このブログについて

国立大学法人山形大学工学部教授の吉田司のブログです。2050年までのカーボンニュートラル社会実現に向けて、色々な情報や個人的思いを発信します。発言に責任を持つためにも、立場と名前は公開しますが、山形大学の意見を代弁するものではありません。一市民、一日本国民、一地球人として自由な発言をするためにも、所在は完全に学外です。山形大学はこのブログの内容について一切その責任を負いません。
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2025年12月10日水曜日

EVシフトを考える㉒(太陽電池の車載はアリか?)

 不人気のこのシリーズですが、電気化学にも関係するし、動向がとても気になります。少し前になりますが、今年のJapan Mobility Showに軽EVのサクラにソーラーパネルを搭載したプロトタイプが展示されました。

日産「サクラ」にソーラーパネル搭載!太陽光で年間3000km相当発電、JMSでプロトタイプ出展 | MOBY [モビー]

「こんなの風に煽られて走れないじゃん!」と最初思ってしまいましたが、それは私が頭悪すぎるだけで、当然伸び縮みします。駐車中はパネルを広げて発電量を増やし、走行時は格納して屋根部分のパネルだけで発電。よほど使う人でも駐車している時間の方が長いですよね。理想的には年間3000キロの走行分を太陽電池で稼げるのだとか。そもそも長距離移動を主眼としない軽自動車ですし、使い方次第では充電知らずになりそうです。スバラシイ!これぞ本当にゼロエミッション?太陽電池にも電池にも関わっている自分としては、大変興味があります。何を隠そう、ソーラーパネル付きのプリウスPHEVを注文した過去があります(嫁さん用でしたが単身赴任で不要になったため、キャンセルさせていただきました。納車1年以上待ちだったし、でもトヨタさんごめんなさい)。あれはクルマも大きいし、パネルも小さいし(高いけど!)年間1000キロ分くらいしか稼げないと思います。でも、太陽の力で走るんですよ!それだけで嬉しい。そういう好事家にとっては、今回のソーラーサクラは良いです!

しかし…上記は移動バカ、バイクとクルマ大好きな吉田が思うことだけで、本当にEVに太陽電池を載せる意味はあるのか?が今回のお題です。先日太陽電池のセミナーで、電動車用車載PVの開発をされているトヨタの方の講演を拝聴しました。興味津々。軽量で曲面に貼り付けも可能なフレキシブルのペロブスカイト太陽電池とか(ペロじゃなくても出来るけど)、効率下がっても反射色で意匠性にこだわるとか、技術的には面白いこといっぱいです。しかし…当然高いですよね?自動車って石が当たったりしますから(ルーフパネルだけならともかく)それでも大丈夫なぐらい頑丈に作る?高いし、重いし、意匠性悪いし、そもそも10年程度で乗換える自動車に20年以上使える太陽電池を載せる?どれだけ効率が高かったとしても、太陽光強度もパネル面積も限られるのでどうやったって急速充電は不可能。可能な限り軽量化して電費を良くしても知れているし、電池の大型化や豪華装備でEVは重くなる一方。足しにはなるけど、その程度なら高価な(余計な重量物にもなる)太陽電池をクルマに載せて連れ歩くメリットは無い…。

EV用ソーラーを開発している方には申し訳ないですが、蓄電池の高性能化の方がずっと重要、現実的。電材が耐えるかどうか(燃えそう!)疑問ですが、本当に全固体で超急速充電が可能になれば、ソーラーファームや風力発電で得た電気を貯めておき(何なら巨大なキャパシタとか)、繋いで1分足らずで充電完了、また500キロ走れるEVが出来たなら、完全なグリーン電力でのモビリティが成立しますよね?そもそも太陽電池を動かす必要などなくて(面積必要だし)、電源のクリーン化と電池の高性能化こそ進むべき道かと…。そんな蓄電池は出来ない!という方もあるかも知れませんが、色んな新技術、新材料が研究されていますよ。きっと出来ますが、雷が落ちた勢いで充電すると電線が燃えますので、ある程度の充電時間はやっぱり必要になると思います。

ということで、太陽電池を車載、は進むべき道とは言えないと思います。その質問を上記のセミナーでトヨタの方にぶつけたかったのですけど、周囲がドン引きするのが目に見えてましたからやめました(笑)。ただね…個人的にはやっぱりソーラーサクラ、良いですよ!晴れた日に駐車場に戻って来た時に電池残量が増えてたりしたら、鳥肌モノで嬉しいです。それくらい、太陽電池は好き❤。でもね、それって一部のヘンタイの話です。

さて、もう一つ軽EVの話題。実はこっちの方がインパクトある?中国最大手のBYDが日本市場専用の軽EV「ラッコ」を2026年半ばに投入!

