このブログについて

国立大学法人山形大学工学部教授の吉田司のブログです。2050年までのカーボンニュートラル社会実現に向けて、色々な情報や個人的思いを発信します。発言に責任を持つためにも、立場と名前は公開しますが、山形大学の意見を代弁するものではありません。一市民、一日本国民、一地球人として自由な発言をするためにも、所在は完全に学外です。山形大学はこのブログの内容について一切その責任を負いません。
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2025年12月10日水曜日

EVシフトを考える㉒(太陽電池の車載はアリか?)

 不人気のこのシリーズですが、電気化学にも関係するし、動向がとても気になります。少し前になりますが、今年のJapan Mobility Showに軽EVのサクラにソーラーパネルを搭載したプロトタイプが展示されました。

日産「サクラ」にソーラーパネル搭載!太陽光で年間3000km相当発電、JMSでプロトタイプ出展 | MOBY [モビー]

「こんなの風に煽られて走れないじゃん!」と最初思ってしまいましたが、それは私が頭悪すぎるだけで、当然伸び縮みします。駐車中はパネルを広げて発電量を増やし、走行時は格納して屋根部分のパネルだけで発電。よほど使う人でも駐車している時間の方が長いですよね。理想的には年間3000キロの走行分を太陽電池で稼げるのだとか。そもそも長距離移動を主眼としない軽自動車ですし、使い方次第では充電知らずになりそうです。スバラシイ!これぞ本当にゼロエミッション?太陽電池にも電池にも関わっている自分としては、大変興味があります。何を隠そう、ソーラーパネル付きのプリウスPHEVを注文した過去があります(嫁さん用でしたが単身赴任で不要になったため、キャンセルさせていただきました。納車1年以上待ちだったし、でもトヨタさんごめんなさい)。あれはクルマも大きいし、パネルも小さいし(高いけど!)年間1000キロ分くらいしか稼げないと思います。でも、太陽の力で走るんですよ!それだけで嬉しい。そういう好事家にとっては、今回のソーラーサクラは良いです!

しかし…上記は移動バカ、バイクとクルマ大好きな吉田が思うことだけで、本当にEVに太陽電池を載せる意味はあるのか?が今回のお題です。先日太陽電池のセミナーで、電動車用車載PVの開発をされているトヨタの方の講演を拝聴しました。興味津々。軽量で曲面に貼り付けも可能なフレキシブルのペロブスカイト太陽電池とか(ペロじゃなくても出来るけど)、効率下がっても反射色で意匠性にこだわるとか、技術的には面白いこといっぱいです。しかし…当然高いですよね?自動車って石が当たったりしますから(ルーフパネルだけならともかく)それでも大丈夫なぐらい頑丈に作る?高いし、重いし、意匠性悪いし、そもそも10年程度で乗換える自動車に20年以上使える太陽電池を載せる?どれだけ効率が高かったとしても、太陽光強度もパネル面積も限られるのでどうやったって急速充電は不可能。可能な限り軽量化して電費を良くしても知れているし、電池の大型化や豪華装備でEVは重くなる一方。足しにはなるけど、その程度なら高価な(余計な重量物にもなる)太陽電池をクルマに載せて連れ歩くメリットは無い…。

EV用ソーラーを開発している方には申し訳ないですが、蓄電池の高性能化の方がずっと重要、現実的。電材が耐えるかどうか(燃えそう!)疑問ですが、本当に全固体で超急速充電が可能になれば、ソーラーファームや風力発電で得た電気を貯めておき(何なら巨大なキャパシタとか)、繋いで1分足らずで充電完了、また500キロ走れるEVが出来たなら、完全なグリーン電力でのモビリティが成立しますよね?そもそも太陽電池を動かす必要などなくて(面積必要だし)、電源のクリーン化と電池の高性能化こそ進むべき道かと…。そんな蓄電池は出来ない!という方もあるかも知れませんが、色んな新技術、新材料が研究されていますよ。きっと出来ますが、雷が落ちた勢いで充電すると電線が燃えますので、ある程度の充電時間はやっぱり必要になると思います。

ということで、太陽電池を車載、は進むべき道とは言えないと思います。その質問を上記のセミナーでトヨタの方にぶつけたかったのですけど、周囲がドン引きするのが目に見えてましたからやめました(笑)。ただね…個人的にはやっぱりソーラーサクラ、良いですよ!晴れた日に駐車場に戻って来た時に電池残量が増えてたりしたら、鳥肌モノで嬉しいです。それくらい、太陽電池は好き❤。でもね、それって一部のヘンタイの話です。

さて、もう一つ軽EVの話題。実はこっちの方がインパクトある?中国最大手のBYDが日本市場専用の軽EV「ラッコ」を2026年半ばに投入!

日本専用に2年でゼロから開発した軽EV「BYDラッコ」の勝算は?軽自動車の常識を変えられるのか? | Motor-Fan[モーターファン] 自動車関連記事を中心に配信するメディアプラットフォーム

パッと見ただけでも日本の軽自動車を研究しまくっているのが分かります。見た目はタント?スペーシア?いかにも万人受けしそうなスーパートール系、スライドドアで優しい感じの軽ワゴンです(私は全然興味ナシ、ヘンタイなので)。乗り心地とかハンドリングはともかく(そういうことよりシートアレンジとかが重視されるジャンル)、電池性能、航続距離と価格のバランスではサクラに圧勝すること間違いなし。ホンダの新しい軽EVも敵わない。昨今の反中ムードも関係無く、売れるでしょうね。BYDが本気なら、あとはディーラー網の整備だけです。ボリュームゾーンですから、このラッコをどれだけ売れるかです。事と次第によってはスズキ、ダイハツ、ホンダの牙城(三菱と日産は弱い)を切り崩せますよ。逆にここを取られたら、日本の自動車産業は大打撃を喰らいますね。ドイツ御三家の様な生き残り方しか出来なくなってしまいます。ただまあ、所詮EVですから、それが拡大しない日本市場特有の問題がある。なので、BYDもそこまで投資は出来ないでしょう。

だからね、歴史に燦然と輝く、日本にしか作れないスバラシイ軽自動車は我がS660なのですよ!学生時代に乗っていたBEATも!荷物が載らない?2人しか乗れない?そんなのバイクに比べたら…

2025年10月6日月曜日

EVシフトを考える㉑(中国の今)

 久々のこのシリーズです。見返してみると、EVについて盛んに書いていたのは2021年頃、4年前です。それで、当時としてはその主張は大体正しいと今読んでも思います。予想していたことも、大体その通りになっている。ただ、色々特殊事情はあるにせよ、自分の予想を超えてEVシフトが現実になっている、中国の今に衝撃を受けました。色々な意味で恐ろしさを感じるほど、状況は変化していました。

今夏の渡中の前はコロナ感染拡大の直前、2019年の末でしたので、5年半前でした。中国の色々な都市に行きましたが、その頃は深圳ではバスやタクシーが全部EVでその進化ぶりは明らかだったものの、他の都市では北京でさえEVは滅多に見ない感じでした。ところが…今や北京や瀋陽でも、走っているクルマの2割以上がBEV(内燃エンジンを持たないバッテリー駆動のEV)、新しいクルマに限って言えば80%はBEVではないかと思います。BEVはナンバーが緑色なので、すぐ分かるのです。さらには、そのBEVの殆どが中国車!最大手のBYDはもちろんですが、あまりにも色々な種類、見たこと無いバッジの付いたクルマがいました。宇宙船みたいにツルンとした外観のBEVミニバンとか、路上を行き交うクルマが日本のそれとは全く違うのです。日本や欧米の安全基準は恐らく満たしようがない小さくて軽そうなものから、大型の豪華なものまで、本当に色んな種類のBEVを見かけました。当然ながら、日本製は殆どナシ。欧州製もほぼナシ。電池が中国製なので当たり前ですが、中国製品の圧勝です。

しかし…充電施設はあまり見かけなかったので、「一体どこで充電してるの?」という疑問が。電池切れで路上で立ち往生しているクルマなどは見なかったので、足りてはいるのでしょう。大気汚染対策、混雑緩和の対策として、北京の様な大都市ではクルマのナンバーの末尾の番号で曜日ごとに市街地への乗り入れが制限されています。しかしBEVではそういう制限も無いそうです。走行距離や充電スケジュールも見込みが立つコミューター利用ならBEVで何の不都合も無い、というかメリットが大きいですね。相変わらず石炭依存が高いとは言え、電気代をガソリン代に対して大きく優遇する政策もあり、BEVが加速したということですね。先日登場の張先生、ご自身はガソリンのSUVに乗ってますが、奥様はBYDのEVに乗ってらっしゃいます。なんでも、クルマを買うと充電設備を自宅近くにBYDが作ってくれるそうで。支払うのは電気料金だけだそうです。当然と言えば当然ですが、ガソリンスタンドの様に集約する意味は無くて、充電設備というのは分散していた方が良いとは思います。いずれ駐車スペースには充電器があるのが当たり前というように。ただ、施設の老朽化などに対して、メンテや更新は大変でしょうね。

ということで、中国のEVシフトは比率ではなくて絶対数の点で既に本物であることが分かりました。中国は電池生産で圧倒的にリードしていますから、日本や欧米は中国に基準を合わせざるを得ないでしょう。日本メーカーは現時点で中国で売るクルマを持っていない状態なので、EV開発を急ぐのも納得です。しかし、それら日本製BEVもバッテリーは中国から買うことになります。日本製品の優位性はあるのか?性能や安全性では多少優位性があっても、バッテリーが中国製ならば同じですね。いや、クルマはバッテリーだけで出来ているわけではなくて、長年クルマを作り続けている欧州や日本のメーカーには車体のコントロールなどに優位性がある?自動車は事故を起こせば命に関わるわけで、個人的には「中国の自動車は信用出来ない、絶対乗らないナ」と思っていました。しかし今回、その気持ちさえ揺らいでしまう経験をしました。親戚(義理の弟)が紅旗(ホンチー)のSUV(ミドルサイズ)に乗っていて、今回それに同乗して移動することが何度もありました。あの一番エライ人がパレードする時に乗っているクルマもホンチーで、要するに中国の高級車ブランドです。

HONGQI AUTO OFFICIAL WEBSITE

それはBEVではなくて、どうやらガソリン2Lの4気筒ターボエンジンなのですが、静粛性は同クラスの日本車を凌駕していました。室内の意匠については好き嫌いありますが、これでもかというぐらい大画面の液晶パネルに取り囲まれてます(私はそういうの好きではない)。広々では無いものの、たっぷりしたサイズの革張りシートに座り、振動やザラつき、いわゆるNVHの遮断も大変優れていて、少なくとも乗せられている限りは文句の付けようがありませんでした。ハンドルを握ってみるまで、自動車としての最終的な評価は出来ないものの、パッセンジャーとして受けた印象からするとケチを付けられないんです。日本や欧州の製品を凄く良く研究しているんだと思います。越えていないとしても、すぐ後ろにはいる。BEVなんて電気製品と同じ、だから中国にも作れる?いや、車体はお粗末?どうもそんなことも急速に過去となりつつありますね。これは大変ですよ!日本メーカーさん!

それが価値なのか?については疑問ではあるものの、ある意味既に中国のクルマは世界の頂点に上りつつあります。BYDのBEVスーパースポーツ、仰望(ヤンワン)U9 Xtremeが先日市販車世界最速記録(496.22 km/h)を塗り替えました!

496.22km/hって速すぎて想像がつかん!! BYDの「仰望U9」がたった1カ月で最速記録更新!!!  - 自動車情報誌「ベストカー」

それまでの世界最速が2019年のブガッティシロンという3億円の超々高級スーパースポーツの490キロでした(ガソリンエンジン)。U9 Xtremeは3000馬力の電気モーターを搭載しているそうで…。軽自動車50台分以上の馬鹿力。普通のU9は3000万円ぐらいで買えるそうで、日欧の製品に比べてお買い得!?いや、もちろんそもそもこんな自動車誰がどこで使うのでしょう?テクノロジーの使い道として正しいとは思えないものの、日本や欧米に対する挑戦状としては大きな意味を持ちますね。あらゆる意味で、中国は西側社会の後塵を拝しているわけではないと…それは宇宙開発や軍事も同じこと。

仰望U9とは別の尺度で世界を驚かせたのは、携帯電話大手Xiaomiが放ったSU7という4ドアのBEVスポーツカー(?)

SU7

これは、今回中国で何回も見ましたよ。よく売れているようです。

このグリーンのやつがSU7です。もちろん、いろんなカラーがありましたが、珍しい色だったので写真を撮りました。白いのとか、まあカッコよかった。車両の内容は関心も無いのでよく知りませんが、これの高性能バージョンはポルシェタイカンよりも速いみたいです。ルーフが後ろまで伸びているので、後ろのドアは飾りじゃなくて、大人が座れる後部座席がありそう。クルマとしての機能はともかく、携帯電話メーカーのXiaomiですから、車両のコントロールや安全装置、場合によっては自動運転なども含め、ソフトウェアの書き換えによってクルマを最新状態にアップデート出来る、Software Defined Vehicle (SDV)として注目されています。買った後も性能が上がる?魅力的に聞こえますが、本当にそんなことが可能?携帯電話だって、便利なソフトを後で入れるとかは出来ますが、カメラやプロセッサの基本性能が上がるわけではない。このSU7を買った人が、5年後にどうなるかをイメージすると分かりやすいと思います。5年落ちのスマホ、誰も買わないですよね?つまり、Xiaomiは自動車をそういう工業製品と同じにしてしまったということです。5年経ったら価値ゼロ、3年で誰も見向きしなくなる。高価な工業製品である自動車で、それは困ったことです。スマホの様に数年ごとに買い替える?そうなってしまうことが心配です。

皮肉なことに、太陽光発電やEVといったグリーンテクノロジーに中国が注力したのは気候変動に対するリーダーシップを発揮するためではありませんでした。急速に拡大成長する経済に対して、エネルギー資源が不足する中国は、脱化石燃料を進めざるを得なかったのです。もちろん、これらのマーケットはグローバルにも拡大しました。稼げる産業として成功したのは、中国が早すぎず、遅すぎないタイミングでこれらを強力に推し進めたからでした。結果的には、中国をグリーンエネルギーの世界リーダーに押し上げることになりました。今や中国の田舎でさえEVや太陽光発電を多く見かけます。それで、メデタシメデタシ、皆さん中国を見習いましょう!とはいきません。気候変動対策、持続可能社会の構築、というのが主目標ではないまま、圧倒的なスピードで変化が起こっています。すなわち、「儲かるから」をモティベーションに猛烈なスピードで資源の消費が起こり、加速しています。持続可能であるための切り札の様に思われている太陽光発電やEVが、それ自体持続しないものとなってしまうかも知れません。中国で起こっている圧倒的ボリュームとスピードのEVシフトを目の当たりにして、早々にこのゲームが終わってしまうのではないかと心配になりました。


2023年1月12日木曜日

セルビア

 世界は広く、複雑です。いつもアンテナを立てて情報を吸収しているつもりなんですが、全く知りませんでした、セルビアのリチウムのこと。昨晩夜遅くに、NHKの「BS世界のドキュメンタリー」という番組で、オランダのTV局が制作した番組が放送されていて、セルビアのリチウム争奪戦が取り上げられていました。

