このブログについて

国立大学法人山形大学工学部教授の吉田司のブログです。2050年までのカーボンニュートラル社会実現に向けて、色々な情報や個人的思いを発信します。発言に責任を持つためにも、立場と名前は公開しますが、山形大学の意見を代弁するものではありません。一市民、一日本国民、一地球人として自由な発言をするためにも、所在は完全に学外です。山形大学はこのブログの内容について一切その責任を負いません。

2022年3月28日月曜日

ユーチューバーとコラボ

 山形出身ユーチューバーの「しおたん」さんと「アフロりゅうじ」さんとのコラボによる動画がそれぞれのチャンネルで公開されました。

【地球がやばい!!】しおたん&アフロりゅうじが世界を救う!!カーボンニュートラルって一体何?【山形県環境啓発動画】(前編) - YouTube

【地球を救え!】しおたん&アフロりゅうじが世界を救う!!環境を守るための具体的なアクション【山形県環境啓発動画】(後編) - YouTube

こんな世界にも足を踏み入れることになるとは思ってもみなかったですけど、色々経験させて頂いて有難い限りです

正しいとか正しくないとか、優れているとか劣っているとか、そんなことじゃないんですよね。しおたんさんの動画が2日間で3500回以上視聴されていることに驚きました。これを社会へのインフルエンサーと言わずして何をそう呼ぶのでしょう。先日書きましたけど、日本学術会議のウェビナーの視聴が200人ですよ!

しおたんさん、アフロさん、ありがとうございました。今度ともどうぞよろしくお願いいたします!

2022年3月24日木曜日

ウクライナ5

 昨日、日本の国会議員に向けて、ウクライナのゼレンスキー大統領がオンラインで演説を行いました。演説の全文日本語訳は以下で見ることが出来ます(私はライブで見ていました)。

【全文】ウクライナ ゼレンスキー大統領 国会演説 | NHK | ウクライナ情勢

「日本とウクライナは核の恐ろしさを経験した国・・・」とか言って、広島長崎のこととか、福島のこととか持ち出すんじゃないかと少し心配でしたが、もう少し賢かったです(アメリカ議会向けには真珠湾の話をしましたからね、アメリカでは第二次大戦を終わらせた出来事として、原爆投下は肯定されています)。ロシア軍がチェルノブイリ原発を占領し、他の原子力発電所にも攻撃をしていることは糾弾していますけど。そして、「武器供与をしろ」などという無茶なことも言いませんでした。一安心。経済制裁への感謝と、その継続強化への要望は出されました。日本の政府は、恐らくそれに応えていくだろうと思います。経済制裁が戦争を終わらせることになるのであれば、私も賛同するところですが、そうはならないと思うのと、本当に糾弾し、罰したい人には害が及ばず、全く別のところに害が及ぶことになるので、実は経済制裁にも反対です。とは言え、終わりの見えない虐殺に、本当に恐怖と悲しみを覚えます。私の友人が決してその犠牲とならないことを祈るばかりです。その後どうなったのか、報じられていないので心配なのですが、激戦地帯の南部のマリウポリでは、老人や女子供1000人以上が避難していた劇場が爆撃を受けて、数百人が瓦礫の下にいると報じられましたが、恐らく救出されていません。想像を絶する恐怖と苦痛であったに違いありません。南無阿弥陀仏。

この戦争を何としても、可能な限り早く終わらせなくてはならないのですけど、それがまだ全く見通せません。先日も書きましたけど、己の正義感に打ち震えながら、悪の帝王プーチンを懲らしめようと、経済制裁や武器供与に勤しむ米国やEUは、より多くのウクライナ人、そして平凡なロシア人を苦しめていることに気付かなくてはなりません。オリガルヒと言われる、プーチンの取り巻きの大富豪も制裁の対象になっていますが、彼らが本当に困ると思いますか?いや、困っているし、腹を立てているでしょうけど、食べ物が無くなったり、命の危険を感じたりは絶対にしていません。巨万の富を抱えている人たちですから、死ぬのは一番最後です。戦争によって、食料も水も電気も断たれたウクライナの人に比べたらはるかにマシ、身から出た錆と言えば、そう扱えなくもないかも知れませんけど、一番苦しむロシア人は、そんな富豪や主導者たちとは全く無縁の罪のない普通のロシア人です。食料やエネルギーの価格が上がり、困窮するのはそういう人たちです。オリガルヒが何故お金持ちなのかと言えば、その下に働く数百万人のそういう普通の人がいるからで、そこから富を吸い上げる仕組みがあるからです。不公正で間違っているけども、ロシアではそれが機能している社会システムです。で、そのビジネス等が機能不全に陥れば、仕事と収入が無くなり、物価の極端な上昇に直面し、どん底に突き落とされることになるのです。総元締めのオリガルヒや、政治主導者は相変わらずご馳走食べてますよ。