日本専用に2年でゼロから開発した軽EV「BYDラッコ」の勝算は?軽自動車の常識を変えられるのか? | Motor-Fan[モーターファン] 自動車関連記事を中心に配信するメディアプラットフォーム

パッと見ただけでも日本の軽自動車を研究しまくっているのが分かります。見た目はタント?スペーシア?いかにも万人受けしそうなスーパートール系、スライドドアで優しい感じの軽ワゴンです(私は全然興味ナシ、ヘンタイなので)。乗り心地とかハンドリングはともかく(そういうことよりシートアレンジとかが重視されるジャンル)、電池性能、航続距離と価格のバランスではサクラに圧勝すること間違いなし。ホンダの新しい軽EVも敵わない。昨今の反中ムードも関係無く、売れるでしょうね。BYDが本気なら、あとはディーラー網の整備だけです。ボリュームゾーンですから、このラッコをどれだけ売れるかです。事と次第によってはスズキ、ダイハツ、ホンダの牙城(三菱と日産は弱い)を切り崩せますよ。逆にここを取られたら、日本の自動車産業は大打撃を喰らいますね。ドイツ御三家の様な生き残り方しか出来なくなってしまいます。ただまあ、所詮EVですから、それが拡大しない日本市場特有の問題がある。なので、BYDもそこまで投資は出来ないでしょう。

だからね、歴史に燦然と輝く、日本にしか作れないスバラシイ軽自動車は我がS660なのですよ!学生時代に乗っていたBEATも!荷物が載らない?2人しか乗れない?そんなのバイクに比べたら…

2021年11月25日木曜日

再エネ施設見学

 先日紹介した浪江町のFH2Rは再エネの未来像とも言える施設でしたが、ある意味普通の従来からある再エネ施設を最近訪れていました。山形県内や近隣県にも多くの再エネ施設があります。

まず最初は、家のすぐ近くに建設が進められている「川西ソーラーパーク」。潰れてしまったスキー場の跡地を利用して、なだらかな山を覆う様にソーラーパネルが設置されています。この場所は時々通りがかるのですが、突然ソーラーパネルで覆いつくされていたので驚きました。どれぐらい広いのかこの写真ではよく分かりませんが、25 MWということなので、国内では結構大規模なソーラーファームですね。近くまで行ったのですけど、工事中で入れません。その昔のスキー場ホテルと思われるコンクリの建物がお化け屋敷の様に朽ち果てて、そのままになっています。いずれ見学できる様になるのかも知れませんが、現状は遠くから見るのみです。何しろ雪が沢山降る地域ですから、ソーラーパネルは全部陸からかなり持ち上げられて設置されています。最近の事故を受けて、しっかり基礎の工事をやっていると信じたいですけど、傾斜地ですし、大雨の時に土砂崩れとか起こさない様にして欲しいですね。でも、ふもとにはほとんど住宅などはありません。こういう場所も上手く使わないと、日本ではソーラーを拡充するのは難しいですから、しっかり対策をしたうえでこういう施設を増やしていって欲しいものです。
次は、山形県庄内町にある「立川ウィンドファーム」。元々この地域は立川町だったみたいです。最上川に沿って吹く「清川だし」と呼ばれる風の好立地のため、古くから国内での風力発電推進のための研究もここで行われていたようです。広大な田んぼの中に10基程度、そして周辺の山の上にも10基程度、合計20基程度の風車を見ることが出来ます。1基あたりの出力は600 kWぐらいのようです。「ウィンドーム立川」という施設があり、地域での風力発電開発の歴史を紹介する施設や、電気カーにも乗れる子供の遊び場などありますが、ややさびれた感じで、展示物はちと古臭い感じではありました。まあ、近々洋上風力発電が本格稼働することになるでしょうけど、さきがけの地として、再エネを皆さんに考えてもらう施設を拡充して欲しいものだとは思います。田んぼの中にある風車は、そのすぐ下にまで行くことが出来ます。巨大な羽根がグルグル回る様に、子供たちは「怖ーい!」。確かに、もし落っこちてきたらどうしよう、という感じはします。しかし、その大きさを見ることで、電気にも大きさがあって、エネルギーを生み出すのは大変なことなのだ、ということを子供たちも数字でなくても理解した様に思います。
最後は、福島県奥会津金山町の「道の駅奥会津かねやま」に併設された、「みお里」という水力発電を紹介する施設です。2020年にオープンした出来立ての綺麗な資料館(?)で入場は無料で、絵ハガキのオマケまでくれます(私が行った時点での話なので、もらえなかったらゴメンナサイ)。阿賀野川の支流、尾瀬を水源とする只見川は、高低差が大きい深い谷を流れる川で、戦前からその水力発電利用の開発が進められたそうです。本格的には、戦後東北電力の初代会長となった、あの有名な白洲次郎氏がその開発の指揮をとったんです。
白洲次郎、カッコ良すぎて男の子はちょっと憧れちゃいますよね。あの時代に、あんな国際人がいたこと自体が伝説になっちゃいます。この椅子、マッカーサー元帥に送ったもの(たぶんレプリカ)だそうですよ。座ってみましたけど、座り心地は良くない。白洲次郎の生き様を紹介するコーナーのほか、4K画像のシアターでは、水力発電開発の歴史などを学べます。そしてハイライトは、実は美術館なんです。奥会津の景色などを描いた絵画やステンドグラス、そしてあの片岡鶴太郎氏の絵画も展示されています。
子供たちは、このプロジェクションマッピングによる、只見川の水力発電施設の紹介や、インタラクティブな水力発電の仕組みを学ぶ模型、東北電力管内にある太陽光、地熱、バイオマス、風力などの再エネ施設などの紹介を楽しんでいました。無料でしたけど、結構楽しんでしまいました。近くへ行った時は是非立ち寄ることをお勧めします!
最後は、みお里の近くにある、沼沢湖を訪れました。カルデラ湖だそうですが、只見川よりも200メートルほど高地にあり、只見川とトンネルで結ばれていて、揚水式電力貯蔵が可能な水力発電が地下に建設されているそうです。凄い!電力が余った時には只見川から水を汲み上げてこの湖に貯めて、発電する時には湖の水を只見川に落とす仕組みです。実際大分登りますけど、川のすぐ近くなので、こんなことが可能なんですね。揚水式ダムはとても有効な再エネ電力貯蔵設備になりますが、なにしろそんなのに適した場所は多くはありません。なので、やはり巨大な電池とかの蓄電設備が必要になってしまいますね。
というわけで、近くにこれほど再エネ施設があるということが嬉しい驚きでした。中が見れなくても、斜面を覆いつくすソーラーパネルや巨大な風車が動く様を見るだけでも、脱炭素に向けて色々考えさせられてしまいます。新しい時代の到来を(その困難さも含めて)リアルに感じるためにも、是非足を運んでみることをお勧めいたします。次は地熱発電を見に行きたいと思ってます!






