このブログについて

国立大学法人山形大学工学部教授の吉田司のブログです。2050年までのカーボンニュートラル社会実現に向けて、色々な情報や個人的思いを発信します。発言に責任を持つためにも、立場と名前は公開しますが、山形大学の意見を代弁するものではありません。一市民、一日本国民、一地球人として自由な発言をするためにも、所在は完全に学外です。山形大学はこのブログの内容について一切その責任を負いません。

2021年4月29日木曜日

川内原発も運転延長検討へ

 昨日の福井県の原発再稼働に続き、九州電力管内の川内原発も40年を超える運転延長に向けた検討を開始したことが報じられました。

九電、川内原発の運転延長を検討へ 社長「地元の理解が第一」(毎日新聞)

2024年に運転開始から40年を迎える川内原発をさらに延長して運転することを検討するため、点検等を進めることを九州電力が表明しました。条件を満たせば、原子力規制委員会に対して運転延長の申請をすることになります。地元の理解が第一であるというコメントは当然と思いますが、そもそもこの様に急ピッチに再稼働や運転延長が検討されるのは(検討していなかったわけではないが、表明できなかった)、GHG46%削減宣言に後押しされていることが明らかです。繰り返し、政府と事業者には透明性のある真実を、国民が納得するまで説明することを求めます。

九州電力については、こちらも最近話題となりました。

太陽光発電などの電力 蓄電池で有効活用へ 三菱商事 NTT 九電(NHK)

九州は日照条件が良く、太陽光発電の導入が最も進んだ地域ですが、条件によって発電量が過剰となるために、発電を時々制限する事態に陥っていました。そこで九州に1000店舗以上あるローソン(三菱商事)やNTT電話局に蓄電池を設置し、余剰な電力を貯めて、使うという取組みです。災害時の電力供給に対応できる可能性なども考えると、とても良い取組みだと言えます。ただ、現状では大型のリチウムイオン電池等に頼ることになり、コストや寿命の点で大規模な電力貯蔵は難しいと予想されます。

エネルギーに対して後ろ向きな印象のある原発と、前向きな太陽光発電、同じ九州電力の取組みですが、綺麗ごとでは済まされないのがエネルギー問題の真の姿でもあります。ただ、クリーンエネルギー普及が原子力の免罪符に使われたりすることが無いように、原発の問題は問題として、真実の公開と正しい判断をするべきでしょう。

2021年4月28日水曜日

福井県40年超の原発再稼働へ

 心配していたことが警鐘を鳴らす前に次々に現実になってしまいそうです。

40年超の原発再稼働へ 全国初、福井県知事が同意(NIKKEI)

原則40年とする運転期間を超える、高浜、美浜の原発3基を再稼働することで、地元自治体の同意のもと、福井県知事が関西電力に対して同意したということです。これに対し、日本国政府からは1発電所あたり25億円の交付金(すなわち福井県には50億円)があるそうです。経済産業大臣からは「カーボンニュートラルの実現に向けた重要な一歩」と早速賞賛の声が発せられました。2030年までに2013年比でGHG46%削減宣言には、当然原発の再稼働が折り込み済みです。総発電量に占める原発の割合を現在の約6%から20%に上げる必要があり、それには30基の原発(全36基のうち)を再稼働する必要があり、原発の新規計画が現実的ではない今、その多くは40年を超えるベテランの原発になってしまいます。ですから、これはカーボンニュートラル達成への序章に過ぎないということでしょうか。