さらに、実はもっとひどいことが起こります。こんな、列強たちの覇権争いとは全く無関係の、世界の発展から取り残された極貧国の人たちです。世界には10億人近くの飢えた人たちがいるのです。日々の収入が1ドル以下で、その日食べる物を手に入れるのがやっと、という人たちです。穀物価格の上昇は、そういう人たちには死刑宣告に近いです。そういう弱者を苦しめることが経済制裁の目的ではないハズです。でも、結果的にそうなります。食料とか、エネルギーとかは、万人がアクセスできるように保たれるべきグローバルコモンズであり、アンタッチャブルです。テレビの報道で、急上昇したガソリン価格に対して「いやあ、こんなのは、今苦境にあるウクライナの人々のことを思ったら、苦労でも何でもないです。私たちは正義のために団結しなくてはなりません!」みたいなことを答えていた英国紳士のインタビューがありました。そうでしょうね、多少価格が上がっても、その英国紳士は食料もガソリンも電気も買うことが出来ます。我々日本人もそうです。ところが、世界には今日の食べ物をやっと手に入れる人がいるわけで、そういう人がこの列強の覇権争いのとばっちりを受けるわけです。もはや、世界はそれぐらいつながっているわけで、だからロシアの無い世界というのはあり得ないし、ロシアを抹殺することで平和な世界が実現されるわけではないということです(ロシアの人口は1億5千万に近いですよ)。政治家も、報道でコメントする専門家と称する人たちも、想像力が欠けています。今は、ロシアが行った蛮行を糾弾し、罰し、制裁を与えることに躍起になっていますが、その先にある世界を想像して、行動しなくてはならないと思います。ある評論家が書いていました。「ロシアのGDPはアメリカの6%に過ぎない、でも中国は巨大だから同じ様に中国を世界経済から追い出す様なことは出来ない」一部は正しいですけど、総体としては何バカなこと言ってるの?です(本論は、だから日本は原発を新造すべき、だったし、アホ)。中国もロシアも、欠かすことの出来ない世界の一部です。対立し、相手を罰し、勝者ヅラしても、それはブーメランの様に自分に帰ってきて、自らを破滅へと導くことになります。共存共生共栄、インターナショナルであること、大切です。

最近ロシアの戦争映画を2本見ました。AK-47とT-34。両方記号で、一体何?と思われるかも知れません。AK-47というのは有名なカラシニコフ銃のことで、これを開発する天才エンジニアのミハイル・カラシニコフのドラマです。一方のT-34は第二次大戦時のソビエトの主力戦車で、こっちは完全なつくり話です。映画の出来としては後者の方が良く出来ていました。前者は正直言って駄作です。しかしまあ、これらを見たのは、映画そのものへの興味というよりは、ロシアがこれらの出来事をどの様に描くのかが知りたかったからです。で、多少のトーンの違いはあっても、ハリウッドの映画で描かれる米軍兵士のヒロイズムと大差ないです。要するに、映画の中でははっきりとソビエトが、ロシアが正義なんです。そして、国家のために命を賭して偉業を成し遂げる主人公たちが英雄として描かれています。だからあ、違うのは視点だけなんですよ。自分たちが正義であると信じて疑わず、何度も犯した失敗と残虐行為を全く反省しないアメリカが、自ら招き入れた対立であるということであって、どれだけ痛めつけたとしても、決して降参したりしないです。あっち側は、あっち側の正義を守るために。カザフスタン出身のカラシニコフさんが、モスクワで「お前みたいな田舎者が天才エンジニアだって、ふざけるなよ!」みたいに蔑んだ言葉を浴びせられるシーンも印象に残りましたね。要するに、ソビエトにも二級国民がはっきりあったということです。カザフスタンにせよ、ウクライナにせよ。だから、ウクライナ人が決してロシアの支配下にありたくはないと思うのは当然のことです。

