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国立大学法人山形大学工学部教授の吉田司のブログです。2050年までのカーボンニュートラル社会実現に向けて、色々な情報や個人的思いを発信します。発言に責任を持つためにも、立場と名前は公開しますが、山形大学の意見を代弁するものではありません。一市民、一日本国民、一地球人として自由な発言をするためにも、所在は完全に学外です。山形大学はこのブログの内容について一切その責任を負いません。
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2026年10月27日火曜日

日本のEU加盟を!

 怖ーい!スタンフォード大学のダニエル・スナイダーさんのこの記事を読んでゾッとしました。

「トランプ氏は高市氏に力がないと安心している」の声も…《中間選挙》で暴走しそうな超大国に頼る日本の賭けは誤り? | 政治・経済・投資 | 東洋経済オンライン

11月3日の米中間選挙まで1週間を切りました。共和党の大敗はほぼ確実視されていますが、問題はその後に起こること。トランプさんが再び大統領になって以来、日米の学術交流が冷え込んでいますから、これで元に戻る!とナイーブに期待しているところでしたが、そう簡単には行かない可能性が大きいですね。何が起こるか色々想像しつつ、漠然と不安も抱えているところでしたが、この記事の予測はそれを明快に説明している様に思いました。

中間選挙で共和党が大敗したとしても、大統領はあと二年トランプさんなんですよね。詳しくは知らないのですけど、アメリカの場合大統領権限が非常に強い。議会の承認を得なくても大統領令として(憲法違反が疑われる行為も含め)色々なことを実行出来る権限が与えられています。さらに、不逮捕特権があるので、任期中に逮捕されたり訴追されたりしない。なので、ほぼ好き放題。自分の立場が弱くなったことで、より狂暴化し、世界を壊すことが心配されます。これを止めるのは、大統領をやめさせること、弾劾しかないのですが、その条件は下院で全体過半数の可決、上院出席者の2/3以上の賛成による可決が必要だそうです。実はトランプさんは2019年と2021年の2度に渡り、下院で弾劾されているのですが、上院では否決されています。今まで上院含め弾劾された大統領はいないそうです。中間選挙で下院(全435議席改選)上院(全100議席の約1/3の35議席が改選)とも民主党優勢となったとしても(現在は共和党優勢)、上院2/3の賛成を得る可能性は極めて低いと思います。なので大統領はトランプさんのまま。

既に不穏な動きが色々ありますよね。イラン戦争の行方、イスラエルの動向も大変気になりますが、ロシアや中国に対する極端な態度の軟化。このスナイダー先生の言うとおり、世界をアメリカ、中国、ロシアで分割すれば良い、ぐらいに思っているかも。金正恩と会うためならば、米軍を韓国から撤退させる!?中国との取り引きのためならば、米軍の日本からの撤退もカードに使いかねない。太平洋を支配することはアメリカの利益でしょうから、それは簡単には使わないカードだとは思いますが、相対的にアメリカが弱体化、トランプが弱体化する中で使わないという保証はありません。EUに対しては既に「自分たちの身は自分たちで守れ」(それでもアメリカに従属させるつもり)と言っているのですから、アジアの同盟国を同じ様に扱う可能性は極めて高いです。それで、日本政府(高市首相)は必死になってアメリカを繋ぎ止めて、自国の存立と繁栄を守ろうとしているわけなんですけど、アメリカが(トランプが)日本をどれ程重視しているのかについては楽観し過ぎない方が良いでしょう。

アメリカ一強の時代が完全に終わり、(インドを除く)大国のあからさまな覇権争いが激化するこの時代、日本の平和と安定を守る道はあるのか?日本はEUとの連帯を強め、EU加盟を真剣に検討すべきと思います。それは、アメリカとの関係を終わらせることと同義ではありません。図らずも、カナダはEUの準加盟国(そんなのは実際のところ無いのですけど)宣言をしました。

欧州委員長、カナダのEU「準加盟国」入り計画を支持 施政方針演説で - BBCニュース

カナダのカーニー首相は自国を含め、米以外のG7各国(日本とカナダ以外はEU主要国、あ、イギリスもEUじゃなかった)を"Middle Power"と称しました。大国では無いけど、一定の発言力や影響力を持ち、そして世界の安定に対して責任を負う国々、とても妥当な表現だと思います。世界観を共有するそれらMiddle Powerが結集することの意義をEU準加盟国という形で表明したのでしょう。カナダって、あんなに国土は広いですけど、人口は4000万人いません。当然経済力もアメリカとは比較にならない。トランプさんは「笑える」と一蹴したそうですが、そんなの放っておけば良いです。地理的には離れていても、カナダと日本は極めて似た立場にあります。歴史的にアメリカとの繋がりが強く、カナダは長い国境を共有しています。切っても切れない関係であり、切るべきでもありません。アメリカとの関係を断ち切ることが目的ではないです。民主主義と自由、協調と協力を重んじるMiddle Powerとして、日本はカナダと同様にEU入りを検討して良いと思います(キリスト教に改宗することは条件ではないと思いますが、死刑制度は廃止しなくてはなりません)。これらMiddle Powerはアメリカとの友好な関係と協力(依存ではないことが大切か)を求めているのであり、アメリカにはそのリーダーとしての役割に戻って欲しいという願いなのだと思います。Middle Powerがアメリカを必要としているのと同様に、アメリカにもそれら国々の協力が必要なのだということを分かってもらわないとなりません。さもなくば、アメリカは孤立し、EUは米、中、ロシアに続く第4極になるでしょう。世界が分割され、協力よりも競争となればカーボンニュートラルなど夢のまた夢です。

ということで、日本のEU加盟、高市首相お願いします!

2026年9月25日金曜日

ナウル、ゴムケツ、平等公正の難しさ

 国連総会の一般討論では、報道の様に各国首脳が舌戦を繰り広げています。また、米中首脳会談など、ハイレベルな外交が行われていますが、伝わってくる内容からその実態を想像すると、今後に対して極めて悲観的にならざるを得ない。まあ、外交の場で変におしとやかになってはいけないでしょうね。言うべきは言わないと。本音を隠してはいけない。みんなそれぞれの立場で、不平不満もあるわけですから、それを発言出来る場があることは大切。国連が機能していないとか、国連など不要だという極論までありますけど、国連以外に議論の場があるでしょうか。先の大戦の後に決まった5つの常任理事国は時代に合わないのではないか、ということについては議論を進める必要もあるかとは思います。

まあ、それぞれに、ちょっと耳を疑う程行儀の悪い、特定の国や民族を侮辱する、度が過ぎる発言もありますよね。当然真っ向から対立する人たちがありますから、感情的になって喧嘩状態に陥る。到底皆が同意出来る落としどころには辿り着けないですから、何も決められないですわな。それでも国連総会には意義があると思いますよ。それが世界のリアルなのだということから目を背けてはいけない。ただ、各国の代表さん、大変だとは思いますけど、喧嘩だけして帰って来ちゃいけない。「ウチの言い分を言ってきてやったぜ!あーすっきりした!」ではダメです。対立する相手の言い分をしっかり聞いてくること。ウチの何が気に入らないのか、それを受け止めて持ち帰らないと。だから、「無言の抗議」として対立する国の演説の時に会議場を退席するのは良くないな。どれだけ大変でも、話し合いを続けて、決して殺し合いをしない方法を見出すまで諦めてはいけない。それが本当の外交であって、代表者さえ相手の主張を理解しようともせずに帰ってきたら「いっちょやったるか!」になるのは当然。他の人たちはもっと無知ですから。

民主主義の国に生まれて、一人一人の意見を尊重することの大切さって、子供の頃からずっと教えられてきませんでしたか?私はそうです。「人権尊重」「差別しないこと」「平等公正であること」「正義を追求すること」これら全て、そうだよね、とは思うものの、実はどうすれば正義を貫けるのか、それは本当に平等だと言えるのか、あらゆる場面で差別が起こり得る、というのが本当に難しい。自分にとっての正義が他者にとっての不正義であることなんて当たり前。そもそも、こんなことに考えを巡らせることが出来るのは、自分にそのゆとりがあるから。お腹を空かせて、生きていくのが精いっぱいだったら、どんな手段を使っても食べることが正義、子供に食べ物を与えられることが正義。その時、他の人も同じことを考えますから当然正義と不正義がぶつかり合いますよね。豊かな生活やゆとりを手に入れたのは努力の賜物であって、それを得られない人は怠け者だったからだ、という主張をする人もあるかも知れません。自分は怠け者にならないように生きてきたつもりではありますが、だから今の暮らしは当然享受して良い権利なのだ、とは全く思えません。戦後のボロボロだった時代から再起して、豊かになった日本に生まれてきたことがラッキーだったから、と思います。「お父さん、お母さん、生み育ててくれてありがとう!」って、つくづく思いますよ。自分はラッキーだったんです。そのLuckを無駄にしなかったことが大切だったと思います。パレスチナとか、ミャンマーとか、あんなひどい目に遭うのは個人のせいでは絶対ないです。逆に、豊かな国に暮らす人たちは自分の正義を貧者に押し付けていないか、自分自身を客観視できることが大切ですね。

そこまで言っても、何をもって平等公正だと言えるのか、難しいなあと思わせるニュースが2つありました。「ナウル」という国をご存知ですか?ミクロネシアの小さな島国で、太平洋戦争中は日本が占領していた時期もあるようです。今年同国はその国名を"Republic of Nauru"から"Republic of Naoero"に変更する(戻す)ことになりました。略称も従来のNRUからNROに変わるそうです。その日本語名も「ナオエロ」なのかと言えば、それはまだ決まっていないようです。Naoeroが正しい名前なのだということですが、現地語の"a-nuau-a-a-ororo"(私はビーチに行く)を縮めたものだとか。占領民がそれを発音出来なくて、"Nauru"になり、それが国際社会で使われていたそうです。祖先から伝わる正しい名称に戻すことについて、今回国連総会で同国のアデアン大統領からスピーチがありました。

ICCからの脱退を表明「中立ではない。独立だ」ナオエロ大統領が国連で問う、小国の主権と国際秩序(堀潤) - エキスパート - Yahoo!ニュース

ICCからの脱退を表明するというのも大きなニュースです(トランプさんに同調したわけではないようです)。深海の鉱物資源開発については、「海洋の環境を守れ!掘るな!」ではなくて、当事者たる同国の人々にとっても良い未来を築くためのフェアなルール作りを急ぐべき(要するに、分け前よこせ、という本音も見える)でした。いずれにせよ、小国の立場というのを考えさせられる内容でしたね。見えている世界観が違う。列強が勝手に覇権争いをしていて、小国はそれら大国から「お前はどっちの味方だ!?」と問われるわけですが、我々はどちらにも与さない、尊重されるべき独立国だ、という主張なわけです。ごもっとも。Naoeroが何故Nauruになったのかと言えば、勝手にやってきた「よそ者」がそう呼ぶようになったからです。だから、本当の名前、Naoeroに戻すという宣言には国際社会に認知され、その尊厳を守るという深いメッセージが込められているわけです。ちなみに、Naoeroの読みはカタカナの「ナオエロ」でも正しくはありません。無理矢理カタカナで書くと「ネェォロォ」みたいな感じですが、どっちにしても日本語の音にするのは無理!このことは次の話に続きます。あとね、小国でも認知され、尊重されるべき、は分かるんですけど、実際のところは「国際社会における正義」ってのも大国が勝手に決めてるルールだと思います。日本の主張だってそう、日本は大国ですから(世界の1.56%)。Naoeroの人口って1万2千人、世界人口の0.00015%。民主主義ってのは多数決でしょうか?違うよね。少数であっても無視される対象であってはならない。でも、何か決めようって時に多数決を尊重しないと決めようが無いってのも実際起こること。しかしまあ、大国たち、さらには金持ちの国たちが勝手に「これが世界のルールだ!」と決めて、それに従わされるのはマイノリティーにはたまったもんじゃないですよね。分かってますか?G7(特にアメリカ!)のリーダーたち!いや、今はG2(アメリカ、中国)ですか!?

もう一つは、様々な競技で熱戦が繰り広げられたアジア大会のこと。女子バレーボールは決勝戦で中国にストレートで敗れ、惜しくも銀メダル(残念ですけど、頑張った!)。大活躍した中国の選手、呉夢潔さん。アナウンサーはその名前を日本語読みで連呼「ゴムケツを止められない!」で話題になった様です。姓・名に分けると「ゴ・ムケツ」なんですけど、連続するとねえ。陳厚羽(チン・コウウ)さんという選手もいて、連続読みしたらもう放送禁止。「中国人の名前(漢字)を日本語読みするのをやめて!」というコメントがSNS上に多発した様です。

中国選手の名前を日本語読み?実況に違和感の声! | るりブログ

中国語での発音に近い音にアルファベットをあてたのがユニフォームに書かれた選手の名前で、これは日本語の漢字読みとは全然違う。呉夢潔さんは"WU M. J."と書かれてますが、カタカナで似せると「ウー・モンジェ」でしょうね。より正しくはピンインで書くのが良いんでしょうけど、それは外国人には大変。なので、漢字を日本語読みするか、似せたカタカナにするかの二択でしょう。日本語の読み方だとそうなるとは言え、自分の名前と全然違う音で呼ばれたら多少気分悪いですかね。反対に、日本語の名前が中国でどう呼ばれるかと言えば、大抵は中国語での発音になると思います。私、吉田司は「ジーティェン・スー」(これまた本当はピンインですけど、カタカナだと四声は表現出来ない)。アルファベットならTsukasa Yoshidaと書きますけど、これをアメリカ人とかが発音したら「ツカサ・ヨシダ」ではないけど、まあ自分の名前が呼ばれたことぐらいは分かる。厄介なのは、中国語と日本語で同じ漢字を使うから、自国の読みをあてることが出来てしまうんですよね。好都合なのは、その音から漢字を判別出来るということでしょうけど、Tsukasa Yoshidaから司・吉田を想像出来るアメリカ人はいない(日本語が出来る人は別)。なので、漢字が分かるかどうかはあまり大切ではないかな?なので、「その人の名前の音に近くなるカタカナ表記にする」に一票。そうすると、習近平は「シュウ・キンペイ」ではなくて「シー・ジンピン」でしょう。恐らくそのカタカナのとおりに発音すると中国の人からは訂正されるのでしょうけど、少なくとも本来の名前を尊重している(だから先の「ナオエロ」も「ネェォロォ」で頑張るか?)。だってGeroge Washingtonだって「ジョージ・ワシントン」ではないでしょ?ウチの学生もお世話になった、米イリノイ大学の著名な先生にAndrew Gewirthさんがいます。実は彼も私も若手の頃、あるセミナーで私が彼の講演の座長で、名前を紹介しなくてはなりませんでした。「Andrewは簡単だけど、Gewirthって???」本番前に本人に音を確認して、OKもらったのでその様にしましたが、未だにカタカナ表記はどうするか悩みます「アンドリュー・ゲヴィアス?」。実はこういうのを毎度やっていて、毎年アメリカから7,8人学生を受け入れるサマープログラムの書類準備で、大学から渡されるフォームに名前のカタカナ読みを書く様に指示があります。「こうかなー」と思って適当に書くんですけど、後日、本人に会って名前を聞くと「ちょっと違うなあ」ということがよくあります。まあね、名前って本当に色々。特にアメリカだと移民系の人も多くって、アルファベットの綴りを見ても全く音にならない人もよくあります。でも、実際に日本に来てもらって「あー、マシューさん、おはようございます!」で良いじゃないですか。だったら中国の人にも「ゴムケツさんですね!」じゃなくて「ウーモンジェさんのファンです!」の方が良くないですか?

