自分自身がその関係者、当事者としてとても大きな課題なので、きっと1回では書き切れないし色々な新しい思いも発生するので、このテーマはシリーズ化しようと思います。
他国の状況は分かりもしないので、とやかく言えませんが、日本については大学の国際化(あらゆる意味で)は極めて重要、必須の課題だと常々思っています。理系では相変わらず酷い性差別も問題。そのために、自分に出来ることに少なからぬ努力をしてきたつもりですが、期待しただけの変化は起こっていないというか、環境の変化に追付けていないというか、何とも悔しい思いです。個別の誰かが大きな間違いを犯しているとか、障害になっているとかいうことではなくて、日本社会の問題、仕組みの問題によるところが大きいと思うので、内部告発にはならないですけれど、大学の事情を知る当事者であるが故に自虐的というか、大学に対する不満が炸裂することになるのは恐らく避けられませんので(それを暴露しないと問題の本質から逃げることになる)、相当スリリングな展開になることを予め申し上げます。色んな場面で私なんぞよりもずっと上の立場の方からも問題が指摘されたり苦言が呈されることもあると思いますが、そこはエライ人の立場だと言葉を選んで相当マイルドな表現になっていることはお分かりかと思います。何しろ空気を読んじゃう日本人ですし、公な立場では言えることにも限りがあります。行間を読める人には具体的な問題も見えてくるのだと思いますが、私はそこまで行儀よくありません。
気候変動の話でもそうですけど、「いまだに○○だからこんな事になるんだよ!」とか「○○が変えられないようだったら人の世界は終わるよね」とかいうことは嫌というほど分かっていて、それを言っちゃえばどれ程気持ちいいかと思いつつも、そんな乱暴な発言は出来ないし、立場上「持続可能な発展のために○○を心がけましょう!」みたいな希望を与える発言をせざるを得ず、「無理に決まってるよ・・・」という本音を言うことは出来ない、というのが業界のエキスパート、ご意見番の立場だったりします。それで、真の問題が不可視化されるので質が悪い。「行間読んでね」のマイルド発言でも行間を読み取れる賢い人には良い。でも多くの場合「○○先生もそうおっしゃってます!シャンシャン!」みたいなことになって、何も変わらない、変えようなんて思わない・・・というのが続いてしまいます。薄々感じていても、現実がしんど過ぎるから喜んで騙される、というのもあります。ここでは本当のハナシを思い切り暴露したい!だけど狂犬の様に嚙みつきまくると思われがちな吉田も分別あるオトナです(本当!?)。カーボンニュートラルについて小中高校で話をする時も、一般向け、事業者向けに話をする時も、あれでもかなり控えめです。きっとトーンダウンさせるので、そこは是非行間を読んで下さい!
さて、自分が如何に先見性があったかを自慢してもまるで意味が無いんですけど、今の様な状況になるであろうことは少なくとも20年前には分かっていました。バブル崩壊以降停滞する日本経済。そこから脱出するには、それまでの成功の図式から抜け出して新しい日本の社会を作る勇気と行動が必要だったんですが、空気の支配、同調圧力が強い日本社会、Seniority、性差別、選民意識が強くて、そもそも変化を拒む日本人、当事者意識が薄く年輩に甘えてしまう日本人は大きな変化など生出すことも出来ず(掛け声をかける人はあったけど)、迷い、彷徨い、どんどん衰退しています。顕著に影響が現れたのが先日も話題にしている急速な人口減少、少子高齢化。特に地方は大変。ここまで深刻になれば誰でも不安を感じるわけですけど、バブル崩壊から10年ぐらいの変化の無さを見て、さらには大学の職員となってその古臭さ、変われなさを目の当たりにして、このまま行けば日本が二流三流国家に転落すると当時から思っていました。それで当時の学長に「工学部では合格点に差を付ける女子枠入試をやってでもリケジョを増やすべき」とか「留学生向けの学科を作ってでも人材確保に努めるべき」とかメールを送り付けたところ、「ユニークなアイデアをありがとうございます」というオトナの、ジェントルマンの返信を頂いてズッコケていた吉田助手でした。
