このブログについて

国立大学法人山形大学工学部教授の吉田司のブログです。2050年までのカーボンニュートラル社会実現に向けて、色々な情報や個人的思いを発信します。発言に責任を持つためにも、立場と名前は公開しますが、山形大学の意見を代弁するものではありません。一市民、一日本国民、一地球人として自由な発言をするためにも、所在は完全に学外です。山形大学はこのブログの内容について一切その責任を負いません。
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2022年12月28日水曜日

フードロスと食糧自給率

 久々に、戦争以外の話題です(でも、戦争のことにつながるけど)。まだ食べられる食品が捨てられてしまう、フードロス、聞いたことありますよね。一方で重要なのが日本の低い食糧自給率。日本は世界最大の食糧輸入国でもあるそうです。

日本は世界最大の食糧輸入国であり、2008年(平成20年)財務省貿易統計によると、食糧輸入額は約5兆6000億円で世界全体の10%を占めている 。 日本における2018年度の食料自給率は、 カロリーベース 総合食料自給率で 37% (直近では38%に改善)。」

フードロスの問題は、農林水産省のウェブにも説明されています。

食品ロスの現状を知る:農林水産省 (maff.go.jp)

確かに、解決すべきゆゆしき問題と思えます。しかし、アメリカや中国のフードロスが凄いですね。如何にモノを浪費する社会かの尺度の様にも見えます。

しかし、じっくり考えると、フードロスは必要、とさえ思えるのです。確かに、日本で廃棄される食糧を分け与えることが出来たなら、多くの人がお腹を空かさずに済むという痛々しい現実もありますが。一方で日本の食糧自給率の低さは大問題です。過度の輸入依存というのは食糧安全保障の観点からも問題ですし、環境負荷の高さという点でも問題です。もっと地産地消、循環型、自給自足に変えていかないと。

こんなことを考えたのも、先日山形市で行ったセミナーで、参加者の方から「農業生産における脱炭素についてどうお考えですか?」というご質問を頂いたからです。日本の農業は小規模生産で、効率という点では低いです。化学肥料の生産に伴う化石燃料の大量使用、農機具の低排出化、サプライチェーン全体での低排出化、農業廃棄物の資源利用など、技術的に取組むべき課題はありますし、それはそれで進めるべきとは思います。しかし、こと食糧に関しては十分な量を常に安く手に入れられる状況を維持することがより優先度が高いと思いました。セミナーでもそうお答えさせて頂きました。

余るぐらい十分に食料がある、というのは大切なことです。もしもフードロスを画期的に低減して、必要量ギリギリの生産と輸入で済むようになったら、それは大変危うい状況となります。今回のウクライナの戦争で、穀物など基本的な食糧の価格が急騰したこと、温暖化による異常気象のために大凶作に陥る地域が発生していること、などを考えると、ギリギリの状態というのは、もしもマイナスの状況となった時に大変深刻です。少し余っているぐらいが丁度良いと言えないでしょうか?

一方で、食糧自給率の低さは、これまた危ういです。エネルギー自給率の低さ以上に危うさを生んでいます。他国と常に友好的な関係にあり、その他国が十分な食糧生産力を持っているならば、売ってもらうことで解決できます。しかし、今回の戦争でロシアが食糧を武器として国際社会に圧力をかけていることからも明らかなように、食糧供給の停止は相手に大きな打撃を与えます。日本の食糧自給率38%には食肉や鶏卵、乳製品が入っていますが、これら家畜の飼料は殆ど輸入品です。すなわち、その供給が止められたり、凶作になったりすれば、たちまち市場から食糧が消滅してしまいます。例えばアメリカの大規模農業による穀物飼料の生産は、持続性を度外視したものです。地下水の過剰な使用や土壌の酷使の上に成り立っており、持続性はさておき、ひたすら経済効率を追求した究極の姿です(遺伝子操作や病害虫から作物を守る多量の農薬使用も含め)。そこに依存してしまっているのが日本での食糧生産なのです。ここ山形では、それでも多くの自然の恵みがあり、十分以上の食糧生産能力がある様に思えますが、それとて大都市の多数の胃袋を満たすためのものであって、全体として十分とは言えないです。

先日テレビである方が「日本の稲作は減反などせず、余った分は輸出すればいい。食糧輸出は潜在的な食糧備蓄になるから」と言っていました。それこそ、皆が考えていることだと思います。戦争にせよ、凶作にせよ、有事の時は他国などへは売らず、自分のところで消費するという考え方ですから。すなわち、フェアトレードな対価を支払ったとしても、入手できなくなる危険性に相互にさらされているわけで、食糧安全保障が如何に重要かということが分かります。

今後、気候変動の問題に加えて戦争による対立もあって、食糧を他国に依存していると、いつ深刻な状況に陥るか分からないリスクが拡大します。日本は、小規模生産ゆえに効率化を追求しても追求しきれないところがあります。フードロスの削減も、効率追求の考え方です。ですから、地産地消、自給自足を飛躍的に高め、同時にそれが持続できるような循環型とすることが大切です。高くなっても仕方がないです。安い輸入品には依存しない。それはいつまで安いか分からないのですから。余る程食糧が得られる状況、それが理想だと思います。持続可能性を優先すれば、コストの上昇は免れないです。