2021年11月1日月曜日

FH2Rに行ってきました

 

福島県浪江町にある、太陽光発電の電力から水を電気分解して貯蔵輸送してオンデマンド利用が可能なエネルギーである水素を製造する施設、福島水素エネルギー研究フィールド(Fukushima Hydrogen Energy Research Field = FH2R)に行ってきました。

再エネを利用した世界最大級の水素製造施設「FH2R」が完成 | NEDO

手前が太陽電池パネル、中央右側の四角い建物が水電解施設、その左側の背の高いタンクに水素を貯めていて、水素を配達するトラックも見えました。一般の見学が可能な施設ではありませんし、行ったのは日曜日ですから(人影なかった)内部を見学出来たわけではありませんが、同施設は棚塩産業団地という沿岸に新たに開発された団地内にあり、上の写真は展望台からFH2Rの施設を眺めたものです。この他に、無人飛行機(ロボット)の研究施設や木造高層ビルのための高度な集成材開発のための施設が同団地内にあります。晴れた1日の水素の製造量が150世帯の1か月分という能力らしいので、まだまだ大都市や産業のエネルギー源としては不十分ではありますが、今考えられる究極に一番近いグリーン水素の供給施設として、大変注目しています。今年の東京オリンピックで使用したFCVの燃料や、先日のトヨタの水素エンジンレースカーの燃料は、このFH2Rから供給されたそうです。周辺にはまだ太陽電池を設置出来そうな平地が沢山残されてはいたものの、既に10 MWの電解装置だそうで、それで上記の水素供給能力となると、単純にこれを拡大して主要エネルギーとすることはかなり困難とは感じました。いかにも、お金がかかっている感じではありました。しかし初めの一歩としては大変重要で、いつかこれが当たり前になる時代が来て欲しいものだと思いました。