ということで、最後は少し脱線してしまった感じもしますが、名前をどう呼ぶかって、それだけとっても相手が自分をどう見ているかを反映しています。世界の多様性を受入れ、全ての人々を尊重すること。常に対話し、相互理解を深めること。自分の正義を押し付けるのではなくて、ちゃんと聞くこと。無視・敵対ではなくて、協力の道を探し続けること。とても大切だと思います。


2026年9月18日金曜日

涂善祥さん

 昨晩(9月17日)のNHK BS国際報道2026の特集、Human@globeで紹介された、涂善祥(と ぜんしょう)さんの活動に、あまりにも感激してしまったので、紹介したいです。同番組は、NHK ONEに登録されている方ならば以下のリンクから見ることも出来ます(今から1週間ぐらいの間だと思いますけど)

国際報道 2026の最新情報 - NHK

「またまた、吉田は中国びいきだから」と思われるかも知れません(ある程度事実)。そもそも関心ないし(これが問題だ!)という人も多い(増えている)のだと思いますけど、是非知って欲しい。私、感激のあまり涙が出てしまいました。それぐらい、大切なことだと思いました。

涂さんは音楽家。1989年に来日し、名古屋に在住の著名な中国琵琶奏者(知らなかったけど)です。日本人の奥様(やはり音楽家)とご結婚され、娘さんはオペラ歌手としてイタリアに留学中とのこと(皆さん、番組中に登場します)。なんて素敵なご家族なんでしょう。それで、こういう伝統楽器の音楽って、決してメジャーな存在ではないですけど、国際的なコンサート活動はもちろん、地域のコミュニティーで音楽を通じた交流を継続されているとのことです。何故今回上記番組で取り上げられたのかと言えば、もちろん今の冷え切った日中関係が、こうした草の根の交流にも暗い影を落としているからです。

音色で架ける日中友好の橋 世界的琵琶奏者・涂善祥(と・ぜんしょう)さん 音色で架ける日中友好の橋 世界的琵琶奏者・涂善祥(と・ぜんしょう)さん

涂さんの色々ご苦労された話とかも番組中で伝えられていますが、地域の方に暖かく迎えられ、支えられて、折れずに活動を続けてこられたんですね。インタビューのお話の内容、涂さんの語り方からもその心優しくも信念を貫こうとしていることがよく伝わりました。「会って話をすることが大切」「遠くの親戚より近くの隣人です」はその通り、それが平和への唯一の道だと全く同感です。それを実践されていることに、本当に敬意を感じます。ネットを検索していたら、涂さんは我が故郷、岐阜県多治見市でもコンサートをされているんですね。行きたかった。機会があれば是非琵琶の音色を聞きたいです。是非お会いしたい。

普通の人の文化的交流が相互理解の醸成、助け合って平和に共存するために一番大切なことだとつくづく思います。振り返ると、私も中国の学生や研究者との交流はとても盛んにやってきましたが、ここ最近ずっと冷え切っています。大変嘆かわしいですが、それを政治の問題として半ば受入れてしまっていることが恥ずかしい。どれだけ困難があろうとも、文化の先導者であるという自覚を持って、もっと取り組まなくてはと背筋が伸びる思いです。正直、科学技術関係の交流は政治利用されやすいので、今の日中関係ではとてもやりにくい(そもそも予算も付かない)のは事実です。文系でも、例えばアジア史とか政治経済は互いの認識が大きく異なるところで、相互理解はとても難しい、というかほぼアンタッチャブル。だから、音楽とか美術とか(演劇は政治的メッセージが入る危険アリ)芸術関係は良いなあ、と思います。美しいと感じるものに国境など無い。でも、今のご時世、涂さんの様な平和への取組みさえ、交流事業がキャンセルされたり、逆に政治利用されたりしかねません。大変難しいですね。

だからこそ、この涂さんの生きざまに心から拍手を送りたいですし、自分もそんな人でありたいと思った次第です。嘆いていないで、出来る限りのことをやらないと。次に中国に帰省する時は、友人のいる吉林大学とか天津師範大学に行って、ボランティアで講演しよう(政治メッセージはゼロで)。中国の学生にもどんどん日本に来て欲しい。日本の学生にも中国に行って欲しい。草の根の活動が大切です。互いの政府が何を言おうとも。

2026年9月10日木曜日

AfD圧勝に思う終わりの始まり

 9月6日に行われた、旧東ドイツのザクセン=アンハルト州(Land Sachsen-Anhalt)の州議会選挙で、急進する極右政党「ドイツのための選択肢」(AfD = Alternative fuer Deutschland)が実に44%の票を集めて圧勝しました。

ドイツ極右AfDが大勝、東部州議会選 過半数にはわずかに届かず - BBCニュース

単独過半数には僅かに届かないため、直ちに州政府政権与党とはならないかも知れませんが、極左政党との連立が模索されている模様。他の政党はAfDには絶対に協力しないファイアーウォールを張っているんだとか。どうなるのか、眼が離せません。これがドイツ全体にすぐに波及するわけではないと思いますが、今回同州の投票率は76.7%もの高さだったということなので、十分民意を反映した結果だと言えます。

合わせると全部で10カ月以上、人生の1%以上をドイツで過ごし、ドイツ人の友達も多い私としては何となく理解してるつもりですし、丁度今月ドイツから来た博士課程の学生とこの件について話しても「やっぱり」という感じなんですが、旧東独の経済的にやや取り残されている同州では不満の蓄積度が高く、その怒りの矛先が移民に向かっていて(他州より移民の絶対数、割合はずっと少ないのに)、移民排斥を強く主張するAfDに支持が集まったということでしょう。低賃金、物価高、雇用不安から起こる不安や不満に基づく自国ファースト思想、右傾化はドイツに限ったことではなくて、今やグローバルな現象。実際のところは、大抵の地域(特に先進国)において、自国民がやりたがらないキツイ、安い仕事を請け負ってくれているのが移民であり、移民を追い出すことによって地域が豊かになることは絶対ないです(むしろ逆)。社会保障、医療や教育にかかる資源を移民が盗み取っているというのも事実誤認で、大抵移民の労働者は若くて元気ですから、むしろ高齢化、弱体化する地域の社会保障を支えてくれているのも移民(外国人も税金払います)。全く筋違いなんですが、怒りをぶつける先として好都合なので外国人排斥に同調してしまう。もちろん、そういう人に外国人の友達や仲間はいませんし、自分の国どころか街を出ることもほとんどなくて、世界で何が起こっているのかなんて関心もない人たちです。だからこそ、「悪者」を作り上げるハナシは人々が窮地に追い込まれた時に特に強く支持されるわけです。そう、悪意に基づくヘイトではないんです。AfDの支持者も、MAGA派も、きっと心底外国人を憎んでいるわけではないんです。そもそも憎む理由を見つけられる程理解はしていない。良く分かんないからこそ、怒りをぶつける相手として外国人は好都合なんです。根源にあるのは、そうした「蓄積された不安・不満」でしかありません。それを利用して自分への支持を集めようとするポピュリスト政治家こそが悪人なんですが「民意ですから」の民主主義プロセスを経ているのでこの結果を断罪する力は存在しない。ヒトラーも民主主義プロセスを経て国の頂点に立ったことを忘れてはなりません。

で、これからどうなるか。まず、ドイツについては連邦制で各州の権限が強いので、ザクセン=アンハルト州が極右となれば、教育や医療、社会保障、就労などで極端な外国人への差別が起こる可能性はあります。そしたら移民は逃げ出すかも知れませんが、地域経済はより悪くなります。そうすると、新しい「敵」を生出す選民思想へと発展していきます。「無知から生じる低俗なポピュリズム民主主義」は自らを破壊します。それから脱却する、恒久的な平和と安定を目指す、真の先見性を持った政治が主導する民主国家は実現可能か?わかんない人を責めるのではなくて、そういう人も含めて誰一人取り残されない、一人一人が尊重されつつ、長期的にも国家を滅亡に導いたりしない優れたリーダーシップ?それは無理でしょうねえ。そんな神様みたいな人って存在しない。残念ですけど。このまま行けば、今は比較的豊かな西側ドイツでも右傾化が進むでしょう。他のEU諸国も同じ。他人事じゃなくて、日本もそう。その先にあるのはファシズムの台頭、あるいは恐怖の社会主義専制政治体制への革命。どっちも嫌ですけど、どちらも蓄積された不安・不満を解消するかの様に見えてしまうので、民衆の熱烈な支持を得る可能性があります。やはり、不満の蓄積こそが根本原因。

AfDの勝利に、トランプさんからも、ロシアからも祝意が送られたそうで。もちろん、トランプさんはロシアや中国を強くはしたくないでしょう。極右政党の台頭にアメリカとロシアが同じ希望を見出しているわけではない。EUの要であるドイツが自国第一の極右に陥れば、EUは崩壊します。バラバラになれば、アメリカの横暴に対してEUとして一致団結した対抗は出来なくなる。弱小化した個々の国家は再びアメリカに従属せざるを得なくなるでしょう。アジアにはEUに匹敵する民主同盟はそもそも存在しないですから、当然日本はアメリカ従属です。日本と中国の仲が悪いのは明らかにアメリカを利するということ。一方で、EUが分裂した時、ハンガリーの様な親ロシア的な国は再びソビエト連邦に取り込まれることになりそうです。「どちらかを選べ」と踏み絵を踏まされることになるわけですな。「どっちが強いか」の二極はダメなんです。三極が重要。例えば資源や食料を豊富に持つグローバルサウスの国々が団結して、「金は要らない、クルマもスマホも要らないから出て行け、お前たちに資源は売らない」という選択肢をとって地産地消の食料自給に専念する、ということは出来ないですかね?食料や資源を輸入に頼る日本は即降参ですよ。お互い相手の言い分を聞かなきゃいけない。

そうして、世界は終わってゆく。こともあろうか、且つてその道を辿って大きな過ちを犯したドイツで、極右政党AfDが大勝したことは「終わりの始まり」を象徴する出来事と思えてなりません。そしてこれは一過性のものではなく、遠く離れた世界のことではなく、日本を含む世界全体に及び、深刻化していきます。冷戦時代、世界は二極化し(第三世界は取るに足らなかった)、一触即発の危険な状態にありました。しかし核のボタンは「世界を終わらせるボタン」であることを理解していたから、それが押されることを回避出来ました。ところが、サイバー攻撃や殺人ドローン等を使ったピンポイントの攻撃が可能になったことで、今日では開戦への敷居がうんと下がってしまいました。一旦始まると、終わらせることが如何に困難であるかは最近の事例が再認識させています。地域の戦争がある閾値を越えれば、それは世界大戦になって一瞬で世界を終わらせてしまうことでしょう。

これはカーボンニュートラルのブログなんですけど、最近はこういうハナシばかりですね。考えれば考える程、そこに行き着くからです。生き残りのために、世界全体が協力できる平和が一番大切。「夢のような、魔法の様な技術が現れて気候変動問題を解決し、持続可能な発展が可能となりました。世界のみんなが幸せに暮らしましたとさ、メデタシメデタシ」はもちろんあり得ません。一人一人の研究者は自分に出来る精一杯のことを勉強して、分かったことを書き残していけば良い。「私の研究で世界が救われる」ことはない。即効性は無いけど、教育にしか未来を創る力はないと思っています。声のある限り、語り続けます。

2026年8月26日水曜日

中国再考

 先日の「人新生の黙示録」と中国訪問で感じたことを経て、さらに考え続けております。少なからず影響したのが、麻生晴一郎氏のコラム。

麻生晴一郎さんのページ - エキスパート - Yahoo!ニュース

「ノンフィクション作家」という肩書きですが、経歴を見るとかなり中国に奥深く関わってきた方。上記リンクから色々な記事、レポートみたいなのが読めますので、興味のある方は是非。私は中国に家族がいるという個人的事情と研究仲間との交流(最近はずっと停滞!)がありますが、そう頻繁に行くわけでもないし、行くところは大体同じ。何しろバカでかい国ですから、中国のあらゆる場所に行くことなど不可能ですが、麻生さんは相当な田舎にも入り込んでいるようです。民主化運動の活動家とつながっているということで入国拒否されたこともあるようです。だから私なんぞよりもよほど中国のリアル、政治のこととかではなくて、ありのままの中国人を良く知ってらっしゃる。それでも、私の限られた経験と照らし合わせても思わず膝を打つ「中国あるある」が断片的に見えて、面白かったです(青島にまた行きたい!)。

何年も前に義兄のところに行ったのがクリスマスの時だったんですが、クリスマスを祝っちゃいけない雰囲気があって「え?」と思ったことがあります。まあ、中国にいて反日感情の様なものを感じる時が無いわけでもありません。が、麻生さん言うとおりで、とても居心地が悪いかと言えば全然そんなこともありません。日本人だというのがバレてない?韓国人だと思われてる?そういう時もあるかも知れませんけど、恐らく日本人と知っても気にしない。日本のプレゼンスが低下している、というのもあるかも知れません。最後の話にある「中国は思ったほど変わっていなかった」はそうなのかなあ、と。昔がどうだったかを知らない者としては何とも言えませんが、14億の衣食住を満たす中国の逞しさを再確認した今回、世界の混乱を横目に我が道を行く中国人の変わらなさみたいなものが分かった気がします。むしろ「変わったのは日本人のほう?」が説得力を持つ。反米も感じませんよ。McDonaldはあるし、KFCもあるし、アメリカ的なモノが排除されているわけじゃないです。ただ、クルマにしても、ファッションにしても、中国ブランドが良いモノになりつつあり、中国なりに成長、成熟し、自信を付けつつある印象です。北京の様な大都市は、ぐちゃぐちゃな昔の街と物凄く整備された表通りとが混在していて、変化と発展のパワーを感じます。その表のところに我々の意識が向かいがちなのですが、実はそのぐちゃぐちゃの裏通りが今でも元気な人民の生活の場になっていて、過疎化し衰退する日本の田舎とは対照的な感じがします。今日的な豊かさが中国の発展を印象付けるけど、中国人は変わっていない、ということですかね?