大量の放射線を浴びることになる原子炉は、古くなると金属の性質を失い、緊急時に水を入れた場合などに亀裂が起こる危険がある、そのため耐用年数を決めている、とはある専門家の話でしたが、「検査によって異常が無いことが確かめられた」というのがもちろん本件の再稼働について言われていることです。絶対に安全などという技術は無くて、例えばEVのバッテリーは発火する危険があります。しかし万が一の事が起こった時のリスクの大きさがEVとは比べ物になりません。自動車事故で亡くなる人も可哀そうですが、原発事故の恐ろしさを私たちは良く知っているはずです。安全ならなぜ東京湾に原発を作らないのか?もちろんそんなナイーブな問いに対しては、緊急時に数百万人の人を避難させる術が無い、へき地ならば全員避難が可能であり、人命を救うことが地域の放射能汚染よりも重大だから、リスクを最低限にするためにはへき地しかない、というのが原子力安全委員会の説明でしょう。しかし、本当に命が救われさえすれば、生まれ故郷が地図で黒く塗りつぶされても仕方ないのでしょうか?その程度のリスクを負わなければ、この暮らしを維持する方法が無いのだから、仕方ないのでしょうか?

少なくとも、我々は未来のエネルギーをどうするのか、選択をしなくてはなりません。私個人は地震国日本が核に頼ることには明確に反対ですが、フランスの様に原子力によってGHGを大きく低減している国もあります。正しい選択を考えるには、正しく情報が伝えられていることが何より大切です。ここでもまた、国民を赤子扱いする政府への不満と同時に、自分自身の将来が大きく影響されるにも関わらず、無関心な人が多いことに大きな不満と不安を感じます。今回の件で不信を大きくするのは、つい先日贈収賄事件が問題となった、高浜町と関電が関係しているからでもあります。

会社役員の贈収賄罪とはどんな犯罪なのかー汚れた原発マネー(YAHOO)

もうこの件をすっかり忘れてしまった人も多いのではないでしょうか?最終的にどうなったのか、誰が罰せられたのか、しなかったのか、については私も覚えていません。高浜町の助役から関電の役員に1億8千万円の金品が贈与され、その見返りに地元の土建業者が関電の関連工事を受注していた、という事件です。今回は国から50億、しかも「カーボンニュートラルのためによくぞやってくれた」とお褒めの言葉付き。その金が地域の経済を潤し、さらには地域の未来の世代にも豊かさをもたらすのなら、地元の方も再稼働には複雑な思いなのかも知れません。しかし、問題は原発所在地に限らず、近隣の兵庫県や京都府にも及びます。国民不在の状態で、この様に重大な事が決められていくことに大変な憤りを感じます。

今後旧式の原発再稼働をめぐる議論や場合によっては訴訟が頻発すると予測されます。事業者や国には都合の良い方だけではない真実の説明を求めます。国民には自ら真実を学ぶ責任を持ち、判断する主権を行使して欲しいと思います。


2021年4月27日火曜日

Einstein

 

"The world will not be destroyed by those who do evil, but by those who watch them without doing anything." Albert Einstein

「悪い行いをする人たちが世界を滅ぼすのではない、それを見ながら何もしない人たちが滅ぼすのだ」 アルバート・アインシュタイン

アインシュタインさんのこの言葉が、再び大変な重みを持って聞こえます。核兵器廃絶を訴えた晩年に発せられた言葉だと思いますが、気候変動を抑制することは、核兵器を無くすこと以上に難しく思えます。「兵器=人殺し=悪」の図式は理解しやすいですが、世の大半の人は全く悪意無くGHGを排出し続けているからです。自分を責める必要も無ければ、他者を責めても仕方ありません。悪意の無い悪行に人が気づき、自らを変える力を生み出さなくてはならないのです。今アインシュタインさんが生きていたら、一体どう私たちに語り掛けてくれるでしょうか?

初めまして、ここから始めます

 この世に生を受けてから55年が経ち、世界人口が約35億から75億人に増え、大学の教員となって四半世紀以上が経ちました。今は山形県米沢市に在住し、山形大学工学部教授として仕事をしています。社会的に責任のある職業であることは認識しています。しかし様々な方面に忖度して、言うべきを言い、伝えるべきを伝えなければ、我々そして未来の世代を誤った道へと導きかねません。一方でいずれ大学を退職すれば、その発言力は弱まり、声は全く届かなくなることでしょう。