ご存知のとおり、浪江町は福島第一原発のすぐ近く、距離にして8キロぐらいです。果たして行けるのかどうかも良く分からないまま現地に向かいましたが、米沢から現地までは自動車で普通に行けました。ただ、浪江町に近づくに連れて、驚く程車の数が減りました。実は線量計を持っていたので、途中の放射線レベルも測りながら行きましたが、途中帰宅困難区域を通り、そこでは車両内でさえ2.5マイクロシーベルト/時を超えることがありました(車外に出ると多分倍ぐらいです)。普通0.1ぐらいなので、25倍程(許容上限が年間20ミリシーベルト程度なので、ちょっと車で通ると病気になるとかいうレベルではありません)。途中見かけた民家は入り口が塞がれ、この10年時間が止まっていることが分かりました。道中の渓谷と紅葉はとても美しく、生活を奪われた人たちの無念さを思わずにいられませんでした。除染が進み、帰宅が可能となった浪江町の中心部では、線量は0.07マイクロシーベルト/時程度で、米沢と全く違いありませんでした。しかし、街は閑散としていました。実際に帰還した人は元の人口の10%にも満たないそうです。

浪江町には、去年オープンした「道の駅なみえ」があります。結構県外ナンバー(自動車だけでなくてバイクも!)がいて、にぎわっていました。

広くて綺麗で、ピカピカの施設です。地元の名産品の売店のほか、浪江で有名な「なみえやきそば」などを提供する綺麗なレストランもあります。なみえやきそば、食べました。正直に言って味はまあまあです。
他の道の駅のように、野菜があまり売って無かったのが少し気になりましたね。あっても買わない?生産者が戻ってきていない?短時間の滞在ではありましたけど、何だか異常な感じが街全体に漂っている感じはしました。一旦破壊されてしまった都市機能を取り戻す。ただ、元に戻るのではなくて、より良い未来に向けて街が活性化していく、それを実験的に目指しているのだという感じがします。この道の駅で最大の注目は、その電力が全てFH2Rの水素から供給されているということです。
設備の多くが恐らく地中にあるため、例えばデカい水素タンクとかは見えませんでしたけど、写真手前にあるのは恐らく調圧装置で、その奥が燃料電池です(違うかな?)。この設備は、道の駅の裏手にありまして、説明のプレートとか無かったので、どういうシステムになっているのかよく分かりませんでした。是非説明の看板を付けた方が良いと思います。この道の駅に行った人は必ず裏も見学しましょう!近くにはEVの急速充電器も5基あって、太陽光➝電気➝水素➝電気➝電池の系統によって完全にクリーンなモビリティーを実現出来ます。素晴らしい!でもこれを全国でやるというのは、当然困難なことですねえ。
帰路はもう一度放射線を浴びるのも嫌だったので、少し遠回りして、南相馬方面に北上し、宮城県をかすめながら山形に戻りました。道中線量は全く正常でした。恐らく津波で住宅が押し流されたと思われる平地には、至る所に太陽光発電施設が作られていました。ちっぽけな人間からすると、とてつもなく広大な太陽光発電が既に建設されていると感じるのですが、それでも我々の必要量の僅かしか供給出来ていないのです。まだ適地はあるようには見えるものの、2030年で-46%を実現するための再エネの倍増というのが本当に出来るのか、その困難さを感じずにはいられませんでした。

色々考えさせられた今回のツアー、行って良かったと思います。Fukushimaと聞くと、Chernobyl(チェルノブイリ)と同じくらい、国際的には行っちゃいけないところ、汚染されて危険な地域というイメージを持たれていると思います。福島産の食べ物も、例えば山形産と並んでいて、同じ品質同じ価格ならば避けられる方になってしまうのではないでしょうか?かく言う私自身も、今回本当に行っても大丈夫か、心配が無かったと言えばウソになります。例えば福島市に行っても、何か特別な異常を感じることは皆無ですが、今回浪江町に近づくに連れて感じた異様な雰囲気(例えば除染作業で出た大量の残土を見かけます)は、残念ながら普通とは言えないものでした。目に見えず、匂いも音もしない放射線は線量計によってのみ知ることが出来ましたが、はっきりと原発事故の爪痕は残っています。一方浪江町では生活の再建が始まり、線量も全く通常レベルにあることが確認出来ました。そこに長らく暮らしてきた人たちの願いはもちろんですが、より未来志向の豊かな地域を建設するために、皆が頑張っています。「大量の税金をつぎ込んで・・・」などと悪口を言うことなかれ。明日は我が身であったかもしれないのです。どう考えても福島が犠牲になってしまったのです。これを自分自身の問題として見れなかったら、単なる奉仕の精神であったら、問題の本質を見誤ってしまうと思います。なので、このレポートを見て関心を持った方は、是非現地を訪れて、福島の今、浪江の今を自分の目で見てみることをお勧めします。是非なみえ焼そばも食べてみてください。
写真一つおまけです。これが水素を運ぶローリーです。充填中なのか、配達先が無いのか、7台も停まったままでした。




2021年8月4日水曜日

抵抗勢力?