麻生さんは、人権活動家などとも繋がりがあるようで、やはり中国の民主化を願う一人なのでしょうか。私も、個人的選択としては明らかに民主主義の信奉者です。しかし前回の考察のとおり、持続的な発展を実現するためには中国のやり方しか無いのではないかという思いが募っています。もちろん、それは「全ては人民のため」という同胞愛が基盤であって、それが「中国人の変わらなさ」の裏付けであるということを信じるならば、です。少なくとも、個人の所有を認め、法の下での全ての自由を認める、資本主義原理に基づく自由競争社会では、気候崩壊や資源枯渇の限界にぶち当たった時に自らを改革し、民主的な社会主義体制への変革を自発することは出来ない。奪い合い、競争がより激化し、生き残る者と死ぬべき者が選別されるファシズムに陥るだけでしょう。残念ながら、斎藤幸平さんの様に皆が思考し、限界を認め、生き残りのために協働出来る程賢くはない。

私は、比較的恵まれた環境にあり、一定の社会的成功を収めた中国人しか知りません。なのでそれを中国人のリアルと思うのは恐らく間違いなのでしょう。でも、例えば愛想の良いホテルの従業員などを見ても、恐怖に怯える虐げられた人々には全く見えません。人の優しさや笑顔に出会うことは全く珍しくは無く、同じように人生を送る人たちにしか見えないのです。(不可侵の壁はあっても)一定の自由を認め、競争原理を導入し、成功の報酬も与えることで中国は発展しました。お腹を空かせていないだけでなく、豊かさも手に入れました。人民の力を引き出す一方で自由を制限し、システムの秩序と安定を維持しながら発展しているのだと思います。中国人は決して絶望している人々ではないです。アメリカと肩を並べる程に成長したその時、発展の限界を迎えたその時、変わらぬ中国人は再び食べ物を分け与え合うことが出来るのではないでしょうか?恐怖による支配ではなく、同胞愛に基づくすべての人民のため、の原点に立ち返り、持続する中国を実現出来るかも知れません。そうであって欲しいな、という願いも相当入っています。

2026年8月20日木曜日

「人新生の黙示録」と中国再訪で思うこと

 皆さんはもうお読みになったでしょうか?斎藤幸平さんの著書「人新生の黙示録」。

人新世の「黙示録」(集英社シリーズ・コモン)/斎藤幸平 | 集英社 ― SHUEISHA ―

斎藤さんの肩書きは「経済思想家」となってます。そうですね、思想家だと思います。前著「人新生の資本論」が大ヒットして、当時大阪市立大准教授であられたのが、今は東京大学准教授(いっつもそうだよなー、妬みじゃないですよ)。資本論の方も読みました。「脱成長コミュニズム」がその時の方向性で、それもそうだよなーと当時思って、面白かったのですけど半分ぐらいで読むのをやめてしまいました。でも今回のは危機意識のレベルが違う。前半だけ読んでいると絶望してしまいます。斎藤さんがエライなあと思うのは、可能な限り広い視点から、世間のバイアスに流されない分析を元に持論を展開していくところです。文章表現力も私など到底及ばないレベルで、とても分かりやすく、説得力のある文章に引き込まれます。上記前半部分はもう、嫌気がさすほど正しくて、何故資本主義が人類の滅亡までの時間を急速に消費してしまうのか、全くその通りだと思います。人々は資本主義絶対の呪縛に囚われていて、変化を拒み続けることでテックエリートの餌にされています。資本主義は「クソ消費」によって資源の無駄遣いと気候崩壊を導いています。世界の終わりが迫りくることを認め、それを何としても回避するための思想に至り、行動しなければ確実に我々が記憶する「世界」はその終わりを迎えると思います(「地球」は無くなりません)。

これからの社会を創っていく学生の皆さんは、是非読むことをお勧めします。特に「ものづくり」の価値をナイーブに信じている工学部の学生さんにはショックだと思います。上の話だけだと「絶望」しかない様ですが、そうではありません。終末までの時間がもう長くはない。それは残念ながらそうです。だから今こそそれに向き合わなくてはならない。この本を入手してからタラタラとなかなか読み進まなかった(色々考えてしまって読むのが遅いです)のですが、後述のように、今夏中国を再訪(去年の夏に続き)している間に読み終えました。最後まで読むと、絶望しないためのメッセージがあることが分かります。斎藤さん言うところの「暗黒社会主義」に生き残りへの道が開かれる。「暗黒」などと言えばやっぱり絶望的な状況しかイメージ出来ないんですが、それは違います。「社会主義」はその前例からトップダウンの恐怖社会を連想させますが、それも違います。社会主義とは人民が互助する仕組みづくりであって、個人主義、民主主義を排除し、国家というシステムを強固にすることと同一ではないのです。今一番大切なのは、無駄遣いをやめ、戦争をやめ、如何にして共存し、持続する幸せな世界を実現するのか、ということに尽きると思います。斎藤さんの「暗黒社会主義」に共感はします。ただ、80億を超える人々、色々な境遇にある人々が協働し、その実現を目指せるのかと言えば、可能性は限りなくゼロに近いと思います。斎藤さんを越えるアイデアが浮かぶかと言えば、無理です。自分には賢さが足りません。少なくとも、考え続けること、訴え続けることの大切さを再確認させてくれたこの本に感謝します。言い訳ではなくて、これからの世界により大きな役割を果たすのは私ではなくて、若い学生諸君です。だから、今この時に是非この本を手に取って下さい。

さてさて、中国のハナシ。去年と同様、家族の帰省が目的だったのですが、中国、遼寧省、吉林省に行ってきました。個人的にとても大切なことがあったのですけど、それはここには書きません。例のEVだらけ、ということについては1年前と大きく印象が変わったわけではありませんが、今やレギュラーガソリンが日本円換算で202円/リットルと中国の方がずっと高いことに驚きました。イラン戦争や円安の影響もあるのかも知れませんが、ガソリンが高いのはEVに誘導する政策の一つなのでしょう。太陽光パネル、EV充電施設の充実、エネルギー自給と安定化、クリーン化(実際都市部の空気は綺麗です)、持続可能な仕組みづくりという点で圧倒的に中国の方が進んでいます。一方で人の無駄遣い度は日本よりも酷いかも知れません。ゴミを出し過ぎです。要するに、これらの変化は人々の意識の向上からもたらされているのではなく、トップダウンで進められているということです。瀋陽から吉林省の義母のところに向かう田舎(立派な高速道路が通っています)は相変わらず緑豊かで、「こんなに食うのか?」と思う程延々とうもろこし畑が広がっていました(とても美味しい)。ど田舎でも街灯が太陽電池+LEDだったり、開発の成果は及んでいるものの、相変わらず民家はかなりお粗末で、自分にはとても無理!道端では丁度シーズンのスイカが山ほど並び(これも美味しい!)、誰も飢えてはいない、食糧が豊富であること、さらに自給されていることに気付かされました。そうなんです。14億の民が飢えていないのです。義兄の豪邸から田舎のボロ家(失礼!)まで、食べきれない御馳走から簡素(でも大抵旨い!)な食事まで、センスと品質が共に高い新中華ブランドのファッション(結構良いモノです)から相変わらず上半身裸で短パン+サンダルの東北のオッサンファッションまで、格差はあれど、斎藤さん言うところの「コモンズ」いわゆる「衣・食・住」を14億人分満たしているのです。それって凄いこと。改めて中国の実力はそこにあるのではないかと気づきました。実は義父のお墓参りの時、とうもろこし畑の中をしばらく歩いたんですけど、臭いのなんのって。どうやら化学肥料は殆ど使っていない「有機栽培」のようです。それでこれだけ大量のとうもろこしを作れる?循環型持続可能農業?だとしたら、物凄いことですよ。恐らくはそれも環境意識とかいうことじゃなくて、コスト的に安いから出来上がった仕組みなのだと思いますが、14億の胃袋を満たし続けることが出来る能力、これは本当に凄いです。

そして今日の中国は知ってのとおり軍事強国であり、AI、ロボット、宇宙などあらゆる先端分野で米国に匹敵し、電池産業などは圧倒的に世界一です。レアアースのことなども、しっかり先を読んで来るべき時に備えてきたからであり、かなりエゲツナイ手を使ってでもグローバルに資源や食料の確保に取組んできた成果です。中国のリーダーの先見性、賢さを認めざるを得ません。人口がついに中国を上回ったインドも今のところ飢えてはいませんが、どうして発展出来ないのかと言えば、個人の所有を認める民主主義、資本主義陣営に組み入れられているからです。政府は調整役をしているに過ぎず、それを「民意」だと国民に説明して無策に陥ります。そのまま膨張を続ければ、生存する人と見捨てられる人が区別される選民思想(ファシズム)に突入します。それは一番恐ろしい社会ですね。しかし民主主義は捨てられない。人権、平等、表現の自由は人として生き、人生に意味を与えるために絶対必要なこと。だから私は中国では生きられない。しかし「国旗損壊罪」を成立させる日本に表現の自由はあるのか?個人の自由や所有を奪う全体主義にしか生き残る道は無いのか?もしもボトムアップ式に、分かち合うこと、持続可能であることを最優先とする社会主義を選択出来るならば、それは民主主義でもあるのか?現実には、民意によってそれを選択することは極めて困難と思えます。例えば、庭から石油が出てきた人に「掘るな」と言ってそれを取り上げるなんて出来ないでしょう。100年にも満たない戦後に辿ってきた歴史だけを見れば、個人が取るに足らぬ存在として蹂躙され、「全ては国家のため」の恐怖社会として中国が発展してきた様に思えますが、それは本当にそうでしょうか?今回の中国旅行で浮かび上がった最大のクエスチョン、ある意味「希望の光」はそれです。14億の胃袋を満たす実力を目の当たりにした時、「全ては人民のため」が中国共産党の本質であり、それは今も変わっていないのかも知れない、と思えました。ちょっと好意的過ぎますかね?

斎藤さんが提示する「暗黒社会主義」への自発的変化は残念ながら期待出来ないです。資本主義のバージョンアップではなく、資本主義を捨てなければ日本を含む資本主義国家は困窮し、衰退するか戦争を起こして自滅します(多分後者)。全員が生き残ることはとても出来ない。しかし、核戦争が起こったりしなければ、ひょっとすると中国だけは生き残ることが出来るのかも知れない。但し、生き残るに値するのは「中華民族」だけですけど。「人民のため」が支配のための偽りではなく、本当の同胞愛から発せられているのであるならば、世界が滅亡しても中華民族は滅亡しないかも知れません。昨今の中国に恐怖しか感じないのは、アメリカを打倒すること、追い付き、追い越すことが目的化してしまっているからでしょう。そうこうしているうちに(やはり戦争にならなければ、ですけど)世界は困窮し、競争に勝つことよりも安定と秩序を守り、持続することが重大な目標になります。その時、実力を蓄えた中国は衰退するアメリカを横目に持続する中華民族の繁栄を実現するかも知れません。今の中国は貧富の格差が甚だしい社会ですが、個人の所有などそもそも認められていないのです。いざとなれば、富裕層から富を取り上げ、全ての民が生き残るためにそれを分け与えることが出来るのです。同胞愛の名のもとに。やっぱり私は中国では生きられないですけど、ちょっとそういうのを信じたくなっちゃいました。中国共産党は人民を食い物にするモンスターではないでしょ。資本主義の過剰消費によって人々を食い物にしているモンスターがGAFAMじゃない?

斎藤幸平先生、どう思います?欧米さらには日本といった列強との戦いにおいて、あるいはその内戦でも、中国の過去には恐怖を感じる、人権を踏みにじる出来事が多くありました。しかしそれは中華民族の本質であるのか?中国のエボリューションによって持続可能な世界が実現する、というシナリオはあり得ないのでしょうか?少なくとも、アメリカが自発的に変化することよりも可能性が高い様に思えます。

2026年3月13日金曜日

EVシフトを考える㉓(ホンダ大赤字!)

 各種報道のとおり、ホンダが今季6900億円の大赤字の見通しだそうです。

決算:ホンダが最大6900億円の最終赤字、26年3月期 EV損失で上場来初 - 日本経済新聞

最終赤字となるのは上場以来初めてだそうです。EV関連での損失は最大で2兆5000億円になる見込みだとか・・・天国で宗一郎さん泣いてるなあ。

何故EV関連で損失が出るのか?実はホンダだけではなくて、EVシフトに前のめりだった自動車メーカーは軒並み苦境に立たされています。中国最大手のBYDも利益は相当減っているみたいです。「EVも、やります」で堅実な戦略をとっていたトヨタは比較的安泰?要は、売れないですよね、EV。やれ充電設備が無くて不便、とかいうこともありますけど、そもそも高すぎる。電気を安く、グリーンに作れたとしても(原子力もアリで?)、蓄電池とレアアース、やっぱり資源依存が高すぎて、これからどんどん安く作ります、とはいかない。資源を握っている中国が優位なのは明らか。やっぱりね、早まったよね、ホンダ。売上は当然四輪事業の方が大きいけど、利益を出しているのは二輪事業の方だそうですよ。そりゃ当然、ホンダはバイクのメーカーですから!バイクでのホンダの強みは大変あると思いますが、需要の大きい四輪は競争が激しくて利益率が低いということですな。

まあ、こうなるであろうことは明らかでした。2040年までにガソリンを使うクルマを無くす(EVやFCVのみ)というホンダの発表は信じがたかった。何しろ、素晴らしいガソリンエンジンを作れるメーカーです。やるなら、グリーン燃料の開発を本気で目指して欲しかった。且つて自動車好きが酔いしれたホンダF1のV12気筒エンジンを高らかに歌わせても、温暖化しないんですよ、の方が魅力的。グリーン燃料の本格利用ってのは全然現実味が無いので、それで電化だったんだと思います。私もBEVはいくつか運転しましたが、ガソリンでなくても運転がツマラナイことはありません。むしろ静かで力強く、滑らかに走るBEVの運転は楽しいと思います。運転の楽しみを奪う自動運転は要らないですけど(個人的に)。

ガソリンの様な化石燃料にしても、リチウム、コバルト、ニッケル、レアアースの様な鉱物資源にしても、どっちも日本は持っていないです。それで、どっちが高くつくかと言えば、明らかに後者。中国が鉱物資源を牛耳っていて、それを外交の場で武器化するのはけしからん?資源を沢山持っている国は良いよね?それも違うんです。中国がそれらを牛耳っているのは、資源を持っているからではなくて(ある程度は持ってるけど)、日本やアメリカが中国の生産に依存したからです。最近南鳥島周辺の深海6000メートルからレアアースを含む泥を採取することに成功したことが大きく報道されました。

南鳥島沖レアアース「試掘成功」でも…「世界シェア9割」の中国に抗う「長く厳しい道のり」

これで日本も資源大国!もう中国の好きにはさせないぞ!って感じで政治的に利用されてますね。でもそれ、ただの泥です。レアアース製品ではありません。レアアースに限らないですけど、鉱物資源から必要な成分を取出して純化するのはとてつもなく汚い作業です。沢山のエグい酸とか使い、大量の廃液が生じます。日本やアメリカの環境基準を満たすには大変なコストがかかることになります。一方で環境規制がユルユルというか、カネのためなら何でもやる中国は安く良い製品を供給してくれるわけで・・・ならば中国から買ってしまおう、汚い仕事は中国に任せよう、と自国の産業を断念した結果、いつの間にか完全に中国に支配される状況になったのです。つまり、自らが生んだ問題。

「モビリティーのオール電化なんて絶対無理!」と断言し続けるのは、エネルギーや資源をバカ食いする産業だからなのです。他国を排除して、自国の産業だけ守ることなど出来るわけありません。EVに限らないですけど、人間の欲望を全て満たし、尚且つ環境を破壊せず持続可能である薔薇色の未来は幻想です。テクノロジーは素晴らしいですが、それにアクセス出来る人は人類の何パーセントでしょうか?パリの街角で見かける一箱20ユーロの高級なチョコレートを食べれるのは誰?カカオ豆を生産する人はそれを食べたことがあるでしょうか?

