります。これは合法的判断ですから、不正な自国製品の保護とかじゃないですよ、と言うための準備をしているんです。だから、先日話題にした、AESCはもちろんのことで、BYDも、CATLも、このままにしていたらいずれEUからは締め出されます。散々技術を盗まれ、中国の環境を実験場にされた後で、です。ただ、日本と中国の立場が決定的に違うのは、EUは中国の資源と市場を使い尽くしたいと思っていますが、日本はそういう魅力がありません。中国が持つレアメタルはEVを作るのに必須ですから、EUは表向き中国を激しくバッシングしながらも、裏ではそれらの供給確約をとりつけていて、中国にもメリットがある様に交渉を続けています。もし断れば、国際社会での締め付け厳しくする。対して日本は叩いても何も出てこない。EUから見て相対的に価値が小さいのは明らかです。

そこへもってきて、若干ニュートラルというか、実利主義的なのはアメリカかも知れません。イデオロギーなんて、どうでも良いというところがあります。アメリカ流自由社会を強制してくるかの様ですが、実はそんなことあまり気にしていません(特に共和党は)。だからサウジアラビアとも仲が良いわけです。金が基準で動いているわけで、ある意味アメリカと一番理解し合えるのが中国だと思いますよ(拝金主義の極み)。で、日本はかなり、イデオロギーなんですよ。日本が最高で一番正しいと心底思っています。だから、EUとはストレートに対立することになります。でも、クレバーなのはEUの方ですね。日本はお人よしっていうより、まだまだ世間知らずです。鎖国が長すぎたから仕方ないです。少なくとも中国を敵にしてはいけないですね。いつか来た道。ドイツ皇帝は自国を守るために、日露戦争を仕掛けたのですよ。日中を戦わせて一番喜ぶのは誰でしょう?ドイツと中国の蜜月ぶりが凄いですけど、中国人にもあんなのを信用しないで欲しいと語り掛けたい。本当の意味で互いを尊重し、平和と自由人権の下に人々が健やかに暮らせる先進的なアジアを共に築き上げたいですよ。人権問題で相容れないですけどね。今日的には、そこにアメリカに同調する日本、赤を嫌う日本があると思います。私も、基本的人権は何より大切だと思っています。

どこがEVのハナシなんだか全く分からなくなりましたね。要はですね、未来ネット第8回でドイツの新疆ウイグル進出をジェノサイドと言ってしまったのは行き過ぎです。ナチスドイツと重ね合わせるなんて。そんなことを言い出したら、相互理解とか協調とかって、絶対無理です。諸国の政府が自国民のことを思って仕事をするのは当たり前です。日本政府のそれに不満があるからって、それを日本はお人よしだから、とかって言って自己犠牲を払っているかの様なフリをするのは全く正しくないですし、理解し擁護される発言ではありません。ドイツはちゃんと戦後の清算をし、被害を被った国に対して謝罪しましたよ。対して日本はどうですか?こんなことであれば、信用信頼されないのなんて当然です。この未来ネットで池田直渡さんが引用している2017年の経産省のレポートは私見ましたが、これは安部政権の当時の戦略に思い切り寄り添った書き方をしているに過ぎず、こんなことを国際社会が認めると思ったら大間違い、というレベルの書き方です。日本は既に低炭素化のために沢山取り組んできたので、もう自国で減らせる分はさしてない。一方で新興国や途上国ではいまだに旧式のインフラでCFPが大きくなっている。だから日本の先進技術をODAして、諸外国を助けますから、それを日本の脱炭素への貢献として認めて下さいまし、というのがそのあらましです。当時は、まだ日本が先手を打てるかも、と経産省も思っていたのでしょう。いかにも、正しい主張の様に聞こえますが、そのインチキを見抜いたEUからはNOを叩きつけられ、現菅政権では遂に2050年カーボンニュートラルを宣言させられた、というのがここまでの流れです。諸外国を助けるんじゃないんです。日本の財閥系企業を助けると言っているんです。インストール先の国にはお金を請求しないけど、それを作った日〇とか東〇とか三〇にはちゃんとお金は渡りますよ。合法的に日本を支える財閥に税金を流し込む理由を作るわけです。本当の理由はそれだけ、でも表向きには国際支援になっている。国民もそれを信じている。「今の官僚はこのレポートを読んでいるのか?こんな立派なことが書いてあるのに!」という話になっていますけど(第9回で)、知っているに決まっています。霞が関は庶民よりもはるかに勉強していますよ。安倍政権時代には、こういうアプローチをしたら、話の流れを日本に有利に持っていけないかな?とトライしたわけです。先方は日本の数段上手で賢い、あくどいですから、足元見られて「ダメ」と来たわけです。そうこうしているうちに、低炭素、80%削減から脱炭素、100%にエスカレートし、日本に逃げ道は無くなりました。実現出来るかどうかは関係なくて、宣言し、宣言に基づいて行動することが必要なんですけど、「実現できるわけがないんだけど」などとやる前から言うことは許されません。宣言し、絶対にやると言い続けて行動するのです。しかし、出来ないことは出来ないと、皆が気づく時が必ずやってきます。それは誰のせいでもないです。そしたら必然的に軌道修正、現実的で最良の対策を議論することになります。「やれなくってもいいから」とやる前から言うな、ということです。