「リチウムを獲得せよ! 欧州エネルギー安全保障と新秩序」 - BS世界のドキュメンタリー - NHK

リチウムの生産については、独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構JOGMECの下記ページに詳しく説明されていました。

リチウム生産技術概略|JOGMEC金属資源情報

リチウムは南米に多く、特にチリが地球全体の60%を占めるということですが、採掘が進んでいるのはオーストラリアで、生産量は世界一のようです。しかし、掘り出してそのまま使えるわけではもちろんありません。南米では主に塩湖のかん水に含まれたリチウム、オーストラリアはリチウムを含む鉱石が原料のようです。いずれの場合も、当然ながらナトリウム、カリウム、マグネシウムなどの不純物を沢山含みます。原料の状態に応じて色々な方法が用いられていますが、溶解度差を利用してリチウム分を増すことや、イオン交換膜と電解による濃縮も行われているようです。天日干しというのは平和な感じがしますが、鉱石だと1000℃以上で焼いて硫酸に溶かす、とかするみたい。塩化物、水酸化物、硫酸塩などを経て炭酸リチウムになり、そこからさらに製品(電池用の電解質)に加工されるようです。ちなみに、炭酸リチウムは既に100ドル/kg以上、10年後にはその10倍ぐらいの価格になると言われています。いずれにしても、生産に相当エネルギーや薬品を使い、廃液を生成するのは明らかですね。このダーティーワークを請け負っているのは中国で、オーストラリアで産出された鉱物は中国で炭酸リチウムになり、出荷されるようです。そればかりでなく、中国は世界中からリチウムをかき集めています。なにせリチウムイオン電池の80%は中国製ですから。

さて、冒頭のセルビアの話に戻ります。先のウェブには触れられていませんが、なんと、世界の埋蔵量の10%がセルビアにあることが分かったようです。そして、その採掘権を巡って激しい争いになっているのです。リチウムイオン電池は蓄電装置であって、発電施設ではありませんが、太陽光や風力によるクリーン電力拡大のためにも、そしてモビリティーの電動化のためにも、リチウムは欠かせないわけです。携帯電話とかのモバイル機器はもちろんです。グローバルなカーボンニュートラルへの流れに対して、特にそれに前のめりなEUにとって、ヨーロッパにリチウムがある!というのは朗報なわけです。これもまた、中国の賢さ、したたかさを認めないわけにはいかないのですが、今リチウムの生産はほぼ完全に中国に支配されていて、EUはリチウムを内製したいのです。それがはっきりしたのは、やはりこの戦争の問題でもあります。ロシアのガスに依存してきた(特にドイツ)ことのリスクの大きさをEUは痛感しました。そして、中国も同様に「信用できない国」と見なされているわけで、EUの未来(他の地域もそうですけど)を担う資源をそうした信用ならない国に依存するわけにはいかないと。

そこまでは、見つかって良かったね、の様にも聞こえるのですけど、そっから先がえげつないです。セルビアって、どんな国かよく分からないですよね?

セルビア - Wikipedia

はい、以前はユーゴスラビアでした。内戦を経てバラバラになったうちの一つがセルビアです。テニスのジョコビッチの国ですよね。そもそもユーゴスラビアが多民族国家だったので、元に戻っただけとも言えるのでしょうか。ヨーロッパのこの地域、スラブ民族の歴史って本当に複雑。重要なのは、セルビアはEU加盟国ではないということです。人口約700万人でGDP87位、決して裕福な国ではありません。そうすると、このリチウムの発見は、セルビアの人にとっても朗報か?EUはオープンアームで「ようこそEUへ!」ってな感じでセルビアのリチウムに群がっているのです。そこにはちゃっかり、中国の姿も!セルビアのリーダーにとっては、良い話ですよね。特に何の強い産業も無いわけですから、リチウム資源の開発でグリーンディールに組み入れられ、経済エリートへの道が開かれるならば、それは同国民にとっても良いことではないかと。しかし、そう簡単にはいきません。番組でインタビューに答えていた、反対派住民代表の農家のオジサンがカッコ良かった。「オランダで、1000人が住む村の下でリチウムが見つかったとして、その採掘のために村を消滅させることが認められますか?」と。もっともです。我が家の下に白金が見つかっても、家を壊されたくありません。

しかし、これは持続可能な人類の未来のため!と正義を振りかざすわけですね。それ本気で言っているのでしょうか?番組ではユーゴスラビア時代の炭鉱跡も紹介されていました。見渡す限りの荒れ地です。公共の利益のために、村が破壊されて穴ぼこだらけにされた土地です。人が住んでいない森を切り開いて農場にしたり、太陽光発電所を建設することや、海に巨大な風車を建てることも疑問ナシとはしませんが、さすがに自分の生まれ故郷が破壊される様は見られませんよねえ。しかし、事実としては着々と進められようとしているみたいです。色々な資本が入り、村の土地が買収されているということでした。反対派の意見に賛同の声が集まり、セルビア政府は採掘を禁止するように方針転換したようですが、まだこの先目が離せません。

セルビア:Jadarリチウム鉱床からのリチウム輸出の禁止を計画|JOGMEC金属資源情報

食糧、エネルギー、鉱物資源の争奪戦は今後一層激しさを増すことでしょう。いずれの場合も、出来るだけ多くの人にちゃんと行き渡るように、とか、持続できる様に、と言う考え方が無くて、売れるからどんどん作る、みたいな考え方が支配的であるのが問題です。例えば、ドイツの高級車メーカーが作る化け物みたいなEVは、明らかに不必要な程デカい電池を積んています。それを欲しがる人、買える人がいるのですから、「もっとリチウムを!」となりますよね。ちなみに、リチウムイオン電池のリサイクルはまだ殆ど進んでいません。

まあ、リチウムは決してレア元素ではないので、今回のセルビアの様に世界のどこかで新たに見つかるリチウムもあることでしょう。石油がいつまで経っても無くならなかったように。しかし、今の様な状況を放置しておけば、早晩地球が穴ぼこだらけになることは間違いないです。そうなった時に、それでもやってきたことは正しかったと思えるかどうかですね。このリチウム騒動のことを知り、一層持続性の難しさを感じました。

2021年11月15日月曜日

EVシフトを考える⑳

 遂にこのシリーズも20回目になりました。まあ、そんな数字はどうでも良くて、それぐらいEVをめぐる動きからは目が離せないということです。そんな中、昨日のNHKスペシャルでは「EVシフトの衝撃」というタイトルで、この問題が取り上げられました。

「EVシフトの衝撃〜岐路に立つ自動車大国・日本〜」 - NHKスペシャル - NHK

御覧になりました?「衝撃」ねえ・・・。ほとんど何も知らなかったという人には、確かに衝撃かも知れません。ただ、ちょっと間違った衝撃を感じてしまう様な内容だったかなあ。まあ、重要なことも触れられてはいましたが、それを深彫りすることなく表面的な驚きだけをレポートしたので、全体の雰囲気としては「日本は相当遅れているぞ!」「このままでは大変なことになるぞ!」という衝撃だけが見る人の印象に残ったのではないかと思います。で、この問題の本質はそんなものではなくて、もっと重大な世界的競争、覇権争いと結びついていて、脱炭素のためにはEVシフトを進めなくてはならない、なんていう単純な前提は問題を見誤ることになると、繰り返しこのブログでも訴えてきたとおりです。

しかし、まずもって今回の番組は、ちょっとホンダびいき過ぎないでしょうか?なんか、全体としてホンダは過去と決別して未来にチャレンジする集団、対するトヨタは変化に抵抗するコンサバ集団という様になっていました(それから、生き残りをかけて中国と手を組む裏切り者日本電産?)。それら全部ハズレですよ。全固体リチウムイオン電池は何もホンダが世界をリードしている技術ではありません。試作品を出してはいましたが、固体の多層構造を量産する製造技術が実は問題であって、試作品をデモ出来ても、結局量産過程で頓挫する可能性が高いのが全固体電池です。さらに「EVの次の革新的なゼロエミッションカーの開発が進められています!」みたいな感じで出てきたのがなんと水素酸素FCV、何だか意味深にボカシまで入れてね(クラリティの次期世代実験車か?SUVスタイルの様に見えましたね)。あのね、トヨタはもうとっくにFCVを一般消費者向けに販売していますよ。それも既に第二世代のMIRAI。その航続距離はワンチャージで850キロ。もちろん、水素ステーションも限られているので、飛ぶように売れているわけではありません。一方ホンダも一応クラリティFCVを販売しました(限定的だったのと、既に販売中止になりました)。なので、こんなの全然新しくない。それで、最後に出てきたのが「F1の技術で空気抵抗減らします」だって。F1は滅茶苦茶速いので空気の壁を切り裂く様に走りますが、一般車両の平均時速なんて30キロ程度です。ストップ&ゴーを頻繁に繰り返します。そういう領域では空気抵抗よりも重量の減少の方が効果が大きいですよ。超軽量化技術とかの紹介の方が面白かった。

まあ、そんな技術関係のレポートのチグハグさはさておき、重要だったのはEUのEV化戦略ですね。ここのレポートが甘かった。先日のBS報道番組ではNorthvoltの取材を報じていたのに(再エネ100%、リサイクル率97%で環境性能ベストのバッテリーをEUメーカーに供給する)、今回それが全く利用されていなかった。あの報じ方では、EUが何故EVシフトにそれほどまでに熱心なのかが見る側に分かりませんよ。ルノーのスナール会長のインタビューに、ちらっと見えてはいました。「我々EUが自動車産業の中心に返り咲くのです!」と不敵な笑みを浮かべていたところです。LCA手法によるCFPの算出とその低減を根拠にした規制の導入のことは触れられていましたけど、それを国境炭素税に結び付けて、中国や日本の製品をシャットアウトしようとするEUの本当の狙いまでには踏み込んでいませんでした。EUはEVシフトを千載一遇のチャンスと思っているのです(で、その企みは恐らく失敗すると私は思っています、日米中韓印がそれを許しません)。だから、全体としては「EVがこれからの流行です」ぐらいの軽い話になってしまっていた。本当の話をしてしまうと、国際問題、さらには日本政府の批判にもつながるので、大人の事情でもって報じられないというのがNHKなのかな?でも、これを見て間違ったメッセージを受け取ってしまった人はかなり多いと思いますよ。NHK、責任あるんだから、ちゃんとやってください!

2021年11月12日金曜日

EVシフトを考える⑲

 いよいよ明日でCOP26も閉幕となりますが、果たして意味のある、そして拘束力のある国際的合意に到達することが出来るでしょうか?石炭火力発電からの脱却、排出権取引の国際的ルール取り決めなど、議長国イギリスとしては、絶対に有効な国際合意を得たいところでしょうが、明らかに各国の思惑が大きくずれるところであり、極めて難しいと思われます。

脱炭素の切り札であるかの様に扱われ、やはり国際的な取り決めが試みられているのが、EVへのシフト、ガソリンやディーゼル車の廃止とその時期です。石炭火力廃止ではそれに依存するしかないインドネシア等が反対姿勢ですが、いざガソリン車の禁止となると、今までの勢いはどこへ行ったのか、主要自動車生産国が反対の姿勢(合意に不参加、というだけですけど)です。

COP26 電気自動車などに移行のための行動計画まとまる | COP26 | NHKニュース

主要市場では2035年までに、世界全体でも2040年までにガソリン等を使用する自動車の販売を禁止し、全てEVや燃料電池車に切り替える、という計画について、英国、カナダ、スウェーデン、チリ、カンボジアなどの23か国が参加に対し、日本、アメリカ、ドイツ、フランス、中国などの主要な自動車生産国は不参加、というのが面白い、というか正直な結果です。英国、スウェーデンは結構自動車を作っていますけど、チリ、カンボジアって?自動車がその国の主要な産業となっていない国は、売っちゃいけないというルールを作るだけですから、何とでも言えるでしょう。しかし、自動車を取り巻く技術と資源の現実を知っている国、日本、アメリカ、中国だけでなくて、あれ程EVに前のめり姿勢のドイツやフランスも不参加なのです!それから、日本のEV比率が低いのは当然として、中国はその台数で圧倒的ナンバーワン、新車販売に占める比率も4.4%とほぼEUと同じであることは驚きです。一体どこでそんなに沢山のEVを充電しているのでしょう?石炭の電力使ってですけどね!環境ファナティックなスウェーデンや、EVなんてまだ全然走ってないカンボジアが賛成し、現実を理解している国は反対する、当然こうなりますねえ。

COPで合意されたルールは絶対に守られるべきです。努力目標であって、出来れば達成したい、ではダメなのです。でなければ、あれ程の努力を払って国際会議を開く意味がありません。ドイツやフランスも、そのことを理解し、尊重しているということでしょう。出来ない約束はしない、ということです。EVの充電インフラや水素ステーションの整備まで含めて、世界の一部では2035年にガソリンをやめることは可能かも知れません。しかし、グローバルにとなれば、それは2040年でも絶対に無理でしょう。もしも、現在の自動車生産国が、ガソリンやディーゼル車の開発生産販売をやめてしまえば、途上国からはモビリティーが失われることになります。そんなの絶対無理なのです。そもそも、リチウムも、コバルトも足りませんし、供給する電力や水素を完全クリーン化することも無理です。

EUがEVシフトを戦略的に進めていることは、このブログで繰り返し取り上げている通りです。それは本当です。先日のNHK BSの国際報道でも、Northvolt社の戦略が紹介されていました。今度の日曜日のNスぺは、「EVシフトの衝撃」というタイトルでEVの話題が取り上げられます。例の「日本は出遅れてはならない!」の論調にならないことを期待しております。影響力が大きいので、変なことは言わないで欲しい。技術を担う人たちは、精一杯真面目に考え、頑張っていますよ。100 kWhの化け物みたいな電池を積んだEVが未来だなどと言ってはなりません。まあ、どういうまとめ方になるか、注目です。予告は以下で見れます。

「EVシフトの衝撃〜岐路に立つ自動車大国・日本〜」 - NHKスペシャル - NHK

続きです!NHKのウェブに、上記の2040年までにガソリン禁止の詳細が書かれています。

“排出ガス車ゼロ2040年までに”なぜ日本は参加を見送ったのか | COP26 | NHKニュース

参加国のリストが全部書かれていますけど、思わず笑っちゃいます。オランダなんかは「マジか?」と思いますけど(自動車産業に相当食い込んでいる国なので)、ポーランド?ポーランドも相当クルマ作っていますよ。それで、石炭火力の割合が凄く高く、EV充電のインフラ整備も相当遅れている。自ら、自動車の無い生活に戻っても構わないと宣言している様なものです。これらの国々は、電源のクリーン化とEVインフラ整備を全てやる覚悟があるのでしょうか?その大半は、当事者意識が低いので、主要自動車生産国に対して「やってよ!」と言っているだけと感じます。全く実効性の無い国際合意ですね。

もう一つ、二つ、上のレポートで気になることがあります。まず、NHKはミスリーディングな書き方をすべきではありません。「日本はハイブリッドを含めた形で脱ガソリン車を図ろうとしていて・・・」とありますが、ハイブリッドは「脱」ガソリンではありません!ガソリンを効率良く使う、というだけです。で、それは正しいのです!CO2を減らす手段として、明らかに実効性があります。でも、「脱」と誤解されてはなりません。今COPで議論しているのは、いつまでに脱するか、の議論なのです。だから日本は脱ガソリンには後ろ向き、それは事実ですが、現実的選択でもあります。だって、世の中にまだグリーン電力やグリーン水素が無いのに、自動車だけEVやFCVにしても「脱」にならないじゃないですか!