2月4日に「イランのことが心配・・・」と書きましたが、本当に戦争が始まっちゃいましたね。お陰でガソリン価格が急騰。物価高対策の目玉であった暫定税率廃止でやっと下がったのに、逆戻り、もっと高くなるかも。先日アメリカの友人と話していた時に、彼は「これでEV人気がまた復活するかも」と言っていましたが、私は懐疑的です。電気だって化石燃料に依存してる。だから原発回帰?ちょっと前までは「脱原発」「再エネ」が掛け声だったのに。原発を新造しようとすれば、地質調査、建設、試験運転で操業するまでに20年かかります。地震国日本で地域の合意を得ることはまず無理。2050年カーボンニュートラルには絶対間に合いません。安全性が極めて高い「次世代革新炉」ってのも誤魔化し。次世代、とか、革新、って言葉が並ぶと、何だか全然違う良いモノに聞こえますよね。でもその実態はここに説明されています。

「原発回帰で電気代が下がる」は大ウソ…建設費を国民に肩代わりさせる「1兆円超・次世代原発」のカラクリ | PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)

メルトダウンしても、燃料デブリを受ける受け皿が付いているんだとか・・・スゴイね!革新的!一定の効果はあるのでしょう。でも、様々な安全対策でコストは上がるばかり。それについても、上記友人は「いや、溶融塩トリウムの原子炉は絶対安全!」と主張していましたが、これも研究段階。そもそも、そうした最高級発電施設を手に入れられるのは人類の何パーセント?地球上には、まだ電気の無い暮らし(送電されていない地域)をしている人が10億人以上いるのですよ!10億人に満たないG7の国民が世界のカネの半分以上を支配し、下位半分の40億人のカネは2%以下です。それぐらい、世界は不公平なのです。自分の生活の豊かさを失っても構わない、とはちっとも思いません。それは手放せない。でも、その犠牲を見過ごしてはいけないし、犠牲を生まない様に務めること、共に生きる道を探し続けることは絶対必要です。戦争なんてしてる場合ではありません。

ホンダの三部社長、そういうこと全然考えなかったんですかね?EVが行き詰まることは容易に想像出来たと思いますが・・・ホンダの製品(特にバイク)が大好きな吉田としては、残念です!

2026年2月4日水曜日

85秒

 この数字、何でしょう?去る1月28日、毎年恒例の「終末時計」(週末じゃないよ)の時間が発表されました。それが過去最短の85秒、2025年から4秒縮まりました。

終末時計、人類滅亡まで過去最短「85秒」 核兵器やAIで - 日本経済新聞

Bulletin of The Atomic Scientistsという核物理学の雑誌が世界情勢を踏まえて世界の終わりまでの時間(本当の時間ではなくて恐らく人類の歴史を24時間、あるいは12時間として残りの時間を象徴的に秒数で表現している)です。元々はオッペンハイマーが創設したんですね。最初残り7分で始まって、最長17分まで伸びたこともあるそうで。

それで、今年過去最短になった理由が、核兵器の脅威増大、急速に普及する人工知能(AI)の潜在的リスク、歯止めがかからない温暖化の進展、などだそうです。核を使う使わないではなくて、戦争が起こるということはやはり異常事態であり、利害の対立とかいうレベルを越えて多くの悲劇や恨みを生み出し、平和を維持することが出来なくなっている状態です。最悪の事態としての核の使用が視野に入ってくるわけで、いざ使ってしまえば本当に世界は終わり、なのでTime to Midnightなわけですね。

先日も書きましたが、もうすぐウクライナの戦争も4年、パレスチナのことは忘れられ、見捨てられつつあり、今は南米のこと、イランのこと、そして究極は中国のことなど、戦争の終結どころか、拡大に対する心配は尽きません。トランプさんは、アメリカに従っていれば世界は平和になる、私にはその実行力があり、ノーベル平和賞に最もふさわしいのが自分だ、と思っているのでしょうね。しかし、それは他の国々、民族をバカにし過ぎです。散発的に軍事行動を見せることで、アメリカは本気なのだというメッセージを発しています。巨大な力こぶを見せれば誰もが従うと思う知性の無さはジャイアンですね。多くの恨みを買い、必ず復讐しようとする憎悪が蓄積されています。国を挙げて自爆攻撃を正当化、奨励した歴史を我々日本人は忘れていません。戦争に正義も悪も無くて、狂気が判断を狂わせるのが常です。如何に誤っていたかを理解出来るのは悲劇が実際に起こり、それを振返った時だけです。しかし、核戦争が起これば、振り返ることさえ出来ない。身内中の身内、トランプさんに言わせればアメリカになった方がいい国の筆頭のカナダが反旗をひるがえし、次はEUか?いや、EUがバラバラになるでしょうね。どれだけアメリカの力が強大だったとしても、世界の全てをアメリカの都合に合わせてコントロールすることなど出来ない。世界は混迷を極め、核戦争へのリスクは高まるばかりです。被団協のノーベル平和賞受賞が空しい・・・

そして、AIの急速な進歩と社会活動への導入も、過ちを犯すリスクを高めていると思います。AIの有効な利用というのは、確かにあると思います。統計的にまとめて、合理的な判断を下すまでに凄く時間と労力を要する様な仕事については、AIの恩恵は大きいでしょう。でもそれが有効なのは、時間さえかければ人間がやっても結局同じ結論に至る様な簡単な事、合理的な判断さえすれば間違いない様な白黒はっきりすることだけです。実際には、色々な選択肢があり、多様な人々が下す多様な選択肢の結果として、これから起こる多様な事々が複雑に絡み合って新しい多様な状況を生み続ける、何が正解、不正解などとは簡単には言えない事って沢山あると思います。特に善悪、正義不正義、何が人を幸せにするのか、など人でないと決められないこと(人も分かっていない?)について、AIに答えを求めるのは無理でしょう。でも、やってしまう。人の判断も過去の経験や知識に基づくものなので、それを人では到底敵わないレベルで保有、猛スピードで参照分析して、一番合理的な判断を下してくるAIの意見には抗し難いでしょうね。調べたり、考えたりすることがバカバカしくなってくる。AI先生が瞬時に策を提示してきたら、それを批判的に吟味する?別のアイデアを模索する?そんなことなら最初からAIに聞かないでしょ?つまり、AIが進化する程人は考えることをやめてしまう。重大な決断でさえ、AIの合理的判断に委ねてしまうことになる。人の知識なんて限定的で、よほど賢い人でも知識も記憶も抜けまくってます。都合の良い記憶だけが残り、都合の悪いものは消去されてしまったりもする。だから人が導き出す答えは間違いだらけでAI先生には遠く及ばない?でも、きっとその間違いが偶然の発見を生んでいるんですよ。AIが参照出来る記憶に含まれない、本当の意味での進化をもたらしているんですよ。それって乱暴な考え方だと思います?

それから、気候変動が世界の終わりを近づけているのもその通りだと思います。世界の人々が協調よりも分断と対立に向かっているのは、気候変動による打撃で余裕が失われ続けているからです。テクノロジーの進歩も、貧富の格差を拡大させ続けています。たった100年で、世界の人口は4倍にも膨れ上がりました。そのほとんどは、貧困に苦しむ人たちです。譲り合って共に生きるよりも、自分たちの富だけを守ろうとするでしょう。自分も決して例外ではないと思います。だから、戦争を回避することがどんどん難しくなっています。

以前は悩まなかったなー。色々なことを経験し、知ったことで生じた悩みというのも多少はあるかも知れません。でも自分の進歩なんて知れているので、やっぱり世界の様相が変わったことが大きくて、その変化っていうのは本当に起こっていると思います。人類は重大な分岐点に立っている。そう思えてなりません。そこへ来ての選挙です。我々日本人も、未来への選択をする時です。やれ、どの政党が良いとか悪いとか、そういうのはやめておきます。しかし一番がっかりするのは、実際には起こり得ないことを選挙の時だけ声高に主張する人たちです。そして、ほぼ全ての政治家さんたちに共通の、テクノロジーに対する妄信です。いや、信じてないかも知れません。本当は出来ないことを知っていても、都合よく「○○に重点投資して世界に先駆けてこれを実現する成長戦略・・・」と言っておけば良い。核融合とか、ペロブスカイトとか、全固体電池とか、AIだとか・・・本当に出来ると思ってる?仮に出来たとしても、それがどうして日本の成長につながるの?日本は資源のほぼ全てを輸入に頼る国。テクノロジーを妄信し、それを都合良く自分のセールスに利用するのはやめて欲しい。南鳥島のレアアース泥も、まったく採算性度外視。単に敵対的国際関係が理由。相手に屈したくない。そのためなら深海の環境を破壊してもOK?長距離弾道ミサイルを持つと安心して眠れる?なんだか、総合するとトランプさんの主張と大差無いと思いますね。ある意味トランプさんは正直過ぎ?まさかそんなこと、思っていたとしても言わないでしょ?という様なことをズケズケ言うからみんな呆れてるだけで、実は日本の政治家も本心は大して変わらないんでしょうか。Make Japan Great Again! MJGA! 読めん!

2025年9月26日金曜日

帰国報告(フランス編),大学の国際化③

 お次はフランスへ。先日の電気化学会東北支部セミコンファレンス直後の9月9日から23日の2週間でした。朝早い便だったので、嫁さんのところ、八王子に1泊し、始発電車で羽田へ。機材はちょっと古いボーイング777でしたけど、787はこの前インドで落ちたし…。目的地はパリ、Air bnbで12泊、羽田から直行便ですが、何と北極を越え、グリーンランドの上空を越えて行きました(東向き、通常と反対方向)。

今回の用務先はフランスのNo.1エリート校、Ecole Polytechniqueでした。現在科研費で推進中のホットキャリア太陽電池について、旧知のJean-Francois Guillemoles先生にコンタクトを取ったところ、当時丁度東大に居たDaniel Suchet先生(東大とジョイントの太陽電池の大きなプログラムがあります)とつながり、今年の2月に同先生に来校講演頂き、それがきっかけで招聘された、ということでした。Ecole Polytechniqueは外国人研究者の招聘について独自の予算を持っているんですよ、スゴイ。
これがIPVF (Institut Photovoltaique Ile de France)の建物玄関、DanielさんとナノセンターのAmauryさんが写ってます(C2Nも見学させてもらいました、これまたスゴイ施設)。IPVFの建物全部、太陽電池の研究開発のためだけ。隣にはHORIBAのリサーチセンターがあります。Ecole PolytechniqueにはIPVF含め30くらいの研究所があり、パリの南側のこの地域に集まっています。フランスの「つくば」って感じですね。
着いた翌日に講演。最近は一般向けのカーボンニュートラルに関する講演とかが多かったので、久々にサイエンスだけの講演でした。気合入れて準備したものの、30分に詰め込まなくてはならず、駆け足になっちゃいました(マシンガントークは日本語でも英語でも同じ)。ホットキャリアはまだヨチヨチ歩きなんですが、それでも関心を持って聞いてもらい、沢山質問も頂きました。
研究室施設(広大なクリーンルーム)も見学、何故か家族も一緒(貴重な経験だぞ!父より)。人工光合成の研究を一緒にやろう!ということになったNegar Naghavi先生(彼女も旧知)が案内してくれました。誰だ?退屈そうにしてるお魚みたいな男の子は?
翌週には、PMC (Laboratoire Physique de la Matiere Condensee)という機関でも講演させてもらいました。そちらはゴリゴリの電気化学、薄膜電析と蓄電、エネルギー変換触媒についての話でした。現在フォーマルな共同研究プロジェクトとかが動いているわけではないんですが、フランス側の学生受入れ支援プログラム等もあるみたいで、ウチの学生が留学するための地ならしをしてきたという感じです(行けるぞ!)。
2019年の大火災に遭ったノートルダム大聖堂は修復され、再公開されています
ヴェルサイユ宮殿も久々に行きました。有名な鏡の間の鏡を作ったのがフランスの大手ガラスメーカー、Saint Gobainの発祥だそうです。それにしても、人が多かった!
Musee des Arts et Metiersに展示されていたオリジナルのボルタ電池、1701年!
同博物館の蒸気エンジン自動車、1770年!リジッドアクスルですが3輪なので必ず接地します。250年後、今のEVと比較すると工業技術の発展に感慨を覚えるのでした。Arts et Metiers博物館、理系の方には大変おススメです!
化学賞と物理学賞、2つのノーベル賞を受賞したマリー・キュリー、このバルコニーから学生と話をしていたそうです(キュリー博物館)
マリー・キュリーのオフィス、隣は実験室です
ENSCP (Ecole Nationale Superieure de Chimie de Paris)の正面玄関前に久々に立つ