何でって、そんなの当たり前です。外貨獲得の先鋒であるものづくり産業、その人材を支える工学部は完全に男が支配する世界です。去年ついに初の女性工学部長が信州大学に誕生したのですけど(素晴らしい!!!)、理系って全くもって男社会ですよ。
地域・女性へオープンに 信州大の次期工学部長、香山瑞恵さん [長野県]:朝日新聞
工学部の先生になった30年前なんてもっとそうでした。「女の子が理系に行っても・・・」と親が止めてしまうぐらいです。で、理系のことは女性には合わないのか?と言えばもちろんそんなことはありません。全く同等、男子より向いてるかも。しかし工学部の女子比率は未だに20%にも満たないです。学生から見たって、リーダーシップをとって活躍するリケジョの先輩、例えばトヨタ自動車の社長が女性になるとかいうロールモデルが全くいないわけですから、それも無理はない。若者が悪いんじゃない。社会が悪いだけ。間違いなく深刻化する労働力不足に対して、人口の半分を占める女性が実質的に対象外扱いされているという状況は、何とも勿体ない。長年に渡る性差別の結果なのですから、これを是正しようとすれば逆差別しかない。と、ずっと前から思っていたわけです。そして、2023年になってやっと、本当にやっと、女子枠入試が始まりました。
大学、工学部「女子枠」急増の背景と狙い…女子のみ筆記試験撤廃の大学も | ビジネスジャーナル
学生もそうですが、工学部の先生にも女子枠。
「女性枠」が生む「リケジョ」の可能性とは? 女子学生が語る入学の決め手とは? - ジェンダーをこえて考えよう - NHK みんなでプラス
何でこんなにも時間がかかってしまったのかと思います。前にも書きましたけど、ウチの大学には「だって女性は論文書けないし、研究費も獲れないでしょ」と本当に言ってしまうエライ方がいらっしゃいました。化石。
で、当然その先には留学生です。18歳人口の減少なんてとっくの昔に始まっていますけど、大学の数や定員はほとんど変わっていません。結果的に起こったのは、何と大学進学率62%。あまりにも学生のレベルが低下して、大学で割り算教えたり、"I am"が現在形で"I was"が過去形ですよ、とかいう信じがたい教育をしている学校もあるそうで…。
大学で義務教育レベルの講義 助成金配分で財務省と文科省対立 | NHK | 教育
今後一層人口減少が進む中で進学率が100%めがけてさらに上昇するかと言えば、そんなことは起こらないと思います。そもそも、「大学なんて用が無い」という人はいます。国立大学さえ定員割れすることになるでしょう。いよいよ学校が消滅する時が近づいています。どれだけAIが発達しても、ロボットが高度化しても、日本経済の活力を保とうとすればその担い手は必要になります。大学は高度人材を供給する役割を果たしてきたわけですが、育て、送り出す人材がいなくなれば、日本の産業はそのまま縮小するのか?そんなことは無いでしょう。人材を輸入するだけです。しかし、そのコストは決して低くはないし、日本の社会で育った人材よりも日本独特の仕組みには入ってもらいにくい、ということはあるでしょう。であるならば、我々が先んじて人材を輸入し、育て、社会に送り出す役割を果たさなくてはならない。それが出来ないのであれば、学校としての役割が終わり、消滅することになる。企業が直輸入するのに任せるのではなく、我々が先んじるのです。
で、賢い人は当然そんなこと考えてますよね。やっぱり頭の良さが違うなあ、東大。
東大 70年ぶりの新学部 再来年秋に設置へ 5年間の一貫教育課程 | NHK | 教育
学部長は外国人、学生の半数以上留学生、何より凄いのが9月入学(国際標準に合わせる)。こうした取り組みをきっかけにして、今後どんどん留学生を増やしていこう、というビジョンが見えます。地方にこそ外国人の力が必要なのに、いつも先を越される…。目の前の都合のハナシしか出来ない田舎大学のリーダー、困りますね。東大や京大の先を越さなくちゃ。
長くなったので、次回に続きます・・・
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