もう一つは、ホンダ技研の大津社長のインタビュー。最後の「さみしいですけどね…」この言葉を社長が言ってしまうようであれば、今後のホンダにはやっぱり期待出来ません(個人的には大好きなのによお!)。F1で培った技術を総動員して・・・とか全然響きません。エンジンでZEVは無理、とか言わないで欲しい。e-Fuelを作ったら良いじゃないですか!トヨタの水素エンジンは、「どうせ無理」なことをやっていると言うの?水と二酸化炭素と太陽光からガソリンを作れるようになれば、V12気筒のF1エンジンを高らかに歌わせたらいい。それが技術者の夢ってものです。諦めムードの中でEV化を進めるというホンダには、大変落胆します。自ら人工光合成にもチャレンジして、吉田研の学生を雇ってよ!

2021年10月13日水曜日

EVシフトを考える⑱

 久々に、このテーマです。私事で恐縮ですが、実は最近新しいクルマを買いました。実際にはそれを購入することを決断したのは今年の2月のことでしたので、半年以上待たされました。コロナの影響もあって、生産が遅れたんですね。納車後1か月で既に4000キロ以上を走り、慣れたところです。で、その選択が物議をかもしていまして、果たしてカーボンニュートラルを語る人物がそんなもの使って良いのか?というお叱りに対して、反論したくもあり、そのネタで少し書きたいと思いました。

果たしてその選択は?実は自動車ではなくて、分類でいうとトラックです。ピックアップトラックと言われる、普通のクルマみたいにエンジンフードがあって、5人乗れるキャビンがあって、その後ろに荷台があります。もちろんEVではないですし、ハイブリッドさえありません。ここからが問題なんですけど、「エコカー」の一種に区分されることもある、ディーゼルエンジンの車両です。実は、長い車歴の中で、初めてのピックアップトラック、初めてのディーゼルでした。燃費低減策としてはアイドリングストップがある程度、DPFも尿素洗浄もあるので、排ガスはクリーンです。2.4Lですけど力持ちで、重たい車両をちゃんと走らせます。ここまで説明したら、知っている人はどのメーカーのどの車種かもう分かりますよね?

で、なぜそれか。実はその前に乗っていたのは、フィアットパンダというクルマでした。4輪駆動で、雪にはめっぽう強く、とても小さいのに実用的で乗り心地も良く、大好きだったんですけど、たった5年にして、あり得ない様な故障が発生し、その信頼性の低さに手放しました。エンジンはたった0.9 Lの2気筒ターボで、燃費はだいたい16-18 km/Lぐらいは走っていましたから、経済的でした。ただし燃料は高価なハイオクガソリンです。それで、そのクルマを予定外に手放すことになり、しばらくは自動車無し生活をしておりました。まあ、嫁さんのクルマがあるのと、いざとなったら使えなくもないキャンピングカーがあるので(巨大で燃費悪いので、旅行以外は基本的に使いません)何とかならなくはなかったのですけど、雨の日にちょっとそこまでにも足が無く、やはり不便極まりなかったです。ただ、トンデモナイ高性能車まで過去には乗り、軽トラックにも乗り、結局ミニマリズムに行き着いて喜んでいたパンダがあんなことになりました(華奢なクルマはもう嫌!)。さらには、世の中ではEVシフトが叫ばれ、カーボンニュートラルへの変革ははっきり不可避なものになる中で、今、どういう選択をするべきなのか、についてはなかなか結論が出ませんでした。自動車の無いライフスタイルというのも、考えられなくはないのでしょう。ただ、年間に凄い距離を走る「移動バカ」である私にとっては、移動の自由がいつでもあることは、やはり必須でした(そういう意味では、確かに私は悪者です)。一方で、どう考えても、今選ぶべきがEVとは思えませんでした。やれパワーがどうの、とか、自分でギア変えるマニュアルじゃなくちゃ、は、だんだんどうでも良くなりました。一方で、頑丈で長持ちすること(使い減りしないこと)、トラブルを起こさないこと、いつでも頼りになること、はとても大切と思いました。ここ米沢の冬はいつも豪雪。当然四輪駆動でないと安心出来ません。それから、確かに一人で乗る時には無用にデカいのですけど、子供がどんどん大きくなり、活動範囲が広がる中で、家族を安心して乗せられること、荷物が沢山積めること、特に魚釣りとかスキーに行く時にはオープンデッキが便利、ということで、上記選択となったわけです。

で、私のケチ臭い運転のお陰もあると思うのですけど、全く期待以上の燃費の良さで、この4000キロの平均燃費が14 km/Lを超えています。これはメーカーの公表しているカタログ値を大きく上回ります。最高では15.7 km/Lを記録しました(ちょっとエラー入ってると思います)。ご存知のとおり、軽油はハイオクガソリンよりもリッター当たり30円くらい安いので、燃料代はパンダよりも少なくて済みます。利便性も期待以上で、アウトドア用品の積み下ろしは物凄く楽です。雨で濡れるのが問題ですけど、何とかなるものです。ということで、メデタシメデタシ、で終わったら単なる自慢話になってしまいます。ここからが本題。

燃費が良くて、軽油が安いからディーゼルは経済的なのはともかく、本当にエコか?というのが問題。とある自動車狂が「ディーゼルはリッターあたりでガソリンよりもずっと多くCO2出すんだぞ!そんなの買うんじゃない!」と言うわけです。本当でしょうか?「ずっと多く」は考え方次第ですが、実際リッター当たり10%ぐらい余分にCO2を出します。

資料4 燃料別の二酸化炭素排出量の例 (env.go.jp)

ところが、熱量当たりだとガソリンと軽油ではほとんど同じ、それから重量kg当たりのCO2排出量もほとんど同じになります。実は「軽油」なのに、ガソリンよりも重いのです。要するに、エネルギー密度の高い燃料なんですね。厳密に言うと、炭素と水素の比で、軽油はガソリンよりも若干炭素比率が高いので、熱量に対するCO2排出もほんの少し多いのですが、それは無視できるレベル。日本で軽油がガソリンよりも安いのは、税率の違いだけなので、軽油の方がガソリンよりも粗悪品なわけではありません。ただ、いわゆるプレミアムガソリンが高価なのは生産コストの問題と思われます(添加剤が入っている)。ということは、LCA的にも環境負荷がレギュラーガソリンよりも高いことになりますよね(誰かご存知ですか?)。

じゃどうしてディーゼルがエコカーと見なされるのか?これは単に効率が良いからですね。圧縮すると自着火する軽油は完全燃焼させやすいです。ガソリンはスパークプラグで点火する必要があり、HC(燃え残りの炭化水素)が出やすいです。なので、ガソリン自着火を目指したマツダのSkyactiv-Xが登場したわけです(以前このネタ書きましたよね)。比重の違いを考えると、容量当たりのCO2排出量を比較するのは適切とは言えません。資源量という点でも、重量当たりで考えるべきでしょう。そうすると、ガソリンと軽油の間には差はナシ。一方で、特に重量級の車両については、ディーゼルエンジンの燃費の良さは圧倒的です。実は、上記キャンピングカーはレギュラーガソリンの2.7Lの自然吸気エンジンです。重い車重に対して動力性能はギリギリ。燃費も頑張っても8.5 km/Lが限界です。あの大きさにしては燃費は悪いとは言えませんが、やはり大きく劣っていると言わざるを得ません(km/kgに換算しても、ディーゼルとの対比ではガソリン車の燃費を1割増しに見る程度ですから、絶対逆転しません。一般的に同クラスの車両でディーゼル車の燃費はガソリン車の二割以上高く、私の場合はほぼ倍でした、車両の大きさ若干違いますけど。)。お財布に対する負担の違いは圧倒的です。上記のとおりで、今回購入したトラックが、その巨体に似合わず小食なのは、ディーゼルエンジンのお陰と考えて間違いありません。トランスミッションの出来も良いため、内燃エンジンでやれる可能な限りの高い効率を達成していることは明らかです。

ならば、対EVではどうなのか?それについては、面白い比較記事がありました。

ディーゼル、 EV、ガソリン 本当にエコなのはどれだ!!! これで決着!!?? - 自動車情報誌「ベストカー」 (bestcarweb.jp)

これ、ディーゼル押しをしているマツダがやったスタディーなので、ちょっと公平なのかどうか怪しいところはあります。ただ、EVが全く優位ではないことは間違いないと思います。特に走行距離が少ないことが多い日本の使用環境では、EVは余計に不利になるでしょう。バッテリーの生産に伴うCO2排出量は技術革新とそれに用いる電力のクリーン化によって大きく改善するでしょうし、一番重要な電源のクリーン化によっては、EVの成績はずっと良くなる可能性はあります。ただ、現状で見ると、例えば石炭依存の高いオーストラリアでは、何十万キロ走ってもEVが優位になることはない、ということでした。日本も、一般的な買い替えまでの走行距離(13万キロ)の最後に逆転出来るかどうか、のレベルです。現時点においては、全くEVの優位性は無いというのが事実なのです。

さらに悪いのは、EVのバッテリー大型化と急速充電への欲求です。航続距離を伸ばし、充電にかかる手間を減らす。もちろんユーザーサイドからすれば当然の要求と思えます。しかし、充電している時の携帯電話は熱いですよね?当然電気にも損失があって、急ぐ程損失は大きくなり、バッテリーの寿命も縮みます。無用に大きいバッテリーを生産すれば、それに伴うCO2排出も大きくなります。だから、以前から主張する様に、EVは短距離移動のマイクロEVが良いのです。私の様な移動バカに対しては、ガソリンのハイブリッドか、ディーゼルか、が今日での現実的な選択となります。そして、ディーゼルの効率の良さは、オーナーとなり、実際に使用して実感しております。

ただ、それだからCO2を沢山出す内燃エンジンを使い続けて良いということではありません。EVの進化、電源のクリーン化は当然重要です。そして、やはり究極は水素燃料電池。これについては、燃料電池そのものの脱貴金属、低価格化に加え、どこでも太陽光由来のグリーン水素を買える様になることが必要ですね。それにはまだ10年でも足らないです。それぐらい難しい課題です。そうすると、今のトラックを捨てずにずっと使い続けることが、ひとまず最良と思えます。水素トラックもグリーン水素も買える様になった時に、自分がまだ自動車で飛び回る元気があれば、その時は買いますよ。ただ、その時代を迎える前に免許返納するかな?でも、私の次のクルマはもうどうでも良いんです(出来ればもう買いたくない)。ただ願うのは、そうして自動車を使って移動することの喜び、子供と一緒に釣りに行ったり、キャンプに行ったりする喜びを未来の世代も楽しんでいて欲しいということです(運転に没頭するなら、やっぱりバイクが良いぞ~!)。そのためには、それを持続可能な手段に置き換えることが絶対に必要ですよね。悪い大人ですいません。まだ石油燃やしてます。

2021年9月7日火曜日

EVシフトを考える⑰

 ドイツ最大のモーターショーが、これまでのフランクフルトからミュンヘンに開催場所が変更になり、IAA Mobilityという名称のイベントとなって、9月7-11日の期間開催されるそうです。

IAA MOBILITY 2021 - MOBILITY OF THE FUTURE

そのジャーナリスト向けプレビューからのレポートがいくつか出ています。

VWやルノー、量販EV発表 独で自動車ショー開幕: 日本経済新聞 (nikkei.com)

上記日経のレポートにはビデオもあります。昨今の流れからの予測通りですが、ヨーロッパメーカー各社EVの新型車(やそのコンセプトモデル)を続々登場させました。日本メーカーは不参加ということで、例によってメディアは日本のEV出遅れ感を強調する様な書き方をしていますが、コロナ禍で集客が見込めない中、費用対効果が低いという賢明な判断なだけだと思います。EVで日本は遅れているわけではありません。しかし、吉利汽車に買収されたVOLVOのEVブランドPolestarはもちろん、NIOなどの新興中国メーカーはこぞって出展しているとのことで、EU市場への切り込みを狙う中国の前のめり感が分かります。

詳しい内容についてはまだ不明の点が多いのですが、出てきた新しい顔ぶれを映像から判断する限り、内容的には全く驚きがありません。というか、やっぱり心配している通りの誤った方向性が見えてきます。ドイツ御三家、ベンツ、BMW、アウディは、やっぱり大きく豪華で高性能なEVを出してきました。そういう恐竜型EVに未来が無いことは繰り返し主張している通りです。電池開発の現場でも、エネルギー密度やパワー密度を上げるために、色々な元素を使った材料開発が進められていて、一方では安全性を高めるという矛盾した課題を突き付けられています。コストとか省資源という観点はひとまず置き去りにされます。そして、その大量の電力をどうやって生み出すのかという観点も忘れられています。むしろEVはいかにコンパクトに軽く作り、小さくて安くて安全な電池でも十分に役に立つものを開発するかが持続性という観点からは最上位にあるべきと思います。それでは自動車メーカーは儲からないから、新種の贅沢を提供してそれを買って消費して欲しいわけですよね。でも、それが今に至る、そして将来危惧されている気候変動、環境危機の元凶なわけで、その考え方を改めることから始めなければ脱炭素は必ず失敗するでしょう。

唯一注目に値すると思ったのは、フォルクスワーゲンが公開した、ID.LIFEというコンパクトEVのショーモデル(まだ市販タイプではない)です。既に販売されているID.3がフォルクスワーゲンの主力車種であるGOLFのEV版という感じなのに対して、このID.LIFEはUPという一番小さいやつのEV版という感じでしょうか。日本で対比すると、ホンダのHonda-eに近いかな?詳しい内容はまだ分からないのですが、想定価格が2万ユーロ、260万円ぐらいということなので、大したサイズのバッテリーではないはずです。そこはHonda-eもコンセプトは同じで、いたずらに走行可能距離を伸ばしたりせず、EVはEVらしく、シティユースを中心として、無駄に大きくて重い、高価なバッテリーは積まない様にしましょう、ということです。しかし、Honda-eは500万円ぐらいする、馬鹿らしい程高価格なEVです(ギミックの類いが多すぎ)。それに対して、2万ユーロを公言しているのは脅威ですね。もっとも、ガソリンエンジンのUPは200万円を切りますから、EVは高価ということは変わりません。UPはリッター20キロは軽く走る低燃費車ですし、3分でガソリンを補給して500キロノンストップで走れるクルマです。だからまだまだ、ではあるのですけど、ID.LIFEには遥かに未来への可能性が感じられます。繰り返しVWの悪口を書いてきましたけど、結構真面目かな?と少し考え方を改めました。

で、日本のEV戦略は、やはりマイクロEVカテゴリーを新たに作ることから始めるべきで、行政のリーダーシップが大切と思います。電動キックスケーターとかも、レギュレーションが無いまま乱立していたのでは、産業としての方向性や成熟が果たされません。最初は、民間のアイデアに任せるのは良いでしょう。それで大体メリットと問題点がはっきりしてきた段階で、道路交通法の法改正も含めてちゃんとしたレギュレーションを作り、メーカー側の開発競争を促して輸出産業に育てるべきです。