2022年7月13日水曜日

リアクト米沢訪問

 米沢市役所の計らいで、米沢市にある「リアクト米沢」さんを見学してきました。

reactyonezawa.com

近隣で飼育される家畜(乳牛)の糞尿や、スーパーで廃棄されてしまった農作物等からバイオガスを生成し、これを用いた発電に取組んでいます。同時に生成される堆肥は地域の農作に利用されていて、ゴミを出さない循環型農業のモデル事業です。


「はまだ牧場」の乳牛さんたち

見学の最初は、「はまだ牧場」です。広い牛舎の中で、沢山の乳牛がエサを食べていました。一部土の様なモノを食べていたので、何か尋ねると、ゼオライトだそうです。お腹の調子を整えているそうで、自発的に食べるんだとか。生まれて間もない子牛も別の牛舎にいて、可愛かった。

搬出される牛糞

当然ながら、牛たちは沢山ウンチをします。それをもみ殻と混ぜて、トラックで運びだします。もみ殻も一緒に発酵されますが、混ぜるのは水分(オシッコも混ざっているので)を吸収させて、搬送途中で盛大に漏れ出さない様にするためだそうです。

リアクト米沢の施設外観

はまだ牧場から500メートルぐらい離れたところにある、リアクト米沢さんに到着しました。写真に見える様な発酵槽が2基、大きいのと小さいのがありました。

廃棄物を砕いて混ぜるミル、ミキサー

搬入口を入ると、牛のウンチだけでなくて、廃棄された野菜なども全部混ぜて粉々にするミキサーがありました。緑色っぽいのはキャベツでした。これ、写真では分かりませんけど、猛烈に臭かったです!まあ、そりゃそうですよね。

分離された固形分は堆肥として利用

ドロドロになった廃棄物は、洗濯の脱水機の様な仕掛けで固形分と消化液に分離されます。固形分は全く臭わず、これが近隣の農家のアスパラガス栽培などの肥料に用いられているそうです。

発酵槽、中央上部に見える赤いのは攪拌用モーター

消化液は地下に埋設された管を通って発酵槽に入り、嫌気性細菌によってメタンガスへと分解されます。硫化水素の生成を抑制するために多少空気を入れるそうですが、酸素があると二酸化炭素と水まで行っちゃいますから、酸素は基本的には遮断されています。温度は43℃ぐらいが良いそうです。攪拌する方が良いのか、しない方が良いのかなどは色々テストするそうです。この攪拌モーターの電力は、ここで発電された電力を使っているそうです。発酵で温度が上るわけでもないそうで、寒い時は温めるそうです(それも、施設内で生み出した電力による)。大体数週間で完全にクリーンになって、そのまま下水に流すことが出来るので、いっぱいになって止まってしまうことは無いそうです。生成したメタンは上部の半球形ドームで回収されます。

ガス分離装置

生成するガスはメタンだけではありません。余計なガスがエンジンに入るとエンジンが壊れるので、このガス分離装置で純化するそうです。

発電機のエンジン、写真に写るのは案内して下さった、株式会社ハイポテックの高橋さん、ハイポテックがこのバイオガス発電プラントの運用をしています。

そして、生産されたメタンガスは、御覧のエンジンの燃料になり、発電機を動かします。エンジンの回転軸は発電用のダイナモに直結されていて、負荷はマグネットで制御する仕組みだそうです。最大出力は470 kWとのことです。てっきりガスタービンエンジンだと思っていましたが、普通のレシプロエンジンでした。片バンク6気筒、V型の12気筒エンジンで(チェコ製だとか)、スパークプラグも見えました。効率悪そうにも思うのですけど、恐らく小型の設備についてはガスタービンよりも良いんでしょうね。燃焼すると、当然二酸化炭素が出るわけですが、元々バイオマス由来ですから、完全カーボンニュートラル、というわけです。燃料さえカーボンニュートラルならば、いままで通りエンジンを使ったら良いです!自動車だって、何も全部EVにする必要はナシ!
こんなに先進的なバイオガス発電施設が米沢にあるということが驚きでした。全国でもこういう施設はまだまだ少ないそうで、連日全国から視察があるようです。設備のほとんどは輸入部品で構成されていますが、設備の設計や施工は独自にされたそうです。こういう施設を見るのは初めてでしたので、スゴイなあ、という印象ではありましたが、ヨーロッパで大規模に取組まれている施設と比較すると、可愛いモノだそうです。実際、470 kWというのは、これだけの設備にして「まあそんなもの」という小ささです。同じ敷地に太陽電池を敷き詰めてもそれぐらい発電出来そう。
でも、そういうことじゃないんです。循環型農業、さらにはカーボンニュートラルな電力生産の取組み、素敵じゃないですか!ご案内頂いた濱田さんや高橋さんの生き生きした表情も大変印象に残りました。我々が何らかの形で、こうした取組みの進化や拡大に貢献出来たら良いなあと思います。リアクト米沢さんの場合、効率的な運用方法は独自に研究検討していて、大学等と共同しているわけではないそうです。エライ!(っていうか、役に立つことが出来ていない大学の研究者が情けない!?)
ここまでやっても、まだまだ道半ばであることの一つとしては、最初に出てきた牛さんたちが食べている穀物飼料や干し草は、やっぱり全部輸入品なんだそうです(外国の土壌、お日様で育った穀物を燃料を使って輸送している)。昔の牧畜というのは、餌も地域で生産し、家畜が育ち、廃棄物は再び土壌に戻るという完全循環でしたが、今は安い輸入穀物飼料を使う効率的な大規模生産が当然になってしまいました。国産は高い上に品質が安定しない、雨が多いせいで牧草がカビたりする、というのが国産飼料にはなかなか切り替えられない理由だそうです。しかし、稲わらの飼料など研究はされているそうですよ。出来ることなら、地域で生産された飼料で家畜が育ち、そこから食料とエネルギー両方を頂いて、再びそれが土壌に戻って飼料を育てる完全循環、その全てが太陽の光の力で回っている、という仕組みを実現したいものですね。
そしたら、国産家畜飼料の話題が先日放送されていました。
鹿児島、指宿での飼料の国産化の取組みです。天候不順による不作、ウクライナ紛争、急激な円安、コロナによる物流停滞などで、輸入穀物飼料の価格が急騰しているために、早くから取り組んできた国産飼料が十分現実的競争力を持つようになったそうです。上記のカミチクホールディングスさんがスゴイのは、餌づくりに始まって、最後に食肉が提供される外食産業まで多角的に取組んでいるところです。でも、そうした方が、入口と出口がつながって、循環する仕組みを作りやすい様にも思いますね。大変ではあるけれど、分業による効率化よりも、連携によるシステム化が今後の鍵でしょうか。これからは、コストだけではなくて、持続可能であることが優先されるべきファクターになると思います。もちろん、採算性が全くないことには取り組めないので、一歩ずつ理想形に近づいて行って、いつかは東北地域から食料とエネルギー両方を全国に供給できる様になったら良いなあと思います。









