このブログについて

国立大学法人山形大学工学部教授の吉田司のブログです。2050年までのカーボンニュートラル社会実現に向けて、色々な情報や個人的思いを発信します。発言に責任を持つためにも、立場と名前は公開しますが、山形大学の意見を代弁するものではありません。一市民、一日本国民、一地球人として自由な発言をするためにも、所在は完全に学外です。山形大学はこのブログの内容について一切その責任を負いません。
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2021年11月1日月曜日

FH2Rに行ってきました

 

福島県浪江町にある、太陽光発電の電力から水を電気分解して貯蔵輸送してオンデマンド利用が可能なエネルギーである水素を製造する施設、福島水素エネルギー研究フィールド(Fukushima Hydrogen Energy Research Field = FH2R)に行ってきました。

再エネを利用した世界最大級の水素製造施設「FH2R」が完成 | NEDO

手前が太陽電池パネル、中央右側の四角い建物が水電解施設、その左側の背の高いタンクに水素を貯めていて、水素を配達するトラックも見えました。一般の見学が可能な施設ではありませんし、行ったのは日曜日ですから(人影なかった)内部を見学出来たわけではありませんが、同施設は棚塩産業団地という沿岸に新たに開発された団地内にあり、上の写真は展望台からFH2Rの施設を眺めたものです。この他に、無人飛行機(ロボット)の研究施設や木造高層ビルのための高度な集成材開発のための施設が同団地内にあります。晴れた1日の水素の製造量が150世帯の1か月分という能力らしいので、まだまだ大都市や産業のエネルギー源としては不十分ではありますが、今考えられる究極に一番近いグリーン水素の供給施設として、大変注目しています。今年の東京オリンピックで使用したFCVの燃料や、先日のトヨタの水素エンジンレースカーの燃料は、このFH2Rから供給されたそうです。周辺にはまだ太陽電池を設置出来そうな平地が沢山残されてはいたものの、既に10 MWの電解装置だそうで、それで上記の水素供給能力となると、単純にこれを拡大して主要エネルギーとすることはかなり困難とは感じました。いかにも、お金がかかっている感じではありました。しかし初めの一歩としては大変重要で、いつかこれが当たり前になる時代が来て欲しいものだと思いました。

ご存知のとおり、浪江町は福島第一原発のすぐ近く、距離にして8キロぐらいです。果たして行けるのかどうかも良く分からないまま現地に向かいましたが、米沢から現地までは自動車で普通に行けました。ただ、浪江町に近づくに連れて、驚く程車の数が減りました。実は線量計を持っていたので、途中の放射線レベルも測りながら行きましたが、途中帰宅困難区域を通り、そこでは車両内でさえ2.5マイクロシーベルト/時を超えることがありました(車外に出ると多分倍ぐらいです)。普通0.1ぐらいなので、25倍程(許容上限が年間20ミリシーベルト程度なので、ちょっと車で通ると病気になるとかいうレベルではありません)。途中見かけた民家は入り口が塞がれ、この10年時間が止まっていることが分かりました。道中の渓谷と紅葉はとても美しく、生活を奪われた人たちの無念さを思わずにいられませんでした。除染が進み、帰宅が可能となった浪江町の中心部では、線量は0.07マイクロシーベルト/時程度で、米沢と全く違いありませんでした。しかし、街は閑散としていました。実際に帰還した人は元の人口の10%にも満たないそうです。

浪江町には、去年オープンした「道の駅なみえ」があります。結構県外ナンバー(自動車だけでなくてバイクも!)がいて、にぎわっていました。

広くて綺麗で、ピカピカの施設です。地元の名産品の売店のほか、浪江で有名な「なみえやきそば」などを提供する綺麗なレストランもあります。なみえやきそば、食べました。正直に言って味はまあまあです。
他の道の駅のように、野菜があまり売って無かったのが少し気になりましたね。あっても買わない?生産者が戻ってきていない?短時間の滞在ではありましたけど、何だか異常な感じが街全体に漂っている感じはしました。一旦破壊されてしまった都市機能を取り戻す。ただ、元に戻るのではなくて、より良い未来に向けて街が活性化していく、それを実験的に目指しているのだという感じがします。この道の駅で最大の注目は、その電力が全てFH2Rの水素から供給されているということです。
設備の多くが恐らく地中にあるため、例えばデカい水素タンクとかは見えませんでしたけど、写真手前にあるのは恐らく調圧装置で、その奥が燃料電池です(違うかな?)。この設備は、道の駅の裏手にありまして、説明のプレートとか無かったので、どういうシステムになっているのかよく分かりませんでした。是非説明の看板を付けた方が良いと思います。この道の駅に行った人は必ず裏も見学しましょう!近くにはEVの急速充電器も5基あって、太陽光➝電気➝水素➝電気➝電池の系統によって完全にクリーンなモビリティーを実現出来ます。素晴らしい!でもこれを全国でやるというのは、当然困難なことですねえ。
帰路はもう一度放射線を浴びるのも嫌だったので、少し遠回りして、南相馬方面に北上し、宮城県をかすめながら山形に戻りました。道中線量は全く正常でした。恐らく津波で住宅が押し流されたと思われる平地には、至る所に太陽光発電施設が作られていました。ちっぽけな人間からすると、とてつもなく広大な太陽光発電が既に建設されていると感じるのですが、それでも我々の必要量の僅かしか供給出来ていないのです。まだ適地はあるようには見えるものの、2030年で-46%を実現するための再エネの倍増というのが本当に出来るのか、その困難さを感じずにはいられませんでした。

色々考えさせられた今回のツアー、行って良かったと思います。Fukushimaと聞くと、Chernobyl(チェルノブイリ)と同じくらい、国際的には行っちゃいけないところ、汚染されて危険な地域というイメージを持たれていると思います。福島産の食べ物も、例えば山形産と並んでいて、同じ品質同じ価格ならば避けられる方になってしまうのではないでしょうか?かく言う私自身も、今回本当に行っても大丈夫か、心配が無かったと言えばウソになります。例えば福島市に行っても、何か特別な異常を感じることは皆無ですが、今回浪江町に近づくに連れて感じた異様な雰囲気(例えば除染作業で出た大量の残土を見かけます)は、残念ながら普通とは言えないものでした。目に見えず、匂いも音もしない放射線は線量計によってのみ知ることが出来ましたが、はっきりと原発事故の爪痕は残っています。一方浪江町では生活の再建が始まり、線量も全く通常レベルにあることが確認出来ました。そこに長らく暮らしてきた人たちの願いはもちろんですが、より未来志向の豊かな地域を建設するために、皆が頑張っています。「大量の税金をつぎ込んで・・・」などと悪口を言うことなかれ。明日は我が身であったかもしれないのです。どう考えても福島が犠牲になってしまったのです。これを自分自身の問題として見れなかったら、単なる奉仕の精神であったら、問題の本質を見誤ってしまうと思います。なので、このレポートを見て関心を持った方は、是非現地を訪れて、福島の今、浪江の今を自分の目で見てみることをお勧めします。是非なみえ焼そばも食べてみてください。
写真一つおまけです。これが水素を運ぶローリーです。充填中なのか、配達先が無いのか、7台も停まったままでした。