思うこと、書きたいことはまだまだありますけど、きりがありません。ついさっき、NHKニュースで、長年ロシア駐在だった解説員の石川さんが言っていたことが大変印象に残りました。「プーチンから逃げ道を奪ってはいけない」と(分かってるなあ、石川さん!)。プーチンはこの戦争を敗戦で終わらせることは出来ないんです。敗戦はプーチンの終わりを意味し、プーチンの終わりはロシア帝国の終わりを意味します(ロシアを私物化し、自らの存在無くしてロシアも存在しないと思っていますからね)。外務省のスポークスマンも語っていましたが、ロシアが核兵器を使う可能性、どんな状況であれば使用するのかを米国のメディアから問われた時に「国家が存亡の危機にあると判断したら、核の使用はあり得る」と答えていました。プーチンが自らの終わりを感じたら、ためらうことなくボタンを押します。だから、プーチンには(暗殺されない限り)名誉ある撤退というか、目的を完遂したから軍を引き上げる、という口実を与えないとなりません。そのキーポイントがどこになるかを考えると、言いたくないですけど、先述のマリウポリがロシアに占領されることです。ドンバス地域とクリミア半島の実効支配を成し遂げ、勝手に独立国として承認すれば、国内向けには「ウクライナで虐殺されそうになっていた同胞たちを救い出した!Mission completed!」を宣言することが出来、軍隊を引き揚げることが出来ます。プーチンだって、本当はこの戦争を早く終わらせたいはずです。でも、マリウポリに残る罪の無い市民を一人残らず救い出して欲しい。そして、今はそれ以外にロシアによる蛮行を止める手段が見つからないので、マリウポリが陥落してもキエフを守ることの方が大切だと、恐ろしいけれども、言わざるを得ないです。ドンバスとクリミアの支配は、ウクライナを本当に分断させることになります。西ウクライナと東ウクライナ、今となってはその新しい構図の中で中立的なウクライナを再生していく以外に、第三次世界大戦(=世界の終わり)を回避する方法が考えられません。ウクライナの友達は、きっと合意しないだろうなあ。「お前に何が分かる!」と叱られるだろうと思います。

そして、戦争が終結したとして、その後のロシアがどうなるかと言えば、間違いなく三流国家に転落することになります。経済制裁どうの、以上に、長年かけて獲得してきた信頼をこの戦争で完全に失いました。ロシア経済はソビエト崩壊後の最悪の状況に戻り、多くの人が苦しむことになるでしょう。でも、その時アメリカや西側諸国、そして日本が勝ち誇って「ザマアミロ!」とすれば、第二のプーチン、あるいはヒトラー級のヤツが現れて、テロでも何でもあらゆる手段を使って復讐してくるに違いありません。その時はロシアに救いの手を差し伸べるんです。見捨ててはダメです。世界は、このレッスンからしっかりと学ばなくちゃならないです。でも、第二次大戦の恐怖と悲劇、痛みも既に忘れられているのですから、今回もダメでしょうか?しかし、もう次回は無い状況ですよ。失敗は許されない。

なんと嘆かわしい!なんと恐ろしい!今世界が重大な分岐点にあることを、特に若い世代の人たちは認識し、自分の目で見て、自分の頭で考えて、持続性のある幸せとは何か、それに対してチャレンジする大切さに気付いて欲しいと思います。もう一つ追加。今日の午後、北朝鮮が新型のICBMと思われる大型ミサイルを発射しましたね。青森沖の日本の排他的経済水域に落下しました。青森市民へのインタビューで「なんでこんなことをするのか分からない、やめて欲しいです」と答えていた方がありました。何でこんなことをするのか分からない?本当に?それ、相当な平和ボケです。日本は十分にその理由を作っていますよ。北朝鮮がミサイルのテストを一生懸命やっているのは、米国に対するメッセージですけど(ロシアのこともあって、いいタイミング)、その子分である日本を危険に曝すことには全くためらいはないでしょう。本当に日本の陸上に落ちたらさすがに大変なことになるとは思っているでしょうけど、ナンなら落ちたって構わない、ぐらいに日本を敵視しています。北朝鮮がそうするのに十分な口実を与えているのです、米国だけでなくて、日本も。だから、平和を獲得するために必要なのは、相手を上回る強力な軍備ではないんです。税金使ってアマゾンで防衛ミサイル買う(売ってない?)のが政治家の仕事じゃないよ!日本の政治家の皆さんは、アメリカ抜きで、必要な外交をやってください。大変な相手こそ、話し合いをしなくてはならない相手です。付き合いやすい人とだけ付き合う様な、楽をしてはいけません!