その意味で、やっぱりマイクロEVはバッテリーサイズで制限をかけるべきです。20 kWh。それだけあれば、上手に作れば500キロ走れるEVも可能と思います。通常のLiBでも全固体でも何でも良いです。サイズも、安全性まで考えたら全長4 m、幅1.7 mまで許容して良いでしょう(ちょっと前の5ナンバーコンパクトカーのサイズ、これなら国際的にも通用する)。バッテリーのサイズが限定されていたら、無暗にクルマを大きく出来ません。軽くしたうえで、出来るだけゆとりのある室内空間を確保したり、走行安定性を向上したりする努力が進みます。それはこれまでの軽自動車開発において、日本メーカーが得意とすることだと思います。走行性能や航続距離を20 kWhの制限の中で目いっぱい向上させることが必要になります。そこに全固体電池の技術を導入するなら、それも良いでしょう。安い電池で賄うのもOKです。方法では限定をかけず、限定はバッテリー容量のみ。それを満たしたら免税として、普及を支援する。急速充電で5分で満充電出来る様になったとしても、全量が20 kWhであるなら過大な電力需要の増大を生じません。もし、そこに開発資源を集中して、2050年ゼロカーボンの時代に必要とされるEVを日本が先行して形にしたならば、きっとその時代にもモビリティー産業を担う国として、日本は元気で居続けられることでしょう。EUもアメリカも、恐竜EVに未来が無いことにはすぐに気づきますよ。日本は得意とするミニチュア化で先行すべきです。

2021年8月30日月曜日

EVシフトを考える⑯

 本当は最新のIPCC6次報告書について投稿したいと思っていたのですが、まだちょっと読み込みが足らないので、小ネタの紹介。

これをEVシフトのハナシと関連付けて良いものかどうかは分かりませんが、予てから噂されていた、マツダのロータリーエンジン復活が秒読み段階に入っていると思われます。

「ロータリーエンジン」復活か!? 電動化示唆する新ロゴをマツダが製作 「早く世に出したい」と意気込む | くるまのニュース (kuruma-news.jp)

明らかにロータリーエンジンのローターを型どっていますし、アルファベットのeの形もしており、電動化技術とロータリーエンジンの関係を示すものです。マツダは既にMX-30というコンパクトSUVクーペ(そう呼んでいいのか?)のEVモデルを販売しています。モーター類が納められているエンジンルームがスカスカで、そこに”レンジエクステンダー”が搭載されるだろう、とデビュー当初から言われていました。レンジエクステンダーとは、小型の発電用ガソリンエンジンで、EVのバッテリーが無くなりそうになったらこれを駆動してバッテリーを回復させるというものです。動力装置(電気モーターとガソリンエンジン)と燃料タンク(バッテリーとガソリンタンク)を2セット積むので、非効率の様にも思えます。日産のノートeパワーと何が違うのか、と言えなくもありません(あれはエンジンをほぼ常時駆動するのでバッテリーが小さい)。シリーズ方式ハイブリッドの一種とも言えます。ただ、レンジエクステンダーは緊急用という感じで、燃料タンクは小さいみたいですし、エンジンも小さいです。そのままでクルマを駆動することは出来ません。最も効率の良い状態で定常速度運転をして、電気を作ることに専念しますので、排気量の割りには効率が良い、ということになります。でもまあ、何だそれだけ、という感じでしょうか?

しかし、今回マツダはこれを伝統のロータリーエンジンを復活させることで成立させようというわけで、そこに面白さがあります。ロータリーエンジンはマツダが発明したわけではなくて、元々Wankelというドイツの会社が発明し、1950年代にNSUというメーカーのクルマに搭載されていました。その技術ライセンスをマツダが購入して、コスモスポーツとか、1960年代に販売します。それを受け継いだのが有名なRX-7というスポーツカーです。私の昔の友達がRX-7に乗っていて、何度か運転させてもらいました。何ともパンチの無いエンジンで、すーっとスピードを上げていく独特のフィーリングですが、べらぼうに速いです。通常のエンジンの様にシリンダーとかピストンとかが無くて、まゆ型のハウスの中におむすび型のローターが入っていて、それが1回転する中で吸気/圧縮/爆発/排気が行われる仕組みです(詳しく知りたい人はWikipediaとか調べてください)。小排気量でも非常にパワフルで、振動がほとんど無いのが利点ですけど、燃費が物凄く悪いので、マツダ自身もやめてしまいました。それが今復活するというわけです。何で?恐らく負荷変動の無いレンジエクステンダー用であれば、効率は悪くないのだと思います。それから、コンパクト軽量に出来ることは明らかなメリットです。

そして、実はそれが一番重要なんですが、恐らくは将来水素ロータリーにすることを目論んでいます。マツダは既に水素ロータリーエンジンを搭載したRX-8を限定的に販売したことがあります。つい先日のトヨタの水素エンジン程にはパワフルではなくて、当時の水素エンジンはガソリンエンジンに対してパワーで劣っていましたが、それもレンジエクステンダー用であれば解決できるということでしょうか?いずれにしても、そうなればレンジエクステンダーを使ってもゼロエミということになりますから(グリーン水素を使うこと前提ですけど)、レンジの小ささと充電の手間というEVの最大の問題点を解決できる可能性がありますよね。

昔っからのロータリーファンには、なーんだ、かも知れません。ロータリーエンジンでクルマを動かすわけではなくて、それで作った電気でEVが走るだけですからね。でもまあ、必ずしも新しい技術だけではなくて、既存の技術を新しい目的に活かすというのは大切な考え方だとは思います。水素になると、2ストロークエンジンも再度脚光を浴びるかも知れないし。


2021年7月2日金曜日

EVシフトを考える⑮

 日産自動車が英国サンダーランド工場でのEV生産能力を大幅に引き上げる(年間10万台)投資をすることを表明しました。

日産、英国に大規模EVバッテリー工場新設へ (msn.com)

日産は、アリア(ARIYA)と言う名前のSUV型EVを既に発表していて、EVのラインナップ拡充を進めています。このアリアは91 kWhのバカげたサイズのバッテリーを積むヘビー級EVで、660-790万円とかなり高価でもあります。

日産:日産アリア[NISSAN ARIYA]特設ページ

日本でも発売が予定されていますけど、こんなクルマに補助金を出すべきではありません。これまで再三書いている通り、こういうヘビー級EVは早々に淘汰されることになると思います。ポルシェタイカンやテスラロードスターの様なキチガイEVが欲しい人は、スーパーカーを買う様な人たちなので、一定の需要はあるでしょう。けど、このアリアは中途半端、一般ユーザーは高い割にメリットの無いこのクルマの問題にすぐ気づくことでしょう。

上記レポートではボリス・ジョンソン首相が今回の投資を「EUを離脱した英国への信頼を裏付けるもの」、として得意げです。何しろこのサンダーランド工場はBREXITのために閉鎖の危機が噂されていた欧州での日産の製造拠点でした。計画では、EVの生産だけでなく、バッテリーの生産も現地で行うということですが、それは例の中国メーカー、エンビジョンAESCです。日本の報道では、あたかも日本メーカーの海外進出の様に伝えられていますけど、エンビジョンAESCは中国資本です。

全体を眺めると分かるのは、自動車産業のグローバル化がいかに進んでいるかということです。まあそれは自動車産業に限らないことでしょうね。日産自動車はその出自が日本であり、名前も日本語であって、日本のメーカーという認識が定着しているわけですけど、生産、販売の全てがグローバルに展開していて、もはや日本出身であるということはほぼ関係ありません。実際、ルノーグループの一員ですよね。ルノーは2030年までに全販売数の80%をEV化することを表明しています。その大きな戦略の一翼を日産ブランドが担うということであって、日産製のEVにちょっと化粧直しして、ルノーのバッジを付けたクルマが売られることでしょう。そして、バッテリー関係の利益は中国がコントロールすることになります。日産のクルマづくりの技術はルノーに流れ、NECのバッテリー技術はエンビジョンに流れます。結局、日産ブランドがこの様にしてEVを増産したところで、それはほぼ日本国外での出来事であって、日本人の仕事にはならないし、利益は日本には来ません。それがグローバル化の実態。

これこそ、豊田章男自工会会長が憂いていた日本のモノづくりが無くなるということでしょう。自動車メーカーについては、その先兵が日産です(国内でも作ってるけどね)。ホンダは鈴鹿工場を全部軽自動車の生産に充てましたが、それは日本にしか市場の無い軽自動車を作ることで、日本での自動車生産を守ろうとする意志の現れです。マツダも広島で頑張って生産を続けています。日本からどんどんモノづくり産業が流出すれば、いずれ自動車の様な工業製品を作れない国に転落することでしょうね。

「日産は脱炭素のためにEVシフトに積極的だね!」とかいう明るいニュースでは全く無い、それが今回の真相だと思いました。

2021年6月27日日曜日

EVシフトを考える⑭

 長らく続いた未来ネット「EV推進の嘘」のシリーズも、遂に第11回、最終回が公開されました。

『EV推進の嘘 #11』EV車とガソリン車 これから買うべきクルマは?(加藤康子・池田直渡・岡崎五朗) - YouTube

私は結局全部見ましたけど、結論としては賛同できない部分が多く、おススメは出来ません。ただ、私の主張に懐疑的な方は、御覧になるのも良いと思います。異なる視点があって当たり前です。

最初のうちは、中立的と思える語り方でしたし、データを元にした議論も「ナルホド!」と思わせる説得力もありました。メディアが報道する表面的な内容や、短時間で分かりやすいけど実はかなり歪んだ政治家の発言などに惑わされてはならない、と認識を新たにしたところです。しかし・・・総合すると、あまりにもこのご三方はナショナリスト的過ぎると思いました。自動車好きというのは良いんですけど、自分たちの都合の良いように他者に攻撃的になっています。さらに、気候変動の問題も、本当には信じていない人たちであるとも思いました。岡崎五郎さん、ファンだったけど、残念です。加藤康子さんは、グレタトゥンベリさんを「インチキ」の様に言ってましたね。

最終回の話、結論が傑作です。これだけ議論を尽くしてきたはずなのに、「国は何も規制をするな」みたいになっている。開いた口が塞がらない。それでいいわけないです。何のための議論?さらに、加藤康子さんの「どのクルマを買ったら良い?」の問いに、「好きなクルマを買ったら良い」なのも、いかにも自動車ジャーナリストらしい無責任回答でした。クルマが庶民の憧れの対象だったり、自分を表現するライフスタイルアイテムだったり、純粋にこれを趣味とする人が沢山いたりしたのは、ずっと以前のことであり、それらは全て終わっているんです。大半の人は、「(趣味として)欲しい」クルマを買っているわけではなくて、経済的条件や使用条件に最適なクルマを選んでいるだけです。それぐらい、ある意味日本における自動車の位置づけは成熟したとも言えるでしょう。そうすると、日常の使用環境(ガソリンスタンドか充電スタンドか、ガソリン代VS電気代はどうか、税制上の違いや補助金の有無は?)などが、車の大きさやタイプなどの他に重要な判断材料になります。すなわち、過剰なほどにでも政府がEVを優遇する様な事があれば、EVが優位になり、そちらに消費者が流れるのは当然ですし、それをどう誘導するのか、したいのか、したいならそれは何故か、正しいのか、をはっきりさせなくてはならない、ということです。岡崎さんの言う「俺は6リッターのV12に乗りたいんだ!」なんてことを思うのは、旧時代からの生き残り、もうすぐ死滅する恐竜世代だけで、その嗜好は未来の世代には全く影響を与えません。本来なら、そういうクルマに乗りたい人には重税ではなくて、e-Fuelを義務付けて、リッターあたり1000円の燃料代を払ってもらうのが一番良いと思いますが、世の中から安いガソリンを無くすわけにはいかず、安いガソリンが趣味の馬鹿野郎に悪用されてしまいます。何故安いガソリンが必要かと言えば、農機具や軽トラ、除雪機などの道具を動かすためです。田舎に来たら分かります。生活の足にも使われているけど、軽トラが本当に生活、仕事を支えている事実が。軽トラをEVにするなんて、しばらくは考えられません。除雪機も、あれだけのパワーを出すにはガソリンしかありません。そして、それらは安い燃料で動かせることが、まだこの先20年以上必要になるでしょう。だからガソリンスタンドは無くなっては困りますし、ガソリン価格も超重税をかけて高くされては困るのです(田舎の人が生活できなくなる)。一方で、都会に生息するその6リッターV12のアストンマーチンだかフェラーリだかは今すぐやめてもらう必要があります。リッター150円の安いガソリンで3キロぐらいしか走らないクルマね。ならば、やっぱり年間500万円ぐらいの重税とかで責任をとってもらうしかないですかね?

自動車ジャーナリストは、趣味としての自動車を信じていますし、クルマを好きだからこそ、やれこれからEVなんでしょ?とかHVとディーゼルのどっちが良いの?とか気にせずに「好きなのに乗ったら良いんだよ!」と言いたくなる気持ちも分かります。私自身はクルマ好きですから、その気持ちはとても分かります。しかし、EVシフトの是非の議論は自動車好きのためにしているんじゃないんです。そして、恐らく95%以上の人は、自動車に物凄くこだわったりしていません。それでも、自動車の保有率は高いのです。それは国民が皆自動車好きだからではなくて、本当に自動車が必要とされているからです。私が、それを確信を持って主張出来るのは、さらに趣味性が圧倒的に高く、実用上は全く不要な二輪車をこよなく愛する馬鹿であり、その愛する二輪車が絶滅寸前の状況になっていることを知っているからです。

日本におけるバイク(原付除く)の販売台数は最盛期の1/3程度に低下しました。さらに傑作なのは、購入する人の平均年齢が、二年ごとに調べられる統計で毎回ほぼ二歳ずつ上がっているということです。2020年の調査では、なんと54.7歳です!