2021年9月2日木曜日

P2G

 先日はV2H (Vehicle to Home)の話題がありましたけど、日本の人って本当にこういう略称好きですよね。

山梨県と企業が水素製造技術「P2Gシステム」実証へコンソーシアムを設立 | TECH+ (mynavi.jp)

P2GとはPower to Gasのことだそうです。太陽光発電等の電力をガス燃料である水素に変換供給する水素のサプライチェーン構築をNEDOの支援によって山梨県で実証するということです。電力からガスだったら、Electricity to Gas = E2Gじゃないの?水素じゃなくて液化アンモニアだったら、Power to Liquid = P2L?さらに粉末状の固体燃料だったらPower to Powder = P2P?いや、そんなのどうでも良いですね。どんな技術に将来性があるのか、確定しない段階ですから、ほんの数年で忘れられてしまう可能性も高いです。まあ、覚えやすいとか、キャッチ―な感じなので、かく言う私も略称を作りまくるタイプですけど、すぐに忘れられる造語とか、学術的には何の意味も無いですわな。流行りです。文化です。上記の山梨県コンソーシアムの名前も、H2-YESだそうで、なんとまあ。

しかし、太陽の国、山梨県は再エネに積極的ですよね。それは素晴らしいことだと思います。先に取組んだ人がエライんです。それは他に波及します。新しいことをしようとすると、すぐに抵抗する人のなんと多いことか・・・。

2021年9月1日水曜日

貴金属フリー水素生成触媒?

 東工大のグループが、ごく低温でアンモニアから水素を生成する、貴金属フリーの触媒を開発したと報じられました。

貴金属フリーでアンモニアから水素を生成する高性能触媒、東工大が開発 | TECH+ (mynavi.jp)

かの有名な細野秀雄先生らのグループです。アンモニアを窒素と水素に分けるのですから、別にエネルギーを生産しているわけではないのですけど、少し冷やすか圧力をかければ簡単に液化するアンモニアは、水素に比べたらはるかに貯蔵輸送しやすいです。しかし、アンモニアを直接利用する燃料電池は触媒の不活化の問題があり、直接燃焼する場合もNOxの生成を抑制しなくてはならないなど、燃料としては水素の方が扱いやすい、という事情もあります。簡単なコンバーターで、液体アンモニアから水素を抽出できるようになれば、水素酸素燃料電池や水素エンジンを搭載した移動機械には大きなメリットになりますよね。

ポイントは、CaNH(カルシウムイミド)という物質の表面に、アンモニア分解触媒として知られるNiナノ粒子を担持したことにあるようです。CaNHにはNH2-が欠損した欠陥があり(水酸化物になっている?あるいはフリーエレクトロンがある?)そこにNH3が捕捉され、NがNiに強く引き付けられて低温での分解が進行する様になる、ということらしいです。NH2-はアンモニアから脱プロトンした化学種ですから、それを安定化するカルシウムイオンが大切で、NH2-の欠損したサイトにNH3が水素を放出しながら吸着され、Ni上でN2が生成するということでしょうか。

しかし、気になるデータが示されています。繰り返し実験でNH3が吸着されて水素が生成しているのは最初の3回ぐらいで、すぐに反応しなくなっています。同時に、欠陥に由来する黄色い着色が反応後に無くなっています。NH2-欠陥が無くなると、NH3は吸着しなくなると説明されています。だとしたら、それを触媒と呼んで良いのでしょうか?単なる化学反応であって、物質が消費されてしまっています。これは50℃くらいの低温での実験データなので、高温動作させれば欠陥が再生するのであれば、まあ触媒になるのかも知れませんけどね。この欠陥の挙動と末路を理解することが大切そうです。

2021年8月30日月曜日

EVシフトを考える⑯

 本当は最新のIPCC6次報告書について投稿したいと思っていたのですが、まだちょっと読み込みが足らないので、小ネタの紹介。

これをEVシフトのハナシと関連付けて良いものかどうかは分かりませんが、予てから噂されていた、マツダのロータリーエンジン復活が秒読み段階に入っていると思われます。

「ロータリーエンジン」復活か!? 電動化示唆する新ロゴをマツダが製作 「早く世に出したい」と意気込む | くるまのニュース (kuruma-news.jp)

明らかにロータリーエンジンのローターを型どっていますし、アルファベットのeの形もしており、電動化技術とロータリーエンジンの関係を示すものです。マツダは既にMX-30というコンパクトSUVクーペ(そう呼んでいいのか?)のEVモデルを販売しています。モーター類が納められているエンジンルームがスカスカで、そこに”レンジエクステンダー”が搭載されるだろう、とデビュー当初から言われていました。レンジエクステンダーとは、小型の発電用ガソリンエンジンで、EVのバッテリーが無くなりそうになったらこれを駆動してバッテリーを回復させるというものです。動力装置(電気モーターとガソリンエンジン)と燃料タンク(バッテリーとガソリンタンク)を2セット積むので、非効率の様にも思えます。日産のノートeパワーと何が違うのか、と言えなくもありません(あれはエンジンをほぼ常時駆動するのでバッテリーが小さい)。シリーズ方式ハイブリッドの一種とも言えます。ただ、レンジエクステンダーは緊急用という感じで、燃料タンクは小さいみたいですし、エンジンも小さいです。そのままでクルマを駆動することは出来ません。最も効率の良い状態で定常速度運転をして、電気を作ることに専念しますので、排気量の割りには効率が良い、ということになります。でもまあ、何だそれだけ、という感じでしょうか?

しかし、今回マツダはこれを伝統のロータリーエンジンを復活させることで成立させようというわけで、そこに面白さがあります。ロータリーエンジンはマツダが発明したわけではなくて、元々Wankelというドイツの会社が発明し、1950年代にNSUというメーカーのクルマに搭載されていました。その技術ライセンスをマツダが購入して、コスモスポーツとか、1960年代に販売します。それを受け継いだのが有名なRX-7というスポーツカーです。私の昔の友達がRX-7に乗っていて、何度か運転させてもらいました。何ともパンチの無いエンジンで、すーっとスピードを上げていく独特のフィーリングですが、べらぼうに速いです。通常のエンジンの様にシリンダーとかピストンとかが無くて、まゆ型のハウスの中におむすび型のローターが入っていて、それが1回転する中で吸気/圧縮/爆発/排気が行われる仕組みです(詳しく知りたい人はWikipediaとか調べてください)。小排気量でも非常にパワフルで、振動がほとんど無いのが利点ですけど、燃費が物凄く悪いので、マツダ自身もやめてしまいました。それが今復活するというわけです。何で?恐らく負荷変動の無いレンジエクステンダー用であれば、効率は悪くないのだと思います。それから、コンパクト軽量に出来ることは明らかなメリットです。