これまで、自分なりに一生懸命学び、経験し、考えてきました。幸いにして、豊かな日本に生まれ育ち、少なくとも日本では平和で安全な暮らしをしてきました。しかし今、世界は大きな不安に直面しています。破滅への道か、持続可能な明るい未来への道か、その分岐点に立っている様に思います。自分をその外に置き、傍観者でいることは出来ません。運命を共にする一人であり、家族や友人だけでなく、全ての同胞の幸せが続く様に、出来ることをしなくてはならないという焦燥感にかられています。このブログを見たり、見返したりする人はほとんど居ないかも知れません。それでも、諦めるわけにはいきません。

2019年の暮れに始まった新型コロナウイルスの感染拡大のために、世界の人々はこれまでに味わったことのない困難に直面しています。2021年の4月となった今も、その猛威は収まるどころか、さらに勢いを増しています。一刻も早い収束を願いますが、気候変動が進む中、同じことがすぐに繰り返されるかも知れません。その気候変動によっては超大型台風や豪雨、異常な高温などが頻発し、命を脅かし、住居や生活を奪っています。異常気象が引き起こす食料生産の危機や資源・エネルギーの枯渇は世界の様々な地域での紛争の引き金となっています。世界が不幸な時代へと突き進んでいる様に思えてなりません。

急速な人口の増加と新興国を中心とした消費の拡大のために、我々人類の活動は地球の許容範囲を超えて大きくなり、その気候を変えてしまう影響を与える程になってしまいました。既に地球の平均気温は産業革命前に比して+1℃を超え、2030年までに+1.5℃以内に収めないと、人間には止められない気候変動の負の連鎖が始まると危惧されています。仮にそれを達成しても、異常気象の頻発は止まらないので、2050年頃までにカーボンニュートラル(温室効果ガスの排出量実質ゼロ)を達成し、2100年頃までに自然な地球環境を取り戻すことが求められます。

この状況を止め、破滅への道を回避しなくてはならないことに、ようやく国際社会が立ち上がり始めました。「○○年までに●●年比で温室効果ガス(Green House Gases = GHGs)を××%削減」という目標を各国が争う様にして宣言していることは、最近ニュースで頻繁に取り上げられています。日本は2050年までにカーボンニュートラル達成を宣言したことに続き、先日の環境サミットを機に2030年までに46%削減の目標を掲げました。目標を示すことは良いことですが、政府が宣言することでそれが達成できるなら、昨年の熊本の集中豪雨、2019年の台風19号、2014年広島の集中豪雨と大規模土砂災害で、そして毎年繰り返される熱中症で救急搬送される人の多くを亡くすまで、なぜそう宣言しなかったのか?また、明らかに国民生活に大きな影響を及ぼすにも関わらず、ちゃんとした説明が国民に無いまま、さらに恐らくは関係省庁との調整も十分にしないまま、政府が宣言を急いだことに大きな不安を感じます。コロナの対応も、トリチウム汚染水の海洋投棄も同じです。国民を赤子扱いする政府も問題ならば、権利と責任を放棄して親方に甘える不勉強な国民も国民です。この状況を大きく変えることなくして、GHG削減目標の達成は無いと思えます。少なくとも、大きな痛みを伴うことが懸念されます。

この様な思いが、このブログを通じて情報発信し、国民、とりわけ未来を生きる若い世代の人たちに、2050年カーボンニュートラルについて考え、行動をするきっかけとなることを願うに至った背景です。常に関係する情報に注意していますが、マスコミではありませんし、自分の専門以外では知らないことも多いですから、誤った理解である場合もあるかも知れません。その時はご容赦頂くと共に、正確な情報や別の側面についての知見など共有頂けると有難いです。最大限の誠意と正義感を持って、この世界にはびこる不正義と戦い、決して我々が誤った道に進むことの無いよう努力したいと思います。

125

 「125」この数字が意味するのは何でしょう?はい、私はオートバイが大好きで、特に手に余らず、使い切れるパワーで軽量な125ccクラスのバイクが好きです。高速道路は乗れないけど、バイクで高速道路走っても、ちっとも面白くないし、二人乗りだって出来るし、燃費良くて維持費安いし。今ウチ...