2022年3月17日木曜日

アマモ

 先日こんなニュースがありました。

海草のCO2吸収量 約1万1000世帯分か 全国の主要港などで推計 | 環境 | NHKニュース

浅い海に繁殖するアマモと呼ばれる水草(海藻ではなくて海草)を日本の港湾に植えることで、二酸化炭素を吸収する計画で、国土交通省が取組み、その削減分を国内企業に対して二酸化炭素排出権として売るというのです。「これって本当に大丈夫?」と思ったので、YUCaNの仲間と議論しました。何が心配かと言うと、植物と言うのは確かに成長期においては二酸化炭素を吸収しますけど、死んで分解されるとまた二酸化炭素を出しますから、生まれて、それが完全に消滅するライフサイクルにおいてはカーボンニュートラルであって、ネガティブカーボンではないだろう、と思ったからです。例えば最初は吸収してくれるけど、死んで分解されたら差し引きゼロではないかと。

それで、農学部の程為国先生からご説明頂きました。今までアマモが生えていなかったところにアマモを繁殖させれば、それは砂漠を草原に変える様なものなので、やはりネガティブカーボンを生み出すと考えて良いということです。ナルホド。それから、死んだアマモは全部分解されるわけでなくて、有機物として海底に堆積するので、ある程度はネガティブカーボンを生み出し続けるのです。例えば釧路湿原の様な場所は、水草が長年堆積して、泥炭(ピート)の層を形成しています。それはいずれ石炭になるのでしょう(人間は使えないぐらい時間かかると思います)。しかし、やはり時間が経過すると、吸収量と排出量がバランスし始めて、ほぼニュートラル状態になるみたいです。例えば白神山地の様な古い森林の場合、成長分と同じくらい枯死と分解による排出があるので、吸収能力は期待できないということです。それで、実際どれぐらいの二酸化炭素吸収能力があるのかを正確に見積ることは非常に難しい、とのことです。

全く理にかなった説明で、納得なんですけど、そうするとやはり心配ではあります。それは、人の心理から来るものです。このアマモの繁殖に取組む方からすれば、その二酸化炭素削減効果を声高に主張したくなるでしょう(過大評価につながる)。一方、それを排出権としてわざわざ購入したサイドからすれば、自分たちはお金を使って二酸化炭素を削減したのだ、と主張し続けたいでしょう。しかし、恐らくは毎年の二酸化炭素吸収能力の変化(低下し続けると思われる)を見積もることはしないでしょう。このニュースには全国でやると年間4万5千トンとありますが、それに単純に年数をかけ算して、「これだけ削減した!」となるに決まっています。

なので、やっぱりバイオマスによる二酸化炭素削減効果については、正確な見積もりを可能とする科学的根拠が不十分であると思います。例えばCCSで地中に埋める場合はこれだけ埋めたと言えるでしょうけど、戻ってくる分もあるバイオマスの場合はそんなに簡単ではありません。もちろん、だからやっても仕方ないと言っているのではありません。注意が必要だというだけです。

2021年6月16日水曜日

柿の種コーヒー

 柿の種からコーヒーを作れるそうです。いや、コーヒー味の柿の種とか、コーヒーによく合う柿の種とかではありません(ちなみに、カフェオレ味の柿の種は売っていました。モーニングサービスで有名な岐阜のコーヒー文化ですが(私の故郷は岐阜です)、モーニングの時間帯以外ではコーヒーに柿の種の小袋が付いてくるのは当たり前です。つまり、元々柿の種はコーヒーに合うということ?)。岐阜県海津市にある、地元の富有柿から柿酢をつくるリバークレスという会社が、余ってゴミになってしまう柿の種(本当に、「種子」の意味)からコーヒー(のような)飲み物を作って販売している、という話です。

柿の種で焙煎コーヒー ノンカフェインで酸味ある味わい、リバークレスが商品化 | 岐阜新聞Web (gifu-np.co.jp)