国産車新規購入ユーザーの平均年齢が54.7歳に【自工会 二輪車市場動向調査】│WEBヤングマシン|最新バイク情報 (young-machine.com)

サザエさんのお父さんの波平さんの設定年齢が54歳だそうです。だから「バイク乗りは波平さん」と言われています。かく言う私はそれより一つ年上の55歳。保有するバイクは4台(1200のロードバイク、450のオフロードバイク、125のスポーツバイク、125のカブ)。ね、ドンピシャでしょ?要するに、私の世代でバイク趣味ってのは既に終わったのです。今や「バイクって良いものだよ!」という声には誰も反応してくれませんし、全く周囲は共感してくれません。いまどきバイクに乗る若い子は、かなり変わった子ですよ(偉いぞー!)。

バイクは、その小ささ、軽さゆえに、走行距離あたりの燃料消費は四輪車よりもはるかに少ないです。しかも、基本的にマニュアル、とっても趣味性の高い乗り物で、相応の身体能力が無いと安全に乗ることも出来ません。例えば、うちの1200のバイク、リッター30キロぐらいは普通に走りますよ。カブに至っては50キロ以上。どんなエコカーを持ってきてもこれらには敵わないでしょう。しかも、純粋に趣味で乗っています。だから、そういう趣味としての乗り物が欲しい人は、こういう選択肢だってあるのです。さらには、電動キックスケーターとか、先日紹介の三輪車Noslisuとか、バイクの良さを電動化することで、もっと環境に良いミニマルな移動手段ってのは可能で、二輪車を見直しても良いハズと個人的には思っています。まあそれはさておき・・・。

結局、この二輪車が辿った運命は、これから先にそうした趣味性の高い四輪車が辿るであろう運命を示しています。つまり、それが新たに生産されることは無いでしょうし(バイクの新型車は実質旧モデルの改良程度が多い)、求める人も極めて少ない。そして、それで良いんです。四輪車は特に趣味性など関係ない(自動車も大好きな私としてはとても寂しいですけど)。必要だから買っている人の方が圧倒的に多いわけですから。とするなら、それをどの様に変えていくのか、脱炭素を見据えた誘導をしていくのか、これは政府だけでなく、自動車産業に関わる人たち全てが真剣に取り組まなくてはならない課題です。両者は対立していてはいけません。協力しつつ、脱炭素時代のモビリティーをどうするのか、そこにどの様な先進的取組みをするのか、を考えてすぐに実行してもらいたいです。EUやアメリカがEVどんどんやっているから、EVで追いつき追い越す、ではないのです。日本が出遅れたのに、今さら同じことを考えて焦ることではないでしょう。日本の得意とする軽規格を基準として、例えばバッテリー容量を15 kWh以下に制限する代わりに税金ゼロのマイクロEVカテゴリーを新設すべきと私は思います。

趣味の自動車は・・・?博物館行きです。クローズドコースで、e-Fuel使って遊んだらいいじゃないですか。趣味でクルマに乗りたい人のためには、それらを末永く使える環境は残しておいて欲しいですね。バイクもフル電動化は難しいし、そもそも需要が無い(実用性で乗るものではない)ので、今のバイクはやっぱり博物館行きです。マイクロEVや電気スクーター、電動キックスケーターなどに置き換えられ、生活はそれで大丈夫です。極力小さいバッテリーで、発電所を沢山作る必要もなく電化を進めるのが一番スマートじゃないですか?水素製造は日本では土地が足らなくなりますから、それこそ日射条件の良い国で大量に生産してもらい、それを輸入するスタイルになるでしょう。そしてFCVが長距離レンジ、バス、トラックなどを担うことになります。さらには、船舶や航空機も水素で行けるでしょう。平地の少ない日本の環境を逆手にとった独自の戦略が日本には必要と思います。

まだまだ考えるべきことはあるし、行動を起こし、変化を導くことが政府や技術者の責任です。大学の我々も未来を先導する立場だし、その責任がある。未来ネットのお三方は、そういう意味で思考停止してしまっています。そして怒りの矛先を他国にばかり向けるナショナリストぶりを発揮しているので、ちょっと最後はガッカリでした。

2021年6月10日木曜日

EVシフトを考える⑬

 前々回の⑪のハナシは、閲覧数が多いんですよ。面白かったですかね?というか、かなり刺激的というか、辛辣な言い方もしましたので、読んでて腹が立った人もあるかも知れません。いつか言いたいと思っていたことを一気に書いたので、長くなりましたけど。正しくないこともあるかと思いますし、友達無くす様な書き方だったかも知れません。立場が変わると見え方が変わってくるのは事実で、誰かにとっての正義がみんなの正義とは限らないということです。

さて、今回はちょっとテクニカルなことに言及しつつ、何故今日EVこそが自動車の未来と思われる様になったのか(それは全面的に正しいわけでは無い、というのはこれまでの主張通りですが)について書きたいと思います。自動車技術のことについて興味の無い人にはつまらないかも知れません。私は自動車の専門家ではありませんが、大好きなので、そこそこ知っています。クリーンビークルにかかる色々な技術をレビューし、どういう過程を経て今EVが注目されるのか、です。そういうことを書こうとおもったのは、2015年に発覚したフォルクスワーゲンによるディーゼル車排気ガスの検査不正について、新たな報道があったからです。この事件、覚えていますか?自動車史上最悪の不正事件と言っても良いぐらいと思います。

フォルクスワーゲン元CEO 偽証罪でも起訴 “排ガス不正”問題 | NHKニュース

まず最初に、自動車の低炭素化と脱炭素化は違うことを確認しなくてはなりません。色々な動力発生装置があるわけですけど、例えばEVやFCVにしたら脱炭素になるかと言えばそうではありませんし、逆に内燃エンジンで脱炭素が不可能なわけではありません。電気や水素を化石燃料から得たらGHGは出ますが、太陽光等で得たグリーン水素を水素エンジンで燃やすとか、そこからe-Fuelを合成したら普通のエンジンでも脱炭素になります。いや、実際にはゼロっていうのはかなり難しくて、大量の鉄や樹脂、EVなら化学品も沢山使う自動車の製造には大量のエネルギーを要します。その生産や廃棄リサイクルにかかるエネルギーもグリーン化して、それでもゼロにならない分は別のGHG削減策でオフセットして、やっと「ゼロ」と言えるわけですから、本当の脱炭素というのは並大抵のことではないです。現実的には将来一次エネルギーを太陽光や風力などの再エネに完全に置き換えて脱炭素達成を展望しつつ、今は可能な限りの低炭素化を進めて行く、ということになります。そしてその方法論は色々あるわけで、今EVにしたら即脱炭素、にはならないです。

ガソリンを内燃エンジンで燃やす自動車の効率を上げて、低炭素化を進める代表がHVです。ブレーキをかけた時や坂道を下る時に運動エネルギーから発電し、普通のより少し大きめのバッテリーに蓄電(エネルギー回生)して、走る時に電気モーターでアシストする(燃料消費を減らす)仕組みですね。それが無いと、ブレーキで運動エネルギーは熱に変わってしまいます。その仕組みを搭載した車両を最初に市販したのがトヨタで、「21世紀に間に合いました!」と鉄腕アトムが広告した1997年市販の初代プリウスです。エネルギー回生とかモーターアシストというのはかなり難しいエンジン、ブレーキ、電気の連携をしていて、初代プリウスは高価でしたけど、まあヒドイ乗り物でした。ブレーキがスイッチの様で、全然調節が効かなかったのに衝撃を受けました。しかしまあ、今日では言われないと気づかない程制御が上手になり、特別な意識もなくHVを選べる様になりましたよね。車種もプリウス以外、そして他メーカーからも沢山選べる様になりました。お陰で自動車の平均燃費は大幅に向上して、ガソリン販売量がはっきり低下する程日本では自動車の低炭素化は進んでいるのです。

一方HVで出遅れたEU、特にその中心であるドイツの自動車業界、すなわちVWは、ディーゼルエンジンで勝負に出ます。何故ディーゼルだと低炭素になるのか?ガソリンより燃えやすい軽油を使うディーゼルエンジンには、着火するためのスパークプラグがありません。ディーゼルエンジンは圧縮比が高く、混合気を高圧にすると温度が上がり、自発的に爆発するのです。スパークプラグを使うガソリンエンジンでは、ピストンが上に上がり、一番圧縮された上死点と言われるところに近づいた時に火花で着火しますが、その一点から火炎が広がるため、燃焼が不完全になりやすいのです。だから効率が悪いですが、ディーゼルは一様に燃えるので効率が良い、というわけです。ちなみに、ガソリンの自着火を(ほぼ)実現したSkyactive-Xというエンジンを市販しているのが、燃焼オタク集団のマツダです(みんな知らないよねー、売れてません)。じゃあみんなディーゼルにした方が良さそうですけど、そうもいきません。まず、エンジン自体が高額になってしまいます。燃焼温度が低いと、燃え残りのスス、いわゆるパーティキュレートという有害物質が出ます。最近はほぼ消滅しましたけど、昔のディーゼルは真っ黒な排気ガスを出して臭かった。では燃え尽きる様に燃焼温度を上げると、空気中の窒素まで酸化されて、光化学スモッグの原因になるNOxが出ます。排ガスが汚いのがディーゼルの泣き所。VW含め、最近のマツダのクリーンディーゼルなどは、どうしているかと言えば、気筒内噴射(直噴と言われる技術)やターボ過給などで燃焼制御を徹底的にしたうえで、それでも出てくるパーティキュレートはフィルターでこし分け、NOxは尿素水でトラップする、などして綺麗にしています。ただ、これはコストがかかる上に、徹底すれば効率の低下も招きます。日本ではかつて光化学スモッグの大きな公害問題が発生したこともあり、ディーゼルに対しては冷ややかでした。トラックやバスなどはディーゼルでしたが、一般車両ではほとんど使われず、石原東京都知事の時には東京からディーゼルを締め出すと言い始めたほどでした。一方自動車の密度が日本ほど高くないこともあって、EUではディーゼルは好調でした。特に低回転から力持ちのディーゼルは乗っても楽しく、EUのマーケットでは成功をおさめます。ちなみに、EUではガソリンと軽油の値段はほとんど同じです。日本だと1 Lあたり10円以上安いですが、それは製造コストではなくて、商用車に多いディーゼルを優遇するための税率の違いです。

はい、既に長くなってますが、そのディーゼルを低炭素の世界戦略への切り札として、VWはトヨタの販売台数を抜こうと(一時抜いたはず)どんどんディーゼルをプロモーションしていきます。同時に、今も続く小排気量ガソリンエンジンにターボ過給するダウンサイジングターボも低炭素技術として発展しますが、そっちは安いクルマ向け、より高級なのはディーゼル、でした。そこにきて、実は排ガス検査を不正にパスしていたことが発覚したのです。凄く手の込んだことをやっていて、コンピューターに予め検査場でのテストモードを感知する機能を仕込み、「今テストされてる!」と判断すると、パワーをぐんと落として排ガスを綺麗にする運転モードにプログラムを切り替える仕組みだったのです。排ガステストの時は走りませんから、パワーが規定通り出ていないことなんて関係ありません。これは、明らかに騙すことを目的にした、組織ぐるみの犯行ですから、CEO辞任で済むはずもなく、4兆円を超す賠償問題になったわけです。この事件後、検査方式自体も見直されて、実際に走っている状態で、燃費、パワー、排ガスなど測る方式も開発されているみたいです。まったく、お客さんを騙すなんてひどい話でしょ!

まあ、そんな悪事を働く企業はこの世から消滅してもらった方が良いですけど(ちなみに当時、私はVWのシャランというミニバンに乗っていました!ディーゼルじゃないけど)、そこはドイツにとってとても大切なVWですから、東京電力がつぶれないのと同じ様に政府からしっかり守ってもらい、今も存在しているわけです。生き残っているっていう元気の無い状態じゃなくて、新しい手で再びトヨタ殺しを企んでいるのが今日のVWです。

さて、ここでハナシは同じEUでもお隣フランスのルノーについて。ルノーは今でこそ民営ですが、長らく国営企業だったメーカーで、日本の自動車黎明期にはトラックで有名な日野自動車が「日野ルノー」というクルマをノックダウン生産していた時期もあり、自動車の作り方を日本に教えてくれた先生です。ゴーンさんのこととか、日産を買収したとかで、最近だと日本でちょっとイメージ悪いですか?で、ルノーがとった戦略がEVで、かなり早期から取組み始めました。ルノーに救ってもらった日産からリーフが登場するわけですが、ルノー自身もZOEというコンパクトEVを2012年から販売しています。当時から「ハハーン」と思っていましたが、EV戦略はHVで日本に敵わないからではなくて(それも少しある?)、原発です。EUで電力不安が無く、電気を輸出できるほど作っているのがフランスです。カナダのフランス語圏であるケベック州では水力で大量に電力が得られるので、Alcanというアルミの会社もありますが、電気化学の世界でもフランスには溶融塩電解の研究者がまだ居たりして、電気のフランス、なわけです。要するに、ヨーロッパの自動車がどんどんEVになると嬉しいのはフランス、ということですね。原発をやめ、石炭も減らさざるを得ないドイツだと取れない戦略です。同じフランスのPSAグループ(プジョー、シトロエン)もEVにかなり熱心で、先日私は最新モデルのプジョーe208というコンパクトEVを運転しましたが、とても良い乗り物ではありました。

さてさて、とは言ってもEUの地域は広大で、各国のエネルギー事情も違いますから、どんどんEVに、とはなかなか行きません。充電ステーションも都市部の整備がやっとでしょう。1日に1000キロ走ることだってあるかの地の自動車の使い方では、巨大バッテリーと言ってもそう簡単ではない。アメリカではEVのピックアップトラックも売り出されるみたいですが、使用環境に合う人以外、手を出しにくいでしょう。いくら充電ステーション増やしても、アメリカ広大です。それでも、パリ議定書以来、オールEUでのEV化を推し進めようというのが今の状態だと思います。ガソリンをやめるとは言っていませんし、ディーゼルも復権しつつあるし、HVやPHEVも日本より下手だけどやっています。そして、ドイツ(特にアウディ)は一足飛びにe-Fuelを進めようとしています。それはフランスに頼りたくないからでしょうけど、ソーラーや風力を大量に導入したドイツでは、電気が余ってしまうことが多くなっています。余った時には隣国に使ってもらい、足らない時はフランスの原子力の電気やポーランドの石炭火力の電気を買っているのです。表向き、環境先進国ですが、それは地続きのEU域内で調節出来て、マズい部分を肩代わりしてもらっているからです。ズルいぞドイツ!

それで、実際には販売の中心では全くないのですけど、EV版ゴルフといった感じのid3なるクルマをデビューさせ、「EVこそゲームチェンジャーだ!」みたいなことを声高に言っているわけです。恐らく来年ぐらいには日本にも上陸するでしょうね。どこまで本気かは疑わしいですが、株価をつり上げることには成功しているみたいです。さあ、そうしてEUはEVシフトをどんどん進めるのか?と思ったら、EU内にまともな電池メーカーが無いことに気付くわけです。それでVWが設立したのがNorth Volt社、というわけです。北欧が選ばれるのは水力によるグリーン電力が豊富なためであることは先日お伝えした通り。そして、ノルウェーでのテスラ対中国EVメーカーのバトルも、さらにボルボは中国の吉利(ジーリー)に買収されてEV化を熱心に進めていて、EV化の震源はスカンジナビアになりそうですね。

脱炭素をめぐる世界的取り決めで、EUの思惑通りにCFPを基準にして炭素税をかけることが可能になれば、EU製品を保護し、中国や日本の製品をシャットアウトすることが可能になります。それが目論見でしょう。パリ協定以来EUでは電源のクリーン化を大きく進めて、その準備が整いつつあります。対して目先の金を優先した中国やキョロキョロしてるだけでEUのしたたかな戦略を読み切れず、さっさと原発たたんで再エネの大幅拡大に取組まなかった日本は、今かなり不利な状況に置かれています。だから、EUのさらに先を行く改革に一刻も早く着手しなくてはならないんです。原発使うなら時限を決めて、それをたたむまでに再エネ80%以上を、それこそ2035年くらいまでには達成する勢いが必要です。日本製太陽電池の生産ラインも復活させたら?中国製品に関税かけて(不正だー!)。それから日本ではデカいEVには補助金出さない。マイクロEVカテゴリーを新設、優遇して輸出産業に育てましょう。これには他国は文句は言えません。長距離に実用的で低炭素に最強なのは、世界一の日本のHVです。しばらくはそれ(レンタル+シェア)を使い、その後グリーン水素によるFCVへの置換を進めます。都市部や日常使用なら航続距離150キロのEVで十分。長距離の移動が必要な時や、トラックにはFCVが最適。私が環境相ならそうするんだけどなー。どうでしょう、進次郎さん!