 今朝こんなニュースがありました。

2030年度時点の発電 総合的には太陽光はコスト高に 経産省試算 | 環境 | NHKニュース

つい先日、(やっと日本でも)太陽光発電が一番安上がりな発電方式になる、と認めたところでしたが、「いやいや、やっぱり原発とLNG(さらには石炭?)ですよ!太陽光そんなに増やしたら、電気代高くなりますよ~!」という脅し?

太陽光や風力では発電量が一定しないため、それを補うためのバックアップ用火力発電の増設が必要だから、というわけです。太陽光が揺らぐ・・・そんなの小学生だって知ってるわい!バックアップに火力?じゃあCO2は増えるのね?そんなこと出来るわけありません。当然CCSなりCCUで出てきたCO2は環境中に放出しないことが新造の条件です。で、そのコストはLNGの発電コストにちゃんと入ってますか?さらに言えば、原発の後処理にかかるコストは?福島第一原発の後片付けにいくらかかるのか?放射性廃棄物の最終処分方法も決められていない状態で、「本当の原発のコスト」など誰にも分からないと思います。分からないから、自分の都合の良い方で計算する(除外する)。LNGや石炭もそう。CCSのコストははっきりしないし、リスク分析もちゃんと出来ていない。それを化石燃料起源の発電コストにちゃんと組み入れることは出来ないでしょう。だから、そうしない。なのに、太陽電池を増やすと、火力発電が増えると言ってコスト高であるという数字を見せる。何故?何故それほどまでして自分たちの既得権にしがみつき、新しい挑戦に進もうとしないのか?若者諸君、そんな霞が関を許すな!

2050年カーボンニュートラル宣言が本気なら(そう言っている長老が恐らくみんな生きていないんですよね・・・2050年には。だからこういうのがまかり通る)、CO2をバンバン出す石炭やLNGをこれから増やすなんて絶対無いんです。最初っから、それは除外です。太陽光発電を増やしたら、発電量が揺らぎまくって大変です。そうです。大変です。だから大規模蓄電技術と水素、アンモニア、e-Fuelへの転換技術開発を急いで、最初は酷くコストが高くとも、これらを実装しなくちゃならないわけです。だから、恐らくは本気でやると、今回の試算以上に太陽光発電のコストは上がります。でも、石炭やLNGは無い。原発も基本的には排除の対象で、無くすまでのロードマップ整備が必要。今は時間稼ぎのために再稼働することは確かに有効です。日本は既に炭素予算を使い過ぎました。だから、いつまでに原発への依存をゼロにする、というシナリオの提示が必要ですね。LNGや石炭も出来るだけ早期にやめたい。政府には是非いついつまでに石炭、LNG、原発をやめる、という目標も設定して欲しいものです。

2021年7月18日日曜日

メガソーラーによる土砂災害リスク

 先日の熱海での土砂崩れによる災害ではいまだに行方不明者の捜索が続けられています。今年もまた、九州や山陰、東海などで集中豪雨が発生し、多くの被害が出ました。熱海の災害では、土砂崩れが起こった箇所のすぐ近く、山の尾根に沿う様にしてメガソーラー発電所があり、保水力の低下が土砂崩れ発生の要因になったのではないかと指摘されています。静岡県の調査では直接の因果関係は認められない、ということになっている様ではあります。とは言え、日当たりの良い山の斜面にメガソーラーを建設するとなると、当然日射を遮る木を広範囲に渡って切る必要があり、土砂を支える木々が失われることで土砂が流出しやすくなるであろうことは想像できます。

ここに来て、改めてメガソーラーの土砂災害リスクの評価が進められているようです。NHKからまとまったレポートが出されました。

太陽光発電施設の立地を分析 1100か所余に土砂災害リスク | 環境 | NHKニュース

驚くのは、9800あまりの調査個所の10%以上に災害リスクがあるという実態です。そして、この10年で20倍近く増大したということで、急速に開発が進む中でリスク評価や対応が後回しにされてきたことが明らかです。

2030年時点でGHG46%削減のためには、今後これまで以上に太陽光発電の拡大を急加速させなくてはならない状況です。少々変換効率が上がったところで(実際にはそれも難しい)かなりの土地をメガソーラー向けに開発する必要があります。平地の少ない日本ではとても重要な問題で、農地に太陽電池を設置するソーラーシェアリングや建物の壁面や窓までを太陽電池にするBIPVの普及を進めなくてはならないでしょう。人の管理の行き届いた場所に太陽光発電を設置するこれらの方法の方が、山を切り開いてメガソーラーを建設するよりは災害を未然に防げる様に思います。

2021年7月15日木曜日

サハラ砂漠をソーラーパネルで覆ったら?