こういうことをグルグル考えていると、本当に誰が一番あくどいんだか、私には分からなくなります。私自身は、そんな手の込んだ悪事を考えられる程、頭も良くないし、小心者なので、良心の呵責に耐えられなくなります。でも、それをやってのけられる人のことを世間では優秀な人、勝者と呼ぶんでしょうかね。話伝わったでしょうか?このことがVWが出資するスウェーデンのNorth Volt社設立やCOP26におけるEU,英国からの日本包囲網につながるんですよ。日本政府の代表は覚悟して闘いに挑み、全部言いなりになって帰ってきてはならないという使命感を持ってもらうしかないですね。今週はG7首脳会談です。菅総理頑張ってくださいね。共存共栄という思想は連中には無いですよ。日本潰しに中国やロシアも利用されます。それを分かっていて、変える力が無いから日本はアメリカにすり寄る。でも、自国の利益のことだけを語る時代ではもはやない、というのも本当だと思いますよ。世間知らずのお人よしは困るけど、一方で自国第一主義も同じくらい世間ずれしていると思います。テクノロジーは刷新されたのに、思想は古い。そういうのが続いている様に感じられます。あるいは、その思想ってのは決して変わることの出来ないものでしょうか?持続性を最上位概念として、活動を再定義したら、より良い世界を創るためのリーダーシップも再考されるのではないかと思います。世界の模範となり得る様な持続可能社会への挑戦を見せられないものでしょうかね?日本は後手後手の様になっているのが大変歯がゆいです。


2021年6月6日日曜日

ペットボトル国際会議

 この週末は子供を連れてキャンピングカーで山へ海へと遊びに出かけました。はい、CO2沢山出しています。すいません。

初日は月山をハイキングした後、鶴岡のあつみ温泉へ。公共浴場で汗を流した後、「道の駅あつみ」で宿泊しました。スーパーで買った売れ残り半額のお惣菜をつまみに、缶ビールで乾杯、ぐっすり寝て、翌朝も天気が良かったです。道の駅あつみの裏手には磯があって、魚釣りの人も来ていました。海を見ながらまず家族で輪になってラジオ体操!その後海岸線を散歩してビックリ!。プラスチックゴミが落ちているであろうことは予測していました。しかし、そのゴミたちの国籍に驚きました。同じ場所に落ちていたペットボトル、一つはハングル(韓国)、一つは中国、一つはロシア、もう一つキリル文字で書かれているのは水じゃなくてケフィア、もう一つのプラボトルには100% AUSTRALIAN MILKと書かれています。え、山形、日本海側ですよ。はるばる、オーストラリアのゴミがここまで流れ着いたのでしょうか?

大きな問題として認識されつつある、海洋のプラスチックゴミですが、現場を見るとリアルにそれを感じます。このバラエティーには私も娘も驚きました。本当に、長い距離を旅してここまでゴミが流れつくなんて、逆に自分が今捨てたゴミが一体どうなるのか、そういうことを考えさせられるのではないでしょうか(で、捨ててはいけないと強く感じる)。近くにあった、日本のペットボトルゴミも加えて、記念写真を撮りました。何だか、ペットボトルゴミの国際会議みたい。山形県の海岸の片隅に、こんなにも国際的な集団があったなんて!

どうです?この多国籍ぶり!左から、韓国、ロシア、中国、ロシア、オーストラリア、日本、です。
「道の駅あつみ」の裏手にある磯の全景はこんな感じ。散歩にとても気持ちいいですよ。しかし、上の写真の様なゴミがたまる箇所があちこちにあります。


2021年6月5日土曜日

温暖化の恩恵!?北極海航路

 地球温暖化によって、氷河が消滅し、北極や南極の氷が溶けていることはご存知の通り。宇宙から見た地球の白い部分が小さくなることで、当然太陽光の反射率が低下し、より地球が温められる様になって温暖化が加速すると考えられています。先日のPETMのことで話題にした、永久凍土の融解によるメタンの大量放出も心配。しかし、北極海の氷が溶けたことで喜んでいる人たちもいます。船が通れる様になって、北極海を経由した物流が可能になること、さらに北極海に眠る大量の化石燃料へのアクセスが可能となることです。以下のレポートをどうそ。

“北極争奪戦”攻勢強めるロシア 資源や北極海航路めぐり米中も関心 - YouTube

特にロシアにとっては、大きなチャンスの到来でしょう。その恩恵を独り占めさせてなるものかと中国、アメリカ、そして日本もこの変化に介入しようとしています。今後の国際秩序に大きく影響しそうで、とても平和裏に片付きそうにはないと思われます。南極も今後開発の対象になることでしょうね。

地球の資源を活用すること自体が悪いわけではありませんが、それがどれぐらい未来志向で、持続性と世界の平和を最優先に行われるかが問題です。一部の人が当面の利益のためだけに開発を進めれば、格差はより拡大し、新しい秩序を生むだけで、紛争の原因は無くならず、対立の構図はより複雑化深刻化することになると思います。これまでの人類の歴史と人の本性を考える時、残念ながら良い方向には行きそうに思えません。だから一番大切になるのは人の進化であって、より良い世界とは何かを再定義して、持続性を最も価値の高いものであると考える人たちが今後の世界を創っていくことだと思います。世代交代によってその大転換は可能になると信じたいところです。