そして、実はそれが一番重要なんですが、恐らくは将来水素ロータリーにすることを目論んでいます。マツダは既に水素ロータリーエンジンを搭載したRX-8を限定的に販売したことがあります。つい先日のトヨタの水素エンジン程にはパワフルではなくて、当時の水素エンジンはガソリンエンジンに対してパワーで劣っていましたが、それもレンジエクステンダー用であれば解決できるということでしょうか?いずれにしても、そうなればレンジエクステンダーを使ってもゼロエミということになりますから(グリーン水素を使うこと前提ですけど)、レンジの小ささと充電の手間というEVの最大の問題点を解決できる可能性がありますよね。

昔っからのロータリーファンには、なーんだ、かも知れません。ロータリーエンジンでクルマを動かすわけではなくて、それで作った電気でEVが走るだけですからね。でもまあ、必ずしも新しい技術だけではなくて、既存の技術を新しい目的に活かすというのは大切な考え方だとは思います。水素になると、2ストロークエンジンも再度脚光を浴びるかも知れないし。


2021年8月27日金曜日

本物の「ソーラー水素」製造

 これぞ本当の脱炭素クリーンエネルギーと言える研究成果がNEDOからプレスリリースされました。

世界初、人工光合成により100m2規模でソーラー水素を製造する実証試験に成功 | NEDO

次世代エネルギーの本命と目される水素については、色々な話がありますが、よく調べると石炭や天然ガスから製造した水素(CO2が出てしまう)だったりします。しかしこれは太陽光のエネルギーで直接水を酸素と水素に分解し、その水素を回収する大規模実験に成功したというニュースです。人工光合成もついにここまで来ました!太陽光と水から燃料を作れるんですよ!

で、エネルギー問題は解決!とは残念ながらいかないんです。今回の実験で得られた太陽光から水素へのエネルギー変換効率は最大で0.76%とあります。一般的な太陽電池による太陽光から電気エネルギーへの変換効率が15から20%ですから、とても低い。しかしこの光触媒の反応量子効率はほぼ100%なんだそうです。量子効率と変換効率の区別が付かない人のためにちょっとだけ説明しますと、量子効率とは光触媒が吸収した光がどれだけ目的の反応に使われたか、の効率ということです。一方の変換効率は降り注いできた太陽光のエネルギーをどれだけ水素のエネルギーに変換できたか、の効率です。植物の光合成も量子収率はほとんど100%ですが、変換効率は0.3%程度です。それは自分が作ったエネルギーのほとんどを生きるために使ってしまうからで、食べたり燃料に転化出来たりする有機物への変換効率は非常に低いということですね。

一方、今回の光触媒の変換効率が低い理由は明らかです。写真を見て、パネルが真っ白なことから分かりますが、太陽光の主成分である可視光線を全く使えていません。使用されているチタン酸ストロンチウムという半導体は、太陽光に僅かに含まれている紫外線しか吸収できないのです。今後可視光も利用できる改良を進め(色が付くということです)、変換効率を5-10%程度に向上することが目標、とあります。もちろんね、でもそれが容易じゃないんです。恐らくは、太陽光発電の電力を使って水を電気分解する方がエネルギー変換効率はずっと高くなります。光から直接水を分解しようとするから効率が低くなる。

でも、どっちにしてもまだまだ問題があります。水電解の装置(光は使わない)は既に完成されていますが、その触媒には貴金属が使用されます。今回の人工光合成システムも、植物の様に有機物を使っているわけではなくて、全部無機材料です。チタン酸ストロンチウムの表面には、水の酸化と還元を起こすための反応の場所になる助触媒として、その表面にRh, Cr, Coの化合物が微量修飾されています。微量であっても、将来必要となるスケールを考えたら貴金属の使用は許容出来ません。しかし水の酸化と還元というのはかなり厳しい反応で、大抵の物質は水を分解しないで自らが反応して失われてしまうのです。それが貴金属を必要としている理由で、容易に代替物質は見つからないわけです。

今は貴金属を使ったとしても、実証をある程度のスケールで行い、展望を与えることが重要でしょうね。グレー水素が混ざったとしても、海外から水素を輸入して使用するインフラ整備を進めて、いずれ太陽光を利用したグリーン水素のコストが石炭やLNGに匹敵する状況を目指す。より現実的な取組みとしては、NEDOの支援と民間主体でそれが進められています。

NEDO、水素の輸入や発電を支援 CO2削減後押し: 日本経済新聞 (nikkei.com)

太陽光による安価な水素(あるいはアンモニア、ハイドロカーボン)の大量製造に向けては解決できるかまだ分からない問題が多く残されているわけですが、本当にサステイナブルな世界を実現するには絶対に避けられない課題なわけで、日本は真面目にそれに取組んでいるわけです。間に合うかどうかが大変な問題ですねえ。


2021年7月29日木曜日

水素技術競争力世界ランキング

本当にそうなるかどうかはまだまだ分からないとは思いますが、脱炭素時代の燃料として一番有望視されているのが水素です。それをどの様にして得るのか、貯蔵運搬するのか、そして利用するのかについては、様々な関連する技術開発がありますが、その技術競争力の世界ランキングが報じられていました。

水素技術「総合的競争力ランキング」トップ10にトヨタほか日本4社。専門家は「特許数への慢心」に警鐘 | Business Insider Japan

その競争力をどう評価するの?と思いますが、実際このランキングは特許の数だけです。どれだけ水素関連の技術開発に熱心であるかの指標にはなるかと思いますが、本当の意味での競争力をこれだけで評価するのは適切ではないでしょう。とは言え、このランキングを見ていると、気づかされることがあります。

まず、国別のランキング。圧倒的1位が日本です。10年間でその数ほぼ1000万。凄いですね。中国、アメリカ、韓国、ドイツと続きます。意外に思ったのが10位にランクインしたデンマーク。デンマークって、人口600万人に満たない小国ですよ。自動車メーカーもない。自動車メーカーのあるイタリアや、同様に人口が少ないスウェーデンを差し置いてランクインしているというのは、それだけ水素に対して熱心だということでしょうか?

メーカー別で見ると、日本の約1000万のうちの225万がトヨタ自動車。日産とホンダを合わせると40%が自動車メーカー。その他、電池関連の材料化学メーカーが多数日本からランクインしていますね。他国でも自動車メーカーが多く、やはりモビリティーが水素の技術開発を牽引していることが明らかです。興味深いのは、5位の中国科技院。日本のNIMSみたいな存在ですが、産業と密接につながっているので実質AISTに近い存在か?中国ではメーカーが自ら研究開発をすることはあまり無くて、大学等の研究機関が製品開発レベルに踏み込んで研究開発するみたいです(嫁さんのハナシによる)。それを背後でコントロールしているのはもちろん中国共産党です。18位にランクインしている精華大学も同様ですね。前言覆しますが、20位の「中国石化」は中国で一番大きい石油会社です。やっぱりエネルギー関連産業は研究開発も担っているということか、あるいは単なるパテントホルダーなのかも知れません。9位のフランスの組織は原発関係、EDFですね。フランスは原発で脱炭素が既にかなり進んでいるわけですけど、次は一足飛びに太陽光発電ではなくて、太陽光水素なのでしょう。それで、日本からは産総研、NIMS、東大、東工大とかは全くランクインしておりません。研究機関がやることではなくて、やはり産業技術開発は民間企業が主体ということですね。それが正しいと私は思います。特に日本の場合、学者に産業のセンスはまるでありません。大学のリーダーに経営感覚がありません(特に国大)。だから、そういうのには手を出さないのが賢明と思います。新しい技術は是非民間に(日本限定)タダであげるべきだと思います。特許出しても良いけど、日本企業に対してはライセンス料ゼロで。それって国際問題になりますか?