 面白い記事を見つけました。

サハラ砂漠全体をソーラーパネルで覆い尽くすと何が起こるのか? - GIGAZINE

地球上で一番日射の強い場所は、砂漠です。そして最も大きい砂漠は北部アフリカに広がるサハラ砂漠で、その大きさは中国全土と同じくらいだそうです。最も日射が強い部分では、日照時間が4000時間/年を超えるそうで、一年(8760時間)のほぼ半分お日様に照らされているということです。つまり、毎日晴れだということですね。日射は強いですけど、極度に乾燥していますから、雲が発生することも無いわけです。そこに太陽電池を置いたら、一番沢山発電しますし、時々発電量が低下する雨の日や曇りの日があることも心配しなくて良いので、計画発電にも向いていそうな感じがします。

実際、上記レポートからリンクされているビデオでは、サハラ砂漠に太陽電池を敷き詰めた場合にどれ程の発電量が期待できるのかが説明されています。サハラ砂漠全体を太陽電池で覆ったら、およそ80億の人類が使うエネルギー、それは電力だけでなくて、全てのエネルギーの7倍以上の電力になるそうです。逆に言えば、サハラ砂漠の1/7を太陽電池で覆ったら、全人類が他のエネルギーを全く使わなくても生活できるということですね。サハラ砂漠は広大ですけど、それでも地球全体から見たらごく一部です。そこに降り注ぐ日射を20%程度の効率で電力に変換するだけでも、他のエネルギーは使わずに済むわけですから、やはり太陽のエネルギーというのは莫大です。

しかし、当然ながらメデタシ、メデタシ、じゃあどんどん砂漠に太陽電池を置きましょう、とはいかないわけです。沢山太陽電池を作るのが大変というのもあるでしょうけど、何より道路さえなく、砂だらけの荒涼とした大地にどうやってソーラーファームを建設するのか、という問題があります。そして、電力をどうやって人の居る地域まで(物凄い長距離を)輸送するのか、という問題もあります。ただ、これらについては、砂漠の周辺部など、建設しやすい場所から徐々にソーラーファームを拡大していくことで、建設は可能でしょう。長距離の送電も不可能ではありません。さらには、太陽光発電の電力による水電解、その水素を使ったアンモニア、メタン、e-Fuel合成とパイプラインやタンカーによる輸送で、世界中にエネルギーを供給することも不可能ではないと思います。さらには、太陽光による熱を利用して、珪砂を溶かし、太陽光発電の電力で電解還元して溶融シリコンを作って、新しい太陽電池を作る、ソーラーブリーダーも作れば、現地で太陽光の力を使って太陽電池を増やし続けることも可能?そうできたら、素晴らしいですよね。

しかし、ここでまだ心配があります。上記ビデオ中でも最後の方で出てきますが、広大な砂漠を太陽電池で覆うことによる気候変動です。太陽電池の変換効率は20%程度ですから、残りの80%は熱になるということです。でも、太陽電池が無ければ日射の大半は恐らく反射され、一部が大地に吸収されて、やっぱり熱になって輻射されます。むき出しの砂漠と、太陽電池に覆われた表面のどちらがより温められるのか、そこが良く分かりません。ビデオ中の説明では、後者の方がより熱くなり、上昇気流が生じて砂漠に雨が降り、砂漠が緑化されるだろう、ということです。本当に?だとしたら、CO2の吸収能力も向上、さらには食糧生産さえ可能になり、一石三鳥でしょうか?ただ、それってちょっと楽観的過ぎる様にも思えます。

超大規模太陽光発電を、地球上の局所に配置した場合の地球規模の気候に対する影響の予測、これ面白いですね。JAMSTECの先生方、是非ご検討頂けませんか?