世界最大の観光都市パリですから、もちろん観光もしました、美味しいものも食べました。子供たちは焼きたてのクロワッサンの美味しさに感激してました。とは言え、円安とインフレが進んだこともあり、全てについて高くなったなあ、という印象でした。例えばサンドイッチが8ユーロ。日本のと違って、美味しいフランスパンにチーズやハムがモリモリ挟まれているので、食事として満足なんですけど、1400円越え…。

で、そもそも何でフランスなのか、どうして沢山仲間がいるのかと言えば、かつてパリに留学していたからです。上述のENSCPに初めて行ったのが1999年、4半世紀前!本当に多くのことを学ばせて頂いた私の大先生、Daniel Lincot先生の研究室が当時ENSCPにありました。今やIPVFの研究ディレクターになった上述のGuillemoles先生に初めて会ったのもその時でした。だから、上の写真のENSCP玄関を何度も出入りしたんですよ。キュリー博物館も実は同じキャンパスの中にあります。なにせ住所がRue Pierre et Marie Curieです。周囲の殆どの道には学者の名前が付けられています。そこに居るだけで「フランスの学問の中心にいるんだ!」と身震いする思いでした。
Lincot先生に初めてお会いしたのは1998年のECS, ISE合同会議(パリ)でした。当時私は岐阜大助手3年目の新米先生。岐阜大に着任してから始めた化合物半導体薄膜電析について分からないことだらけで、教科書の様に必死に読み漁ったのがLincot先生の論文でした。凄く勉強になる、素晴らしい論文が沢山。上記会議でLincot先生が担当するセッションがあり、一体どんな人なのか、会うことを楽しみにしていました。良い人なのか、嫌な人なのか?果たして会ってみると、物凄く良い人!フランス訛りの決して流暢では無い英語ですが、それがまたチャーミング!サイエンス、特に太陽光発電に関する熱意は物凄くて、小さい体から周囲を虜にするエネルギーを発散するような人です。「絶対この人の研究室で勉強したい!」という願いを抱き、上記の1999年の訪問を経て初めて短期留学したのが2000年でした。
研究者としての吉田司は、このフランス留学で形作られたと言っても過言ではありません。以降何度も行き来し、多くの共著論文を出すことが出来ました。Lincot先生がリタイアしたこともあり、フランスとの交流が少し停滞していたところだったんですが、今回ホットキャリア太陽電池をきっかけに再燃したというわけです、ハイ。久しぶりにENSCPの前に立ち、あれから25年もの歳月が経ったんだな、と一人感傷にふけっていたのでした。眼がしらが熱くなる思い。
でそのLincot先生が今どうしているかと言うと、簡単にリタイアしたりしていませんよ!色々紆余曲折を経て、今はSOYPVというベンチャー会社でフレキシブルCIGS太陽電池の事業化を目指して今なお活躍中です。SOYPVはOrsay駅近くのSaclay大学のキャンパス内にあり、Cu, In, Ga合金電析をベースにしたデカイ製膜装置を見せてもらいました(写真撮影厳禁!)。
SOYPV建物の前で、Lincot先生と

順調なのかと言えば、資金繰りとか色々大変みたいです。私がとやかく言う立場ではありませんが、Lincot先生は私にとってはサイエンスの父(歳はそこまで離れてないけど)。今もなお熱く自分の夢を追いかける姿に共感しつつも、「パパ、もう充分バトンを渡したと思うよ。もうゆっくりしても良いんじゃない?」と言いたい様にも感じました。でも、相変わらずエネルギッシュ!
今回色々な人に再会し、新しい人にもお会いしました。思い出話みたいになっちゃいましたけど、これが何故大学の国際化に関わるかと言えば、やはりその価値を再確認する思いだったからです。共同研究をする理由は、例えば自分のラボでは出来ない実験が出来るから?それだけなら、何も国外に行く必要は無いですよね。どんな設備だって、どんな分野のエキスパートだって、日本国内に必ずいます。旅費も時間もかからないし、その方が効率的?言語の壁だって無いし。もちろん、そういうことではないですよ。効率の追求でもなければ、国際的なステータス向上のためでもない。国際交流にはそれ自体に意味があって、人類の共存と繁栄、恒久的な平和の追求、人類共通の文化的発展への大切な営みだとつくづく思います。
研究について、色々と議論もしましたが、Daniel SuchetさんやAmauryさんとは地球規模気候変動のこと、世界の分断と対立、トランプのアメリカ第一主義に対するEUや日本の対応、ロシア・ウクライナ戦争、日中関係の問題、など様々な話をしました。そうした課題を相互に認識すると共に、物質的経済的損得などを乗り越えて人類共通の課題に向き合おうとすること、そこに我々がサイエンス・テクノロジーを共同する意義がある、とつくづく思いました。何度も東大に行っている彼らからは「日本の学生は質問しない!」とか「フランスの学生は日本にすごく行きたがるのに、日本の学生はフランスに来てくれない!」という苦言も聞かれました…。
「国際交流にはそれ自体に意味がある」学生の皆さんには是非それを信じて、日本を飛び出してみて欲しいと心から願います。私自身がそうして育てられたように、必ずや得るものがあります。自分の中に激震が走る様な、世界の見え方が一変する様な、そういう経験をすること。一度きりの人生ですもの、めいっぱい生きようよ!




2025年9月24日水曜日

帰国報告(中国編),大学の国際化②

 またまた間が開いてしまいました。この間日米プログラムの学生受入れとか色々ありまして…。色んなことを考えさせられ、発信もしたかったのですけど、日々のことに追われておりました。

上記の学生受入れがひと段落するや否や、昨年のアメリカに続き、今夏は2つの全く違う文化圏に家族総出で渡航しました。一つはコロナ以前から5年ぶりの里帰り、中国への旅行(これは完全にプライベートですが、結局仕事の仲間にも会っている)。もう一つはフランス、パリです(これはEcole Polytechniqueへの招聘、私は仕事、家族はホリデーです)。沢山お金もかかりました(もらっている旅費ではとても足らない)。「色々旅行出来て良いでしょ?」という自慢話ではなくて、とても大切な「仕入れ」の旅行でもあります。色々と新しい学びもあり、世界の変化を感じ、これからについて考えさせられます。大学の教員ってのは「文化の先導者」であるべきだっていつも思っているのです。現実に即したことだけをやっていれば良いのではなくて(誰も問題視しないでしょうけど)、まだ起こっていないことに対して備え、現実を理想に近づけるための導きとならなくてはいけない。なので、時折国外を訪ね、今を知り、アップデートすることは大切な仕込みなのです。導きなどと言うと、何だか押し付けがましく聞こえるかも知れません。「○○でなくてはならない!」と自分の価値観を押し付けようと思っているのではありません。次の世代の人にはその人たちの考えや理想がある、それを信じ、支援すれば良い。それも一理あるでしょう。ただ、知らない人、経験も無い人に「どっちにするか決めて良いよ」と言っても、判断する根拠も持ち合わせていないでしょうから、困らせるだけです。なので、まずは知ることは大切。先生は学生にその機会を作り、何なのかを伝え、相手に考えさせて、道を見出す助けとなる。どこまでが助けであり、どこからが押し付けなのか、さじ加減は難しいところです。ともあれ、いくつかやったこと、思ったこと、について書きとめます。本当は、写真がいっぱいあるのですけど、このご時世人が写っている写真を沢山出すのは憚られるので、風景とかの写真中心でお送りします。

最初は中国、9日間。遼寧省瀋陽に義兄を、吉林省の田舎町に義母やその他親類を訪ねました。過去の訪中時には子供たちは小さかったので、今回初めて自分たちのルーツを本当に理解したと思います。言葉は通じないのに、家族として100%受け入れ、とても優しくしてくれる人たちの笑顔の本当の意味を理解したと思います。「中国は好き?嫌い?」「中国人は好き?嫌い?」というのは愚かな質問で、自分の大切な故郷であり家族です。そもそも人の絆に国境など関係しません。それは今のロシアとウクライナの関係にも当てはまるハズなんですけどね。中国の家族に即座に親しみ、甘えさえする子供たちの親としては、将来への期待がうんと高まったのでした。世界の平和と人類の共存を導く新人類?まあ、そんなプライベートな話はこれぐらいで。

旅の最後には北京にも少し滞在しました。天安門広場、万里の長城にも行き(暑かった!)。



天安門広場では9月3日の抗日戦争勝利を記念する軍事パレードの準備(観客席の設置やパレードの立ち位置を示す道路上のマーキングなど)も進められていました。今回久々に中国を訪れて一番驚いたのは、EV(特にバッテリー駆動でガソリンエンジンを持たないBEV)の普及の早さです。5年前、深圳とかはEV化が進んでいたものの、地方都市はもちろん、北京でさえEVは珍しかったです。ところが今は掛け値なしに路上の20-30%がBEV、新車に限れば恐らく80%以上がBEVです。それらの殆どが中国の国産(BYDだけじゃない!)。バッテリーが中国製なんだから当然と言えば当然。日本メーカーが焦るのも良く分かりました。だって、売るモノが無いんだから。まあ、EVのハナシは「EVシフトを考える」のシリーズで改めて書きます。まだまだ色々お伝えしたいことがある。

そして、北京でずっとお世話になったのが岐阜大時代のポスドク、今や天津師範大学の副学部長の張敬波先生です。山形大でポスドクだった殷さんも最近北京化工大学の先生になりました。

人写っちゃってますけど、まあほぼ全員公人なので…誰が誰とかは書きません。こうしてみると、自分の元で一緒に研究をした多くの仲間が学校の先生になったのですねえ。嬉しいことです。「中国は最近どうなの?」「日中の共同研究とかやりにくくなって残念」「ペロブスカイトは論文のため?実用化本気でやってると思う?」とか色々なハナシがありました。こういう研究仲間の存在も、自分にとって中国を特別な場所にしていると感じさせます。色々問題があるのが残念でならない…。自分にはどうしようもないし、何かしようとも思いません。しかし、地理的にも文化的、歴史的にも関係の深い中国は、国際化を語る上では最重要でしょう。アメリカ帝国の手先になっている今の日本の歪んだ状態そのままでアジアの恒久的な平和と共存、発展は見込めないと思います。

長くなったので中国編はここまで、次はフランス編です。

2025年5月7日水曜日

トランプ

 もちろん、カードゲームではありません。あの人です。

「トランプ大統領再び」は、しばらくお休みしていた間に起こった一番大きな出来事でしょうね。このブログの主題であるカーボンニュートラル、持続可能な世界、という目標に対しては大きく後退し、元々難しかったこれらの目標の達成がもはや不可能になったとさえ思える様な変化が急速に進行していると感じます。もう万策尽き果てたとさえ感じて、希望を語る力もありません。今の幸せが一体いつまで続くのか?人類は簡単に絶滅したりしないと思うけど、人が世界の覇者となった、私たちが記憶する世界はあっさり終わってしまうかも。何も準備していなければ、地獄に真っ逆さま。いつまで逃げられるか、どこに逃げるべきかは分からないけど、疎開する準備をした方が良いか?

人が好きで、人を理解したくて、自分も人らしくありたいと思っています。自分にとって、自然科学と社会科学と人文科学には境目が無くて、色んな知識がパズルのピースの様に入ってきて、それを組み立てて「世界とは何か?」を知ろうとするのだけど、自分の経験も知識も少なすぎて、足らないピースが多すぎて、根拠の無い「希望」に逃げ込むナイーブな私。心の奥底では性善説を信じていて、善の力は必ず勝利すると思っているナイーブな私。自分がダメなヤツでも次の世代はもっと賢いと信じている無責任且つナイーブな私。そんな自分よりもさらに経験・知識が少ない上に不勉強且つ超ナイーブな人たちが世界には大勢いるとも思う。信じたいことだけを信じて、現実から目を逸らすことが「夢見ること」「希望を持つこと」なのか?そうやって「何もしない」ことで世界は一直線に滅びへと向かって行く耐え難い事実。でも結局自分に出来ることなど何も無い様で、60年近く生かさせていただいたオッサンとして、次の世代の伴走者である先生として、そして父親として、自己嫌悪なのです・・・。

「知の巨人」みたいな方々の言説には素直に耳を傾けて、「これは一体何なの!?」「なんでこうなるの!?」「これからどうなっちゃうの!?」という疑問へのこたえを探し求めています。その人たちがどれくらい私よりも経験と知識に富んでいるのかは分からないし、ナイーブに信じちゃうのもイケないのかも知れないけど、やっぱり自分よりもずっと先を見ていると感じる人がいます。国外はさておき、日本人だと佐藤優さん、古賀茂明さん。「うーん」と唸らされます。最近読んだ古賀さんの論説を2つ紹介します。

145%の関税で中国が屈すると考えたのは甘かった…トランプ大統領が知らない「粟と歩兵銃」の精神 古賀茂明 | 概要 | AERA DIGITAL(アエラデジタル)

中身は是非見て下さい。自分が言うのも生意気ですが、「その通り!」と膝を叩きまくりました。トランプさんは、そしてそれを支持するアメリカ国民も、無知です。中国、中国人を全く分かっていない。自分たちの弱さも分かっていない。カネも力かも知れないけど、人の命も力です。日中戦争でも、ベトナム戦争でも、人の命そのものが武器になりました。中国を見くびった日本はとても痛い目に遭いました。ロシアも人の命を大変軽く扱い、それを武器として大量消費することが今のウクライナの戦争でも明らかです。絶対数だけでなくて、どう扱うかも重要なので、インドは中国程の脅威にはならないかも知れないけど、人口の力は物凄いです。だからインドもどんどん怖い国になる。アメリカやヨーロッパは民主主義の正義に負けるので(私はそっちが良い!)、人口が3億あっても消耗品扱いは出来ません。だから先に音をあげるのはアメリカです。でも、人の命を軽く扱うのは嫌、負けて良い。アメリカが貧しかった頃を覚えている人はもういない。豊かな暮らしに慣れ切った人はそれを失うことの痛みに耐えることは出来ない。でも中国のリーダーは貧しかった頃の中国を生きてきた人たちです。「Xiaomi = 小米 = 粟(あわ)」の話がへえー、でした。日本を蔑視する時に「小日本 = Xiao Riben」と言うので、そっか「小米!ちっちぇえアメリカ!」とアメリカを見下してXiaomiか!と一瞬思ったけど、中国語でアメリカは美国(Meiguo)なんですよね!そもそも何で日本語でアメリカは米国なんですかね?中国人はアメリカ大っ嫌いなのに何で美国?教養が無くて知りません。(あ、すいません。中国人がアメリカ大っ嫌いは違うと思います。)

さらに凄かったのがこちらの論説。

米中「関税戦争」最悪のシナリオは“台湾有事” 米国は戦わず日本の自衛隊が“最前線”に立たされるリスクも 古賀茂明 | AERA DIGITAL(アエラデジタル)

トランプさんも、一旦上げてしまった拳を下げることは容易ではない。でも中国はアメリカの脅しに絶対屈しないから、トランプさんが「いやあ、習近平はマブダチだからさ、アイツを困らせたくないんだよね」とか言って全部取り下げればともかく、この関税戦争が本当の戦争に発展する危険性は極めて高いです。衝撃なのは、これってまさにアメリカが望むこと、というハナシ。台湾メーカーも、韓国メーカーも、日本メーカーも、先端半導体は全部アメリカで作らせる。中国に渡さないためには早々に台湾の工場を潰せばいい。中国のミサイルで。アメリカはきっと中国を非難しまくるけど派兵しない。ウソでしょ!?本気で言ってんの?日本も同じ扱い?と耳を疑うものの、確かにスジが通る!最低の人種、人間性のカケラも無い連中が考える様なこと、と思いつつも、それこそが人間性か?と益々人が分からなくなるのでした。アメリカ人も、中国人も、私の友人には全く当てはまらないんですけどね。リーダーが狂人だからこうなるのか?自分自身も含め、全ての人の本性がこうだからなのか?ならば我々は進んで破滅への道を選んでいる様に思える。それとも、個々の人はやはり善人なのに、どうにも出来ない魔の力が人々を破滅へと追い込もうとしているのか?私たちはその魔物に打ち勝つことが出来るだろうか?