富有柿の“柿の種”コーヒー 2年かけ完成 女性社長「ストーブの上の“種”」見て思いつく フルーティーな味わい 岐阜・海津市 : 中京テレビNEWS (ctv.co.jp)

そもそも、コーヒーって、コーヒーチェリーと呼ばれるサクランボにも似た果実の種で、それを乾燥、焙煎し、挽いてお湯で抽出したものです。ちなみに、コーヒーチェリーの生の実も食べることが出来るそうですよ。

この柿の種コーヒーを開発した伊藤由紀社長は、使い道が無くて捨てるしかなかった柿の種をたまたまストーブの上にのせて焙ったら、いい香りがしてくるので、これでコーヒーが作れるのでは?と思ったそうです。コーヒー豆と同じようにはいかず、焙煎方法を試行錯誤して製品化に至ったとのこと。今は試験的な販売とあって、1杯分が432円とかなりお高いですが、これが普及したら廃棄物の柿の種を減らせるだけでなくて、コーヒー豆の消費量を減らすことも出来るかも知れませんね。というのも、コーヒーがどこで生産されているかご存知でしょうか?

コーヒー豆の生産量国別ランキング!世界1位の国は? | DRIP POD (drip-pod.jp)

私は一日中コーヒーが欠かせない人なんですが、安くておいしいので、AEONのトップバリュー品をいつも飲んでいます。しかしそのコーヒーがどこから来るのか知りません(ベトナム、ブラジルと書いてありました)。綿花やカカオ豆でもよく話題になりますが、果たして生産者にちゃんとした対価が渡っているのか心配です。経済の拡大に伴い、特に中国ではコーヒーの消費量が大きく伸びていて、コーヒーの生産量も増え続けています。資本主義経済の競争原理の当然の結果として、より良い品質を求める一方で、その付加価値は可能な限り低く見積もられます。すなわち、強者(買い付ける側)による価格の支配が起こり、生産者は極めて厳しい状況に追い込まれ、大変な無理をして生産を続けることになります。土地にも大変な負担を強いることになります。農薬や化学肥料の大量使用、そして児童労働の問題。明らかに持続性が無い上に、貧困国のコーヒー農場で労働する子供たちは学校にも行けず、その国を将来豊かにするための学習の機会を奪われてしまうのです。だから、これは廃棄物の利用が出来て良かったね、ということを遥かに超えて、素晴らしい取組みだと思いました。コーヒー豆の消費が減ったら貧困国が余計に困るじゃないか、という心配は無用です。まずは、生産者をいじめたりしないフェアトレードが必要ですし、消費者(EUが1位、米国2位)は持続可能な生産方法をとらない生産者からは買わない、そのために必要な出資をする、などして必要な対価が生産者に行きわたることが必要です。そうすれば、生産者も豊かになり、子供たちは学校に行き、将来自らの地域を発展させるための力になります。一次農産品の生産だけでなく、加工品にも取り組んでより付加価値の高い生産に取組むことも可能になります(但し発展のための発展でなくて、持続可能であることが大切ですよね)。

さて、山形で何が出来ますかね?山形も庄内柿が有名でしたね。おっと、種無しだった!種がゴミにならないからもっとエコですか?サクランボ?種がいっぱいですね。チェリーだけど、コーヒーチェリーとは全然違うな。山形の農業関係の皆さん、何かお困りのことはありませんか?

2021年6月1日火曜日

アイガモロボ続々報

 過日お伝えしたヤマガタデザインのアイガモロボが、再びレポートされていました。動画で実験の様子を見ることが出来ます。

機械で雑草や害虫を防げ!アイガモロボの実証実験 山形県朝日町(FNNプライム)

現場は先日その写真を掲載した椹平(くぬぎだいら)の棚田です。私が写真をとった翌々日(5月31日)に実験があったんですね。見れなかったのが惜しい!アヒル(アイガモじゃないね)の風船を取り付けて、より「らしく」なりましたかね?飾りを付けるにしても、ソーラーパネルの邪魔になってはなりません。稲苗の上からかき混ぜるスクリューって大丈夫かと思っていたのですけど、やっぱり苗をもぎ取ってしまうことがあったんですね。でもそれも改良されて問題なくなったとインタビューに答えています。ちゃんと進化しているということ。年に一回しか実験出来ないのが大変だと思います。いずれ期待通り製品化されてあちこちでアイガモロボを見かける時がやってくるのでしょうか?

2021年5月30日日曜日

草木塔

 

米沢市を中心とする、ここ山形県置賜(おきたま)地方では、「草木塔」という石碑をよく見かけます。全国に100ぐらいある草木塔の90ぐらいが山形県にあり、さらにそのうち70くらいは置賜にあるそうで、1780年に建立された日本最古のものは、米沢市の田沢地区(山間部、福島県喜多方市に至る国道121号線沿い)にあります。写真は、平成九年に建てられた道の駅田沢にあるものです(私よくバイクで行きます)。

で、草木塔とは何か?にわか知識で私などが書くのもナンですが、草木を供養し、その成長を願うというものです。米沢藩の屋敷が大火で消失した際に、この田沢地区から多くの木が伐り出され、再建されたそうで、自然の恵みに感謝すると共に、供養をしたというわけです。上杉鷹山の時代です。それが地域に広まったことが、置賜地区に草木塔が多数ある理由ということです。