本当は、全固体Liイオン電池の問題(製造技術上大型化、量産が困難)も書きたかったけど、このへんでやめときます。


2021年6月8日火曜日

EVシフトを考える⑫

 先日⑨で話題にした、EV用充電スタンドの数を15万基に増やす、という目標に対して、横浜市では道路脇に充電スタンドを設置する実験が始まったと報道されました。

電気自動車の充電スタンド 道路脇に設置 利便性など検証 横浜 | 電気自動車 | NHKニュース

その詳しい内容については、これを推進しているe-Mobility Powerという会社のプレスリリースがあります。

20210608_EV充電器の公道設置に関する実証実験の開始について.pdf (e-mobipower.co.jp)

道路脇に、ピットインする様な感じで充電器があり、最大2台同時充電できる仕組みの様です。これの運用状況を見て、渋滞を発生させたりすることが無いか、など検証を進めるとのことです。

幹線道路を走っていたら、数キロごとにこういう充電設備がある、という様な感じならば、イザという時も空きの充電器は必ず見つかりますよね。ただ、急速充電でも30分ぐらいはかかるわけで、その間何をしたら良いんですかね?道路脇に止まっていても、何もやることがありませんよ。せめて飲み物の自動販売機ぐらい併設しないと利用客増えないかもしれません。フリーのWiFiを設置しといて欲しいな。そういうのアリとナシで利用状況を比較してみる、というのもいいんじゃないでしょうか。

そういえば、EV充電スタンドの拡大については、ただ数を増やすんじゃなくて、必要なところに行きわたるように、と豊田章男自工会会長も釘を刺してましたね。

“EV充電スタンド 必要な場所選んで設置を” 自工会 豊田会長 | NHKニュース

今回の道路脇実証は、そういう意味では良い取組みになるかと思います。道路インフラの一部ですよ。

2021年6月7日月曜日

EVシフトを考える⑪

 EVシフトについて考える上で、これまで大変に参考にしてきたのが以前にも紹介したYouTubeチャンネル、未来ネットの「EV推進の嘘」という座談会で、軟らかく厳しい指摘を出来るその語り口に感心してしまう、モータージャーナリストの岡崎五郎さんなどがEVシフトで世間が大騒ぎしているところに、それに関わる問題点などを鋭く指摘しています。この座談会自体、座長を務める加藤康子さんの意志ゆえだと思うのですけど、ちょっとナショナリズムに過ぎる印象は最初からありました。ただ、大体6回目ぐらいまではその内容にはほぼ全面的に同意、受け入れでしたけど、7回目ぐらいからちょっとおかしくなり、8回目、9回目はちょっとヤバイかなというぐらい右寄りのコメントが出始めています。

まあ、そもそも各国の政府が自国民の利益のために仕事をするというのは、ごく普通のことです。そこへもってきて、特に安倍政権に対して現政権が後退している、国際社会に対する妥協が過ぎると感じる人がいるのは、感じていますし、そういう思想の持主はきっと不満に思っていることでしょう。そしてまた、同時に日本人のお人よしぶりを非難する(同時にちょっと自尊する)様なコメントが散見されます。「私たちは世界のためにこんなに良くしているのに、それが認められない。また、その日本人のお人よしぶりゆえにに世界の列強は日本からどんどん搾取している。」こういうことを真顔で言う愚か者は、全く珍しくありません。「日本は戦後中国や韓国に対して財政支援したり、技術支援したりして、こんなにも良くしてきたのに、どうして連中は未だに我々をそうも嫌うのか、私には理解できない」そういうことを言う、愚か者です。世間知らずも甚だしく、世界が全く見えていない大バカ者です。スポーツの国際試合の後にスタジアムでゴミ拾いする日本人を報道したがる日本のメディアと、それを見て「日本人はエライ!」と感激するナショナリスティックな日本人・・・私はそれを見ると、日本が戦争を繰り返すことへの不安に襲われます。

日本という国は、特に隣人の各国に対しては搾取という搾取を繰り返し、極東の支配者として振舞ってきた恥ずべき過去があります。良心に基づくとして、大東亜共栄圏構想を正当化していますよね。西欧の列強が散々世界中でやってきたんだから、日本はアジアの覇者として、西欧の干渉は受けず、アジアはアジアで、優等国日本を頂点とする平和と秩序を構築する権利があるのだ、そういう愚かさが、330万人の日本人の命を奪う太平洋戦争へと日本を導いたのです。日本という国が、日本人が、本当にそんなお人よしだと思いますか?黎明期の日本は、韓国や中国から散々テクノロジーを搾取し、恩を仇で返す様に朝鮮に出兵し、関東軍が中国を侵略し、満州国が建国を宣言するわけです。戦後は、自動車や電機業界が欧米にスパイを送り込み、コピー品、リバースエンジニアリングを繰り返してのし上がっていくわけです。そしてまた、恩を仇で返す様に、ホンダは何も産業を持っていないオハイオ州政府に「工場建ててやるから土地をタダでよこせ」という人の足元を見た交渉を平然とやり、勝ち取るわけです。そして、そうしたガメツイ無反省な日本企業軍は世界侵略を果たし、銃後の日本人を潤してきました。満州建国と銃後の日本、時代とやり方は少し異なっても、思想には何の変化もないように思います。それは、お人よしがすることですか?本当に?そんなこと言えば、ナイーブ過ぎますよね。自分たちの強欲さから目をそらしてはなりません。誰か他の人がしたことだから、私には関係ない、私に責任は無いのだと思うのも卑怯です。いつの時代も、(日本の場合は特に強い雄たちが世界侵略の兵隊となって)そうして家族に餌を運び続けることだけを考えるのです。だから、今日の強欲極まりない中国も非難出来ません。いつか日本が来た道を辿っているだけです。時代背景とか環境がちょっと異なりますけどね。

で、それが当たり前だからって、そういうことを繰り返すことを、私は決して支持出来ません。忌み嫌う対象です。それを今日のEUがまだやろうとしている。LCA手法で算出されるCFPを基準とした産業を国際基準としようとするところの背景にある、西洋人が最も得意としてきた、「善人の顔をして悪事を働きまくる」、いつものやり方と重なって見えるわけです。カーボンニュートラルにしないと世界の終わりが来るから、それに対してEUは最も先進的に取組んできたんですよ、感謝してください。だから、これからの産業については我々がルールを決めます。反対は無いですよね?(出来ないよね?)ってことで、CFPの多い日本製品や中国製品はEU圏内で売ることが出来なくなります。これは合法的判断ですから、不正な自国製品の保護とかじゃないですよ、と言うための準備をしているんです。だから、先日話題にした、AESCはもちろんのことで、BYDも、CATLも、このままにしていたらいずれEUからは締め出されます。散々技術を盗まれ、中国の環境を実験場にされた後で、です。ただ、日本と中国の立場が決定的に違うのは、EUは中国の資源と市場を使い尽くしたいと思っていますが、日本はそういう魅力がありません。中国が持つレアメタルはEVを作るのに必須ですから、EUは表向き中国を激しくバッシングしながらも、裏ではそれらの供給確約をとりつけていて、中国にもメリットがある様に交渉を続けています。もし断れば、国際社会での締め付け厳しくする。対して日本は叩いても何も出てこない。EUから見て相対的に価値が小さいのは明らかです。

そこへもってきて、若干ニュートラルというか、実利主義的なのはアメリカかも知れません。イデオロギーなんて、どうでも良いというところがあります。アメリカ流自由社会を強制してくるかの様ですが、実はそんなことあまり気にしていません(特に共和党は)。だからサウジアラビアとも仲が良いわけです。金が基準で動いているわけで、ある意味アメリカと一番理解し合えるのが中国だと思いますよ(拝金主義の極み)。で、日本はかなり、イデオロギーなんですよ。日本が最高で一番正しいと心底思っています。だから、EUとはストレートに対立することになります。でも、クレバーなのはEUの方ですね。日本はお人よしっていうより、まだまだ世間知らずです。鎖国が長すぎたから仕方ないです。少なくとも中国を敵にしてはいけないですね。いつか来た道。ドイツ皇帝は自国を守るために、日露戦争を仕掛けたのですよ。日中を戦わせて一番喜ぶのは誰でしょう?ドイツと中国の蜜月ぶりが凄いですけど、中国人にもあんなのを信用しないで欲しいと語り掛けたい。本当の意味で互いを尊重し、平和と自由人権の下に人々が健やかに暮らせる先進的なアジアを共に築き上げたいですよ。人権問題で相容れないですけどね。今日的には、そこにアメリカに同調する日本、赤を嫌う日本があると思います。私も、基本的人権は何より大切だと思っています。

どこがEVのハナシなんだか全く分からなくなりましたね。要はですね、未来ネット第8回でドイツの新疆ウイグル進出をジェノサイドと言ってしまったのは行き過ぎです。ナチスドイツと重ね合わせるなんて。そんなことを言い出したら、相互理解とか協調とかって、絶対無理です。諸国の政府が自国民のことを思って仕事をするのは当たり前です。日本政府のそれに不満があるからって、それを日本はお人よしだから、とかって言って自己犠牲を払っているかの様なフリをするのは全く正しくないですし、理解し擁護される発言ではありません。ドイツはちゃんと戦後の清算をし、被害を被った国に対して謝罪しましたよ。対して日本はどうですか?こんなことであれば、信用信頼されないのなんて当然です。この未来ネットで池田直渡さんが引用している2017年の経産省のレポートは私見ましたが、これは安部政権の当時の戦略に思い切り寄り添った書き方をしているに過ぎず、こんなことを国際社会が認めると思ったら大間違い、というレベルの書き方です。日本は既に低炭素化のために沢山取り組んできたので、もう自国で減らせる分はさしてない。一方で新興国や途上国ではいまだに旧式のインフラでCFPが大きくなっている。だから日本の先進技術をODAして、諸外国を助けますから、それを日本の脱炭素への貢献として認めて下さいまし、というのがそのあらましです。当時は、まだ日本が先手を打てるかも、と経産省も思っていたのでしょう。いかにも、正しい主張の様に聞こえますが、そのインチキを見抜いたEUからはNOを叩きつけられ、現菅政権では遂に2050年カーボンニュートラルを宣言させられた、というのがここまでの流れです。諸外国を助けるんじゃないんです。日本の財閥系企業を助けると言っているんです。インストール先の国にはお金を請求しないけど、それを作った日〇とか東〇とか三〇にはちゃんとお金は渡りますよ。合法的に日本を支える財閥に税金を流し込む理由を作るわけです。本当の理由はそれだけ、でも表向きには国際支援になっている。国民もそれを信じている。「今の官僚はこのレポートを読んでいるのか?こんな立派なことが書いてあるのに!」という話になっていますけど(第9回で)、知っているに決まっています。霞が関は庶民よりもはるかに勉強していますよ。安倍政権時代には、こういうアプローチをしたら、話の流れを日本に有利に持っていけないかな?とトライしたわけです。先方は日本の数段上手で賢い、あくどいですから、足元見られて「ダメ」と来たわけです。そうこうしているうちに、低炭素、80%削減から脱炭素、100%にエスカレートし、日本に逃げ道は無くなりました。実現出来るかどうかは関係なくて、宣言し、宣言に基づいて行動することが必要なんですけど、「実現できるわけがないんだけど」などとやる前から言うことは許されません。宣言し、絶対にやると言い続けて行動するのです。しかし、出来ないことは出来ないと、皆が気づく時が必ずやってきます。それは誰のせいでもないです。そしたら必然的に軌道修正、現実的で最良の対策を議論することになります。「やれなくってもいいから」とやる前から言うな、ということです。

こういうことをグルグル考えていると、本当に誰が一番あくどいんだか、私には分からなくなります。私自身は、そんな手の込んだ悪事を考えられる程、頭も良くないし、小心者なので、良心の呵責に耐えられなくなります。でも、それをやってのけられる人のことを世間では優秀な人、勝者と呼ぶんでしょうかね。話伝わったでしょうか?このことがVWが出資するスウェーデンのNorth Volt社設立やCOP26におけるEU,英国からの日本包囲網につながるんですよ。日本政府の代表は覚悟して闘いに挑み、全部言いなりになって帰ってきてはならないという使命感を持ってもらうしかないですね。今週はG7首脳会談です。菅総理頑張ってくださいね。共存共栄という思想は連中には無いですよ。日本潰しに中国やロシアも利用されます。それを分かっていて、変える力が無いから日本はアメリカにすり寄る。でも、自国の利益のことだけを語る時代ではもはやない、というのも本当だと思いますよ。世間知らずのお人よしは困るけど、一方で自国第一主義も同じくらい世間ずれしていると思います。テクノロジーは刷新されたのに、思想は古い。そういうのが続いている様に感じられます。あるいは、その思想ってのは決して変わることの出来ないものでしょうか?持続性を最上位概念として、活動を再定義したら、より良い世界を創るためのリーダーシップも再考されるのではないかと思います。世界の模範となり得る様な持続可能社会への挑戦を見せられないものでしょうかね?日本は後手後手の様になっているのが大変歯がゆいです。


2021年6月4日金曜日

EVシフトを考える⑩

 EVのハナシも遂に10回目になりました。あまり長く書きたくないですが、まずはモンスターEVの馬鹿らしさについて。スポーツカーメーカーとしてその名を馳せてきたポルシェはタイカン(「体感」じゃないよ)というEVスポーツカーを販売しています。そのレポートは動画等含めてあちこちあるので、興味のある方は見て下さい。きっと素晴らしい走行性能であろうことは疑いようがありません。実は私、ポルシェに乗っていたことがあります。997というコードネームの911というガソリンエンジン(3.6 Lで325 PSという控えめのヤツ)のクルマをなんと新車購入した馬鹿者です(その前にボクスターというのも乗っていた)。いや、相変わらず自動車好きなので、これだけは誤解の無い様に言っておきますが、確かに、20世紀に始まった自動車産業が進化し、物凄い自動車を生み出すまでになったことは事実で、そうした高性能車を生み出すこと自体が過ちだったと言うのはあまりにナイーブです。工業製品として正常に進化を続けて到達した極みと言えましょう。私が乗っていた911はギリギリまだ楽しいと言えるスピードであり、大変な感銘を受けた、自身の自動車経験の中で頂点にあるクルマであったことは間違いありません。文化文明テクノロジーの進化の象徴としては、高性能なスポーツカーは博物館にとっておかなくてはなりません。しかし今やヘビー級スポーツカー(やスーパーSUV)はそれを遥かにしのいで無用と断言できる程になってしまった・・・。自らの拡大を止めることが出来ず、遂に絶滅した恐竜を想起させます。これを続けたら自動車文化そのものが滅びるのです。乗り物としてのタイカンは恐らくポルシェ流に洗練されまくっていて、乗って悪かろうはずがありません。しかし・・・。