で、このレポートで警鐘を鳴らしていますけど、特許の数を驕るなということですよね。電機業界の過去の失敗が取り上げられていますけど、日本のオジサン(おじいさん、村の長老)に任せておいたら、きっと同じようなことが繰り返されます。囲い込みをして、勝ったつもりになってしまう。それはとりもなおさず、交渉力とかコミュニケーション力が無いからです。異質なものからは学ぼうとせず、排除する方向に動く。自分の周囲を自分にAgreeする人ばかりで固めようとする。同じ空気じゃないとイヤ。経産省も「オールジャパン」とかいう言葉が大好き。オールジャパンで良いですよ、日本に税金を納めてくれる組織に儲けてもらわなくちゃ。でも日本人である必要はありません。男性である必要も、年長者である必要もありません。むしろ逆で、自らを多様性に満ちた集団とし、それを機能させるリーダーシップがあったならば、持ち前の真面目さと創造力の高さを発揮して、もっと日本の産業は強くなれることでしょう。

日産自動車のすったもんだも見苦しかったですよね。幹部でさえ、基本的にガイジンを嫌っていたことが良く分かりました。そういう日本人の弱さが国際的なオープンイノベーションに乗っていけない、ついていけない一番の問題なのだろうと思います。だから、若い人、それから女性にはどんどん遠慮しないで広い世界に飛び出して欲しいです。そして老人はまず交代。オッサン退場。自分には理解できないものを歓迎する度量を持ちましょう!

2021年7月9日金曜日

山梨産グリーン水素

 昨日のUAE産グレーアンモニアに対して、これは国産グリーン水素のことです。

山梨県、グリーン水素をENEOS水素ステーションに供給: 日本経済新聞 (nikkei.com)

山梨県は晴天率が高く、全国有数の日照時間の長さで、太陽光発電の導入が盛んです。耕作放棄地が多いから、という裏の理由や、景観を損ねたり土砂崩れの原因になるから、これ以上メガソーラーの乱開発を進めないで!という困った事情も実はあります(この話は別の機会に)。とは言え、燃料電池で有名な山梨大学(ソーラーでも有名ですけど)もあって、再エネ先進県と言えるでしょうね。

それで、その太陽光発電の電力で作るグリーン水素をENEOSの水素ステーション用に供給する、ということです。お試し出荷だから、ではあるのでしょうけど、供給量は600立米(常温常圧)。東京オリパラの燃料電池車500台に供給、だそうですけど、トヨタミライの水素タンクは141 L(常温常圧)ですから、それぞれを8.5回満タンにする分、ってことですね。それだけの水素を作るのに必要な電気量は1.44 MAhになります。うーん、大変。

急に増やせないのは当然で、太陽光発電の電力の価格はともかく、水電解には貴金属触媒が必要ですから、グリーン水素はとても高くつきます。高いってことは、結局まだ環境にも良くないということになってしまいますけど、それでもやらなくてはならないのはこちらです。褐炭由来のグレー水素が大量に出回って、それが価格の基準を作ってしまったりすると、グリーン水素が市場に入り込みにくくなってしまいます。太陽光で作った水素でクルマが走っているというのは、結局太陽の力でクルマが走っているということですからね。素晴らしい!頑張って欲しいと思います。

2021年7月8日木曜日

UAE産アンモニアで脱炭素?

 こういう報道はとっても気になります。アラブ首長国連合(UAE)からアンモニアの供給を受けて、燃やしてもCO2を発生しないアンモニア火力発電に、JERAが本格的に取組むということが「脱炭素に向けた」アクションとして報道されているのです。

“アンモニアで火力発電” 脱炭素へ日本事業者がUAE企業と連携 | 環境 | NHKニュース

これを聞いて、本当にCO2を出さないアンモニア火力発電の時代が始まる、と誤解する人があっても不思議じゃありません。INPEXがUAEの国営石油会社と協力して天然ガスを原料に現地でアンモニアを製造します」とキッパリと書いてあります。そのうえで「脱炭素」であるとも。それのどこが脱炭素なのでしょう?
天然ガスを原料とするアンモニア製造とは、長年続けられているハーバー・ボッシュ法によるアンモニア製造に他ならず、その過程で盛大にCO2が発生します。すなわち、グレーアンモニアなわけです。日本に輸入されたアンモニアで発電する時にはCO2は発生しないでしょうけど、UAEでアンモニアを製造している時にCO2を出しているわけですから、ちっとも脱炭素じゃないですよね。CO2分子にはMade in Japanか、Made in UAEかは書いてありませんし、温室効果という点では全く相違ありません。レポート中の表現だと、あたかも日本はCO2排出量を削減した様に見えるでしょうけど、明らかにインチキですよね。
もちろん、いずれは太陽光発電による水電解で製造した水素を使って、グリーンアンモニアにすれば本当に脱炭素になるわけで、ひとまずアンモニア火力発電の技術確立を急ぐためにも、グレーアンモニアでも良いから事業を始めて、順次グリーン化するから今全てが完璧である必要はない。そういう主張は、もちろん分からないではないですし、一定の合理性がある様にも思えます。しかし、世の常として、一旦動き始めると、当然このUAEでのアンモニア製造は採算性のある事業になるでしょうし、安定的取引が始まってグローバルな資金の流れの一部に組み入れられます。そうすると、その存在がグリーンアンモニアへの変化を妨げることになるでしょう。だから、明らかに健全ではないやり方については、最初からアンタッチャブルなものとして、手を出さない方が良いのではないかと思うのです。

2021年7月7日水曜日

新潟大八木先生水酸化触媒!