それで、最近では自然との共生のシンボルとして、再び草木塔の意義が見直されているというわけです。この草木塔の理念も手伝って、2021年には米沢市が内閣府の「SDGs未来都市」に選ばれました(飯豊町、鶴岡市に次いで山形県で3番目)。米沢市の未来都市宣言タイトルが凄くて、「~果敢な挑戦と創造の連鎖~市民総参加で実現するSDGs未来都市米沢」だそうです。市民、総参加しますかね?米沢で暮らしていると、市民の地元愛が凄いというのは感じます。一方で、都市の環境は「未来都市」って感じではなくて、10年暮らしていてもほとんど何も変わりません(市役所は最近新しくなった!)。これは、ある意味都市機能がかなり最適化されているからで、変えることが不要だから、とポジティブに捉えたいですね(お金が無いからと言わないで!)。例えば、先日も話題にした中国の深圳の街中を歩いていると、汚くて古くて今にも壊れそうな建物とピカピカのビルが混在していて、常にあちこち工事中のために歩道は歩きにくいことこの上なかったです。それは、都市がダイナミックに変動し続けていることの証で、きっと2,3年後に行ったら全然変わっているんだろうな、と思わせるに十分なほど、街全体が建設中、ずっと建設中、という感じでした。活気に満ちている、と言えば確かにそうです。対して古くからある米沢は、色々な機能が既に最適化され、成熟した街と言えます(無理がある???)。だから、変えなくていいんです。これ、大切なことだと思うんです。今までの様に、まだ使えても「古臭いから」と破壊の対象になり、新しいゴミをどんどん生産する、それって持続可能性の対極にある生き方です。だから、誇りを持って、「未来都市ってのは、必要も無いのにどんどん新しいモノを作ったりしない都市なんです」と言って欲しい。SDGsのために必要なのは、考え方のシフトであり、それに沿った方向転換だと思います。これまでの資本主義原理が破綻し、持続できない生き方であったことは既に完全に証明されてしまっています。

最後に、久々に写真を入れたのでもう一枚。山形県朝日町にある、「椹平の棚田」(「くぬぎだいら」と読みます)が田植えの最中でした。こういう美しい里の風景を、後世にも残したいですよね。



2021年5月29日土曜日

お米のプラスチック

 米どころ新潟で廃棄されるお米を石油系樹脂と混ぜたバイオプラスチックを使った食器類を製造販売しているメーカーがテレビで紹介されていました。

バイオマスレジンホールディングス (biomass-resin.com)

マイクロプラスチックによる海洋汚染が問題となっていますし、フードロスの問題もあります。お米を使うなんてちょっともったいない感じはしますけど、食べられなくなったなら廃棄するよりこうして利用した方が良いです。バイオマスをエネルギー転化するのは最後の手段で、極力マテリアルとして利用することが望ましいですね。

事業内容を見ると、コメとかコーヒーとかそばとかの食糧だけでなくて、木材、竹などを使ったプラスチックもあるようです。コメのスプーンでコメを食べる、なんてちょっと良い感じですよね。実際テレビで紹介されていたのも、百貨店でちょっと贅沢な品物として販売されている感じでした。モノが悪くても我慢して使うのが脱炭素への取組みではなくて、ちょっと手間とコストがかかっても、脱炭素に向けた製品が、これまでより、この方が良い、と思える付加価値になる、ということですね。脱炭素に貢献するのは、最も進んだ成熟した生き方、皆が目指したくなる生き方、そうなって欲しいです。最後は徹底的に無駄をなくす、というところに行き着くのかも知れませんが、脱炭素へのシフトを誘導するためにも、この「新しい価値」というセンスはとても良いと思いました。

しかし、技術的観点からは、生分解性プラスチックとか長期使用大丈夫?とか思ってしまいます。一方、割りばしが環境に悪いと言って、合成プラスチックの箸に置き換えて、それを毎回温水、洗剤で洗っていたら、それは本当に環境に優しいのか?間伐材に使い道を与え、最後はバイオ燃料になる割りばしはそんなに環境悪?と思ってしまいますよね。日本のそば文化、そばを食べるには割りばしが一番、なんせ滑りません。そばを一番おいしく食べられる。しかも割りばしは生分解性ですよ。昔からやっていることが絶対に環境に悪い、とは限りませんよね。

2021年5月26日水曜日

アイガモロボ続報

 昨日お伝えした有機米農業を助ける除草アイガモロボについて続報です。あまり喜んでよく調べなうちにアップしたので、情報が不足していました。このロボットを開発しているのは、日産自動車の技術者の中村哲也さんなんですね(ボランティアで)。1年前に、初代アイガモロボについてそのストーリーを伝えるYouTubeビデオが出ていました。

日産自動車の技術者によるボランティア活動から生まれた「アイガモロボ」始動!(日産自動車TouTubeチャンネル)

このビデオの中でも、昨日のNHKレポートにも登場していた中村さんがそのアイデアを説明しています。初代アイガモロボは太陽電池を背負っていないんですね。田んぼ脇の太陽電池で充電する仕組みだったようです。どうして稲を巻き込まずに泥水をかき上げられるのかについてのスクリューの秘密など説明されています。初代は目が付いて、ちょっと愛嬌ありますが、最新バージョンは太陽電池を備え、より本気の仕様に見えますね。最初は山形県朝日町の棚田が実験場だったようです。

日産自動車として、これを本気でビジネスにするという考えは無いのかも知れませんが、ヤマガタデザインの山中大介社長がこれに目を付け、鶴岡でプロジェクトがさらに発展しているということのようです。既成概念に囚われない人でなければ、ここまで形にすることはなかなか出来ないだろうと思います。

2021年5月24日月曜日

牛、それでも食べますか?