2023年1月26日木曜日

イノベーション

 このところ、ずっと経済学の話が続いてきたように思います。経済学のみならず、国際的な情勢を分かっていること、歴史認識、理系の人たちにも大切だと思います。テクノロジーは、特に今の世の中においては人の強欲さを満たす手段として用いられ、ぼーっとしていると全く社会的意義の無いこと、もっと悪い場合は害を及ぼすことにさえ手を貸してしまうことになりかねません。理系の人の多くは素直過ぎて、社会を支配する層が示す基準に盲目的に従い、議論を戦わせることもなく(研究のこと以外議論が下手)、そういうふうだから社会の動向にも無知(無関心)でナイーブなところがあります。学者でさえも世界がどうあって欲しいと思うのか、成すべきこと、すべきでないことに対する基準が自分自身の中に明確では無いから、いきおい論文の数、インパクトファクター、外部資金とか、自分自身の価値の定量評価に使われる数字が気になり(理系は数字には敏感!)、学問の社会的意義を見失って翻弄され続け、挙句の果てはバーンアウトしてしまうか、あるいは世捨て人の様に自分の研究の世界の中に逃げ込んで、その社会的意義など考えなくなるように思います。どっちも良くないですね。

ということで、経済学というか、世の中の仕組み、人が辿ってきた歴史についても貪欲に学び、人の内面にも向き合ってこれから起こるであろうことを想像し、今の時代感覚を持って成すべきことに気付き、行動することも理系学者が学者らしくあるために必要だと思うのです。何もそれは学者に限ったことではなくて、テクノロジーに関わる全ての人について言えることです。単に利用される存在とならず、自分の行動に自らその意義を与えられることは大切です。学者になってからのこの30年あまり、科学の進歩に伴って業界は細分化され、専門性が問われる傾向が強かったと思います。専門領域で秀でることが個々の存在意義として求められてきました。しかしそういう細分化が進んだことで、互いの関係が見えなくなり、果ては自分自身の学問が世界とどう繋がっているのかさえよく分からなくなってしまい、分野を越えた協力というのを難しくしていました(YUCaNでの苦労でそれを痛感しています)。今再び、レオナルド・ダ・ヴィンチ的な博識の人が求められている様に感じます。失われた世界の絆を取戻すには、知識や理論だけでもない、実践と経験だけでもない、両方を兼ね備えつつ本当の意味で世界を俯瞰し、自分の周囲の都合や常識に流されない存在が必要です。それを目指してんだけど、自分の能力的になかなかそんなこと出来ません…。

テレビっ子(死語)の私は、活字を読むのが苦手で、スピード感も無いのでテレビとかメディアの情報を大量に仕入れます。ただ、いつも批判的にそれらを見ているので鵜呑みにはせず、そこから考え始めます。ここ最近の記事に一番影響を与えたのは、今年の正月に放送されたNHK BS1スペシャルのこの番組です。

欲望の資本主義2023 逆転のトライアングルに賭ける時 - BS1スペシャル - NHK

繰り返し見てしまうほど、中身が濃かったです。先日話題にした「労働力のステルス値上げ」もこの番組の中で渡辺努先生が言っていたことでした。色んな人が話をしていますが、多くがフランスの経済学者。やっぱり私、フランス好きだなあ。大勢の考えとか空気に引きずられている様なところが全く無くて、日本人と対極的です。とても説得力があり、うならされるのですけど、これらの経済学者が語るテクノロジーや産業は、やっぱり机上の話になっていると感じるところもあります。それは、実際にそれらに関わった経験が無いからでしょうね。例えば太陽電池やリチウムイオン電池を作るための産業技術がどれぐらいダーティーであるのかについてのインプットがされていない感じがします。まあ、良い番組だと思いました。再放送もまたあると思いますし、NHKオンデマンドでも見れますから是非ご覧になると色々考えさせられると思います。

さて、この番組でもしきりと「イノベーション」という言葉が登場していました。イノベーションとは何か、まずその定義から確認しましょう。

イノベーション - Wikipedia

イノベーションは新しい技術の発明、Invention(インベンション)ではないんです。用いられる技術というのは陳腐で古臭いものであっても構わない。新しい切り口、とか言われていますけど、要は社会的意義が重要であって技術をどの様に用いてより良い社会づくりに貢献するのかという意志が無いとイノベーションは起こらないわけです。極論すれば、イノベーションにサイエンスは不要かも知れません。自分の学術的関心やそれを溺愛してしまうことはイノベーションの妨げですらあるでしょう(古いタイプの理系にありがち)。

果たして、政治家も、役人も、企業経営者も、もっとイノベーションを!と叫ぶわけですけど、実態はどうか。上記の経済学者の多くも指摘していますが、イノベーションを最初に定義したシュンペーター的なイノベーションが、社会の発展や豊かさ、幸福度を向上させてきた時期があったとしながらも、最近は社会的意義のためではなく、単にライバルに打ち勝ち、淘汰するための手段として、本来必要でもないものを必要と思わせる新しいネタ探し、アイデア出しの様になってしまっている、そうした悪いイノベーションが良いイノベーションを殺している、というのです。それ、分かります。深圳のB級ベンチャーなんて完全にそうですし、日本も怪しいものです。それをイノベーションと言いつつ、一体どういう理念があり、どの様に良い社会形成に貢献するのか、という社会的意義のためではなくて、如何に商業的に成功するか、競争に打ち勝ち、利益を上げるかという経済的意義だけが新しいモノやサービスを生み出す動機になっているところがあります。もっと酷いのは、圧勝する巨大企業が誕生したことで、イノベーションを阻止する動きまであるということです。例えばアマゾンやマイクロソフトなどは、元々はイノベーションを起こして社会変革を起こした、アメリカの発展の原動力でした。ところが、企業買収、いわゆるM&Aを通じたライバル潰し、邪魔な存在だとしても重要なオルタナティブであったはずの同業他社潰しが進行し、進化の原理である代謝のメカニズムが破壊されてしまいました。さらには、そうした民間会社が病院、学校、交通など、公共性の高い事業にまで手を出し、そうした公共サービスの健全性さえ危ぶまれています。

科学技術による人類の前進を信じて、自然科学と工学技術を志した理系の同胞、もちろん学生諸君にも呼びかけたい。そんな単なる金儲けの手段に利用されることは嫌ではないですか?声高にイノベーションを主張する人がいたとして、それがどんな理念に基づくのか、そこはしっかりと自分で判断した方が良いです。というか、自らが理念を持つことが必要であり、だからこそ世界に目が見開かれていることが大切だと思うのです。何度も言っていますけど、知ること(学ぶこと)はまず大前提です。無知からは何も生まれません。しかし、批判的精神をもってそれを咀嚼し、知ったことから想像力を働かせ、気づくことが自分を導く本当のチカラになります。それを怠ると、とりあえず強そうな人についていこう、となってしまいます。その先に地獄が待っていたとしても。良い物(知識とか技術とか)を持っていたとしても、それをどう使ったら良いのか分からない(アイデアが無い)。だからそれを悪用しようとする人にさえ協力してしまうかも知れない。世間知らずのマジメな理系の悲しい末路です。

(経済)成長の無い時代、世界の分断と気候変動によって今までの当たり前を維持することが困難となる時代において、幸福な社会の形成に資する社会的意義の高いイノベーションが求められています。それは、再び巨大なマネーを生む金儲けであったり、気候変動を無関係にしたり、有り余る程のモノに溢れた世界を実現するためでないことは明らかです。火星移住でもありません。成長(膨張)よりも持続する幸せが最も高い目標となった今、イノベーションの意義を取戻し、本来の、本物のイノベーションを起こす人たちが救世主となります。創業時はイノベーター集団であっても、一度成功拡大し、その経済的価値を保つことに必死になっている大企業(とそれに従属する弱い理系)にはイノベーションは起こせないでしょうね。イノベーションへの熱い情熱を持った人は、自ら起業すべきだと思います。サイエンスが足らないのは何とかなりますが、世間知らずにはイノベーションは起こせませんね。新しい挑戦者を社会が後押しして欲しいですね。寛容にね。

2023年1月19日木曜日

ウクライナ10

 最終決戦!になるかどうかは分かりませんが、大きな戦闘が近々始まることはほぼ確実です。

「ロシア・ウクライナ最終決戦」の予兆…! 歴史の教科書に載るであろう「大きな戦い」が近づいている (msn.com)

ドニプロ市の民間アパートにロシアのミサイルが着弾し、子供を含む40人以上の民間人が亡くなるなど、戦争の被害は拡大を続けています。ウクライナ軍は侵略者に対して勇敢に戦い、占領された地域を一部奪還するなど、一進一退の状況が続いています。ウクライナはもちろん、ロシアもまたこの戦争を早く終わらせたいに違いないですが、自らの大義を果たすことが前提であり、現状での停戦は全く望めません。

昨年末からずっと噂されていますが、一度失敗したキーウ陥落を目指したロシア軍の総攻撃が近づいています。ベラルーシ軍とロシア軍の合同演習がその予兆であることは間違いありません。果たして、ベラルーシ軍も参戦するのかどうか。ロシアに対してNOとは言えない、強制的に従属させられるベラルーシですが、それでも独立国ではありますから、もしもベラルーシが参戦すれば、戦争の枠組みが拡大することになってしまいます。

欧米からの支援を引き出す、ウクライナのゼレンスキー大統領は、ロシアにとってとても邪魔くさい存在だと思います。ウクライナ東部への猛攻撃と同時進行してウクライナ軍を分散させ、場合によっては戦術核も投入して、今度こそキーウを掌握して現政権を葬り去ること、ウクライナを無政府状態に陥らせることを狙ってくるでしょう。この戦争が現大統領間の交渉によって終結することはとてもありそうにないです。

しかし、恐らくはロシアはこの軍事作戦に失敗することになるでしょう。NATOは最新鋭戦車や迎撃ミサイルの投入を急ぎ、ウクライナ軍の勝利を確実にすべきです。今回、ゲラシモフ氏を総司令官とした総攻撃を仕掛けてそれに失敗すれば、プーチン大統領は急速に求心力を失うことになると期待出来ます。そうなればロシア兵は一層戦意を喪失し、国内世論は戦争不支持に傾き、弱体化は決定的になると思います。その後ウクライナ軍が東部を奪還し、ロシアを敗戦へと向かわせる道筋が見えてきます。ただ、そうして大人しく負けてくれるかどうかです。追い込まれたロシアが核の使用に踏み切ることが容易に想像出来ます。ウクライナがロシア本土を決して攻撃しないことが重要です。核使用の口実を与えてはいけません。そこが問題で、既にロシアは東部四州を併合したと一方的に宣言していますから、これらが奪還されることをロシアへの攻撃、ロシアの存続が脅かされる事態(核兵器の使用を正当化する理由)と見なすことが十分考えられます。

だから、この戦争は世界をその終わりへと導く可能性がとても高いのです。核が使われることのないままロシアが敗戦することを心から願っています。本当は、ロシアの人たちにも死んでほしくはないですが、残念ながら皆さんのリーダーはあなたたちの命を何とも思っていません。だから、この戦争を早く終わらせて、新しい未来のために立ち上がって欲しいです。私たちは(少なくとも私は)ロシアもロシア人も見捨てたりはしません。

2023年1月12日木曜日

セルビア

 世界は広く、複雑です。いつもアンテナを立てて情報を吸収しているつもりなんですが、全く知りませんでした、セルビアのリチウムのこと。昨晩夜遅くに、NHKの「BS世界のドキュメンタリー」という番組で、オランダのTV局が制作した番組が放送されていて、セルビアのリチウム争奪戦が取り上げられていました。

「リチウムを獲得せよ! 欧州エネルギー安全保障と新秩序」 - BS世界のドキュメンタリー - NHK

リチウムの生産については、独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構JOGMECの下記ページに詳しく説明されていました。

リチウム生産技術概略|JOGMEC金属資源情報

リチウムは南米に多く、特にチリが地球全体の60%を占めるということですが、採掘が進んでいるのはオーストラリアで、生産量は世界一のようです。しかし、掘り出してそのまま使えるわけではもちろんありません。南米では主に塩湖のかん水に含まれたリチウム、オーストラリアはリチウムを含む鉱石が原料のようです。いずれの場合も、当然ながらナトリウム、カリウム、マグネシウムなどの不純物を沢山含みます。原料の状態に応じて色々な方法が用いられていますが、溶解度差を利用してリチウム分を増すことや、イオン交換膜と電解による濃縮も行われているようです。天日干しというのは平和な感じがしますが、鉱石だと1000℃以上で焼いて硫酸に溶かす、とかするみたい。塩化物、水酸化物、硫酸塩などを経て炭酸リチウムになり、そこからさらに製品(電池用の電解質)に加工されるようです。ちなみに、炭酸リチウムは既に100ドル/kg以上、10年後にはその10倍ぐらいの価格になると言われています。いずれにしても、生産に相当エネルギーや薬品を使い、廃液を生成するのは明らかですね。このダーティーワークを請け負っているのは中国で、オーストラリアで産出された鉱物は中国で炭酸リチウムになり、出荷されるようです。そればかりでなく、中国は世界中からリチウムをかき集めています。なにせリチウムイオン電池の80%は中国製ですから。

さて、冒頭のセルビアの話に戻ります。先のウェブには触れられていませんが、なんと、世界の埋蔵量の10%がセルビアにあることが分かったようです。そして、その採掘権を巡って激しい争いになっているのです。リチウムイオン電池は蓄電装置であって、発電施設ではありませんが、太陽光や風力によるクリーン電力拡大のためにも、そしてモビリティーの電動化のためにも、リチウムは欠かせないわけです。携帯電話とかのモバイル機器はもちろんです。グローバルなカーボンニュートラルへの流れに対して、特にそれに前のめりなEUにとって、ヨーロッパにリチウムがある!というのは朗報なわけです。これもまた、中国の賢さ、したたかさを認めないわけにはいかないのですが、今リチウムの生産はほぼ完全に中国に支配されていて、EUはリチウムを内製したいのです。それがはっきりしたのは、やはりこの戦争の問題でもあります。ロシアのガスに依存してきた(特にドイツ)ことのリスクの大きさをEUは痛感しました。そして、中国も同様に「信用できない国」と見なされているわけで、EUの未来(他の地域もそうですけど)を担う資源をそうした信用ならない国に依存するわけにはいかないと。

そこまでは、見つかって良かったね、の様にも聞こえるのですけど、そっから先がえげつないです。セルビアって、どんな国かよく分からないですよね?