 新潟放送のSDGs特集で、水素エネルギーが取り上げられ、その中で新潟大学工学部の八木政行先生の水電解触媒の研究が紹介されていました。

水素エネルギーと脱炭素社会(後編)効率化へ新発明(BSN新潟放送) - Yahoo!ニュース

脱炭素社会におけるエネルギーキャリアとして、最も有望視されているのが水素です。水素は地球上に大量に存在しますが、その大半は水素の酸化物(燃焼後生成物)であるところの「水」としてであり、どこかを掘ると水素ガスが出てくるという鉱脈はありません。すなわち燃料となる水素は、人の手で作るしかないわけで、水を電気分解して酸素と水素に分けることによります。この反応は外部からエネルギーを注入することによってしか起こりません。CO2を還元して有機燃料を得る場合も同じですね。そこに石炭や天然ガスなどの化石燃料のエネルギーを使ったらCO2は増えるばかりになりますから、エネルギー源は太陽光などの再生可能なものでなくてはなりません。

太陽光エネルギーでCO2から有機燃料を作ることは人工光合成と呼ばれますが、太陽光で水電解して水素を作ることも広義には人工光合成と言っていいでしょう。水素は必ずしも水素の状態で貯蔵・輸送・利用する必要はなくて、より貯蔵しやすいアンモニアやe-Fuelに転化しても良いです。大切なのは、燃えカスであるCO2やH2Oから再び燃焼出来る高エネルギー物質を得る時に、そのエネルギーが再エネ由来であるということで、それを果たせばそれらは全て「グリーン燃料」と言うことが出来ます。水素や炭素はエネルギーの運び手(エネルギーキャリア)なわけです。カーボンニュートラルを達成するためには、出してしまったのと同じだけのCO2を化学燃料に戻すのが一番分かりやすいですけど、水素をキャリアにしてそもそもCO2を出さない様にしても同じです。さらに言えば、エネルギーキャリアは炭素や水素に限定されるわけでもありません。例えばアルミはどうでしょうか?アルミは地殻中に大変豊富な元素です。その酸化還元電位は大きくネガティブなので、アルミー空気電池は大変大きい電圧になります。また、1個のアルミ原子から3個の電子が出てきます。ゆえに可逆サイクルで大量のエネルギー貯蔵、取り出しが可能な元素の一つがアルミです。実際には色々な技術課題はあるのですけど、それはさておき、そういう視点で元素の周期律表を眺めると、どんなエネルギー貯蔵技術があるだろうか、と想像をめぐらせることが出来ると思います。

さて、話を八木先生に戻します。八木先生は私と同じ研究室の出身(で私よりも優秀な)先生です。人工光合成にかける熱い思いでずっと関連の研究を続けてこられて、遂に物凄い性能の酸素発生触媒の開発に成功されました。1年ほど前に米沢でもご講演頂きました。途中で太陽電池に浮気した吉田との差ですね!やっぱり専心、献身が大切。上記人工光合成では、CO2の還元や、水を還元して水素を得るところが重要と思われがちですが、一番大切なのは、水を酸化して電子を得る反応です。CO2や水を還元するのに十分な電位に電子を持ち上げるのは、太陽電池などを使えば良いわけですけど、その電子がどこから来るのかが大切で、それは水の酸化でなければ再生可能な系にならないのです。ですから、八木先生はいかに小さいエネルギー損失で水を酸化するか、非貴金属系の触媒開発を進めて、今回の発明に至ったというわけです。電圧1.5ボルトの乾電池1個で、理論電圧が1.23ボルトの水の電気分解を実演されていました。素晴らしいですね!

これで、耐久性を担保して、スケールアップを果たせればグリーン水素の安価な量産に展望が開かれるかも知れません。

2021年7月1日木曜日

佐藤ゆかり議員、e-Fuel推し!?

 自民党の経産部会長佐藤ゆかり議員のインタビュー記事がありました。

自民党 経産部会長佐藤ゆかり氏に直撃 「e-fuel」は経済戦略の決定打になるや?ならざるや??(ベストカーWeb) - Yahoo!ニュース

環境・エネルギーと産業問題に明るい方なので、佐藤さんが環境大臣でも良い様にも思うのですけど、必ずしも豊田章男モリゾー社長のファンだからとかではなくて、未来のエネルギー問題を幅広い視野で見ておられる様に思いました。例の水素エンジンレースカーのことも話題にしていますけど、自動車の電動化で問題解決とかそんな簡単なことではないし、そういう「究極はコレ」みたいな暴走に与さない姿勢が鮮明です。

これは、まあ例のEV推進の嘘でも取り上げられていたところで、EV化するにあたって電力どうするの?電池に必要な希少元素どうするの?など様々な課題があり、日本の産業構造を根本から揺るがしかねないという指摘は全くもってその通り。EVをやっちゃいけないわけではもちろんなくて、EVは重要な選択肢の一つではあるけど、それ一本じゃないですよ、ということでしょう。水素はもちろん、アンモニアもエネルギーキャリアとして注目されますし、自動車、船舶、航空機などにより親和性が高いグリーン燃料はe-Fuelだ、というわけです。

もちろん、グリーン水素やグリーンアンモニアに対して懐疑的な人もいます。さらに言えばCCSに対しても懐疑的、炭素税はとても受け入れられない税率になるとして、現状を「脱炭素バブル」と称し、それは必ず破綻するとおっしゃる池田信夫氏、はっきり言わないけど(ズルい)、総合すると「私は脱炭素なんて絶対無理だと思いますよ」と表明しているとしか思えません。

「脱炭素バブル」が必ず崩壊する理由(JBpress) - Yahoo!ニュース

じゃあどうするっていうの?脱炭素はどうせ無理だから、破滅への道をスローダウンするぐらいしか出来ないと言う?やりたい放題やって、欲しいものは全部手に入れて、もうじき死ぬ人はそういうことを言うかも知れません。でも、知った顔してそんな事をエラそうに言うあなたもこの状況を放置して、変えることの出来なかった無力な大人の一人ではないですか?

どんな時も、どうなっても、諦めたりしてはなりません。そんな無責任な発言を若い人を諭す様に言うものではありません。人を男か女かで分けたくないけど、どうにも私の同類である男は破壊が好きで困ったものだと感じます。「気候変動の大津波が来るから覚悟しろ!」と言うことを勇敢だと思いません。それを勇敢だと言うなら、私は勇敢じゃなくていいです。次の世代にもそう言う。思い切り怖がっても恥ずかしくなんかない。持続可能であること、守ることへの真心と情熱においては、常に女性が勝って見える今日この頃です。

さて、e-Fuelに話を戻しますけど、技術的には大変なことです。「大気中のCO2を回収して」なんてのはずっと先のことで、まずは火力発電から出てくるCO2とグリーン水素からメタンを作る「メタネーション」でしょうね。

脱炭素化 合成メタン作る「メタネーション」技術開発強化へ | 環境 | NHKニュース

これまた、CO2とH2があれば出来るんですけど、水電解でH2を作るところに貴金属触媒が必要になるので、低価格化が難しいところです。だから吉田研では有機触媒で水素を作る研究をやっているんですよ!それから、e-Fuelの様な液体の有機燃料を得るにはCOとH2を原料とするFischer-Tropsch反応があり、それは第二次世界大戦ぐらいからやっているそうですけど、COはCO2還元で、H2は水を還元して作る必要があります。そして、その電力は再エネにしなくてはならないし、触媒は貴金属ダメです。なので、やっぱり吉田研では有機触媒でCO2を還元することもやっているんですよ!CO2を流通した水の中で、COとH2を1:1の量論比ぴったりのファラデー効率で発生させる触媒とか出来れば、連続でF-T反応に接続してe-Fuelを量産出来るでしょう。金属を含まないけど水素結合性の導電性高分子は水電解やCO2還元の触媒になるんですよ。今研究のホットトピックスになっています!