タイカンの最上級、ターボSというモデルは、静止状態から時速100キロまでの加速に要する時間がたったの2.8秒です。最高速度は控えめな260 km(ははは・・・)。93.4 kWhのバッテリーを積み、とても重いクルマなので、電費は悪く、実質3 km/kWh程度だそうです。電費の優等生はEVのパイオニアと言える日産リーフで、実質8 km/kWh程も走る様ですが、実は新型になって、若干ですが電費が悪化しているみたいです。客の要望に応じて豪華で大きくなり、モーターのパワーも向上すれば、当然効率は低下する。燃焼制御によって飛躍的に燃費が向上した内燃エンジン車は、さらにハイブリッドで大幅に効率向上しましたが、EVに関してはkWhあたりの走行距離は今後もさして伸びないでしょう。EVは元々効率が高いのです。エネルギー回生制御による伸びしろもさほどなく、むしろバッテリーが過熱しない様にチビチビと電気を出すのが一番効率向上に効果的です(出すのも入れるのも、小さい電流にすると損失が減るのがバッテリー)。EVが注目される様になって以来、その効率の良さは忘れ去られ、運動性能や航続距離ばかりが注目されている様に感じます。

で、そのEVへの注目を巻き起こしたのは、やはりテスラでしょう。今年登場した最新のEVスポーツカー、テスラロードスターは、あきれる程の高性能車です。普通のモデル(爆笑!)でも0-60 mph (96 km/h)の加速が2.1秒、オプションの「スペースXロケットスラスター」なるものを装備すると、それがなんと1.1秒(!!!)になるのだそうです。乗員が気絶しますけど、いっか、自動運転でしたね!最高速度は400キロを超えるそうです。カッコイイですよ、画像は以下にあります。

0-96km/h加速がたったの「1.1秒」! 新型テスラ ロードスターがロケット搭載!?  | clicccar.com

で、これがもちろん必要となる性能でないのは明らかです。必要かどうかの問題じゃなくて、一番凄いモノを手に入れたいという人の欲望に応えるということですよね。きっと色んな制御が入りまくって、危険な状態には陥らないのだと思いますが、スポーツしているのは自動車のほうであって、運転している腹の出たオッサンではないですよ!要するにですね、技術が新しくて考え方が古いのです。デッカイ液晶画面が付いてるとか、無線通信してるとか、そんなギミックはどうでも良いです。技術は最新の2021年製ですが、こんなものを欲しがる人は、20世紀型、恐竜時代の思想の古い人たちです。

もちろん、このロードスターはテスラにとってのシンボル的車両であって(こんなものをシンボルにするな、と個人的には思えど)もっと効率が良くて安くてコンパクトなEV(モデル3という車両)も主に上海工場で作っていて、販売が伸びているのはこちらです。日本での価格は429万円で、80万円の補助金が付くから実質349万円。テスラはさらに安価なモデルを準備していて、いずれ200万円を切るモデルも出てくる様な噂がありますが、性能、航続距離は妥協せざるを得ないでしょう(これは物理法則なので奇跡は起こりません!)。で、そんなのが出てきたら、日本車はやられるぞ!とテスラの凄さを強調する五味康隆さんのレポートがありました。

「このままでは日本車は本当にヤバい」自動車評論家が決死の覚悟でそう訴えるワケ (msn.com)

私はテスラを運転したことがないので、テスラがどうかを語る立場にはありませんけど、想像は出来ます。EVはある部分ではエンジン車に勝るでしょうけど、全てにおいてではありません。上記のコラムでは、上海の新興EVメーカー、NIOのことも書かれています。確かに、他国がやりたくってもなかなか実現出来ていないバッテリースワップ式(充電済みの電池と3分で交換)を導入するなど、見るべきところが多いです。自動運転技術についてもテスラ以上と言われています(しかし、レベル3以上の自動運転を可能とする法整備には時間がかかりますよ、中国以外は)。NIOのクルマが日本に入ってくるのは当分先(永久に無い?)でしょうから、全く馴染みがないでしょうけど、ご関心のある方はグローバルのウェブをご覧ください。

NIO - Home

これ、開発している技術者がほとんどヨーロッパから来ているみたいです(特にドイツ)。EUで実践出来ないことを中国政府がやらせてくれる。法律も実験に合わせて変えてくれる。なんと有難い!?今やこういう開発競争において、中国は計画経済の強さを如何なく発揮していると言えますね。でも、EUはさらにしたたかですよ。自動運転も全固体電池も危ないうちは全部中国でテストし、進化させて、最後はEUに持って行った上でアジア製品をシャットアウトします。なんでそんなことが可能になるのかは多分今回は長いので書けません。次回以降。そのうち。

NIOの全固体電池(2022年と言われる)は150 kWhだそうです。ワンチャージ1000 km以上を豪語していますが、実質はせいぜい600 kmでしょう(電費4 km/kWhとして)。でも、それなら1日で消費し切ることはなかなか難しいし、スワップステーションの数が足りれば3分で「満タン」になります。「本当?」と疑ってかかる人もあるでしょう。発火などの事故を起こす可能性はあるものの、技術的には高性能で長距離可能で半自動運転が可能なEVってのは、不可能ではないと思います。それなら従来の高級車市場がこれにどんどん置き換わって、発展するでしょうか?ある程度は行くかもね。恐竜世代は買うかも。しかし、こんなモンスターEVたちには未来は無いと確信します。

そもそも、そんな巨大なバッテリーは滅茶苦茶高い上に、大量の希少な化学品を要し、製造にかかる環境負荷が高く、大量生産などしてはなりません。さらに製造と使用に要する大量の電力を一体どの様に得るのでしょうか?これ以上化石燃料は使えないし、原発も少なくとも拡大は難しい。再エネは必要分を賄えるまで拡大するのが優先で、おもちゃで遊ぶために準備する程の余裕は無い。そして、そういう超高性能なEVが不要であるという事実にいずれ気づいて(それか恐竜世代が絶滅して)、大幅に伸びたりは絶対にしないと思います。そもそも、環境負荷など顧みずにスピードに酔いしれる恐竜世代は、1リットル1000円でもガソリンを買ったら良いじゃないですか。そしたら、昔のF1エンジンでも何でも使って、狂気の雄叫びを上げながらこれ見よがしに爆走したらいい(迷惑だけど)。太陽光発電による電力で水とCO2を還元して水素とCOを作り、フィッシャートロプシュ反応で合成グリーンガソリンを作ったらいいです(リッター1000円では買えないぐらい高い)。要するに、モンスターEVはそれと考え方が全く同じで、未来の無い乗り物だということです。

一番現実的で、有用なのは、トヨタが販売を予定しているC+podの様なEVです。

トヨタ C+pod | トヨタ自動車WEBサイト (toyota.jp)

二人乗りで、性能は控えめ、軽いから日常使用には十分な航続距離があり、バッテリーも小さいので安価、環境負荷低、充電速い、電費良い、良いことずくめです。先進的な運転支援や安全装置は当然入ります。これは二人乗りですが、四人乗りで少し荷物を積めるバージョンも出るでしょう。今や軽自動車だって十分快適なのですから、乗ってて危険を感じる様なことはないと思います。今日常的に使っているクルマをみんながこれに換えてくれたら、それだけでも相当低炭素が進みますよ。ただ、やっぱり電源の脱炭素が前提ですけど。電源が汚いなら、燃費の良い軽自動車やコンパクトカーと環境負荷はさして違わない。

「ちっとも面白くない?」そう思う人は少し恐竜の血が入ってますか?(かく言う私は明らかに恐竜の生き残りです)これだと持続するんですよ。だから価値がモンスターEVより高い、より先進的で優れている、普段乗っている大きすぎるクルマをこれに換えることはカッコイイ生き方である。そういうのが本当のEVシフト(思想のシフト)で、全然我慢や諦めじゃなくて、進化と成長ですよ。長距離の移動が必要な時はFCVをレンタルしたらよろしい(シェアリングでも良い)。こういうの作らせたら、日本はまだまだ強いと思います。ミニマリズム、盆栽、日本人の美学。だから、五味さんはテスラを美化し過ぎ。私は全然同意出来ません。本当にバッテリーをじゃんじゃん作ったら、地球環境は即死ですよ。その前に過ちに気付いて止まります。資源がもちません。だから、日本はどんどんこういうミニマルEVを開発して、街の景色を変えちゃいましょう。そしたら、アメリカも中国も、EUも入ってこれません。軽自動車にこそ、日本のオリジナリティーがある。その考え方は、今最も進歩的だと言えます。問題は・・・儲からないんですよ。小さくて安いクルマは利ザヤも小さい。そこを政府が助けてあげてください。モンスターEVには支援ゼロ、ミニマルEVは補助金タップリで、今の軽より買いやすいぐらいにする。ミニマルEVが進化すると、世界が(特にこれから需要が伸びる途上国の都市部では)「あ、あれ良いな」となって、強い輸出産業になりますよ(以前紹介したPCXエレクトリックからの上級移行)。日本国内で、早く電源のクリーン化を進めること。ミニマルEVを優遇する道路交通法の改正など、購入の補助金以外でも色々やれる支援はあります。モノ作って沢山売ることしか考えていない古い世代は発想が貧困なんですよ。だから恐竜は絶滅したの。もう食べ続けるのやめなさい。

本当はもっと書きたいことがあるのですけど、とても長くなったのでここらでやめます。EVのハナシはまだまだ続きますよ。




2021年6月2日水曜日

EVシフトを考える⑨

 今日は、日本国政府が2030年までにEV用充電スタンドを今の5倍にあたる15万基に増やす目標を掲げたことが報道されました。

クルマの電動化加速へ新目標 EV充電スタンドを5倍の15万基に 政府(NHK)

これは言うまでもなく、2035年までの自動車電動化目標(まだ法律ではありません、BEV, PHEV, HV, FCV全てを含みますので、非ガソリン化ではありません)への変化を加速したい、そのためにはインフラ整備が重要、ということです。しかし、現実には補助金まで使って建てたまだ使える充電スタンドが利用が少ないことなどを理由に撤去され、充電スタンドの数が減少傾向にあることは前にお伝えしたとおり。やるからには、民間任せではなくて、採算性など関係なく必要な場所に十分行き届く様に計画的な設置を進めることが重要と思います。

しかし、「ガソリンスタンド並みに利便性を高める」という目標に対しては、15万基でも果たして十分かは疑問です。国内では自動車の数が増えない上に、燃費が大幅に向上して(良いことだ!)ガソリンの需要が低下し、ガソリンスタンドの数はピーク時の6万店舗の半分以下、2万9千店舗程度に減少しています。

ガソリンスタンド店舗数で、平成の30年間を振り返る! - 最新版・ガソリンスタンド店舗数推移- (gogo.gs)

山形にもよくある様な山間部の集落に居住する人にとっては大変で、自動車が必須な環境で生活するにも関わらず、ガソリンを補給するためだけに20キロ走らないとならない、という状況が発生しています。それ自体も問題なのですけど、でもまだガソリンを手に入れるのはEVの充電よりずっと簡単だと思います。上記の2万9千はガソリンスタンド、すなわち店舗の数で、給油機は大抵1店舗で4基ぐらいはあるので、EV用充電器の数を15万にしてもその数にはあまり違いがありません。さらに、ガソリン補給は3分もあれば済みますが、充電は急速充電であっても30分はかかります。しかも今後登場すると思われる100 kWhモンスター級EVだと、今主流の20 kWに満たない急速充電では走行50キロ分も充電出来ないと思います。これらのことを考えると、15万基あってもまだまだ、という感じがします。ただまあ、先客がEVスタンドを使っていても、すぐ近くに空きが見つかる、という様な状況にはなるかも知れませんね。ガソリンスタンドの給油機だって、使われていない時間の方が長いです。

もう一つ、海外との比較ですが、アメリカはバイデン政権になって、全米に50万基のEVスタンドを設置するための公共投資を宣言しました(達成時期は不明)。一方EV世界ナンバーワンに既に躍り出た中国は、今年のうちに60万基の設置を完了する見通しです。アメリカや中国の国土の広さを考えると、単なる数の比較ではないことは明らかですけども、中国のこのスピード感は計画経済こそが成し遂げるものと言えますね。

再三書いている様に、EV化推進が脱炭素への唯一の解ではないし、日本の自動車産業の崩壊につながる危険性さえあります。水素や合成ガソリンのことも上記の記事では触れられていて、日本政府はそうした技術が拡大することへの期待も示しています。しかし、上記の中国の動きを見ていると、EV推進が脱炭素に本当に貢献するかどうかなどは無関係に、EV化自体は世界的なデファクトとなって、この変化は止まらなくなるように思われます。

2021年5月31日月曜日

EVシフトを考える⑧

 コインパーキングのTimesなどを経営するパーク24が6800人の会員向けにEVへの関心を調査するアンケートを行い、その結果を公表しました。私など田舎暮らしの者はほとんどそういうパーキングを利用することがありませんので、回答者の中心は日常的にコインパーキングを利用することが多い、都市部に在住している人と思われます(あるいは頻繁に都市部に出掛ける)。なので、全国的な動向と思わない方が良いかも知れません。調査結果は今朝にNHKニュースで報じられていました(ビデオ見れます)。

EV購入「200万円以下で検討」が6割 価格引き下げが普及のカギ(NHK)

大元のアンケート結果のデータと説明は、以下のページを参照した方が良いです。

200万円以下なら7割が購入検討、EV普及の鍵は「価格」…パーク24調べ(Response)

太陽光発電の普及のためにも、初期はかなり多くの補助金が付いて、購入意欲をそそる様にしていましたが、EV購入にも相当大きな補助金が、経産省、環境省、そして多くの自治体から出ます。

【2021年最新版】EV(電気自動車)補助金まとめ・家庭用EVの購入を検討している方必見! | 電力比較サイト エネチェンジ | 電力・ガス比較サイト エネチェンジ (enechange.jp)

自宅の電力システムと連携するV2Hを導入すると、もっと補助金が付きます。実際には400万円以上する車両が300万円で買えると言われれば、お買い得回路が刺激されて、「ここで買わないと損かな、どうせこれからはEVの時代だし」と思う人が出てきても不思議ではありません。行政側の狙いもまさにそこ。しかし、太陽光発電は期待通り補助金に後押しされて普及が拡大し(グローバルに)、価格も大幅低下してもはや補助など不要な安価なシステムと化しましたが、EVについて同じ図式が成り立つかと言えば、ちょっと難しいと思います。

最初のアンケートの話に戻って、200万円以下と答える人が多い一方で、EV購入のポイントに航続距離が長くなれば(それも500キロ以上!)と答える人も12%と、とても多かったのです。200万円以下は、実はそんなに問題ではありません。EVの中古車は恐ろしい程価格が低下しています(魅力が無い証拠)。5年落ち、走行5万キロに満たない日産リーフが60万円で買えます(新車時400万円ぐらいしたのに)。EV生活を始めたいなら、それで十分じゃないでしょうか。そして、これからホンダ(と他メーカーも)は軽のEVを出してきます。補助金ナシでも200万円切りを実現すべきと思いますが、補助金があれば優に200万円を切るでしょう。ホンダは明らかに政府の後押しを見込んでいます。しかし、走行500キロ以上は問題です。「1日に500キロ以上走ることは無いだろうから」がその根拠であることは明らかなのですが、実際にワンチャージで500キロ走行出来る車両はカタログ上700キロぐらい走れる車両です。EVは重く、決して効率は高くないため、実質的な電費は良くても5 km/kWh程度です。それを実電費として500キロ走行するには、やっぱり100 kWhもの容量を持ったバッテリーが必要になります。住宅10軒分ぐらいの電力を注いでも一晩でフル充電することは困難な程の大容量です。そして当然それは非常に高価なバッテリーです。