セルビア - Wikipedia

はい、以前はユーゴスラビアでした。内戦を経てバラバラになったうちの一つがセルビアです。テニスのジョコビッチの国ですよね。そもそもユーゴスラビアが多民族国家だったので、元に戻っただけとも言えるのでしょうか。ヨーロッパのこの地域、スラブ民族の歴史って本当に複雑。重要なのは、セルビアはEU加盟国ではないということです。人口約700万人でGDP87位、決して裕福な国ではありません。そうすると、このリチウムの発見は、セルビアの人にとっても朗報か?EUはオープンアームで「ようこそEUへ!」ってな感じでセルビアのリチウムに群がっているのです。そこにはちゃっかり、中国の姿も!セルビアのリーダーにとっては、良い話ですよね。特に何の強い産業も無いわけですから、リチウム資源の開発でグリーンディールに組み入れられ、経済エリートへの道が開かれるならば、それは同国民にとっても良いことではないかと。しかし、そう簡単にはいきません。番組でインタビューに答えていた、反対派住民代表の農家のオジサンがカッコ良かった。「オランダで、1000人が住む村の下でリチウムが見つかったとして、その採掘のために村を消滅させることが認められますか?」と。もっともです。我が家の下に白金が見つかっても、家を壊されたくありません。

しかし、これは持続可能な人類の未来のため!と正義を振りかざすわけですね。それ本気で言っているのでしょうか?番組ではユーゴスラビア時代の炭鉱跡も紹介されていました。見渡す限りの荒れ地です。公共の利益のために、村が破壊されて穴ぼこだらけにされた土地です。人が住んでいない森を切り開いて農場にしたり、太陽光発電所を建設することや、海に巨大な風車を建てることも疑問ナシとはしませんが、さすがに自分の生まれ故郷が破壊される様は見られませんよねえ。しかし、事実としては着々と進められようとしているみたいです。色々な資本が入り、村の土地が買収されているということでした。反対派の意見に賛同の声が集まり、セルビア政府は採掘を禁止するように方針転換したようですが、まだこの先目が離せません。

セルビア:Jadarリチウム鉱床からのリチウム輸出の禁止を計画|JOGMEC金属資源情報

食糧、エネルギー、鉱物資源の争奪戦は今後一層激しさを増すことでしょう。いずれの場合も、出来るだけ多くの人にちゃんと行き渡るように、とか、持続できる様に、と言う考え方が無くて、売れるからどんどん作る、みたいな考え方が支配的であるのが問題です。例えば、ドイツの高級車メーカーが作る化け物みたいなEVは、明らかに不必要な程デカい電池を積んています。それを欲しがる人、買える人がいるのですから、「もっとリチウムを!」となりますよね。ちなみに、リチウムイオン電池のリサイクルはまだ殆ど進んでいません。

まあ、リチウムは決してレア元素ではないので、今回のセルビアの様に世界のどこかで新たに見つかるリチウムもあることでしょう。石油がいつまで経っても無くならなかったように。しかし、今の様な状況を放置しておけば、早晩地球が穴ぼこだらけになることは間違いないです。そうなった時に、それでもやってきたことは正しかったと思えるかどうかですね。このリチウム騒動のことを知り、一層持続性の難しさを感じました。

2023年1月7日土曜日

カーボンニュートラルというビッグビジネスチャンスと鉱物資源危機

 昨年11月に行われたシンポジウムで産総研の近藤先生から基調講演を頂きました。エジプトで開催されたCOP27に参加されていたそうで、そのことも話題になっていました。特に印象に残ったのが「それが良いことか悪いことかは別として、事実としてカーボンニュートラルはビッグビジネスチャンスとなっている」という話でした。COPでは各国政府の代表が気候変動対策の枠組みを議論する会議だけでなく、併設されるパビリオンで脱炭素に関する技術見本市も開催されます。エネルギー消費やエミッションが大きい従来型の産業やサービスに未来はなく、銀行もお金を貸してくれなくなります。一方それを大きく変えていくクリーンエネルギーやローエミッションな産業技術には将来性があり、各国が血眼になって自分のところの技術やサービスを売り込もうとしているわけです。まさに、カーボンニュートラルはゲームチェンジャーであり、社会や産業のシステムが大きく変わる時、勝者と敗者が生れることになるでしょう。だから、従来通りのメンタリティーでもって、勝ちあがりたいですから、これはビッグチャンスなわけです。しかし、そこには大きな落とし穴がある。

長引くコロナによる停滞に戦争の影響も加わって、世界経済の主役級の国々で好景気に沸く国などありません。失策としか思えないゼロコロナで自らの首を絞め、不満の矛先が政府に向かった途端に方針の変更というより崩壊が起こって酷いことになっている中国ですが、2023年は反転攻勢、GDP5%増を目指すようです。延期されるハズだった広州モーターショーが急遽開催され、中国メーカーは様々な新型EVを登場させたようです。

中国 感染拡大で延期した国内最大のモーターショー急きょ開催 | NHK | 中国

さすがの中国も、2022年の自動車販売台数は減少に転じてしまったようですが、EVを軸に内需を拡大して(輸出が伸びないし)経済成長のエンジンにしたいということなのでしょう。しかし、中国のエネルギーインフラを考えると、そのEVに使う電力は相変わらず石炭由来です。14億の人口と広大な国土にクリーンモビリティーを行き渡らせるのは容易ではありません。ならば太陽光発電や風力発電も拡大して、となりますが、これらカーボンニュートラル社会実現に向けた新しい産業技術は全て鉱物資源への依存が極めて高いという問題が浮上します。

EV、風力発電、電化社会・・・脱炭素時代にとるべき鉱物資源戦略とは | EnergyShift (energy-shift.com)

リチウムイオン電池に必要なリチウム、コバルト、ニッケルなどだけではありません。強力な磁石に必要なネオジム、ジスプロシウムなどのレアアース、さらには電線に必要な銅さえも、供給不安、価格高騰のリスクがあります。上記ウェブからもリンクされている、資源エネ庁がまとめた資料を見ると良く分かります。地球上に遍在する鉱物資源の地政学的リスクもそうですが、その原料を精製した化成品の供給がかなり中国に支配されています。戦争の拡大さえ心配される世界の分断と対立を考えると、こうした再エネ関連産業の足元がいつすくわれても不思議ではないです。

この様な危うさの中でも、各国がカーボンニュートラルのビッグビジネスチャンスを逃すまい、乗り遅れまいと躍起になっている状況に大きな不安を感じます。「儲かるから!」地球を穴ぼこだらけにしても、鉱物資源をどんどん掘り出し、消費浪費する。持続可能社会実現の名の下に、それとは正反対な持続性を無視した様な開発を進めようとする今の状況に、相変わらぬ人の強欲さが見えます。それは、持続可能な安定を求めているのではなくて、死に急いでいるのではないでしょうか。

持続可能な食の実現のために、昆虫や雑草を食べなくてはならないかも知れない。産業技術やエネルギー消費もまた、持続可能な範囲にとどめるという方針転換が必要ではないでしょうか。

2022年12月21日水曜日

ドミトリー・トレーニン氏

 前回の話の続きですが、ロシアの政治学者、ドミトリー・トレーニン氏のインタビューを是非ご覧ください。

ロシア「敗北すればすべてが失われる」プーチン政権の賭け | NHK

まさに、これなんです。トレーニン氏のいう様に、ロシアがこの戦争に負ければロシアという国家の存亡さえ危うくなるのです。ロシアと西側諸国の関係は既に壊れていて、戦争の前に戻ることはない、という言葉が大変怖いです。でも、恐らくその通りです。親ロシア的なウクライナに戻ることも決してないでしょう。「プーチン大統領はウクライナから反ロシア的なものを排除したい」とトレーニン氏は言いますが、それが実現されることがあるのなら、オレグさんは故郷を失うことになります。世界は深刻な分断を許してしまいました。トレーニン氏は停戦交渉も現実的ではない、と断言します。どちらかが敗北を認めるまで戦争が続くとしたら、恐らく米国を中心とするNATOが敗北することはあり得ませんから、ロシアが壊滅することになります。でも、それは先に書いたとおり、核武装した恐ろしく巨大なテロ組織を生み出すことになるのです。だとすれば、たとえ双方が戦術核の使用に踏み切ることなくこの戦争が終わったとしても、早晩核を使った大量殺戮が行われることになります。もはや、カーボンニュートラルとか、持続可能性とかに取組むことも出来なくなります。

今日、ウクライナのゼレンスキー大統領は開戦後初めて渡米し、バイデン大統領と対談するそうです。一層の武器供与を求めてのことです。戦場で死ぬのはウクライナの兵士ですが、既に米ロの戦争となっていることは明らかです。バイデン大統領にこの戦争を終わらせる意志は無いのでしょうか。ロシアが停戦するためには、西側諸国が相応にロシアの要望を受け入れることが前提となります。EUにも北米にも、そして日本にもそれを受入れる様な考えは全く無さそうです。

私は太平洋戦争終結からおよそ20年後に生まれました。高度成長期を経てどんどん豊かになっていく日本の中で大人になり、バブル崩壊を経験して、行き詰まる日本も見てきましたが、ここまで世界が悪い状況になることには初めて直面しています。歴史の記録でしか知らないことではありますが、あれ程の犠牲を払った大戦争からまだ100年も経たないのに、世界はこの様な深刻な対立を迎え、もはや戦争を平和的に終結する方法は失われたかの様に思えます。こんなふうに、世界が終わりを迎えるとは思ってもみませんでした。若い人たち、我が子、そしてまだ生まれたばかりの命に対しても、こんな愚かな大人たちが世界を悪くしてしまったことを、どう償って良いのか全く分かりません。

このトレーニン氏の言うことも、やはり誤りだと信じたいです。どうにかして、この戦争を終わらせる方法はあると信じたいです。

2022年12月18日日曜日

ウクライナ9

 前の話と一緒に書こうかと思ったんですが、ウクライナのことなので、こっちのシリーズに書きます。でも、関連します。

ウクライナのオレグさんが日本に来て2週間が経ちました。少しずつ日本の生活にも慣れて、物静かな彼が見せてくれる笑顔に嬉しくなります。自分の半径5メートルぐらいしか見えていない人には、戦争がもたらす悲劇、恐ろしさ、苦しさは全く想像出来ないだろうと思います。その世界を生き延び、手で触れることの出来る距離にまで彼が来てくれたこと、その力になることが出来たことは、56年の今までの人生で一番誇れることの一つです。

彼とは、この間にも戦争のこと、ウクライナだけでなく、ロシアの人々や他の地域も含めて、罪の無い普通の人々がどうしたら苦しめられずに済むのかということについて、色々と話をしています。例えば今日、日帰り温泉に一緒に行って、くつろいだ中で話しました。ウクライナには多くの友人がいますが、私はまだ見ぬロシアの友人のことも心配なのです。いや、いたな。ずっと前、確か1996年にインドで太陽光エネルギーの国際会議で仲良くなった、ロシア人のオッサンがいました。リャブチュクさんという人です。一緒にタバコ吸ってて、タバコの時間の度に一緒にしゃべって、歳は凄く違うのに、やたら仲良くなって、学会会場でも会うたびに"Hi, Hello!"って、挨拶してたっけ。生きてるかなあ、リャブチュクさん。そう、国の制度が何だろうと、どんな神様を信じていようと、肌や目の色が何色だろうと、何をいつも食べていようと、友達になれるんです。要するに、人は人。ほとんど違いが無い。よく知ったかぶりして「○○人は、大体△△」とか違いを強調したがる人がいますが、私の知る限り、違いよりも共通することの方がずっと、ずっと多いです。この戦争の行く末に、ロシア人はどうなるのか、ロシアという国はどうなるのか、ということへの心配です。想像してみてください。ウクライナの人々にとっては、今起こっていることは到底受け入れ難いことであり、ロシアという国、そしてロシア人を憎むなということはとても難しいです。それでも、オレグさんは私の言うことに耳を傾け、否定するでもなく、むしろ私の恐れに共感してくれました。何と素晴らしい友人を持ったことでしょう。自分を高め、育ててくれる友人を持つことは幸運なことです。

私が話していたことは「ロシアはこの戦争に負けることは出来ない。負けはロシアという国家の崩壊を意味する。ロシアの崩壊はテロリストを大量生産することになる。」ということです。ロシアの敗戦はプーチンの失脚では済みません。もしこの戦争に負ければ、ロシアを構成する様々な民族、地域はもうモスクワの言うことを聞かなくなります。戦争の責任を問われても、モスクワはそれを合理化することが出来ないでしょう。すなわちそれはロシアの崩壊、分断を招きます。経済的に疲弊した、弱小な地域をマフィア的なリーダーが統治する無法地帯が多数生じます。大変都合が悪いのが、それら弱小且つ不安定な地域が核兵器を保有するということです。すなわち、タリバンが統治するアフガニスタンの様な地域が10個ぐらい生産されて、それが核を持つということです。その管理や適正な運用が出来るはずもありません。悲劇的な頭脳にすさまじい筋力の恐ろしいテロリスト集団を生み出します。なので、ロシアを敗戦に追い込んではいけないのです、絶対に。