2022年3月19日土曜日

ウクライナ4

 ウクライナ戦争終結への進展が全く見られません。こうしているうちにも、人々は恐怖と苦痛に耐え、尊い命が失われているのです。列強は互いの正義を主張し合っているだけで、ウクライナの罪のない人たちを救うことに無力であるということを認めなくてはなりません。

3月16日に、ウクライナのゼレンスキー大統領は、アメリカ連邦議会に向けてオンラインで演説を行いました(私はライブで見ていました)。その全文日本語訳は以下にあります。

【演説全文】ウクライナ ゼレンスキー大統領 米議会で演説 | ウクライナ情勢 | NHKニュース

ウクライナへの強力な軍事支援を求めています。それでは戦争は終わらず、長期化して、より国土が荒廃し、より多くの人命が失われるだけです。経済制裁の強化も求めていますが、鉄のカーテンを下ろして取引も対話もしない、世界にロシアは要らないとでも言うのでしょうか?その先にあるのは何ですか?この世界からロシアを葬り去れば世界の平和と秩序は保たれるのですか?プーチン大統領が失脚し、あるいは暗殺されれば問題は解決しますか?プーチン大統領が狂人であり、悪魔の様な人だから今回の戦争になったのでしょうか?ロシアを擁護しているのではありません。ウクライナの主権を無視して、軍事侵攻して一般市民を殺害していることは、どんな基準を持っても許されることではありません。ただ、「ロシアにはこの代償の大きさを思い知らせる」という正義感に燃える(日本を含めた)列強が多くのウクライナ人を死に追いやっていることを認識しなくてはなりませんし、ロシアの孤立を深め、対話も拒絶し、ロシア人を死に追いやる未来を平和というのではありません。極端な善悪論に走る人の多くは、インターナショナルである、とはどういうことなのかを理解していない、経験が足らない人なのだろうと思います。あなたの言う「敵」はあなたとほとんど同じことを考えている「人」ですよ。違いを見出し、違いを誇張することで喜ぶ人たちが多いですけど、同じであることを確認し、共感し尊重し合える関係を築くことがインターナショナルである、ということです。

さて、先のゼレンスキー大統領の演説に戻ります。NHKがこの演説を第二次世界大戦中の英国首相チャーチルのアメリカ議会での演説になぞらえていたことに衝撃を覚えました。日本人はそこまでバカになってしまったんでしょうか?「チャーチルの演説によって、悪の帝国を滅ぼすために世界が団結し、平和が守られた歴史的出来事」だと。その悪の帝国とはどの国?ナチスドイツと我が国、日本のことです。演説に登場する「世界」とは何?英国とアメリカのことでしょう。さらに言えば、当時のソビエトと中国も共同してドイツと日本をせん滅するのです。ゼレンスキー大統領の演説をよく見て下さい、真珠湾攻撃のことを話していますよ(アメリカ人の正義感を揺さぶるから)。

以前も書いたかと思いますが、岸田首相が繰り返し使う「国際社会と連携し・・・」の国際社会とは何か?といつも思います。それは今日の日本においてはアメリカと同義ですね。中国も、ロシアも、インドも入っていない(インドはちょっと微妙だけど)。これらの国の人口を足しただけでも世界人口の半分近くになりますよ。それは国際社会ではないとでも言うのですか?歴史は、自らに都合の良いように記録され、記憶されるものです。歴史の分岐点となったチャーチルの演説は、明らかにアメリカ、イギリスに都合良く説明されています。「世界が団結し、悪の帝国日本に正義の鉄拳を浴びせ、世界の平和を取り戻した!」なんです。私は、決してかつての日本の帝国主義を賛美しているのではありませんし、正当化しているのではありません。あれは大きな過ちであり、恥ずべき野蛮な行為です。中国・韓国・インドシナを侵略し、その民を二級国民として大日本帝国に従わせることが大東亜共栄圏構想の目標となってしまいました(最初からではないけど)。それは、今ロシアがウクライナに対して行っていることとどう違うのでしょう?民族の一体性とか、ウクライナ人を虐殺するテロから民衆を開放するとか、それをほぼ全部当時の日本の嘘に置き換えられますよね。そして、それを止めた戦争の勝者側の演説に、今回のゼレンスキー大統領の演説を重ね合わせてNHKは報じたわけです。だって、今回は日本はアメリカの子分として、正義の側ですからね。そんな日本の過去を全く知ることもなく、国際社会を勝手に定義し、正義感に燃えている人は少なくないんじゃないかと思います。だから、こんなことでは同じことが繰り返されてしまいます。世界大戦になり、あっという間に世界はその終わりを迎えます。共存、共生するというのは簡単なことじゃありません。利害が対立したとしても、相手が自分を騙そうとしているのではないかと疑っても、それでも相手を尊重して、侵さず、共存共栄する寛容さと力量を持つことが、インターナショナルである、ということです。