この矛盾を生じる原因は、EVを従来の自動車からの置換でしか捉えていない消費者の心理(と一般的な認識)にあると思います。大容量、重量級、高額なバッテリーを積み、ハイパワーなモーターで重たいクルマを動かすモンスター級EVは、極めて不合理な乗り物です。大半の使い方である、通勤、普段の買い物や駅までの送迎とかに、どうして500キロの航続距離が必要でしょうか?岡崎五郎さんの言葉を借りれば、「ちょっと公園に散歩に行くのに、500 mlのペットボトルの水を持っていくんじゃなくて、20 Lの水タンクを背負って出かける」のと同じです。ガソリンは軽く、すぐに補給できるので、満タンでスーパーに行くことに無駄は感じませんが、EVの場合、その用途に巨大バッテリーは完全な無駄です。EVは新種のモビリティーであると割り切って、従来の自動車とは違った使い方を普及させていくべきと思えます。とは言っても用途に合わせて何台もクルマを所有するなんて出来ないですよね。しない方が良いです。所有するなら、日常使用に最適なサイズで軽量、必要十分なだけのバッテリーを備えて安価なEV。これを日常的には使いつつ、長距離の移動にクルマを使いたい時には、内燃エンジン(HV含む)又はモンスター級EVをレンタル、シェアリングする、というのが最も合理的と思えます。利ザヤの小さい小型車中心というのは、自動車メーカーにとっては面白くないです。実は私自身は「EV購入は検討しない」の18%の一人です。うちの事情からすると、EVを選ぶ理由がまだありません。

さて、それでもなお、「EVがもっと普及すればバッテリーも安くなってEV自体の価格が下がるじゃないか」「そしたら全てをこなせるゆとりのサイズで長距離OK、急速充電OKのEVもアリでは?」という期待もあるかと思います。「そんなちっこいEVなんて嫌だな」という心理的抵抗もあるかも知れません。しかし、バッテリーは既にかなり大量生産されていて、今後大幅に低価格化するとは期待しない方が良いのです。まず、既にここにも書いているとおり、車載用バッテリー産業は既に日本が撤退、まず韓国のLG、サムスンに行き、それも劣勢となって、中国メーカーが既にトップに躍り出ました。すなわち、EV普及の前にバッテリー産業は既に最も安く作ることが出来る地域に渡ってしまったのです。それでもバッテリーが高価なのは、コバルトとかリチウムなどの希少元素を使う、マテリアルコストのためです。製造コストは下げられても、マテリアルコストは下げられない。実際、バッテリーの価格はその容量にほぼ正比例します。だから、モンスター級EVが高額なのは当たり前で、待っていても劇的に安くなったりはしません。ゲームチェンジャーとして期待される全固体リチウムイオン電池(こちらは製造技術の問題がまだ多いようです)も、利便性の向上には寄与しても、低価格化への切り札にはなりません。中国製でも、クオリティーの高い製品についてはバッテリーは安くならないと思いますが、安全性を妥協しまくったB級、C級製品ならば低価格化は進む(ノーブランド品)と思います。あちこちで発火事故を起こす、通販で売っている中国製電動おもちゃとかのレベルです。でも、おもちゃが壊れるのと、命を預けるEVが壊れるのはワケが違いますよね。

EVシフトはかように難しいのです。これを後押しするために、行政が湯水のように税金をつぎ込みまくるのはやめて欲しいと思います。技術的な課題と、これを取り巻く国際情勢を冷静に分析した上で、健全でなく、自立出来ない方法での拙速なEVシフトにはあらためて反対したいと思います。

2021年5月30日日曜日

EVシフトを考える⑦

 日産とNECが合弁で設立した車載用Liイオン電池メーカーAESCが中国Envisionグループに売却され、再スタートを切ったエンビジョンAESCが、茨城県に6GWh/年の生産能力を持った工場を建設し、「国内での電池生産への投資が加速する」と報じられました。

EV向け電池の大規模工場 茨城に新設へ 日産出資の電池メーカー(NHK)

「おお、いいことだね!」と思われてしまいそうですが、これは注意深く今後の動きを見る必要があると思います。まず、報道で言う「日産出資」というのは株式の20%で、Envisionが80%、すなわち実際には中国のメーカーである、と考えるべきです。以下のエンビジョンAESCのウェブにある、プロモーションビデオにちょっと寒気がしました(全編、中国語の字幕が出ます、東工大、東大、京大とかの名前出すのも寒気…)。

Envision AESC (envision-aesc.com)

日本の技術者等が代わる代わる如何に同社のバッテリー技術が優れているかを語り、今後の業界のリードに対する強い自信を語っています。その言葉は別に嘘ではなくて、何しろ9年の実績がある日産リーフはAESCの車載専用バッテリー(テスラの汎用品とは違う)を使い、一度も火事を起こしたことが無い、さすがのMade in Japan製品でした。しかし、競争力が無い、採算性が悪いからこそ、身売りせざるを得なくなり、中国資本に身を委ねた(毒まんじゅうを食べた)のです。茨城工場の6 GWh/年は凄いと思いましたが、中国では既に20 GWh/年を生産する巨人です。しかも、それは手に入れた日本製技術を使って。CATLやBYDと同様、今後グローバルに拡大して、中国の経済を潤すことになるのでしょうか。日本の技術が中国に流出する・・・先のビデオも、そう考えると中国側の投資家に配慮した感がアリアリ。

いや、事態はさらに複雑で、その先があると思っています。これはまた次回以降議論しますけど、EUはさらにしたたかな戦略、アジア製品を合法的にEU市場から締め出す準備をしています。VWグループは特にその先兵で、中国への進出の仕方が凄いです。当然、中国のEV用バッテリーメーカーと協業することになるでしょう(Envisionを含めて!)。そして、それはスウェーデンのクリーンな水力発電電力で、極めて低いCFP(カーボンフットプリント)で作られることになります。あるいはフランスの原子力か?すなわち、中国や日本が自国のクリーン電源化を大きく進めない限り、アジア製のEVバッテリーはCFPが大きすぎて、EU市場から追い出されることになります。悔しいことに、きっとノースボルトが製造するバッテリーに日本の技術が使われることになるのですよ!

Why Northvolt | Northvolt

それがCOP26の真の目的かと勘繰りたくなってしまいます。ああ、エグイ。経済戦争は無慈悲というか、そこに技術者に対するリスペクトなんて全然ないですよねえ。


2021年5月20日木曜日

EVシフトを考える⑥

 EVについてニュースが入ってきました。

中国BYD、一般向けEVは欧州で初発売 テスラの牙城ノルウェーに進出(36Kr Japan)

BYDは中国南部深圳に居を置き、EVタクシーやバスを中心に既にグローバル進出も一部果たしている(日本にも)中国のEVトップメーカーですが、バッテリースワップシステムで注目される上海のNIO、アリババの支援で自動運転に最も力を入れていて中国版テスラという感じの、広州の小鵬汽車(Xpeng)もやはりノルウェー進出を計画しているとのこと。

なぜノルウェーか?それは豊富な水力発電能力ゆえに、EVの普及と使用環境の整備が最も進んでいる地域だからで、僅か500万人の小国に、既に22万6千台のBEVが走っているそうです。その市場を支配しているのは米国のテスラで、今回の中国三大EVメーカーのノルウェー進出はテスラへの挑戦であり、そこを足掛かりに全欧州への進出を企てているとみていいでしょう。

前も少し書きましたが、私は2018年の2019年の2回深圳の北京大学大学院に行く機会がありましたが(また行くと思いますが、今は行けない)、タクシーやバスはほぼ全てがEVになっていて、混雑した中心部でも新興国によくある様な大気汚染が無いのが素晴らしかったです。一体どこで充電しているのか、充電器につながっているEVと走っているEVの比率はどれぐらいなのか、使っている電力はソーラーなどのクリーン電力か、石炭か、原子力か、など色々考えてしまいましたが、とにかく短期間にそれほどまでに変えてしまう中国計画経済の力には脱帽でした(同じ時に訪れた広州や北京は普通にガソリン車がまだ走っていました)。

この三メーカーについては知りませんが、中国製EVの多くが火災事故を起こしている様です。今回のノルウェー進出においては万全の安全対策を施して信頼を獲得することが何より重要でしょうね。そんなこと、私が言うまでもなく経営陣は分かっていると思います。米中の関係がここまで冷え込んでいる中では北米進出は困難でしょうから、その照準は欧州マーケットにあてられているということですね。次は日本かも知れません。まあ、日本の自動車販売台数はあまり多くないですし、充電インフラ整備の遅れが致命的ですが。

2021年5月13日木曜日

EVシフトを考える⑤

 自動車の電動化について、トヨタ自動車からプレス発表がありました。

トヨタ、電動車販売30年に800万台計画 うちEVとFCV200万台(朝日新聞Digital)

ここでいう電動車は「電気を使う」ということで、「電気だけで走る」という意味ではありません。なので、現在主力のHVや、さらにPHEV(表記はPHVでも良いです)など、ガソリンを一次エネルギーとしつつも、電気を動力源に使うことで低炭素化した車両も含む、ということです。トヨタ自動車の年間生産台数は1000万~1100万台なので、それでも8割近くをあと9年で電動化するということになります。もっと肝心なのは、全体の2割に迫る車両を純粋な電動車(EVとFCV)に変えようというのですから、これは先日話題にしたホンダの目標にほぼ肩を並べます(EVシフトを考える④)。そして、絶対数ではテスラの年間生産台数50万台の4倍に達するということなので、トヨタのEVやFCVというのは全く珍しくないという状況が、あと9年で生じているというスピード感です。一方で、残りの2割強は内燃エンジン(ガソリン、ディーゼル)による車両を残すということでもあり、内燃機関に引導を渡すわけではないですよ、というトヨタの考え方が見て取れます。水素とか、アンモニアとか、バイオ燃料とかもありなのかも知れません。走りながら考えるというか、成り行きを見てどういう状況にも対応出来るように技術開発は進めて行こうという合理的な戦略かと思います。全方位的にやろうとするのは、日本的なコンサバティブネスであると批判する向きがあるのも理解は出来ます。しかし、先日のホンダの全面電動化への意志表明の方が夢があって、カッコイイかと言ったら、むしろ可能性の芽を潰す選択と私は感じました。人の営みである研究開発には多様性が大切。この指とまれで一つの究極(と信じたがっているだけ)に賭けるというのは人々の能力を信じ、多様性を尊重した考え方とは思えません。ERESTAGE LABでも指摘されていましたが、恐らくホンダのエンジン技術者はトヨタやマツダに逃げるでしょうね。

2021年5月11日火曜日

EVシフトを考える④

 またまたEVの話題ですが、今回はホンダについて。

40年にガソリン車ゼロ目標 ホンダ、日本メーカー初(Kyodo News)

このニュースには、とことん驚きました。そして個人的にはとても悲しい。前々回の②の話でもあったように、自工会としては拙速なEVシフトに対しては慎重という反応でした。ところが、ホンダは2040年にはガソリン車を完全にやめるというトヨタとは対照的な目標を打ち立てたのです。これにはHVやPHEVは含まれず、EVやFCV(燃料電池車)のみにするというのです。さらにその比率を2030年時点で国内20%(グローバルでは40%)、2035年で80%、そして2040年時点ではガソリンを使う自動車は全く売らない、というわけですから物凄い計画です。現時点でホンダが売っているEVはHonda-eの一車種のみ(しかもバカ高い)、FCVは極めて特殊なクラリティのみ、ですからあと9年で40%がEVやFCVに変わっているというのは想像を超える変化です。日本でのホンダの4輪車販売の半分以上は軽自動車ですが、2024年には軽のEVを市場投入させる予定とのこと。利ザヤの小さいガソリン軽から高級軽EVに変わることで利益率を上げたい思惑があるのでしょうが、それは補助金頼みですね。一番肝心なバッテリーは内製する計画の様ですが、果たしてうまく行くかどうか。

先日このブログでも取り上げましたが、FCVで先行するトヨタは、実は水素エンジンも手掛けています。と思えば、既に先日の上海モーターショーではSUV型のBEVも公開し、しっかりとEVも手掛けています。リスク分散の挙句総倒れという可能性が無いわけではなくて、変化を先読みし、大きく舵を切ることも大切なのかも知れません。ホンダの戦略が吉と出るか凶と出るか、不安だけでなくて、一応期待もしておきましょう。

個人的に何故悲しいかと言えば、それはホンダの歴史に対する敬意と、ホンダエンジンに対する愛情ゆえです。実は自分自身で過去に所有したホンダの4輪車は、ビートとCR-Vの二車種だけですが、オートバイは数知れず。今も所有する4台のうちの3台はホンダです。私にとっては、ホンダはオートバイのメーカーであって、その信頼性の高さと性能は間違いなく世界トップクラスだと思います。今回の電動化宣言は、エンジンの開発をやめます、という宣言と同義になります。なので、これから登場するホンダのガソリン車には期待しない方が良いでしょう。私も今のバイクを壊れるまで乗り続けます。あ、ちなみに最新の統計によると、オートバイを購入する人の平均年齢が何と54.7歳なんだそうです。サザエさんのお父さんの波平さんの設定が54歳だそうで、「波平さんと同じ」と報道されていました。私、波平さんより年上です!私の世代だと、16歳になったらバイクの免許を取るのが当たり前でした(私は忌まわしき3ナイ運動のために18歳でした)。結局バイクに乗る世代がそのまま歳をとったわけです。今や全く未来の無い産業製品になってしまったわけですね。

さて、そんなノスタルジーを語りたかったわけではなくて、やはり危惧するのは選択肢としての内燃機関を捨て去ることはあまり賢明とは思えないのです。トヨタの水素エンジン以上に内燃機関にこだわるメーカーと言えば、マツダでしょう。詳しくは書いても面白くないので書きませんが、自着火方式のSkyactive-Xを商品化した執念には敬意を表します。自分ではやっぱり買わないですけど、内燃機関のそうした技術をさらに磨いていけば、将来、水素やアンモニア等のCO2フリー燃料(と炭化水素の両方)を使える自動車も登場するかも知れません。「究極はコレ!」の様なやり方が最良とは思えないのです。

しかし、今回のホンダの決断をした三部社長は、エンジンの技術者だったそうです。ずいぶん思い切った決断です。あれほどの素晴らしいエンジンを生み出した技術者上がりの社長がどの様に考えて今回の決断に至ったのか、大変興味のあるところです。国際的競争の中で、それが生き残りの道という勝算があるのでしょうか。一連の情報については、私がいつも参考にさせて頂いているERESTAGE LABにもレポートがあります。このYouTubeチャンネルは凄いですよ。また別の機会に紹介しますが、よくぞここまで頑張って情報提供をしてくれていると思います。感謝!

【2040年】ホンダが新車の完全電動化を発表しました(ERESTAGE LAB)



還暦

 私、1966年生まれ、丙午(ひのえうま)です。2026年になりましたので、還暦を迎えました。すなわち、今1歳です。あと何年生きられるでしょうか?ひとまず、60年で色々経験させてもらい、色々なことを学び、考え、行動することが出来るようになりました。出来ることが増えた一方で出来なく...