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国立大学法人山形大学工学部教授の吉田司のブログです。2050年までのカーボンニュートラル社会実現に向けて、色々な情報や個人的思いを発信します。発言に責任を持つためにも、立場と名前は公開しますが、山形大学の意見を代弁するものではありません。一市民、一日本国民、一地球人として自由な発言をするためにも、所在は完全に学外です。山形大学はこのブログの内容について一切その責任を負いません。

2026年3月13日金曜日

EVシフトを考える㉓(ホンダ大赤字!)

 各種報道のとおり、ホンダが今季6900億円の大赤字の見通しだそうです。

決算:ホンダが最大6900億円の最終赤字、26年3月期 EV損失で上場来初 - 日本経済新聞

最終赤字となるのは上場以来初めてだそうです。EV関連での損失は最大で2兆5000億円になる見込みだとか・・・天国で宗一郎さん泣いてるなあ。

何故EV関連で損失が出るのか?実はホンダだけではなくて、EVシフトに前のめりだった自動車メーカーは軒並み苦境に立たされています。中国最大手のBYDも利益は相当減っているみたいです。「EVも、やります」で堅実な戦略をとっていたトヨタは比較的安泰?要は、売れないですよね、EV。やれ充電設備が無くて不便、とかいうこともありますけど、そもそも高すぎる。電気を安く、グリーンに作れたとしても(原子力もアリで?)、蓄電池とレアアース、やっぱり資源依存が高すぎて、これからどんどん安く作ります、とはいかない。資源を握っている中国が優位なのは明らか。やっぱりね、早まったよね、ホンダ。売上は当然四輪事業の方が大きいけど、利益を出しているのは二輪事業の方だそうですよ。そりゃ当然、ホンダはバイクのメーカーですから!バイクでのホンダの強みは大変あると思いますが、需要の大きい四輪は競争が激しくて利益率が低いということですな。

まあ、こうなるであろうことは明らかでした。2040年までにガソリンを使うクルマを無くす(EVやFCVのみ)というホンダの発表は信じがたかった。何しろ、素晴らしいガソリンエンジンを作れるメーカーです。やるなら、グリーン燃料の開発を本気で目指して欲しかった。且つて自動車好きが酔いしれたホンダF1のV12気筒エンジンを高らかに歌わせても、温暖化しないんですよ、の方が魅力的。グリーン燃料の本格利用ってのは全然現実味が無いので、それで電化だったんだと思います。私もBEVはいくつか運転しましたが、ガソリンでなくても運転がツマラナイことはありません。むしろ静かで力強く、滑らかに走るBEVの運転は楽しいと思います。運転の楽しみを奪う自動運転は要らないですけど(個人的に)。

ガソリンの様な化石燃料にしても、リチウム、コバルト、ニッケル、レアアースの様な鉱物資源にしても、どっちも日本は持っていないです。それで、どっちが高くつくかと言えば、明らかに後者。中国が鉱物資源を牛耳っていて、それを外交の場で武器化するのはけしからん?資源を沢山持っている国は良いよね?それも違うんです。中国がそれらを牛耳っているのは、資源を持っているからではなくて(ある程度は持ってるけど)、日本やアメリカが中国の生産に依存したからです。最近南鳥島周辺の深海6000メートルからレアアースを含む泥を採取することに成功したことが大きく報道されました。

南鳥島沖レアアース「試掘成功」でも…「世界シェア9割」の中国に抗う「長く厳しい道のり」

これで日本も資源大国!もう中国の好きにはさせないぞ!って感じで政治的に利用されてますね。でもそれ、ただの泥です。レアアース製品ではありません。レアアースに限らないですけど、鉱物資源から必要な成分を取出して純化するのはとてつもなく汚い作業です。沢山のエグい酸とか使い、大量の廃液が生じます。日本やアメリカの環境基準を満たすには大変なコストがかかることになります。一方で環境規制がユルユルというか、カネのためなら何でもやる中国は安く良い製品を供給してくれるわけで・・・ならば中国から買ってしまおう、汚い仕事は中国に任せよう、と自国の産業を断念した結果、いつの間にか完全に中国に支配される状況になったのです。つまり、自らが生んだ問題。

「モビリティーのオール電化なんて絶対無理!」と断言し続けるのは、エネルギーや資源をバカ食いする産業だからなのです。他国を排除して、自国の産業だけ守ることなど出来るわけありません。EVに限らないですけど、人間の欲望を全て満たし、尚且つ環境を破壊せず持続可能である薔薇色の未来は幻想です。テクノロジーは素晴らしいですが、それにアクセス出来る人は人類の何パーセントでしょうか?パリの街角で見かける一箱20ユーロの高級なチョコレートを食べれるのは誰?カカオ豆を生産する人はそれを食べたことがあるでしょうか?

2月4日に「イランのことが心配・・・」と書きましたが、本当に戦争が始まっちゃいましたね。お陰でガソリン価格が急騰。物価高対策の目玉であった暫定税率廃止でやっと下がったのに、逆戻り、もっと高くなるかも。先日アメリカの友人と話していた時に、彼は「これでEV人気がまた復活するかも」と言っていましたが、私は懐疑的です。電気だって化石燃料に依存してる。だから原発回帰?ちょっと前までは「脱原発」「再エネ」が掛け声だったのに。原発を新造しようとすれば、地質調査、建設、試験運転で操業するまでに20年かかります。地震国日本で地域の合意を得ることはまず無理。2050年カーボンニュートラルには絶対間に合いません。安全性が極めて高い「次世代革新炉」ってのも誤魔化し。次世代、とか、革新、って言葉が並ぶと、何だか全然違う良いモノに聞こえますよね。でもその実態はここに説明されています。

「原発回帰で電気代が下がる」は大ウソ…建設費を国民に肩代わりさせる「1兆円超・次世代原発」のカラクリ | PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)

メルトダウンしても、燃料デブリを受ける受け皿が付いているんだとか・・・スゴイね!革新的!一定の効果はあるのでしょう。でも、様々な安全対策でコストは上がるばかり。それについても、上記友人は「いや、溶融塩トリウムの原子炉は絶対安全!」と主張していましたが、これも研究段階。そもそも、そうした最高級発電施設を手に入れられるのは人類の何パーセント?地球上には、まだ電気の無い暮らし(送電されていない地域)をしている人が10億人以上いるのですよ!10億人に満たないG7の国民が世界のカネの半分以上を支配し、下位半分の40億人のカネは2%以下です。それぐらい、世界は不公平なのです。自分の生活の豊かさを失っても構わない、とはちっとも思いません。それは手放せない。でも、その犠牲を見過ごしてはいけないし、犠牲を生まない様に務めること、共に生きる道を探し続けることは絶対必要です。戦争なんてしてる場合ではありません。

ホンダの三部社長、そういうこと全然考えなかったんですかね?EVが行き詰まることは容易に想像出来たと思いますが・・・ホンダの製品(特にバイク)が大好きな吉田としては、残念です!

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