しつこく言いますが、私は日本の過去を肯定しているのではありませんし、ロシアを支持しているのでもありません。でもアメリカも支持していないですし、EUが武器供与していることも支持できないです。人道支援、難民受け入れに大きな自己犠牲を払うポーランドを始めとする東ヨーロッパの隣国には大いなる敬意を表します。中国やインドも非難しません。むしろアメリカが唯一の正義であるかのような誤解に世界の人々が巻き込まれないように、カウンターバランスとして頑張って主張して欲しい(戦争協力は絶対しないで欲しい)。但し、その主張が自国の利益のためだけであれば、誰の心も動かしませんよ。恒久的な平和を追求するための主張です。世界の全ての人がミッキーマウスの方がチェブラーシカより可愛いと思うわけじゃない、と言っていいんです。そして何よりも、ウクライナの人々に心で寄り添い、一刻も早く苦しみから解放されることを願っています。

週明けの3月23日18時から、ゼレンスキー大統領は日本の国会でオンライン演説する予定だそうです。「日本も武器を出して」とか言うの?もちろん、ダメですよ。経済支援、人道支援は可能な限りしましょう。ただし、そのお金が武器に使われることのないように。そして、中国、ロシアと対話しましょう。アメリカに出来なくて、日本に出来ることはあるはずです。

2022年3月18日金曜日

原発とCCSは封印すべき

 先日、3月13日にオンライン開催された、日本学術会議のウェビナーに参加しました。

学術フォーラム「カーボンニュートラル実現に向けた学術の挑戦 システムの転換を目指して」|日本学術会議 (scj.go.jp)

このページから各講演者の先生の資料もダウンロードできますので(今だけ?)、是非ご覧ください。開会の挨拶があの梶田先生、最初の講演が高村ゆかり先生、何しろ日本の学術の頂点である学術会議がカーボンニュートラルをテーマにこういうウェビナーを開催して下さるのです。有難い。

各分野の著名な先生方が講師ですから、もちろんもっともな内容で(私が言うのもナンですが)正しく参考にはなるのですけど、このウェビナーで色々考えてしまいました。まず、参加者が非常に少ないこと。YouTube配信されていましたけど、参加していたのは200名程度でした。日本の最高峰、学術会議でさえ、です。田舎にいる私メがその参加者の1人であったと。何が心配になるかと言えば、実社会に対する波及です。これ程の重大問題に対して、これだけの努力を払っても、参加するのが全国でたった200名。気候変動の現実や、社会変容に求められる課題など、ちゃんとお話頂いているのですけど、その声は届かない。一方でユーチューバーが鼻からスパゲティでも食べて見せたら、10万回再生される・・・。

もう一つ、これは内容に踏み込んだことですけど、京都大学の藤森先生のお話、スライドの4枚目に出てくる、「多様な選択肢がある」という話。要は、2050年カーボンニュートラルとか、2100年で+2℃以内とかを、早期なGHG削減によって進める(年を追うごとに絶対的削減量は減っていくことになる)か、急に減らすことは無理なので、ある程度今までの延長で考える方が現実的で、目標達成の半ばまでには大気からのGHG回収と埋蔵(CCSのこと)を実現してネガティブカーボンを大量に生み出し、それ以前に出たGHGを相殺すること、そしてその中間的シナリオ、というわけです。これは、もちろんあり得るかあり得ないかと言ったらあり得るのだとは思いますが、後者の考え方は明らかに問題の先送りです。今本気で取り組まなければ、脱炭素が如何に困難であるかということ、そしてそれに取組まないと、気候が大変になることをどうやって人類が直視出来るのでしょうか?今までの生活様式とか、人の幸せな暮らし、発展と成長に対する考え方を改めることなく、テクニカルな手段だけで脱炭素を果たせるとは思えません。理屈ではなくて、実際に人が行動に移れるシナリオが必要です。