2021年7月12日月曜日

太陽光発電が最も安価な発電に(やっと日本でも・・・)

 日本における2030年時点での発電コスト予測が総合資源エネルギー調査会に提出され、日本でも初めて太陽光発電が最も安価となり、原発を3割以上下回るという予測が示されました。今後、エネルギー基本政策の見直しにおいて、この資料が根拠とされると思います。

2030年の電源別発電コスト試算、太陽光発電(事業用)が原発発電を3割近く下回る。経産省が試算で初めて認める。今夏のエネルギー基本計画に反映の方向(RIEF) | 一般社団法人環境金融研究機構 (rief-jp.org)

同ページからもリンクがありますが、大元の資料(膨大!)は以下のリンクで入手出来ます。

07_05.pdf (meti.go.jp)

いやはや、こういう資料を作る方の根気良さに脱帽です。私なら絶対途中で嫌になってしまいます。どうやってモティベーションを保つんでしょうね?「これが日本の未来を決する重要な判断材料なのだから!」という使命感でしょうか。でも、それにしては最初から結論ありきの様なところが散見される様に思えてなりません。

そもそも、グローバルにはとっくの昔に太陽光発電が最も安価な発電方式になっていました。海外では既に2円/kWhを切る例も多数報じられています。日照条件が違うから、とかではなくて、再エネ拡大で出遅れた日本では何かとコストがかかり過ぎているというだけだと思います。日本だけの事情などというのは早々に関係なくなりますから、基準はグローバルなものであるべきでしょう。LNGを安価に見積るのも、グローバルスタンダードに反している様に思います。化石燃料については、炭素税をどうするかだけで形勢は大きく変わるでしょう。CCSも全然確立されたとは言えない。そして、原発。安全対策だけではなくて、放射性廃棄物の最終処分をどうするのか、トリチウム汚染水をどうするのか、などについて解の無い状態で、どうコスト見積もりが出来るというのでしょうか?福島の後片付けに、一体あとどれだけの時間と費用がかかるのか、それさえ明らかではないですよね。「絶対安全」などという線引きはそもそも不可能なのかも知れませんが、核ミサイルの直撃を受けても大丈夫なぐらいに安全対策をした場合、どれぐらいのコストになるのでしょう?それを国民が原発再稼働の条件としたら、どうなりますか?

だから、以前もそういうことを書きましたけど、どうにも、導いて欲しい結論の方向性が既に決まっていて、それに合わせてこういう試算を準備した様に思えてならないんです。結局再エネは安くなったし、大幅に拡大していきましょう、でも原発も、石炭LNG火力もやめるわけにはいかない、だから「ベストミックスですよ」という結論が議論の前から準備されている感じがします。

失敗するわけにはいかないから、出来るだけ精度の高い予測をするんです、とばかりに、多くの優秀な研究者を動員して、一生懸命この超長いペーパーを準備したんでしょうね。ご苦労様です。でも、その優秀な人材にこんなこといつまでも計算させてももったいないんじゃないかなー。原発には未来ナシ。CCSも急場しのぎで根本的解決にはならず、で、再エネ発電+蓄電、そしてグリーン燃料サイクルへと一直線に向かった方が良い様に思う。変に道草を食うと、またしてもEUに先に行かれてしまいますよ。優秀な研究者を集めて作った太陽光発電のロードマップ、PV2030が見事に外れたことは、以前書いたとおりです。どんなに優秀でも、グローバルな変動を予測することなんて不可能です。需要のあるところには必ずソリューションが提供され、求める人が多ければコストは下がり、競争が激化する、は常に繰り返されることです。その変化の力は、技術革新による変化を大きく凌駕しているように思います。

最後にある電力貯蔵のコストも気になりました。レドックスフローがリチウムイオンの倍ぐらいコスト高に見積もられています。しかしそれもリチウムイオン電池が完成技術であるのに対して、レドックスフローがまだ途上にあるからでしょう。それと、電池の寿命が試算に反映されているのか疑問です(リチウムイオンはせいぜい5年、レドックスフローは20年以上)。そもそも規模がまだ数十MWh程度ですから、実際に必要とされる蓄電設備(将来的には数十GWhレベルではないでしょうか)とは数桁違います。NaSも高いことになっています。必要な規模を展望すると、リチウムイオン電池の様なマテリアルコストの高い技術には将来性が無いと思います。

2021年7月9日金曜日

ペロブスカイト太陽電池実用化?

 このブログでペロブスカイト太陽電池のことを話題にするのは初めてではないでしょうか?「へえー」と思う記事があったので、紹介します。有料なので、一部しか見れませんけど。

MIT Tech Review: ペロブスカイト太陽光電池、実用化へ数社が名乗り (technologyreview.jp)

2010年頃に登場して、一気に研究ブームが沸き起こったペロブスカイト太陽電池ですが、ここにきて実用化の見通しが得られた、というのです。読める部分で取り上げられているのは、ポーランドにあるSaule Technologiesというベンチャー会社です。