だから、手段が無いわけではないんです。でも大変困難で、コストはかかるしスケールアップも難しい。難しいからやらないというのはダメです。無理だとか言わず、チャレンジするんです。技術の完成を2030年までには果たして、e-Fuelが実用出来る環境を整えないとなりません。佐藤議員には、是非可能性のある技術開発を幅広く(東大とかメジャー大学だけに任せない)支援して欲しいものです。EVはそんな未来までのつなぎですかね?e-Fuelを誰でも手に入れられる様になったら、エンジンの雄叫びが復活する?

2021年6月18日金曜日

船舶も低炭素義務化

 普段の生活で意識することはないですが、船舶は世界中の物流を担っています。先日のスエズ運河での座礁事故でも、物流が止まって大変だったことが報じられました。みんなお世話になっているということです。自動車の様に大きい工業製品、衣類、食料など様々なものが国から国へと海を通って運ばれています。

ビジネス特集 スエズ座礁事故 原因は?責任は? 今後の焦点 | NHKニュース

船舶も大型の移動機械ですから、当然ながらエネルギーを消費していて、帆船でもない限り大抵は化石燃料であって、GHGを大量に排出しているわけです。脱炭素の波は当然そこにも押し寄せ、GHG排出を削減する新たな国際ルールが決まったことが報じられました。

船舶の温室効果ガス削減義務づける 新たな国際ルールを採択 | 環境 | NHKニュース

どれぐらいの規制なのか、レポートには数字は示されていませんけど、2023年からその運用が始まり、それは新たに建造される船舶についてだけでなく、既に就航しているものにも適用されるそうです。でもどうやって?内訳を見ると、速度を制限することなどによって、とあります。つまり省燃費運転を心がけてください、ということですね。輸送コストを下げるためには、出来るだけ速く運びたいことでしょう。船の場合も、やっぱり全速力で動くと燃費が悪くなるということなんでしょうね。

より抜本的な解決策としては、LNG船(低炭素)、アンモニア、水素船(ブルー、グリーン燃料ならば脱炭素)が検討されています。日本郵船は、自動車輸送用にLNG船を12隻新造する計画を発表しています。

日本郵船/LNG燃料自動車専用船12隻を連続建造 ─ 物流ニュースのLNEWS (lnews.jp)

従来の重油を使う船に比べて40%ぐらいCO2排出を低減させられるそうです。もちろん、やるのは良いことですけど、日本郵船が公表しているGHG削減目標が、「2050年で今の半分」なんですよね。それじゃカーボンニュートラルにならないじゃないですか!もちろん、他のことでオフセットして、全体としてカーボンニュートラルを実現する、ということも出来るのかも知れませんけど、それほどまでに船舶の脱炭素は容易ではないということなんですね。LNGが現状最良であって、アンモニアや水素を待てないという事情はあるのかも知れません。ただ、大型船舶は数年使って入れ替える様なものではなくて、大変長期間運用されるでしょうから、化石燃料を使う船をあまり沢山は新たに作らない方が良いようには思いますよね。

とは言っても、アンモニアや水素で動くエンジン(あるいは燃料電池)はまだまだ開発途上ですし、そもそも再エネからアンモニアや水素を安価に大量に作る技術が確立されていません。蓄電池では無理で、やはりエネルギー密度の高い化学燃料が必要。太陽光からアンモニアや水素を作る技術確立が急がれます。

2021年5月26日水曜日

水素よ!これが巴里の灯だ

 水素燃料電池による電力で、パリのエッフェル塔がライトアップされました。

エッフェル塔 燃料電池の発電設備を利用しライトアップ(NHK)

今年の10月27-28日にHyVolutionという水素エネルギーに関するイベントがあり(行きたい!)、そのPRのようです。

Hyvolution 2021, l'événement hydrogène pour l'énergie, l'industrie et la mobilité (hyvolution-event.com)

その仕掛けは、実はトヨタMIRAIに搭載されている燃料電池システムを使ったもので、100 kWの最大出力とのこと(凄いパワーですね)。「なーんだ、日本の技術じゃん」と言うなかれ。要は、考え方なんですよね。LE PARIS DE L’HYDROGENE(水素のパリ)というメッセージが誇らしげ。ご存知のとおり、フランスは原発大国で、EUの低炭素化に大きく貢献しているわけですが、ずっと原子力と共に生きるつもりではないことは明らかです。フランスにいる私の友人はみんな太陽光発電の人たちで、いつも自分の国が原発大国であることを嘆いていましたが、その研究を支えている資金の多くは原発マフィアのEDFから来ています。フランスの人って、物凄くプログレッシブで、既成概念ぶち壊す挑戦が好きだと思います。確実性よりも、挑戦を選ぶ。航空産業とかTGVなんて良い例ですよね。ルーブル美術館のガラスのピラミッドとか、ポンピドゥーセンターとかも最初は相当物議をかもしたそうですけど、伝統だけを重んじるのではなくて、常に新しいものを融合させていこうとするその精神には見習うべきところが多いと思います。このHyVolution、どんなイベントになるのか分かりませんが、興味津々です。久しぶりに行きたいなあ、パリ。

こういう未来志向って、人々の心も照らしてくれると思いますよ。コロナの閉塞感の中での希望の光はオリンピックだけじゃありません。どうです?こういうのも考えませんか?スカイツリーを燃料電池で、じゃあ二番煎じですけど。

アンモニア燃焼実験byでんじろう先生

 アンモニア火力発電がCO2を出さない脱炭素発電技術として注目されているのは何度も取り上げていますが、実際にアンモニアが燃焼する様子を、あの「でんじろう先生」のYouTubeチャンネルで見ることが出来ます。

アンモニアは燃えるのか!?実験してみた【アンモニア実験】(米村でんじろう公式)

オレンジ色の火炎を出してアンモニアが燃える様子を見ることが出来ます。また、アンモニアはちょっと高圧にするか冷やすと液化することも説明されていますが、実際にアンモニアの液体や固体を作る実験も別のビデオで見ることが出来ます。

純度100%のアンモニアの液体・固体お見せします!!【Ammonia Liquid, Solid and Gas】【実験】(米村でんじろう公式)

一つの窒素原子に三つもの水素原子が結合したアンモニアは、水素の運び手と見なすことも出来ます。簡単に液化して純度100%のアンモニア燃料として貯蔵、輸送出来ることは水素を直接燃料として使う場合に対する大きなアドバンテージですね。そして、燃焼し、酸素と結合して生じるのは窒素と水蒸気で、CO2は発生しません。

それが、アンモニアを燃料としたエネルギーシステムが注目される理由です。しかし、水素に比べたらずっと燃えにくいんですね。水素が爆発する様子を見せる実験もでんじろう先生のチャンネルで色々見ることが出来ますが、アンモニアの燃焼は確かにちょっとトロい感じです。そして、それ以上に問題なのは、どうやってアンモニアを得るかです。現状のように、石炭由来の水素から合成するのでは、その段階でCO2が出てしまいます。ですから、ソーラー電力で水電解して作った水素からアンモニアを作る、という様な技術開発(既に出来るけど、大規模にやるには高すぎる技術)が必要になるわけです。