もう一つ、これまた京都大学の、経済学の諸富先生のお話には、GDPとGHG排出のデカップリングの話が出てきました。スウェーデンは大きく経済成長しながら、大きくGHGを削減することにも成功している、というわけです。ところが、グローバルにはGDPとGHGはほぼ完全にカップリングしています。日本もそう。そもそも、スウェーデンというのは人口が1000万人にも満たない国です。国土は大きくて、工業化が進んだ国ではありますが、GHG低減の理由の一つは非製造業系の産業が伸びたこと(情報関係とかです)や、エネルギー依存の高い製造業が海外にシフトしたことなどによるものであって、同じ様なことが世界全体で起こり得るわけではありません。作り過ぎの感はあるものの、やはりリアルグッズ、リアルバリューを生み出す製造業というのは大切で、そこには相応のエネルギー消費、GHG排出が伴います。実際、IEAのデータを元に調べたら、グローバルでの年間GHG排出量は50年で2倍以上に増えていて、GDPあたりのGHG排出は45%削減されたに過ぎません。エネルギー効率の改善と物質的ではない価値の生産へのシフト、再エネの拡大によって減らせるGHGはその程度であり、経済規模、グローバルなGDP拡大がそれを全て打ち消し、実態としてGHGの排出量は拡大し続けているということです。

前記のCO2回収、CCSは実証段階まで進んでいるとはいえ、その採算性も含めた拡大については、少なくとも現時点ではあてにすべきではないと思います。そのうち何とかなる、と考えるのも危険。そして、GHG排出を伴わない発電方式としての原発は、エネルギー基本計画において再稼働が前提とされています。世論は原発への依存をほとんど支持していなくて、政府、行政、学者、民間全てが表向きは原発は廃止すべき、と言いますが、心の奥底では「いざとなったら・・・」という逃げ道として、原発を維持、その新造も視野に入れて、となっていると思います。逆にその姿勢、態度が本気で再エネへのチェンジに取組もうとはしないことにつながっています。CCSや原発は、心理的逃げ道を与えています。CCSによって既に大量に大気中に放出されてしまったCO2を全部回収できるなどと思わない方が良いですし、まだウランはあるから、と奥の手、切り札として原発を頼ることは再エネへのチェンジを妨げているということを認めるべきです。自らバックドアを閉めて、前に進む。議論している場合ではなくて、行動ではないでしょうか。そもそもそんな議論を、皆さんほとんど聞いていませんよ。

2022年3月17日木曜日

アマモ

 先日こんなニュースがありました。

海草のCO2吸収量 約1万1000世帯分か 全国の主要港などで推計 | 環境 | NHKニュース

浅い海に繁殖するアマモと呼ばれる水草(海藻ではなくて海草)を日本の港湾に植えることで、二酸化炭素を吸収する計画で、国土交通省が取組み、その削減分を国内企業に対して二酸化炭素排出権として売るというのです。「これって本当に大丈夫?」と思ったので、YUCaNの仲間と議論しました。何が心配かと言うと、植物と言うのは確かに成長期においては二酸化炭素を吸収しますけど、死んで分解されるとまた二酸化炭素を出しますから、生まれて、それが完全に消滅するライフサイクルにおいてはカーボンニュートラルであって、ネガティブカーボンではないだろう、と思ったからです。例えば最初は吸収してくれるけど、死んで分解されたら差し引きゼロではないかと。

それで、農学部の程為国先生からご説明頂きました。今までアマモが生えていなかったところにアマモを繁殖させれば、それは砂漠を草原に変える様なものなので、やはりネガティブカーボンを生み出すと考えて良いということです。ナルホド。それから、死んだアマモは全部分解されるわけでなくて、有機物として海底に堆積するので、ある程度はネガティブカーボンを生み出し続けるのです。例えば釧路湿原の様な場所は、水草が長年堆積して、泥炭(ピート)の層を形成しています。それはいずれ石炭になるのでしょう(人間は使えないぐらい時間かかると思います)。しかし、やはり時間が経過すると、吸収量と排出量がバランスし始めて、ほぼニュートラル状態になるみたいです。例えば白神山地の様な古い森林の場合、成長分と同じくらい枯死と分解による排出があるので、吸収能力は期待できないということです。それで、実際どれぐらいの二酸化炭素吸収能力があるのかを正確に見積ることは非常に難しい、とのことです。