それにしても、ブログのネタが多すぎて大変です・・・

超音速旅客機再び

 コロナウイルス感染拡大のために、世界的な人の往来が著しく制限された状態が続いていますが、米ユナイテッド航空は従来の2倍の速度(ほぼマッハ2)で飛行する超音速旅客機を導入する計画を発表しました。

米 ユナイテッド航空 超音速旅客機導入へ 移動時間を半分に | NHKニュース

速度が倍なら移動時間は半分なわけで、例えば東京とサンフランシスコが6時間になるとのこと。超音速旅客機は、学生さんなどあまり知らないかも知れませんが、フランスとイギリスが共同開発したコンコルド(1976年就航ー2003年退役)が有名で、やっぱりマッハ2でした。ジェット戦闘機を大きくした様な特殊な機体形状ですから、多くの乗客を運ぶことは出来ません。エクゼクティブ級ビジネスパーソンの超エクスプレスとして、それでも確固たる需要があるということなんですかね?でも、大変時代錯誤な印象を受けました。新しい超音速旅客機の開発を進めるのはブーム・スーパーソニックというベンチャー企業だそうです。

コンコルドが消滅したのは、もちろん古くなったからというのもあります。退役する少し前に墜落事故を起こしてしまいました。超音速で問題となったのは、空気の壁を形成することによる著しい燃費の悪化と衝撃波(マッハ1の時)が発生する騒音などがありました。航空機が高くて座席が少ないからだけでなくて、運用にも大変な費用がかかり、さらに大変な環境悪だったのです。ジェット戦闘機がマッハ3とか出せるのは、アフターバーナーというエンジンに過負荷をかけて燃料の追い炊きをかけた時だけで、通常の移動時は亜音速らしいですよ。だから、マッハ2で飛び続けるというのは、とんでもない燃料消費をすることになります。このご時世ですので、ユナイテッド航空は100%再生可能な燃料で運用する計画、と言っていますが、それって前回書いたモンスター級EVをエコだと言うのと同じじゃないでしょうか?例えばバイオ燃料を使っているから、それをガンガン燃やしてマッハ2で飛んでも問題ない、と主張するわけですよね?その燃料を別のもっと有用なことに使った方が良いと思う。再エネであるから、というのを根拠に何でもやっても良いという様な行動をとるのは、やっぱり恐竜的であって、絶滅対象ですよ。悪あがきはやめにしましょう。

確かに、狭いエコノミークラスの座席で、ヨーロッパや北米まで12時間以上移動する時は大変苦痛で、もっと速く飛べないの?と毎度思います(エコノミーしか乗れないからであって、ビジネスクラスなら苦痛じゃない)。それを大幅短縮する手段があれば、重宝することがあるのは事実でしょう。しかし、コロナ禍で学んだのは、それこそ光の速度で移動して場の空気感を共有できるデジタル通信ツールがあることが分かり、それに実際依存して様々な国際的協業が可能となることです。なので、アナログ的思考の延長上で、スピードを上げ、時間を短縮する、という考えもまた、古臭いですよね。例えば観光旅行のために移動するならば、むしろ移動の時間を楽しむべきでしょう。1時間足らずで目的地に着いたら、「遠くに来たんだな」という感慨さえ得られない。新しい場所を訪れたりする喜びを続けたいのなら、真剣に電気で飛ぶゼロエミッション旅客機の開発を急ぐべきです。静かで、クリーンな。さすがに太陽電池は無理だから、水素燃料電池でしょうね。水素を大量に積む・・・。かつてドイツが誇った飛行船、ツェッペリンは水素を使って浮かび上がっていました。漏れて発火する危険が当然あって、ヒンデンブルグ号は大爆発(1937年)事故を起こしています。それこそ、浮上に燃料を要さない飛行船なんて、これからの移動手段としてアリじゃないですか?ヘリウムを大量に使うことは出来ませんけど、浮上だけでなく、航行にも水素を使って(水素燃料電池)。今の技術ならば安全に出来るはずです。トヨタミライは多分爆発しないですよね?そう、世界中を高速鉄道で結ぶのもアリですよ。経済格差や国際紛争を無くさないと実現不能ですけどね。

