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国立大学法人山形大学工学部教授の吉田司のブログです。2050年までのカーボンニュートラル社会実現に向けて、色々な情報や個人的思いを発信します。発言に責任を持つためにも、立場と名前は公開しますが、山形大学の意見を代弁するものではありません。一市民、一日本国民、一地球人として自由な発言をするためにも、所在は完全に学外です。山形大学はこのブログの内容について一切その責任を負いません。

2022年3月18日金曜日

原発とCCSは封印すべき

 先日、3月13日にオンライン開催された、日本学術会議のウェビナーに参加しました。

学術フォーラム「カーボンニュートラル実現に向けた学術の挑戦 システムの転換を目指して」|日本学術会議 (scj.go.jp)

このページから各講演者の先生の資料もダウンロードできますので(今だけ?)、是非ご覧ください。開会の挨拶があの梶田先生、最初の講演が高村ゆかり先生、何しろ日本の学術の頂点である学術会議がカーボンニュートラルをテーマにこういうウェビナーを開催して下さるのです。有難い。

各分野の著名な先生方が講師ですから、もちろんもっともな内容で(私が言うのもナンですが)正しく参考にはなるのですけど、このウェビナーで色々考えてしまいました。まず、参加者が非常に少ないこと。YouTube配信されていましたけど、参加していたのは200名程度でした。日本の最高峰、学術会議でさえ、です。田舎にいる私メがその参加者の1人であったと。何が心配になるかと言えば、実社会に対する波及です。これ程の重大問題に対して、これだけの努力を払っても、参加するのが全国でたった200名。気候変動の現実や、社会変容に求められる課題など、ちゃんとお話頂いているのですけど、その声は届かない。一方でユーチューバーが鼻からスパゲティでも食べて見せたら、10万回再生される・・・。

もう一つ、これは内容に踏み込んだことですけど、京都大学の藤森先生のお話、スライドの4枚目に出てくる、「多様な選択肢がある」という話。要は、2050年カーボンニュートラルとか、2100年で+2℃以内とかを、早期なGHG削減によって進める(年を追うごとに絶対的削減量は減っていくことになる)か、急に減らすことは無理なので、ある程度今までの延長で考える方が現実的で、目標達成の半ばまでには大気からのGHG回収と埋蔵(CCSのこと)を実現してネガティブカーボンを大量に生み出し、それ以前に出たGHGを相殺すること、そしてその中間的シナリオ、というわけです。これは、もちろんあり得るかあり得ないかと言ったらあり得るのだとは思いますが、後者の考え方は明らかに問題の先送りです。今本気で取り組まなければ、脱炭素が如何に困難であるかということ、そしてそれに取組まないと、気候が大変になることをどうやって人類が直視出来るのでしょうか?今までの生活様式とか、人の幸せな暮らし、発展と成長に対する考え方を改めることなく、テクニカルな手段だけで脱炭素を果たせるとは思えません。理屈ではなくて、実際に人が行動に移れるシナリオが必要です。

もう一つ、これまた京都大学の、経済学の諸富先生のお話には、GDPとGHG排出のデカップリングの話が出てきました。スウェーデンは大きく経済成長しながら、大きくGHGを削減することにも成功している、というわけです。ところが、グローバルにはGDPとGHGはほぼ完全にカップリングしています。日本もそう。そもそも、スウェーデンというのは人口が1000万人にも満たない国です。国土は大きくて、工業化が進んだ国ではありますが、GHG低減の理由の一つは非製造業系の産業が伸びたこと(情報関係とかです)や、エネルギー依存の高い製造業が海外にシフトしたことなどによるものであって、同じ様なことが世界全体で起こり得るわけではありません。作り過ぎの感はあるものの、やはりリアルグッズ、リアルバリューを生み出す製造業というのは大切で、そこには相応のエネルギー消費、GHG排出が伴います。実際、IEAのデータを元に調べたら、グローバルでの年間GHG排出量は50年で2倍以上に増えていて、GDPあたりのGHG排出は45%削減されたに過ぎません。エネルギー効率の改善と物質的ではない価値の生産へのシフト、再エネの拡大によって減らせるGHGはその程度であり、経済規模、グローバルなGDP拡大がそれを全て打ち消し、実態としてGHGの排出量は拡大し続けているということです。

前記のCO2回収、CCSは実証段階まで進んでいるとはいえ、その採算性も含めた拡大については、少なくとも現時点ではあてにすべきではないと思います。そのうち何とかなる、と考えるのも危険。そして、GHG排出を伴わない発電方式としての原発は、エネルギー基本計画において再稼働が前提とされています。世論は原発への依存をほとんど支持していなくて、政府、行政、学者、民間全てが表向きは原発は廃止すべき、と言いますが、心の奥底では「いざとなったら・・・」という逃げ道として、原発を維持、その新造も視野に入れて、となっていると思います。逆にその姿勢、態度が本気で再エネへのチェンジに取組もうとはしないことにつながっています。CCSや原発は、心理的逃げ道を与えています。CCSによって既に大量に大気中に放出されてしまったCO2を全部回収できるなどと思わない方が良いですし、まだウランはあるから、と奥の手、切り札として原発を頼ることは再エネへのチェンジを妨げているということを認めるべきです。自らバックドアを閉めて、前に進む。議論している場合ではなくて、行動ではないでしょうか。そもそもそんな議論を、皆さんほとんど聞いていませんよ。

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