全く理にかなった説明で、納得なんですけど、そうするとやはり心配ではあります。それは、人の心理から来るものです。このアマモの繁殖に取組む方からすれば、その二酸化炭素削減効果を声高に主張したくなるでしょう(過大評価につながる)。一方、それを排出権としてわざわざ購入したサイドからすれば、自分たちはお金を使って二酸化炭素を削減したのだ、と主張し続けたいでしょう。しかし、恐らくは毎年の二酸化炭素吸収能力の変化(低下し続けると思われる)を見積もることはしないでしょう。このニュースには全国でやると年間4万5千トンとありますが、それに単純に年数をかけ算して、「これだけ削減した!」となるに決まっています。

なので、やっぱりバイオマスによる二酸化炭素削減効果については、正確な見積もりを可能とする科学的根拠が不十分であると思います。例えばCCSで地中に埋める場合はこれだけ埋めたと言えるでしょうけど、戻ってくる分もあるバイオマスの場合はそんなに簡単ではありません。もちろん、だからやっても仕方ないと言っているのではありません。注意が必要だというだけです。

2022年3月7日月曜日

ウクライナ3

 キエフが間もなく陥落するかも知れません。戦闘は一向に収まる気配はありません。恐らくプーチン大統領が公言している通り、ロシアは目的を完遂するまでは軍事行動を止めないと思います。一方のウクライナは、決してその将来をロシアに委ねることには合意しないでしょう。武器を供与すれば、より多くのウクライナ人が死に、戦闘は長引き、ゲリラ戦になり、国土は完全に荒廃することになります。なんという悲劇でしょうか。アメリカもEUも、そして日本も、全く仲裁に入ろうとはしません。難民を積極的に受け入れる隣国には敬意を表します。

私の友人、共同研究者たちは、それぞれバラバラにキエフを離れ、避難しているようです。生き延びて欲しい。ロシアに正義はないけれど、だからといって、ウクライナの国家のために死ぬ必要もありません。武器など手にせず、逃げ延びて欲しい。過日、私のそんな思いが、朝日新聞とYTS山形テレビからレポートされました。

ウクライナの研究者から届いた感謝のメール 教授「心で寄り添う」 [ウクライナ情勢]:朝日新聞デジタル (asahi.com)

【山形】ウクライナと共同研究の山大教授 悲痛な思い(YTS山形テレビ) - Yahoo!ニュース

これ、もちろん私がウクライナとの共同研究をしていることを知って、先方から取材に来たわけではありません。私から、取材をお願いしました。何も出来ないことに苛立ち、せめて地域の人たちに、山形大学にもウクライナとの絆があるのだということを知ってもらうだけでも、少しでも困難な状況に追い込まれたウクライナの一般の人々に心を寄せてもらえるのではないかと思ったからです。誰かが言っていました。「この戦争は、決して良い終わり方はしないが、どういう悪い終わり方になるのかはまだ見えない」その通りだと思います。勝者も敗者もありません。残るのは悲しみと憎しみだけ。そしてとても困難な再建への道のりです。だから、決してウクライナの人々のことを忘れては欲しくないんです。そんな思いがこみ上げて来た時、不覚にも泣いてしまいました。それをYTSさんに出されちゃったので、ちょっと恥ずかしい。泣いてるオッサンなんて、可愛くないですからねえ。

初めてウクライナに行った時から、世界の融和はこの地から始まると感じました。東西ヨーロッパの中間に位置し、常に紛争のフロントにあった東ヨーロッパの国々。中でもウクライナは国の中で東西が意識的に分断されています。だから、ウクライナが一つであろうとするのなら、世界も一つになれる、とナイーブに考えていました。しかし、現実はもっと酷かった。