2021年6月4日金曜日

EVシフトを考える⑩

 EVのハナシも遂に10回目になりました。あまり長く書きたくないですが、まずはモンスターEVの馬鹿らしさについて。スポーツカーメーカーとしてその名を馳せてきたポルシェはタイカン(「体感」じゃないよ)というEVスポーツカーを販売しています。そのレポートは動画等含めてあちこちあるので、興味のある方は見て下さい。きっと素晴らしい走行性能であろうことは疑いようがありません。実は私、ポルシェに乗っていたことがあります。997というコードネームの911というガソリンエンジン(3.6 Lで325 PSという控えめのヤツ)のクルマをなんと新車購入した馬鹿者です(その前にボクスターというのも乗っていた)。いや、相変わらず自動車好きなので、これだけは誤解の無い様に言っておきますが、確かに、20世紀に始まった自動車産業が進化し、物凄い自動車を生み出すまでになったことは事実で、そうした高性能車を生み出すこと自体が過ちだったと言うのはあまりにナイーブです。工業製品として正常に進化を続けて到達した極みと言えましょう。私が乗っていた911はギリギリまだ楽しいと言えるスピードであり、大変な感銘を受けた、自身の自動車経験の中で頂点にあるクルマであったことは間違いありません。文化文明テクノロジーの進化の象徴としては、高性能なスポーツカーは博物館にとっておかなくてはなりません。しかし今やヘビー級スポーツカー(やスーパーSUV)はそれを遥かにしのいで無用と断言できる程になってしまった・・・。自らの拡大を止めることが出来ず、遂に絶滅した恐竜を想起させます。これを続けたら自動車文化そのものが滅びるのです。乗り物としてのタイカンは恐らくポルシェ流に洗練されまくっていて、乗って悪かろうはずがありません。しかし・・・。

タイカンの最上級、ターボSというモデルは、静止状態から時速100キロまでの加速に要する時間がたったの2.8秒です。最高速度は控えめな260 km(ははは・・・)。93.4 kWhのバッテリーを積み、とても重いクルマなので、電費は悪く、実質3 km/kWh程度だそうです。電費の優等生はEVのパイオニアと言える日産リーフで、実質8 km/kWh程も走る様ですが、実は新型になって、若干ですが電費が悪化しているみたいです。客の要望に応じて豪華で大きくなり、モーターのパワーも向上すれば、当然効率は低下する。燃焼制御によって飛躍的に燃費が向上した内燃エンジン車は、さらにハイブリッドで大幅に効率向上しましたが、EVに関してはkWhあたりの走行距離は今後もさして伸びないでしょう。EVは元々効率が高いのです。エネルギー回生制御による伸びしろもさほどなく、むしろバッテリーが過熱しない様にチビチビと電気を出すのが一番効率向上に効果的です(出すのも入れるのも、小さい電流にすると損失が減るのがバッテリー)。EVが注目される様になって以来、その効率の良さは忘れ去られ、運動性能や航続距離ばかりが注目されている様に感じます。

で、そのEVへの注目を巻き起こしたのは、やはりテスラでしょう。今年登場した最新のEVスポーツカー、テスラロードスターは、あきれる程の高性能車です。普通のモデル(爆笑!)でも0-60 mph (96 km/h)の加速が2.1秒、オプションの「スペースXロケットスラスター」なるものを装備すると、それがなんと1.1秒(!!!)になるのだそうです。乗員が気絶しますけど、いっか、自動運転でしたね!最高速度は400キロを超えるそうです。カッコイイですよ、画像は以下にあります。

0-96km/h加速がたったの「1.1秒」! 新型テスラ ロードスターがロケット搭載!?  | clicccar.com

で、これがもちろん必要となる性能でないのは明らかです。必要かどうかの問題じゃなくて、一番凄いモノを手に入れたいという人の欲望に応えるということですよね。きっと色んな制御が入りまくって、危険な状態には陥らないのだと思いますが、スポーツしているのは自動車のほうであって、運転している腹の出たオッサンではないですよ!要するにですね、技術が新しくて考え方が古いのです。デッカイ液晶画面が付いてるとか、無線通信してるとか、そんなギミックはどうでも良いです。技術は最新の2021年製ですが、こんなものを欲しがる人は、20世紀型、恐竜時代の思想の古い人たちです。

もちろん、このロードスターはテスラにとってのシンボル的車両であって(こんなものをシンボルにするな、と個人的には思えど)もっと効率が良くて安くてコンパクトなEV(モデル3という車両)も主に上海工場で作っていて、販売が伸びているのはこちらです。日本での価格は429万円で、80万円の補助金が付くから実質349万円。テスラはさらに安価なモデルを準備していて、いずれ200万円を切るモデルも出てくる様な噂がありますが、性能、航続距離は妥協せざるを得ないでしょう(これは物理法則なので奇跡は起こりません!)。で、そんなのが出てきたら、日本車はやられるぞ!とテスラの凄さを強調する五味康隆さんのレポートがありました。

「このままでは日本車は本当にヤバい」自動車評論家が決死の覚悟でそう訴えるワケ (msn.com)

私はテスラを運転したことがないので、テスラがどうかを語る立場にはありませんけど、想像は出来ます。EVはある部分ではエンジン車に勝るでしょうけど、全てにおいてではありません。上記のコラムでは、上海の新興EVメーカー、NIOのことも書かれています。確かに、他国がやりたくってもなかなか実現出来ていないバッテリースワップ式(充電済みの電池と3分で交換)を導入するなど、見るべきところが多いです。自動運転技術についてもテスラ以上と言われています(しかし、レベル3以上の自動運転を可能とする法整備には時間がかかりますよ、中国以外は)。NIOのクルマが日本に入ってくるのは当分先(永久に無い?)でしょうから、全く馴染みがないでしょうけど、ご関心のある方はグローバルのウェブをご覧ください。