それにしても、最近はテレビの登場機会が以前より減った感じですが、でんじろう先生は偉いなあと思います。ああやって理科実験を見せられると、長年それをやってきたはずの私みたいな人でもワクワクしちゃいます。私も、爺さんになったらボランティアで理科実験やります!「きけんですから、よいこはまねをしないでください!」

2021年5月24日月曜日

水素エンジン車耐久レース レース後記者会見

 水素エンジンを搭載したカローラスポーツレース車両によって、富士スピードウェイで開催された24時間耐久レースを完走後、豊田章男社長(レーサーとして参戦したモリゾウ選手)の記者会見が行われました。

24時間、1634kmを走りきった!トヨタ水素エンジン レース&記者会見詳報 by 難波賢二(RIDE NOW)

水素エンジンの開発は、カーボンニュートラルへの選択肢を増やすためであり、長年培われたエンジン開発技術を存続発展させること、関係の製造業を守ることにあると説明しています。実際にコース上に居た時間は半分の12時間程度だったようです。先に「トラブルなく」と書きましたが、実際には細かいトラブルは沢山あったようで・・・。しかし、走れなくなるような深刻な問題は発生せず、完走出来たということは、初めてのレースとしては上々ではないでしょうか。

岡山のオートポリスや三重の鈴鹿サーキットで行われる予定の、スーパー耐久シリーズの残りに再出場することも検討しているようです。レース時間が3時間だったり、水素ステーションに十分なスペースを確保することが困難だったりの問題があって、本当にやるかどうかは決まっていないみたいですが、是非経験を重ねて行ってほしいですね。車両の性能(パワーや航続距離)だけでなく、安全且つ素早い水素チャージの方法などもレース活動を通じて磨かれるはずです。プロレーサーのコメントでは車両が重い、とのことでした。水素自体は軽いですけど、十分な量の水素を安全に積載する方法などについては、まだまだ多くの課題があるものと思います。ですから、レースを開発の場として周辺技術のレベルアップを果たしていくことで、水素自動車が実用的な選択肢となるように、一般車両の開発も進められると思います。同じ水素でも貴金属触媒を必要とする燃料電池車よりも広く普及させるポテンシャルがあるかも知れません。マルチ燃料が可能になればさらにメリットは大きい。もちろん、どうやって水素を得るかがいずれにせよ問題ですが。

おまけです。トヨタ自動車が運営しているトヨタイムズというYouTubeチャンネルに今回の24時間耐久レースのドキュメンタリーが掲載されています。

密着】豊田章男24時間耐久レースの裏側<前編>

【密着】豊田章男24時間耐久レースの裏側<後編>

見たら、モリゾウ選手のファンになっちゃいますよ!学生さんは、こんな会社で仕事をしてみたい!と思うのではないでしょうか。カーボンニュートラルはとても難しいチャレンジですが、我慢することではないですよね。未来に挑戦する生き生きとした表情に心打たれます。

2021年5月23日日曜日

水素エンジン車24時間耐久レース完走!

 いやあ、素晴らしい。新しい時代の幕開けを予感させますね。

水素エンジン車、耐久レース完走(福島民報)

以前も話題にした、水素を燃焼する内燃エンジンを備えたレース車両が、今週末富士スピードウェイ24時間耐久レースに出場し、一周4.5キロのコースを358周して見事完走したそうです!ドライバーの一人はトヨタのマスタードライバーでもある「モリゾウ」選手こと、豊田章男社長!

水素を満充填しても50キロ程しか走行出来ないそうで、何度も何度もピットストップしなくてはならなかったはず(単純計算しても水素補給を30回以上!)。しかし、そこでもトラブルなく走りきれたということですね。ちなみに、用いた水素は福島浪江町の太陽光発電施設の電力によるグリーン水素。もちろん燃料だけで走るわけではないので、一連の活動でGHGは発生しているわけですけど、それにしても、カーボンニュートラルへの新しい選択肢を示すという意味では大変大きなチャレンジ、そして成功だったのではないかと思います。

これについては、恐らく後日談など沢山出てくると思いますので楽しみにしています。面白いものがあれば、またブログで紹介します。ひとまず、おめでとうございました!

2021年5月10日月曜日

三菱重工CO2フリー発電

 火力発電事業を行っていた三菱パワーが三菱重工に統合され、カーボンニュートラルに向けた体制強化をすることが発表されました。

三菱パワーを三菱重工に統合 カーボンニュートラル社会実現に向けて体制強化(Asahi)

プレスリリースには、詳しい計画などは書かれていませんが、アンモニアや水素を燃料とするCO2フリーの火力発電に本腰を入れて取り組む、ということの様です。2025年までにはこれらを燃料としたガスタービン発電の商用化を目指すことや、工場から排出されるCO2を回収する事業も推進するとしています(NHK)。

CO2が出ないというのは、アンモニアや水素による発電の大きなメリットですが、その燃料をどうやって得るのかがやはり重大問題です。当然化石燃料由来ではダメです。一次エネルギーが太陽光や風力のグリーン水素やそれを使ったアンモニアなら良いですけどね。しかし、カーボンニュートラルに向けての動きが様々にアナウンスされるのは良いことです。頑張って欲しい。


2021年5月8日土曜日

その水素、なに色?

 新しくYUCaN研究センターに合流頂いた、名古屋大学の義家亮先生とのメールのやり取りで、水素が色分けされているということを知りました(知っている人には当然のこと?)。

再エネ推進派でも意外と知らない「クレー水素」「ブルー水素」「グリーン水素」の違い(エコノミスト)

水素にはもちろん色は付いていないですけど、どの様に製造された水素かで色分けをしているのです。この色分けは国際的にも通用しているみたいですね。grey hydrogen, blue hydrogen, green hydrogenでそれぞれの意味は同じです。

グリーンは何となく分かると思いますけど、再エネ、例えば太陽光発電の電力で水を電気分解して得られる水素で、CO2の排出はゼロ(太陽電池の製造におけるCO2排出はカウントしないとして)です。一方のグレーは化石燃料由来の水素で製造にCO2の排出が伴います。これはアンモニア合成など、工業原料としての水素の製造で大規模に行われていて、有名なのは石炭の水性ガス反応です。

C + H2O ➝ H2 + CO

CO + H2O ➝ H2 + CO2

この水素を極低温で液化したり、超高圧にしたりして貯蔵輸送することも出来なくないですが、エネルギー的にもインフラ的にも大変です。通常はすぐにハーバー・ボッシュ法でアンモニアに転化されます。

N2 + 3H2 ➝ 2NH3

アンモニアなら、ちょっと加圧するか温度を下げれば液化して、容易に貯蔵運搬出来ます(液化アンモニア、と書かれたタンクローリーをよく路上で見かけます)。なのでアンモニアを水素の運び屋、水素キャリアと見立てて、これを電気化学的に酸化するアンモニア燃料電池や、天然ガスと混ぜて燃焼したり、直接アンモニアだけ燃焼したりするアンモニア火力発電が検討されているわけです。アンモニアだけの燃焼ならば、CO2は出てきません。