肉牛は生後3年足らずで食肉になるそうですが、それは栄養価の高いトウモロコシなどの穀物飼料を大量に食べるからで(速く育てるのは当然コストダウンのためです)、その穀物(人間も食べれます)を大量に生産するには大量の化学肥料や水が必要になり、それだけでも環境負荷が高いですが、さらにそのゲップに二酸化炭素の25倍の温室効果を発揮するメタンが含まれていることでも有名です。

牛も脱炭素の時代!(NHK)

このレポートにあるとおり、何とその排出量は二酸化炭素換算で世界で年間20億トン、これはGHG全体の4%にもなるそうで、日本の合計3.5%を上回るほどです。さらに、そのフンには一酸化二窒素(N2O)が含まれていて、その温室効果は二酸化炭素の300倍とか…。それだと、牛は温暖化について悪者になっちゃいますね。いや、牛が悪いわけではないんでしょう。家畜は人間に利用されているだけですからね。野生動物の牛の類だけなら、こんな量にはならないはず。でもこれらの数字を見たら、カーボンニュートラル、持続性の実現には見過ごせない問題です。

しかし、それでも食べたい牛肉。私は、牛肉は滅多に食べないですが、乳製品は沢山食べてますね。そしてここ米沢は、何と言っても超高級品の米沢牛の産地、地域が誇る農産物です。美味しいからであり、さらに地域の文化としても、肉牛の飼育をやめるわけにはいきませんよねえ。それで、このレポートに関心しました。ノリの一種を飼料に混ぜるとゲップの中のメタンが減るとか、タンパク質を減らした穀物飼料を与えるとフンの中のN2Oが減るとか…。色々試みられているのですね。全部我慢我慢ではなくて、工夫によって問題を低減しつつ、農業の持続性を確保していくこと、未来の世代も美味しい牛肉食を継続できる様にするために必要ですね。是非YUCaN研究センターもサステイナブル米沢牛(だけじゃなくて、山形牛全般に美味しいですけど)に貢献したいですね!

2021年5月22日土曜日

外国人と食事してはいけません!?

 まったく、開いた口が塞がらないとはこのことです。グローバル化とかが日本村で叫ばれるようになって久しい2021年に至ってもなお、こんなニュースが出てきてしまうのです。

”外国人と食事しないように”感染予防啓発文書に保健所が記載(NHK)

茨城県の保健所が、地域の農家に対して雇っている外国人と話したり、一緒に食事をしないように、という通知を出していたというのです。それはコロナウイルスに感染する危険があるから。これを見た外部の人から「不適切」と指摘があり、撤回したとのことですが、一旦出てしまったことは、心の底でそう思っているということを既に証明してしまっています。NHKの取材に対しては「外国人を差別する意図は全くありませんでしたが、誤解を招く表現があったとしたら申し訳ありませんでした」と反省の弁があったようですが、本当に「誤解」「間違い」でしょうか?心の中では外国人は皆危険だと思っていませんか?自分の愚かさに気付き、公的機関としてこんな恥ずかしい通知を出してしまったと認めるなら、誰も聞いてくれなくても、誰も許してくれなくても、大反省の記者会見を保健所が開くべきです。

全く怒り心頭です。重労働が多く、高齢化が進む農家にとって、外国人技能実習生は欠かすことの出来ない人材になっていると思いますが、その方々はコロナウイルス感染拡大地域からつい先日来日したのですか?かなり長期間日本で生活している方がほとんどではないですか?今の状況を考えると、例えば直前にインドに滞在していた人は入国禁止するなどは合理的ですが、その場合も入国を禁止するのは「インド人」ではなくて「インドにいた人」です。国籍や見かけによって、「気を付けた方が良い」と思うだけでも明確な人種差別です。感染しやすい人種とか、長期間保菌してしまう人種とかあるのですか?

つい先日、YUCaN研究センター関係の打合せを兼ねて、山形大のJiptner先生(ドイツ人)とKhosla先生(インド人)と一緒に食事をしていました。大の仲良しなので、ずーっと英語で談笑していました(今の時期多少憚られますが、三人です)。隣のテーブルには日本人(と思われる)親子がいましたが、ひょっとしてずっと不快だったでしょうか?感染の危険を感じましたか?これら二人の先生は、一見しただけで日本人っぽくは見えません(そもそも外見とか人種じゃなくて、法的な帰属ですけどね、国籍は)。しかし、お二人ともしばーらく、日本の外には出ていません。出られるわけありません。同じ場所に住み、同じものを食べているこの人達が、出来れば避けた方が良い感染リスクになりますか?私も日本語を一言も話していなかったので、外国人に見られましたかね?私の妻は中国出身です(帰化したので日本人ですが)。家族で外食することもよくありますが、彼女が中国訛りの日本語で注文している時に、隣のテーブルの人が「ゲッ、中国人!」となっているのでしょうか?私は、子供たちにどう説明すれば良いでしょう?「半分中国人でゴメンね、我慢してね」と言うのですか?(もちろん、子供たちも法的には日本人です)