NIO - Home

これ、開発している技術者がほとんどヨーロッパから来ているみたいです(特にドイツ)。EUで実践出来ないことを中国政府がやらせてくれる。法律も実験に合わせて変えてくれる。なんと有難い!?今やこういう開発競争において、中国は計画経済の強さを如何なく発揮していると言えますね。でも、EUはさらにしたたかですよ。自動運転も全固体電池も危ないうちは全部中国でテストし、進化させて、最後はEUに持って行った上でアジア製品をシャットアウトします。なんでそんなことが可能になるのかは多分今回は長いので書けません。次回以降。そのうち。

NIOの全固体電池(2022年と言われる)は150 kWhだそうです。ワンチャージ1000 km以上を豪語していますが、実質はせいぜい600 kmでしょう(電費4 km/kWhとして)。でも、それなら1日で消費し切ることはなかなか難しいし、スワップステーションの数が足りれば3分で「満タン」になります。「本当?」と疑ってかかる人もあるでしょう。発火などの事故を起こす可能性はあるものの、技術的には高性能で長距離可能で半自動運転が可能なEVってのは、不可能ではないと思います。それなら従来の高級車市場がこれにどんどん置き換わって、発展するでしょうか?ある程度は行くかもね。恐竜世代は買うかも。しかし、こんなモンスターEVたちには未来は無いと確信します。

そもそも、そんな巨大なバッテリーは滅茶苦茶高い上に、大量の希少な化学品を要し、製造にかかる環境負荷が高く、大量生産などしてはなりません。さらに製造と使用に要する大量の電力を一体どの様に得るのでしょうか?これ以上化石燃料は使えないし、原発も少なくとも拡大は難しい。再エネは必要分を賄えるまで拡大するのが優先で、おもちゃで遊ぶために準備する程の余裕は無い。そして、そういう超高性能なEVが不要であるという事実にいずれ気づいて(それか恐竜世代が絶滅して)、大幅に伸びたりは絶対にしないと思います。そもそも、環境負荷など顧みずにスピードに酔いしれる恐竜世代は、1リットル1000円でもガソリンを買ったら良いじゃないですか。そしたら、昔のF1エンジンでも何でも使って、狂気の雄叫びを上げながらこれ見よがしに爆走したらいい(迷惑だけど)。太陽光発電による電力で水とCO2を還元して水素とCOを作り、フィッシャートロプシュ反応で合成グリーンガソリンを作ったらいいです(リッター1000円では買えないぐらい高い)。要するに、モンスターEVはそれと考え方が全く同じで、未来の無い乗り物だということです。

一番現実的で、有用なのは、トヨタが販売を予定しているC+podの様なEVです。

トヨタ C+pod | トヨタ自動車WEBサイト (toyota.jp)

二人乗りで、性能は控えめ、軽いから日常使用には十分な航続距離があり、バッテリーも小さいので安価、環境負荷低、充電速い、電費良い、良いことずくめです。先進的な運転支援や安全装置は当然入ります。これは二人乗りですが、四人乗りで少し荷物を積めるバージョンも出るでしょう。今や軽自動車だって十分快適なのですから、乗ってて危険を感じる様なことはないと思います。今日常的に使っているクルマをみんながこれに換えてくれたら、それだけでも相当低炭素が進みますよ。ただ、やっぱり電源の脱炭素が前提ですけど。電源が汚いなら、燃費の良い軽自動車やコンパクトカーと環境負荷はさして違わない。

「ちっとも面白くない?」そう思う人は少し恐竜の血が入ってますか?(かく言う私は明らかに恐竜の生き残りです)これだと持続するんですよ。だから価値がモンスターEVより高い、より先進的で優れている、普段乗っている大きすぎるクルマをこれに換えることはカッコイイ生き方である。そういうのが本当のEVシフト(思想のシフト)で、全然我慢や諦めじゃなくて、進化と成長ですよ。長距離の移動が必要な時はFCVをレンタルしたらよろしい(シェアリングでも良い)。こういうの作らせたら、日本はまだまだ強いと思います。ミニマリズム、盆栽、日本人の美学。だから、五味さんはテスラを美化し過ぎ。私は全然同意出来ません。本当にバッテリーをじゃんじゃん作ったら、地球環境は即死ですよ。その前に過ちに気付いて止まります。資源がもちません。だから、日本はどんどんこういうミニマルEVを開発して、街の景色を変えちゃいましょう。そしたら、アメリカも中国も、EUも入ってこれません。軽自動車にこそ、日本のオリジナリティーがある。その考え方は、今最も進歩的だと言えます。問題は・・・儲からないんですよ。小さくて安いクルマは利ザヤも小さい。そこを政府が助けてあげてください。モンスターEVには支援ゼロ、ミニマルEVは補助金タップリで、今の軽より買いやすいぐらいにする。ミニマルEVが進化すると、世界が(特にこれから需要が伸びる途上国の都市部では)「あ、あれ良いな」となって、強い輸出産業になりますよ(以前紹介したPCXエレクトリックからの上級移行)。日本国内で、早く電源のクリーン化を進めること。ミニマルEVを優遇する道路交通法の改正など、購入の補助金以外でも色々やれる支援はあります。モノ作って沢山売ることしか考えていない古い世代は発想が貧困なんですよ。だから恐竜は絶滅したの。もう食べ続けるのやめなさい。