アメリカやEUは何を考えているのでしょうか?ロシアが「負けました、降参です」と言う日を迎えるまで戦争を激化させるつもりでしょうか?降参にまで追い込めば、それはプーチンの失脚ではなくて、上記のロシア崩壊を招くのです。ロシアの国体を守らねばなりません。ロシアの人々が、ロシア人としての尊厳を守れる様にして、この戦争を終わらせなくてはならないんです。当然ながら、プーチンはこの戦争を早く終わらせたいと思っているのです。どの様にすれば、戦争を終わらせることが出来るのか、についてバイデン米国大統領とプーチンがその合意点を見出す以外に方法はありません。この状況において、プーチンがその権力の座に留まることに固執するなら、ロシアという国家を道ずれにして崩壊させることになります。すなわち、プーチンの亡命と保護を条件として、民主的プロセスによるロシアの再生を約束する以外にないのです。ウクライナの損失も、ロシアの損失も、この戦争を許してしまった国際社会が総力で償う以外方法は無いです。プーチンは消えても良いけど(殺しちゃダメ)ロシアという国は絶対に守らなくてはなりません。この終戦プロセスについて、アメリカが口出ししないことも大切です。ロシアの未来を選ぶのはロシア人であるべきです。ロシアの弱体化は避けられないでしょう。ロシアの人々はそれを受入れなくてはなりません。しかし、経済や軍事などよりも、長い歴史に裏付けられたロシア人としてのアイデンティティーは決して失ってはなりませんし、私たちはそれをリスペクトしなくてはならないのです。

10年以上続いたアフガン戦争を終わらせたゴルバチョフ氏は、ソビエト連邦を崩壊させました。その時は、まだ崩壊しても大丈夫なソ連だったのです。でも、今度はロシアの崩壊になってしまいます。それはあってはなりません。欧米が、これまでに行ってきたロシアへの敵対政策の過ちを認め、この戦争を明確には非難していない多数の国家に対しても、それらをリスペクトすることが出来るなら、この戦争を終わらせる方法を共に考えることが出来るハズです。今はまだそれが全く見えないのですが、世界の賢人たちに気付きと想像力があれば、きっとその道が見えてくると思います。

2022年12月17日土曜日

ついに日本は戦争をする国に

 ああ、何と嘆かわしい。政府はついに増税をしてまで軍備を増強し、来たる戦争に備えることを決めました。誰か止めてくれ!一体誰のため?国民のためと政府は言うが、皆さんは他国を攻撃出来る程の強力なミサイルを日本が持てば安心して眠れるようになりますか?私は逆に不安になります。とうとう、日本も戦争をする「普通の国」になってしまいました。

首相のスピーチが酷かった。隣国の脅威をひたすら繰り返し、国民を不安に陥れて洗脳し、軍事大国になることを正当化しようとしている。外務大臣経験が長く、広島出身でもある岸田首相には、本気で核の無い世界の実現に取組むことに少しだけ期待していましたが、全く期待外れです。G7で核の縮小を訴えるとか言っていますけど、「言ったよ」で終わるのが明白です。本気じゃない。

NATO入りの条件であるGDP比2%の軍事費となると、日本は米国、中国に次ぐ世界三位の軍事大国になります。今の九位から大躍進!憲法九条で不戦を誓っているこの国がですよ!一体誰が喜ぶのでしょう。それは、ゆ、ゆ、USA!そうですね、我々は敗戦国ですから。アメリカさんの言いなりになるしかないんです。本当、何とでも言え!です。それ程の強大な軍事力を持つことが憲法九条と両立するのなら、憲法改正など全く不要。解釈の範囲にも程がある。明らかな憲法違反であり、我が国に軍備は不要です。永遠の不戦を誓った誇らしい日本。過去の過ちからちゃんと学ぶことが出来た素晴らしい日本人。それは遂に過去のものになるのですね。80年前の悲劇は完全に忘れ去られ、我が同胞が同じ過ちを繰り返そうとしている。嘆かわしく、そして恐ろしいです。我が子を守ってやれなかったことが悔やまれます。自分の力は小さすぎる。

全く持って、やはり想像力が欠けているのです。視野が狭いです。皆さんも、本気で隣国がクレージーだと思いますか?北朝鮮は「ならず者国家」ですか?プーチンも習近平もキチガイですか?そんなわけないでしょ!全くあなたと同じです!そして、相手がクレージーだから、いつ我が民が犠牲になるかも知れないので、怖くて日本を攻撃するなんてことを一切考えられない様にするために、強力な反撃能力を持つべきだ、と言っているわけですけど、それは本当か?ここで必要なのが想像力です。そう言われた相手がどう思うのか。日本は対話に応じる気はなく、我々を敵視している、とより強く思うだけです。すなわち、日本国民はより危険な状態に陥ります。確かに、相手にも想像力が欠けています。我々を敵視して、東京を一瞬で焼け野原にすることが出来る能力を準備するからこういうことになるんです。その行く末に決して両国民の幸せは無いのだ、ということに対する想像が出来ていません。岸田さん、相手が日本を攻撃するのは怖い、と思うのは北京やモスクワや平壌を一瞬で焼け野原にすることが出来る核ICBMを日本が持つことですよ!敵基地攻撃能力ではダメです。軍人は戦争の時には死ぬのが仕事です。他国と同じ、筋肉マッチョなローレベルな恫喝外交をするつもりなら、核ミサイルを開発しなさい。今やっていることは全て間違いです。恫喝に効くのは核だけです。北朝鮮を見習いなさい。それしかすることが出来ないぐらい、世界から無視され、痛めつけられているから、核を開発するんですよ、あの国は。タリバンだって核が欲しいに決まってる。リーダーは、最大限国民の幸せを守ろうとしているんです。それが民主主義でも、専制主義でも。あなたがその程度のことしか出来ないのなら、金正恩氏を見習いな。

今回は言わせてもらいます。私はもっとバカかも知れないけど、世界の政治のリーダー達はバカばっかりです。きっとちゃんと勉強してきた人たちなはずだから、過去を知らないはずはないですよね?だから、欠けているのは想像力です。あなた達のしていることの未来に、国民の幸せはないと、想像できないのですか?勉強出来ても、頭悪いのね。

2022年12月3日土曜日

オレグさん来日

 

この日が来るのをどれ程心待ちにしていたことでしょう。友人であり、共同研究者のオレグ・ディミトリエフさん(ウクライナ国立学士院半導体物理研究所)が12月1日ついに来日しました。写真は成田空港で出迎えた直後のものです。会う時まではどこか半信半疑だったのですけど、彼の姿を見て熱いものがこみ上げてきて、思わず泣いてしまいました。嬉しかった、ただただ嬉しかったです。彼の笑顔を見て。

ウクライナの人たちとの共同研究は、学振の二国間交流事業で2018年から本格始動し、途中コロナのための延期もあって2022年3月末まで継続されました。その後の研究継続発展のために、学振の研究者長期招へい事業に応募採択され、今年6月1日から山形大学で研究を開始する予定になっていたのです。今年1月にオンラインで先方グループとミーティングをしていた時に「なんか、ロシア軍が国境に結集しているみたいだけど、大丈夫?」「いや、単なる脅しでしょう」なんて言っていたところに2月24日、本当に軍事侵攻が始まり、無期延期となってしまいました。戒厳令が敷かれ、18歳から60歳までの男子は出国禁止、日本大使館も業務停止、ですから。

その後、早期に停戦されること、彼が来日出来ることを祈りつつ、YUCaN学生部会によるウクライナの研究者と学生とのオンラインセミナーなども行いました。山形県、米沢市、山形大学に協力をお願いするも、役所らしい杓子定規な断りに直面し、憤懣やるかたない思いでした。システムとしてはダメ、でも個人では違うんですよね。特に山形大学の若手の事務職員のT氏は、学振とのやり取りなど、通常業務で多忙を極める中で迅速に対応して頂いて、本当に嬉しかったです。もちろん、県も市も、担当者としては○○の事情はあっても、個人としてはこの状況に対して熱い支援を頂きました。本当に、皆さんの支援無くしてオレグさんの来日は実現出来なかったと思います。ありがとうございます。ありがとうございます。日本の仲間に訴えたい。これは、絶対に正しいことですよ。傍観者になってはいけない。ウクライナ人だけではありません。ロシア人も。無意味な死を遂げる人がもう生じないように、私たちに何が出来るのか、何でも良いです。どうか忘れないでください。あなたがそうであるように、彼らも、彼女らも、同じように平和と幸せを求めているんです。理屈じゃないです、心で仕事しましょう。信念で仕事しましょう。平和が続くことの尊さ、子供たちが幸せであることの大切さを決して忘れないように。

まだインターネットも使えない、キッチンも使えないので、今週末はずっと彼と一緒にいます。日本に早く慣れてもらって、良い研究が出来る様に環境を整えていきたいと思います。とにかく、一刻も早く皆さんにオレグさんの存在を知って欲しく、彼が山形の地にやってきたことを知って欲しく、速報としてこのブログでも紹介させてもらいました。でも、それでは届かないので、NHKにレポートをお願いしました。フライングで情報を敢えてリークする私に「大丈夫ですかあ?」と気遣ってくれて、Nさんありがとうございます。

ウクライナ人研究者 山形大受け入れ 光エネルギーの共同研究|NHK 山形県のニュース

是非オレグさんに、そしてこれからやってくるウクライナの人たちに、温かい支援をお願いします。そして、このバカげた戦争を一刻も早く終わらせる様に、政府に働きかけましょう。私たちのお金を使ってアマゾンで防衛ミサイルを物色する馬鹿なことはすぐやめて、モスクワに行くべきです。北京にも行ってください。それが出来ないリーダーなど、リーダーと思えません。アントニオ猪木さんが生きていたら、きっと行ってくれたでしょう。「元気ですかー!ダァー!」

多くのウクライナの友人は、まだウクライナにいます。幾人かは国外に脱出したようです。これからも、全力で取り組みます。皆さんの応援が力になります。一人でも多くの人たちが戦火を逃れることが出来ますように。


2022年10月12日水曜日

ウクライナ8

 またしても、長らく中断してしまいましたが、再びウクライナの問題です。ロシアによる軍事侵攻が始まってもうすぐ8か月となりますが、事態は改善するどころか、一層深刻になり、終わりが全く見えない上に、凄惨な結末を生むことを本気で心配しなくてはならない状況です。恐れていたことが、次々に現実に起こっています。どうにかして、この状況を止めて欲しい。しかし、その力を誰も持っていない様に思われます。

こうしている間にも、学振に招へいされているOleg Dimitrievさんは、第三国を経由して綱渡り的に来日することを目指し、その準備を着々と進めています。また、山形大学が立ち上げたSTEP-YUプログラムによっても、数名のウクライナ人学生を救済するために、関係者が頑張っています。一人でも多くの人たちの命を救い、ウクライナの再建を果たすために、国際社会は一致協力すべきです。

しかし、その「国際社会」が何を意味するのか、それが一種類ではないことは繰り返し訴えてきた通りです。プーチン大統領を悪だ、狂気の殺人者だと言う人たちがいても、プーチン大統領や少なからぬロシア国民にとっては正義の戦いであって、絶対に負けることの出来ない戦争です。ロシアが袋叩きに遭う中で、中国やインドは微妙な距離感を保っているとはいえ、ロシアを世界地図から消してしまいたいと躍起になる西側諸国が正しいわけでもありません。ロシアの軍事行動を非難する国連決議に反対したり、棄権したりする国が多数あることを忘れてはなりません。世界はその多様性を基礎とすべきであり、善と悪の二極ではないのです。

クリミア大橋の爆破をきっかけに、大規模な報復攻撃がウクライナ全土に広がり、キーウ周辺にいる私の友人たちにも危険が迫っています。ロシアは徴兵に踏み切り、ベラルーシが参戦を表明し、この混乱に乗じて北朝鮮が頻繁な弾道ミサイル発射と核実験による挑発行動を活発化して、世界のルールを無視した核保有国としての既成事実化、力によって相手を恫喝し、交渉のテーブルにつかせようとする動きが露わになっています。これを単に邪悪な心がもたらす行動と思うなら、その世界観は歪んでいます。相手の立場になって考え、そして人の行動心理を素直に受け入れたなら、これらの国々がとる行動は、全くもって合理的です。中国やインドもしかりです。決して米国、EU、日本に同調はしないでしょう。これら全ての国々がしようとしていることも、やはり力によって相手をねじ伏せようとしているだけなのです。力とは軍事力だけではありません。自らだけが正義の旗手であるかの様に振舞うのは明らかに間違っています。

相手が小国であれば、力でねじ伏せることも出来るのかも知れません。しかし、今は大日本帝国が滅亡した80年前とは違うのです。二発の原発と首都東京が焼野原になり、沖縄が占領されてやっと、日本とその人民の存亡が危機に瀕していることを認め、やっと日本は降伏しました。しかし、ロシアは6000発もの核弾頭を保有し、中国も巨大な核保有軍事強国であり、北朝鮮もあっという間に強大な核軍事力を手に入れたのです。台北が、東京が、ソウルが焼野原になってでも相手を屈服させれば正義の戦いに勝利したというのでしょうか?もちろん、その時はモスクワも北京も焦土と化します。ニューヨークも、ロンドンも、ベルリンも、パリも。すなわち、世界が終わるまで、この戦争を続けるのでしょうか?

今の各国政府、対話を拒み続けるリーダーたちの下ではこの戦争を止めることは出来ません。一方で国連は完全な機能不全に陥っています。大切なのは、世界の人々の想像力です。これをこのまま放置すれば、どういう結末に向かうのか、想像力を働かせなくてはなりません。そうすれば、どの様な妥協をしてでも共存への道を模索しなくてはならないことが分かるはずです。責任ある各国のリーダーは自らの思い込みを一旦脇に置いて、イマジネーションを働かせて、事態の緊急性に向き合い、対話による解決へのリーダーシップを発揮すべきです。

日本のEU加盟を!

 怖ーい!スタンフォード大学のダニエル・スナイダーさんのこの記事を読んでゾッとしました。 「トランプ氏は高市氏に力がないと安心している」の声も…《中間選挙》で暴走しそうな超大国に頼る日本の賭けは誤り? | 政治・経済・投資 | 東洋経済オンライン 11月3日の米中間選挙まで1週間...