4NH3 + 3O2 ➝ 2N2 + 6H2O

なのでゼロエミッション発電と見なされるわけですが、当然グレー水素であればその製造段階でCO2が出てしまっています。

で、話を最後にしたブルー水素とは、化石燃料由来の水素製造で出てくるCO2を環境中に放出せず、貯蔵したり再利用することで、それならば化石燃料を使ってもCO2は出ないことになるから、ブルー、というわけです。

CO2を地中深くや深海に埋めて環境に出てこない様にする技術をcarbon dioxide capture and storage (CCS)、それを再利用する技術をcarbon dioxide capture and utilization (CCU)と言いますが、CCSに対しては私は懐疑的です。埋めたまま出てこない様にすることなど出来るのでしょうか?石炭石油天然ガスを大量に地下から掘り出していますから、空いた隙間に埋めておくということですが、自然は必ず循環する仕組みがあるので、どうしたって出てきそうに思います。永久凍土につかまっていたメタンガスだって、温暖化のせいで出てきてしまっています。「その後が怖い」ということですね。一方CCUであれば良いんですけど、どうUtilizeするのかが問題です。結局CO2って燃えカスですから、外部からエネルギーを投入しない限り有用な含炭素化合物には戻りません。水素と反応させてメタンに戻す、などは当然ナンセンスで、その水素どこから持ってきた?となります。もしそれが石炭由来なら、CO2は増えるばかりです。太陽光のエネルギーでCO2を還元し、有機燃料に戻す、人工光合成ならば太陽光エネルギーでCO2を再燃料化するので良いですが、それはまだまだ実用を語れるレベルにはありません。

水素については、私はまだその知識が浅いので間違った理解もあるかも知れません。しかし、使用末端でゼロエミという点で水素は優れていて、水素をキャリアとしたエネルギーインフラというのはやはり挑戦を続けるべき課題だろうとは思います。CO2は垂れ流してはいけないので、貯蔵まで考えるわけですけど、水素の燃えカスである水は環境中にいくらでもありますからね。貯蔵する必要が無いわけです。今回はまず、水素の色分けの話でした。

2021年5月2日日曜日

水素エンジン

 クリーンなエネルギーキャリアとして、水素が注目されています。まずは石炭、石油、ガスなどの有機燃料の燃焼から、再エネによる発電と社会システムのオール電化、そして究極的にはカーボンニュートラルな化学燃料に戻る、というのが理想でしょう。なぜ化学燃料が優れているかと言えば、これは圧倒的なエネルギー密度の高さ(小さいけど力持ち)と貯蔵が容易であるという点です。エネルギー密度の高さという点では水素はとても良いですが、貯蔵は簡単ではありません。もう一つの水素の大きなメリットは、使用の場でゼロエミッション(水蒸気しか出ない)ことでしょう。すなわち、排気ガスの処理が事実上不要になります(NOxは多少問題?)。但し、どの様に水素を作るかがやはり課題で、工業的に大規模に行われている石炭の水性ガス反応ではCO2が出てしまいますから、カーボンニュートラルになりません。太陽光発電の電力で海水を電気分解する、などが必要になります。

さて、水素の話をしたら長くなるので、本題の水素エンジンに移ります。水素で走る燃料電池車としてトヨタは既にMIRAIの第二世代を一般向けに販売しています。水素をいつでも買える環境にある方なら購入を検討するに値します(高いですけど、補助金も沢山付きます)。燃料電池は、水素を電極上で燃焼して発電し、電気モーターを動かしますから、MIRAIは実質電気自動車です。これに対して、水素を従来のエンジンの様にシリンダー内で爆発燃焼させる水素エンジンも開発されています。歴史は結構古くて、BMWやMAZDAが試作車を出していたのは私もよく覚えています。今回、トヨタが燃料電池とは別に水素エンジンも開発を進めていて、それを積んだカローラスポーツでいきなり耐久レースに出るそうです。エンジンは、同社のGR YARISに搭載されているモノをベースとしているそうです。詳しくは、実際の走行動画も出てきますので、以下のYouTubeビデオ(モータージャーナリストの島下泰久さんと難波賢二さんが運営しているRIDE NOWというチャンネル)を是非見て下さい。

密着取材!トヨタ水素エンジンレーシングカー初テスト(RIDE NOW)

必ずしもエコの観点からの興味で話しているわけではないので、やれ内燃機関の振動とか音が・・・と新しい世代には古臭く思えるコメントもあるかも知れません(私は・・・とても共感します!)。驚く程普通に見えるところが(若干遅いか?)逆に凄いと思いました。従来のガソリン用に作られたエンジンで、燃焼を制御するだけで水素が使えてしまうわけです。プロパンガスで走るタクシーは昔からありますが、あれと同じで、マルチ燃料の自動車というのも作れてしまうかも知れません。当然水素(しかも、人工的に作った純水素で不純物無し)なら水しか排気しませんが、例えば液化アンモニアを燃焼して水と窒素を排気する内燃エンジンも将来可能かも知れません。

作りやすさ(一次エネルギーを再エネにすることを条件に)と貯蔵、運搬のしやすさ、そして将来のコストを考えた時、水素に限らず様々なエネルギーキャリアを検討できるだろうと思います。そして、それをパワーに変換する手段は燃料電池とは限らず、この様にただ空気で燃やしてしまうという選択もあるでしょう。トータルとしてカーボンニュートラルであることが大切ですし、例えば既存の自動車の燃焼制御をガソリンからメタノールに変更するぐらいならば、その自動車をまだまだ使い続けられることになり、LCA的なエミッションを低減できる大きな可能性があります。簡単に買い替えるわけにはいかない飛行機については、バイオ産生の低炭素燃料が既に検討されています。既にあるインフラを使い続けるというのもカーボンニュートラルに向けた重要な考え方で、必ずしも新しいモノに置換するのが最良なわけではありません。

もう一つ、内燃機関を存続させられる可能性として、水素だと2ストロークエンジンも有望?というコメントが大変気になりました。元々クリーンな水素ですから、多少燃え残りがあっても環境汚染しないことに加え、とても発火しやすいので、2ストロークとの相性が良いようです。古くからのバイクファンなら知っていると思いますが、2ストエンジンはとてもコンパクトでハイパワーなので、クリーンであるならば復活させるに値する技術だろうと思います。

未来のエネルギーの主役はまだ確定したわけではないと思いますし、「これが究極!」と一つに絞ることは可能性を潰すことになります。物質も技術も多様な選択肢の中から探し続けるべきでしょう。それぞれに、問題点はあるでしょうが、良さもあると思います。今回、水素を燃やすエンジンを通じて改めてそう思いました。まだまだ多様な可能性があり、とてもワクワクします。トヨタ頑張っていますね。

還暦

 私、1966年生まれ、丙午(ひのえうま)です。2026年になりましたので、還暦を迎えました。すなわち、今1歳です。あと何年生きられるでしょうか?ひとまず、60年で色々経験させてもらい、色々なことを学び、考え、行動することが出来るようになりました。出来ることが増えた一方で出来なく...