本当はもっと書きたいことがあるのですけど、とても長くなったのでここらでやめます。EVのハナシはまだまだ続きますよ。




世界環境デー

 明日、6月5日は「世界環境デー」だそうです。

環境省_環境の日及び環境月間 (env.go.jp)

毎年テーマがあるようで、2021年のテーマは「生態系の回復」です。もちろん、野生動物や植物の多様性が維持され、バランスしている健全な生態系は、全ての基本であり、その美しさ自体がこれを守り抜く十分な理由になるわけですけど、さらに人類の暮らしに対する直接的影響を与えるのは食糧の問題です。国連食糧農業機関(FAO)は2021年から2030年の10年を「国連生態系回復の10年」と定め、気候危機との闘い、食料安全保障と水供給、生物多様性の保全と強化への対策として、「劣化あるいは破壊された生態系の回復を促進する」とされています。

2021-2030年 国連生態系回復の10年 | FAO駐日連絡事務所 Liaison Office in Japan | Food and Agriculture Organization of the United Nations

環境デーの過去のテーマを見ると、水問題だとかプラスチック問題だとか色々あったわけですけど、結局それらは個別の問題ではなくて、持続可能でない水や肥料の使用を前提とした農業の拡大によって環境の破壊が進み、その結果として生態系が劣化破壊されたということでしょうから、それを回復するためには全ての課題に取組まなくてはならないということですよね。そして複合的な原因の結果として、既に多くの生態系が劣化破壊されてしまった、という認識なわけです。SDGsの目標が相互に関係していて、17のうちのいくつを達成出来るか、ではなくて、全部達成しなくてはならないのと同じで、生態系の回復の名の下にそれを壊した全ての原因に向き合わなくてはなりません。

2021年6月3日木曜日

PETM

 今回は古気候学のお話。先日5月31日に行われた第2回目のYU-SDGs cafeで講師のお一人だった東京大学の安川和孝先生からPETM (Paleocene-Eocene Thermal Maximum)についてお話をうかがい、ビックリしたのでそのことについて。今回のSDGs cafeはとっても面白かったです。地球温暖化について、3名の若手の先生が全く違う視点から講演されました。東京海洋大の稲津先生は気候変動データの実際について、九大の辻先生は炭酸ガスを地中に埋めるCCSについて。これらについては、私相応に理解がありましたので、より詳細を知る良いお話だったのですが、安川先生のPETMについては、その内容と起こった事をほとんど何も知りませんでした。確かに「地球は過去に凄く温暖化した時期があって、今の温暖化も自然現象の一つだから人為的な温暖化は嘘だ」と主張する人たちがいるのは知っていましたけど、実際に危惧されるのはPETMよりも恐ろしい変化で、やっぱり今の温暖化は自然現象なんかではないと思います。SDGs cafeを見逃した方は、YouTubeで見ることが出来ますよ。以下のページにレポートとビデオへのリンクがあります。私、大変興味があったので色々質問しちゃいました。

【開催報告】第2回YU-SDGsカフェを開催しました(5/31)|YU-SDGs EmpowerStation|山形大学 (yamagata-u.ac.jp)

さて、話をPETMに戻します。Thermal Maximumは良いとして、PaleoceneとかEoceneって何?Paleoceneとは「暁新世」(ぎょうしんせい)6600万年前から5600万年前の期間、Eoceneとは「始新世」(ししんせい)で5600万年前から3390万年前の期間だそうです。それで、丁度その間の僅か20万年(地球の時間に比べたら短い)ぐらいの期間に地球の気温が5℃から8℃ほども上昇したのです。これは地球上の生命を全く作り変える程の影響を与えましたが、何故それが起こり、そして収束したのかについては解明されていないようです。私がいい加減な説明を続ける前に、PETMに関する以下の10分程のYouTubeビデオをおススメします。私が大好きなHank Greenさんが軽妙な語り口でPETMを解説してくれています。上記リンクのWikipediaの説明読むのより楽だと思いますが、全編英語です。自動翻訳で日本語字幕出せますが、かなりハチャメチャな訳です。

The Last Time the Globe Warmed - YouTube

特に極地での気温上昇は凄くて、北極や南極の気温は平均23℃、水温20℃で、南極のビーチで泳げたことでしょうね。当然氷は無いどころか、今でいう熱帯雨林が極地にまで広がり、ワニ、カメなどの両生類やシダ類、イチョウなどの暖かい地域の植物の化石が実際に見つかるようです。逆に赤道付近の気温は36℃にも達し、生き物が暮らすには厳しい気候だったようです。なぜそれが始まったのかは良く分からないものの、鉱物の分析などから大気中のCO2濃度がスパイク状に急上昇していたことが分かっています。大量のCO2のために海洋が酸性化して、特に海洋生物が著しい打撃を受けた一方で、陸の生き物は生き延び、この時期に霊長類が台頭することになったようです(人類はまだ)。だから、仮にこれだけ気温が上がっても、生き物が全て滅びるかと言えば、そんなことは無いのでしょう。もしそうだったら私たちは存在していません。