ちょっと読んでも面白くないし、共感を呼ぶわけでも無い感情的な書き方をしましたが、この件については自分ごとでもあるので久々に頭に来ました。あまりにも嘆かわしい。こんな国がSDGsの達成に貢献出来ますか?一致協力してカーボンニュートラルを達成出来ますか?技術課題や行政の制度の問題と片付けて、本質的な問題から逃げないで欲しいと思います。これらを達成するのは人であり、この様な嘆かわしい出来事を深く反省して、自らを変えていく努力が全ての人たちに求められます。

2021年5月19日水曜日

マイクロプラスチックと持続可能な農業

 マイクロプラスチックによる海洋汚染の元凶の一つが稲作であるという衝撃の記事がありました。

流出するマイクロプラスチック 稲作で使う○○が海や川に(NHK)

マイクロプラスチックの問題と稲作、まさかそれらが関係しているとは知りませんでした。つくづく、問題の原因を見えにくくする環境問題と人類の活動の関係の複雑さを示す事例と思えました。私の家も家庭菜園をちょっとだけやっているため、化学肥料を使うことがあるのですが、丸い球状の肥料はほとんど水に溶けている様に見えず、気が付いたら無くなっている感じです。それも、ひょっとしたらプラスチック膜で覆われた緩効性被覆肥料かも知れません。

土づくりQ&A|ホクレンの肥料 (hokuren.or.jp)

被覆肥料 | 商品紹介 | エムシー・ファーティコム (mcferticom.jp)

広大な農地に肥料を与えるのは大変な作業で、しかも生育段階に応じて何度も追肥をする必要があります。その労力を削減するために、肥料を(水溶性とはいうものの)プラスチックで覆い、ゆっくり肥料成分を放出、又は時間が経ってから放出を始める、被覆肥料が広く使われていて、何とそのプラスチックの殻が海に大量に流れ着いているというわけです。

その流出を防ぐことの重要性については、山形県のウェブページにも2019年の投稿が掲載されていました。

プラスチックカプセルを利用した肥料の悪影響について(山形県)

おいしいお米を出来るだけ安く作るためには、色々な工夫があって、プラスチックもそれに役立ってきた事実は無視してはならないですが、その問題点に気付き、農業も海洋の健康も、双方についてその持続可能性を担保する手段を模索することは重要ですね。上記NHKのレポート中にありますが、高校生がこの課題に取組み、肥料メーカーと共にプラスチックに頼らない緩効性肥料の開発を進めているとのこと。素晴らしいです。

2021年5月12日水曜日

持続可能な農林水産業

 もう一つ、農業における脱炭素への動きが報じられました。

持続可能な農林水産業実現へ 有機農業拡大などの新戦略 農水省(NHK)

農業の持続的発展については、農水省のウェブに詳しい説明もあります。

第3章 農業の持続的発展に向けて:農林水産省 (maff.go.jp)

化学肥料や農薬を使わない有機農業を2050年までに全国の農地の25%にまで拡大し、農薬使用を50%、化学肥料を30%それぞれ削減するとしています。また、農業機械や漁船の電動化技術も2040年までに確立するとのことです。電動化はともかく、有機農業って健康的ではあるものの、それがどうして持続可能性に関係するの?と思われるかも知れません。しかし、農薬や肥料の合成にはアンモニアが欠かせず、それは石炭を原料としてCO2をバンバン出しながら大量に合成されているのです。元々は、第一次世界大戦でのドイツ帝国の勝利のために、天才化学者フリッツ・ハーバーが生み出した、空気からアンモニアを合成するハーバー・ボッシュ法(そのアンモニアは硝酸になり、爆薬になる)で、人殺しのために編み出した化学が、図らずも緑の革命を起こし、食糧大増産を実現して、多くの人命を救いました。しかし、こういうわけなので、光合成で食糧(バイオ燃料)を作り出す農業も、実は大量の化石燃料消費に支えられています。なので、確かに有機農業は脱炭素に向けた変化になり得るのです。

ただ心配なのは、気候変動によって病害虫による農業被害が深刻化しないだろうか、とも思います。そうすると、食糧を守るためには農薬の使用が必要・・・となってしまいそう。つくづく、全てが相関していますよね。だから研究センターとして皆が対話し、知恵を絞ることが大切だと思います。


トリチウム汚染水海洋投棄

 福島第一原発の事故によって発生した大量の放射性物質を含む汚染水をどうするかが大変な問題となっていることは皆さんご存知の通りです。政府は海洋投棄する方針を決定しました。一般の人にとって、普段放射性物質についての知識を得たり、それについて考える必要は本来ないのですが、あまりにも情報が適切に開示されていないことに加え、事故を起こした東電側や国にとって都合の良い話だけを押し付ける傾向があり、特に直接的な被害を受けることが確実な漁業関係者とまともな対話をしていないことに大変な憤りを感じます。中でも一番おかしいと思ったのは、「基準以下に薄めてから海洋投棄するから大丈夫」の様な説明があることです。海に投棄した時点で無限希釈に近いぐらい希釈されるわけで、予め希釈することで一体何が変わるというのでしょうか?放射性物質の絶対量は全く変わりません。そんなこと、中学生でも分かる話です。