Saule Technologies – Inkjet-Printed Perovskite Solar Cells

インクジェットで製膜する特徴があるみたいで、フィルム型で変換効率は10%ぐらいとのこと。一体何に使うんでしょうね?ウェアラブルとか、エナジーハーベストとか、人の近くで使うものであれば、有毒ですぐ分解する鉛化合物の太陽電池はちょっと使いたくないです。ピラピラのフィルム状太陽電池を屋外で連続使用することは考えにくいですから、建材と一体化して窓とか壁面に使う、BIPVですかね。でも効率10%では低すぎる。

今や脱炭素は譲れない目標であり、日本の様に平地面積が少なく、建設にかかる人件費も高い国では変換効率が高い程(建設費節約できる)優位ですから、安ければ変換効率は低くても良い、とはなりません。かつて有機太陽電池の研究をしてきた私がそんなことを言うなんて恥ずかしい。「変換効率が低くても、カラフル、フレキシブルだぜ!」とアピールしていた張本人です(大爆笑)。しかし、今や事態は完全に変わりました。

まあ、変換効率よりも、ペロブスカイト太陽電池の大問題は、その耐久性の無さと材料の毒性です。悪名高いカドミウムを使ったCdTe太陽電池が広く実用化されたことを思えば、鉛の毒性など問題ではない、とか、鉛蓄電池をみんな使っているじゃないか、ということを言う人がいますが、見当違いです。CdTeは滅茶苦茶安定な化合物で、水に溶けたりしません。ところが2価の鉛の化合物(CH3NH3PbI3の様な組成です)であるペロブスカイトは、ジャンジャン水と反応します。鉛蓄電池に使われている、Pb, PbSO4, PbO2は全部水に不溶です(電解液は希硫酸水溶液です)。だから、自動車事故で鉛汚染が広がった、などというハナシは聞かないわけです。そもそもね、無機材料化学をやっている者の常識として、生成エネルギーの小さい化合物は作りやすくて壊れやすいのですよ。どうしてペロブスカイト太陽電池があんなに高い効率になるかと言えば、その結晶クオリティーの高さです。反応しやすいので、溶液からの結晶化でほとんど欠陥の無い結晶が得られますから、キャリア寿命が長く、モビリティーが高いのです。だから、溶液プロセスでも良い太陽電池が出来る。ただし、それは瞬間芸。作りやすさは壊れやすさの裏返しです。水じゃなくて、熱でも分解するのが致命的だなあ・・・。

まあ、そういうことをつらつら考え、実際に一度はちょっとだけペロブスカイト太陽電池を研究したんですけど、「これは未来無いわ」と思って手を引いた過去があります(私のこと)。そうこうしているうちに、結晶シリコン太陽電池の価格が劇的に低下して、そもそも代替太陽電池を研究する理由が無くなっちゃいました。皆さん、流行りだから研究費は取れるし、論文はハイインパクト誌に出るから、一生懸命やっている人もいますけどね。どこまで本物になると信じているのかは疑わしい。流行もそろそろ終わり、と思っていたら、こんな記事があったので、「へえー」と思ったわけです。

この記事に登場する、NRELのJoseph Berryさん、私の共同研究者であるバーモント大学のMatthew Whiteさんの友達なので、学会で一緒になり、ピザ一緒に食べてた記憶があります(3年くらい前のこと)。良い人ですし、真面目な研究者ですよ。

Joseph J. Berry | NREL

「大丈夫って自分も信じたいし、自分にそう言って欲しいっていう人も多いんだけど、正直確信は出来ないんです」とは正直な答えだと思います。アカデミック研究の対象として、この鉛ハライドペロブスカイトが大変面白い材料であることは疑い無いですよ。簡単に作れるし、よく光るし。でも、実用材料としてはどうかな。

もしも20%超の単結晶シリコン太陽電池上に塗布して、30%超のタンデム太陽電池をちょっとだけのコスト増で作れるならば、大変有用だとは思います。上記の通りで、土地を節約出来ますし、ガラスに封入していれば水分劣化は心配ないですからね。しかし、このポーランドの会社はきっと5年後には無くなっていることでしょうね。フレキシブル太陽電池のマーケットってさほど無いだろうと思いますし、そこにこの材料は不向きで、まだ有機薄膜や色素増感の方がメリットあります。

ペロブスカイト太陽電池を一生懸命やっている人には悪口になってすいませんが、この通りだと思います。早く他のこと、特に水素やアンモニア、CO2還元と蓄電やった方が良いですよ!一緒にやりましょう!

還暦

 私、1966年生まれ、丙午(ひのえうま)です。2026年になりましたので、還暦を迎えました。すなわち、今1歳です。あと何年生きられるでしょうか?ひとまず、60年で色々経験させてもらい、色々なことを学び、考え、行動することが出来るようになりました。出来ることが増えた一方で出来なく...