この時期に形成された鉱物には植物が濃縮する12Cの13C(同位体)に対する比が上昇しており、大気中に放出されたCO2は植物起源であると考えられています。理由は定かでないものの、永久凍土のメタンハイドレートが溶けて、メタンが放出されてそれがCO2になったという説が有力です。年間17億トンものCO2が4000年間にも渡って放出されたと考えられ、この様な大きな気温上昇を招いたわけです。どうしてそれが終わったのかは良く分からないものの、シダ類の浮草が大量発生し、それが海に沈んで大気中のCO2濃度を低下させたと考えられています。だからまあ、自然に回復するということですかね。

そうした気温の上昇と低下が自然現象であるならば、不可避だし、心配してもしょうがない。今の人類社会に大きなダメージがあったとしても、生命は続いたのだし、きっと自然の回復力ははるかに強大なのだ、と思いたくなる気持ちも分かりますが、PETMと今起こっている温暖化は違います。それが先日の安川先生のお話でもあったのです。現在の人為的CO2排出では毎年98億トンとPETMの時期の5倍以上で、世界の平均気温も僅か100年で0.7℃も上昇してしまいました。PETMの時期には1000年くらいかけてそれが起こったので、全く未経験の速い気温上昇です。心配されるのは、この人為的影響による気温上昇がトリガーとなって、PETMの時の様にメタンハイドレートの融解が起こり、温暖化を一気に加速する正のフィードバックループが作用してしまうことです。最近シベリアで多数発見されているメタン爆発による巨大クレーターは、既にその始まりを示している様に思われます。だとしたら、PETMを超時短で見る様な気候の暴走をもう誰にも止められない?いや、恐ろしいですね。人類は未経験なものの、PETMを乗り越えて命がつながれたことは歴史が証明しています。ただ、我々人類が今の様に暮らしていくことは絶対に無理だろうと思います。

温暖化の暴走が起こると地球環境がどう変化するのか。少なくともそれはPETMが残した傷跡を調べることで分かり、今後を予測することが出来るのですね。でも、それ起こって欲しくないなあ。

2021年6月2日水曜日

グリーントランスフォーメーション

 「DXってなに?」「そりゃデラックス、の意味だよ」「いや、デジタルトランスフォーメーションって意味なの!」「何それ?」「そりゃ決まってるじゃない・・・え?」

皆さん新語作るの好きですよね。作られてはすぐに忘れ、捨て去られ・・・。今回の話題はGX、グリーントランスフォーメーションです。でそれは「再エネ等の拡大でGHGを排出しない社会に転換し、地球環境を変革する」ということらしいので、ほぼカーボンニュートラルの実現と同義です。なので、数年の流行り言葉で忘れられては困ります。向こう30年の挑戦ですから。

で、そのGXが急務である、ということを含め、新しく経団連の会長に就任した住友化学の十倉雅和さんのインタビューが今朝のNHKニュースで放送されました。4分強ですが、以下のリンクで見ることが出来ます。

待ったなし!グリーン・トランスフォーメーション 経団連・十倉新会長に聞く|おはBiz キーワード解説|NHK NEWS WEB

住友化学の低炭素化、脱炭素化の取組みについても紹介されています。化学系企業として、大きな役割を果たせるでしょうから、期待するところは大きいですね。それだけではなくて、経団連の会長として、GXへの取組みが経済産業界の務めであると強調されています。ただ一方では、「原発は不可避」という持論も述べられています。「これからの経団連は、経済界、産業界の利益のためだけではダメ」「経済学とか経営は人を豊かにするためなのだから、その原点に戻って…」とお話しされています。経済がヒドい状況になって、豊かであるというのはあり得ないでしょうけど、果たして経済が活況を呈すると人々が豊かと感じるかどうかは、「豊か=幸せ」と読むかどうかで決まってきますよね。「豊か=お金やモノが沢山手に入る≠幸せ」だとして、人々が求めているのは「幸せ」であるのだから、果たして当座GHGは出ないものの、危険な廃棄物の処理問題を後世に残し、常に万一の事故の危険に怯えて暮らすことを避けられない、原発と共に生きる暮らしを「幸せ」と感じるかどうかは疑問です。「議論しないのが一番ダメ、原発をどうするかをちゃんと議論しないと」は全く同感です。しかし、その挙句原発を選ばざるを得ない結論になる、と明らかに匂わせていることについては同意出来ません。原子力は本当の意味でサステイナブルとは言えないですし、それを頼みにすることが少しでも再エネ拡大への努力を妨げ、スピードを低下させるのであれば、封印しなくてはならないと私は思います。

ただまあ、どちらにしても、核のゴミの問題がどうにもならない程大変になる前にこの世を去っていることが確実な世代があまり誘導しない方が良いです。このことは、本当に未来の世代に決断を委ねた方が良いと思います。失うかも知れないことと、得るかもしれないことの両方をこれまでの社会システムを作ってきた世代が包み隠さず正しく示して、若い世代に議論してもらい、決めてもらうのが一番公正で、知識や経験を既に得て、先にこの世からいなくなる古い世代は次の世代の決定に対する応援と手助けをすることだけに努めるべきと思います。影響力大きいですからね、バイアスをかけないで、ということだけです。経団連会長じゃなくって、一人のおじいちゃんとして考えたら、また別の考えが頭をよぎる様にも思うんだけどなあ・・・全然悪い意味じゃなくて、ですよ。

最後にもう一つ、「太陽光発電は場所が足らない」とおっしゃってますが、場所余ってますよ、山形には!あと、そのために開発が進められるのがBIPV (Building Integrated Photovoltaics)(建材一体型太陽電池)で、都市のビルの屋根だけでなく、窓や壁など側面にも使おうというものです。まだまだ太陽光発電のポテンシャルはあるのですよ!