最近、ウクライナにまつわる2つの映画を見ました。一つは、「赤い闇 スターリンの冷たい大地で」というポーランド/ウクライナ/イギリスの合作映画で、監督はポーランド人女性のアグニェシュカ・ホランドさん。題材は前回話題にした人為的な飢餓によるウクライナ人の大量虐殺、ホロドモールです。それを世界に知らしめたのが、ウェールズ人のガレス・ジョーンズという記者志望の若者だったんですね。単身飢餓に喘ぐウクライナに乗り込み、そこで見たことを数々の妨害を乗り越えて世界に報じます。これを見たら、ウクライナ人がどれほどつらい思いをしたのかが良く分かります。監督のインタビューが印象的でした。「ウクライナ人は、負の遺産、悲しい歴史を共有することで民族の統一をはかり、建国された国」1991年の建国から、たった30年あまりで、再び列強にもてあそばれる悲劇に襲われています。もう一つは、テレビシリーズで放映されたChernobyl(チェルノブイリ)という5時間を超えるドラマです。さらに本当の真実が隠されているのかも知れませんが、いままでの認識を全く新たにしました。原子力、核の恐ろしさを思い知ると同時に、国家というシステムの怖さも痛感します。確かに、ソビエトは体面を凄く大切にするシステムでしたけど、それはソビエトに限った話ではないとも思いました。一体我々の知る真実とは何なのか?それは、誰かに都合良く書かれただけの作られた真実なのではないか?我々は、福島の真実をどれ程知っているのだろうか、と思いました。実は前回ウクライナに行った時には、チェルノブイリに行くツアーに申し込む寸前まで行ったのですけど、スケジュールが合わなくて断念しました。今となっては、もう決して行くことは出来ないでしょうね。無理をしてでも行っておくべきだった。以前浪江町のFH2Rに行った時のことを書きました。途中で見た帰宅困難地域の印象は忘れ得ません。やはり、メディアが報じていることだけでは分からないんです。その地に行き、感じるものがあると思いました。両作とも物凄くおススメです。今と言う時だからこそ、ウクライナを是非知って下さい。我々の将来に決して無関係なことではありません。両方とも、アマゾンで買えますよ。別のところでも売っているかと思います。

さて、映画を見て、それを論評など出来る私は、なんと平和ボケしているのでしょうか。今、ウクライナにいる私の友人たちは、明日がどうなるのか分からない苦しみの中にあります。ただただ、この戦争が早く終わって、これ以上亡くなる人が出て欲しくない。アメリカは、決してこの事態を収束させられないし、それをしようともしないでしょう。ウクライナが完全に崩壊しても、ロシアや中国に対する態度を変えないでしょう。日本は、アメリカの主張をリピートしているだけです。アメリカには、全く反省が無いです。今の戦闘を止めるには、ひとまず軍事クーデターが起こって、プーチン大統領が暗殺されるとかすれば良いと思いますけど、それでも問題は解決しません。第2第3のプーチンが現れるだけです。アメリカは、プーチンが悪の権化で、彼一人が悪いかの様な世論を形成しようとしていますけど、そんなことではないです。確かに、プーチンとヒトラーには相通じるところがあるとは思いますけど、それを生み出す社会背景が当時のドイツにも、今のロシアにもあるのです。北朝鮮が庶民から食べ物を奪ってでも核ミサイルを持ちたがるのも当然です。中国が軍事強国になろうと躍起になっているのも当然です。しかし、軍事力による威嚇に対しては、より強大な軍事力を持つことで平和が保たれるというのは全く幻想であって、対立を生み出す構図に踏み込み、共存する道を模索するのが政治の役割です。他国に対しても、自国民に対しても、持続可能な、多様性を認め合う共存への国家戦略を真剣に訴えるリーダーが必要です。

大馬鹿野郎の前首相が「ニュークリアシェアリング」とか言い始めました。決してそんな議論に耳を傾けないでください。核を持つことで、本当に平和になると思いますか?核を持つ国に対しては、核を使用することが選択肢に入るでしょう。しかし、日本はその残虐さを知る国だからこそ、非核三原則を大切に守ってきたのです。核武装をしていない国に対して、どうして核兵器を使えるでしょうか?しかも、アメリカの核兵器を日本の国土に置いたとしても、あるいは第三国にあったとしても、それを使うかどうかを日本の首相が決定出来るというわけではないのです。決めるのはアメリカ大統領です。日本が核武装すれば、隣国は核を用いた反撃を選択肢に入れることになります。だから「核の傘」も要りません。税金で高価な武器を買うことが政治家の務めではありません。もっと大変な仕事をしてください。

125

 「125」この数字が意味するのは何でしょう?はい、私はオートバイが大好きで、特に手に余らず、使い切れるパワーで軽量な125ccクラスのバイクが好きです。高速道路は乗れないけど、バイクで高速道路走っても、ちっとも面白くないし、二人乗りだって出来るし、燃費良くて維持費安いし。今ウチ...