問題になるのは放射線の絶対量であり、福島で投棄するのは780兆ベクレルで、それを希釈しながら30年かけて投棄するという説明がされています。しかし、壊れた原子炉内を冷却するための注水により、毎日新たな汚染水が400トン程生じています。また、地下水の汚染もこれに加わります。もうすぐ一杯になってしまう汚染水貯蔵タンクを空けるために海洋投棄を始めたいというのが本当の理由であり、30年の予定が、実際にはいつ終わるのかも分かりません。

放射性物質の全容や特にトリチウムに関する実態について、私は専門家ではないので無責任に色々書かない方が良いですが、以下の経済産業省の資料は明らかに海洋投棄を合理化するために作られた資料と読み取れます。

008_02_02.pdf (meti.go.jp)

汚染水は様々な放射性物質を含んでいますが、これを浄化するALPS処理が行われています。しかし、水(HTO)として存在するトリチウムは除去することが出来ません。ALPS処理については、経産省資源エネ庁のウェブに説明があります。

安全・安心を第一に取組む、福島の”汚染水”対策⑦ ALPS処理水に関する専門家からの提言(資源エネ庁)

実際には、ALPS処理によって放射性の重元素の全てが完全に除去されているわけではなくて、かなり残留しているという噂もありますが、正確な数値は公表していないと思います。原発のオペレーションをするだけで、冷却水中に微量含まれる重水からトリチウムは必ず発生することになり、それを海洋投棄するのは普通にやっていることだから、という説明をしていますが、今回問題になっているのはトリチウムだけではないと考えた方が良いでしょう。また、トリチウムによる健康被害は大したことが無いかの様な中部電力の資料があります。

トリチウムについて (chuden.co.jp)

しかし、一方ではトリチウム投棄量と小児がん等の明瞭な因果関係が古くから報告されていることや、HTOでなくて、有機トリチウムになるととても危険であることなど、トリチウムによる健康被害に警鐘を鳴らす上澤千尋さんのレポートもあります。

科学5月独立P_上澤.indd (cnic.jp)

そもそも、原発と共に生きるという選択をした時点で、人為的な放射性物質の発生が不可避であり、ある程度の環境中への放出も避けがたいと考えるべきでしょう。温室効果ガスを出さないのは確かに原子力の大きなメリットですが、一方ではさらに恐ろしい放射性廃棄物を生じることに対して目をつぶることは出来ません。事故前から福島第一原発で発生したトリチウムは海洋投棄されていたそうです。しかし、どの程度までなら許容可能かなどの線引きを延々議論することは無駄だと思いますし、よそもやっているのだから今回のケースだけを問題にするべきではないという言い逃れも不適切だと思います。明らかに、今回のケースは余計な汚染を生じることになるのです。程度の問題ではありません。

科学技術的観点からは、それでも「大丈夫だ」「いや、許容できない」などの議論を続けることは出来ると思いますが、実際の問題はそこではないです。漁業関係者には確実に被害が出ますし、その漁業関係の方と同じ社会を共有する我々も確実に被害を受けます。「原発やる時点で汚染が起こることは了解済み。それでも安い電気が欲しいんだから、汚染された魚でも喜んで食べますよ!」と誰か言っていますか?都合の悪い事実を隠して、都合の良い部分だけの説明で誤魔化していないと言えるでしょうか?

風評被害は確実に出ます。「人々の誤解を解くために丁寧な説明をしていきます」「それでも生じる被害については補償します」などと言っていますが、まず、無用な汚染を受けた魚を食べたくないと思うのは「誤解」ではありません。日本人は、直接の利害関係があるので口をつぐむケースが多いですが、これについては中国や韓国の反応の方が人の反応としては素直です(国家として反発するのはちょっと問題ですけど)。そして、お金で補償してもらうことを漁業関係者は求めているのではない、ということです。自分自身が漁業関係者だったらどう思うでしょうか?働かなくても、魚が売れなくても、お金がもらえるから良い、と思うでしょうか?額に汗して一生懸命良い魚を獲り、「うちの魚は最高だよ!」と誇りを持って仕事を続けたいと思うのではないですか?マイナス分を補填するという考え方ではないです。むしろ、原発事故の酷い経験を乗り越えて、福島、宮城、茨城の漁業を見事に復活させ、より良い漁業をし、社会にそれを届けること、「東北の魚は一番だ!」と言ってもらえる漁業を取り戻すこと、これが関係者の胸の内にあるのは明らかだと思います。なので、金で解決しますから、の様な話を真正面から持ち出すのは、漁業関係者を侮辱しているとさえ思います。

だから、一旦原発でこういう事故が起こると、本当に取り返しのつかない大変なことになるのだということを決して皆忘れてはならないと思います。そのうえで、やはりカーボンニュートラルのためにはその痛みも許容せねばならない、と民意が動くのであればそれも選択肢でしょう。私は、一刻も早く原発を選択肢から外し、これから使える炭素予算を全て原発を前提としないカーボンニュートラルの実現に向けた技術開発に投じるべきだと思います。EUは先行して炭素予算を脱炭素につぎ込んできたから、今こんなにも差が開いてしまったのです。これは明らかに政治の失態だと思います。


還暦

 私、1966年生まれ、丙午(ひのえうま)です。2026年になりましたので、還暦を迎えました。すなわち、今1歳です。あと何年生きられるでしょうか?ひとまず、60年で色々経験させてもらい、色々なことを学び、考え、行動することが出来るようになりました。出来ることが増えた一方で出来なく...