EVシフトを考える⑨

 今日は、日本国政府が2030年までにEV用充電スタンドを今の5倍にあたる15万基に増やす目標を掲げたことが報道されました。

クルマの電動化加速へ新目標 EV充電スタンドを5倍の15万基に 政府(NHK)

これは言うまでもなく、2035年までの自動車電動化目標(まだ法律ではありません、BEV, PHEV, HV, FCV全てを含みますので、非ガソリン化ではありません)への変化を加速したい、そのためにはインフラ整備が重要、ということです。しかし、現実には補助金まで使って建てたまだ使える充電スタンドが利用が少ないことなどを理由に撤去され、充電スタンドの数が減少傾向にあることは前にお伝えしたとおり。やるからには、民間任せではなくて、採算性など関係なく必要な場所に十分行き届く様に計画的な設置を進めることが重要と思います。

しかし、「ガソリンスタンド並みに利便性を高める」という目標に対しては、15万基でも果たして十分かは疑問です。国内では自動車の数が増えない上に、燃費が大幅に向上して(良いことだ!)ガソリンの需要が低下し、ガソリンスタンドの数はピーク時の6万店舗の半分以下、2万9千店舗程度に減少しています。

ガソリンスタンド店舗数で、平成の30年間を振り返る! - 最新版・ガソリンスタンド店舗数推移- (gogo.gs)

山形にもよくある様な山間部の集落に居住する人にとっては大変で、自動車が必須な環境で生活するにも関わらず、ガソリンを補給するためだけに20キロ走らないとならない、という状況が発生しています。それ自体も問題なのですけど、でもまだガソリンを手に入れるのはEVの充電よりずっと簡単だと思います。上記の2万9千はガソリンスタンド、すなわち店舗の数で、給油機は大抵1店舗で4基ぐらいはあるので、EV用充電器の数を15万にしてもその数にはあまり違いがありません。さらに、ガソリン補給は3分もあれば済みますが、充電は急速充電であっても30分はかかります。しかも今後登場すると思われる100 kWhモンスター級EVだと、今主流の20 kWに満たない急速充電では走行50キロ分も充電出来ないと思います。これらのことを考えると、15万基あってもまだまだ、という感じがします。ただまあ、先客がEVスタンドを使っていても、すぐ近くに空きが見つかる、という様な状況にはなるかも知れませんね。ガソリンスタンドの給油機だって、使われていない時間の方が長いです。

もう一つ、海外との比較ですが、アメリカはバイデン政権になって、全米に50万基のEVスタンドを設置するための公共投資を宣言しました(達成時期は不明)。一方EV世界ナンバーワンに既に躍り出た中国は、今年のうちに60万基の設置を完了する見通しです。アメリカや中国の国土の広さを考えると、単なる数の比較ではないことは明らかですけども、中国のこのスピード感は計画経済こそが成し遂げるものと言えますね。

再三書いている様に、EV化推進が脱炭素への唯一の解ではないし、日本の自動車産業の崩壊につながる危険性さえあります。水素や合成ガソリンのことも上記の記事では触れられていて、日本政府はそうした技術が拡大することへの期待も示しています。しかし、上記の中国の動きを見ていると、EV推進が脱炭素に本当に貢献するかどうかなどは無関係に、EV化自体は世界的なデファクトとなって、この変化は止まらなくなるように思われます。

2021年6月1日火曜日

アイガモロボ続々報

 過日お伝えしたヤマガタデザインのアイガモロボが、再びレポートされていました。動画で実験の様子を見ることが出来ます。

機械で雑草や害虫を防げ!アイガモロボの実証実験 山形県朝日町(FNNプライム)

現場は先日その写真を掲載した椹平(くぬぎだいら)の棚田です。私が写真をとった翌々日(5月31日)に実験があったんですね。見れなかったのが惜しい!アヒル(アイガモじゃないね)の風船を取り付けて、より「らしく」なりましたかね?飾りを付けるにしても、ソーラーパネルの邪魔になってはなりません。稲苗の上からかき混ぜるスクリューって大丈夫かと思っていたのですけど、やっぱり苗をもぎ取ってしまうことがあったんですね。でもそれも改良されて問題なくなったとインタビューに答えています。ちゃんと進化しているということ。年に一回しか実験出来ないのが大変だと思います。いずれ期待通り製品化されてあちこちでアイガモロボを見かける時がやってくるのでしょうか?

125

 「125」この数字が意味するのは何でしょう?はい、私はオートバイが大好きで、特に手に余らず、使い切れるパワーで軽量な125ccクラスのバイクが好きです。高速道路は乗れないけど、バイクで高速道路走っても、ちっとも面白くないし、二人乗りだって出来るし、燃費良くて維持費安いし。今ウチ...