このブログについて

国立大学法人山形大学工学部教授の吉田司のブログです。2050年までのカーボンニュートラル社会実現に向けて、色々な情報や個人的思いを発信します。発言に責任を持つためにも、立場と名前は公開しますが、山形大学の意見を代弁するものではありません。一市民、一日本国民、一地球人として自由な発言をするためにも、所在は完全に学外です。山形大学はこのブログの内容について一切その責任を負いません。

2025年5月28日水曜日

女子枠

 報道のとおり、山形大学工学部システム創成工学科にR8年度入試から女子枠が設けられるそうです。

山形大学工学部「女子枠」 副学部長“組織が変わる起爆剤に”|NHK 山形県のニュース

遅すぎる、小さすぎる。「定員50名のうちの3名は意外に大きい」というのが単なる言い訳にしか聞こえません。実際のバランスの悪さはそんなものではない。新鮮味も無く、規模も小さすぎで、見向きもされないでしょうね。何故システム創成学科だけなんでしょうか。工学部全体でやるべきだと思います。特に女子比率が少ない学科は定員の20%ぐらい女子枠にしても良い。これではインパクトも波及効果も全く無い。何のメッセージにもならない。

先日書いたとおりで、理系の男女バランスの悪さの是正というのは人材活用の点で大変重要です。今の様な状況になることは20年以上前から分かっていたことです。変われない、変わりたくない組織のマズさですよね。周りをキョロキョロして「じゃ私らも…」では遅すぎるんですよ。他大学がまだやっていないぐらいのインパクトのあることを計画して実行しないと。社会の要請に応えて取組むのでは遅すぎて、未来を予想しながら先駆けて、より良い未来にチャレンジする人材を育成するのが学校でしょう。変化は後に来るものだから。

大きな失敗にはならないけど、絶対に成功もしないことに過ぎず、やったふりをするだけなら意味がない。失敗するかも知れないけど、大成功、大化けするかも知れないことにチャレンジしないと変化なんて起こりません。

2025年5月15日木曜日

大学の国際化①

 自分自身がその関係者、当事者としてとても大きな課題なので、きっと1回では書き切れないし色々な新しい思いも発生するので、このテーマはシリーズ化しようと思います。

他国の状況は分かりもしないので、とやかく言えませんが、日本については大学の国際化(あらゆる意味で)は極めて重要、必須の課題だと常々思っています。理系では相変わらず酷い性差別も問題。そのために、自分に出来ることに少なからぬ努力をしてきたつもりですが、期待しただけの変化は起こっていないというか、環境の変化に追付けていないというか、何とも悔しい思いです。個別の誰かが大きな間違いを犯しているとか、障害になっているとかいうことではなくて、日本社会の問題、仕組みの問題によるところが大きいと思うので、内部告発にはならないですけれど、大学の事情を知る当事者であるが故に自虐的というか、大学に対する不満が炸裂することになるのは恐らく避けられませんので(それを暴露しないと問題の本質から逃げることになる)、相当スリリングな展開になることを予め申し上げます。色んな場面で私なんぞよりもずっと上の立場の方からも問題が指摘されたり苦言が呈されることもあると思いますが、そこはエライ人の立場だと言葉を選んで相当マイルドな表現になっていることはお分かりかと思います。何しろ空気を読んじゃう日本人ですし、公な立場では言えることにも限りがあります。行間を読める人には具体的な問題も見えてくるのだと思いますが、私はそこまで行儀よくありません。

気候変動の話でもそうですけど、「いまだに○○だからこんな事になるんだよ!」とか「○○が変えられないようだったら人の世界は終わるよね」とかいうことは嫌というほど分かっていて、それを言っちゃえばどれ程気持ちいいかと思いつつも、そんな乱暴な発言は出来ないし、立場上「持続可能な発展のために○○を心がけましょう!」みたいな希望を与える発言をせざるを得ず、「無理に決まってるよ・・・」という本音を言うことは出来ない、というのが業界のエキスパート、ご意見番の立場だったりします。それで、真の問題が不可視化されるので質が悪い。「行間読んでね」のマイルド発言でも行間を読み取れる賢い人には良い。でも多くの場合「○○先生もそうおっしゃってます!シャンシャン!」みたいなことになって、何も変わらない、変えようなんて思わない・・・というのが続いてしまいます。薄々感じていても、現実がしんど過ぎるから喜んで騙される、というのもあります。ここでは本当のハナシを思い切り暴露したい!だけど狂犬の様に嚙みつきまくると思われがちな吉田も分別あるオトナです(本当!?)。カーボンニュートラルについて小中高校で話をする時も、一般向け、事業者向けに話をする時も、あれでもかなり控えめです。きっとトーンダウンさせるので、そこは是非行間を読んで下さい!

さて、自分が如何に先見性があったかを自慢してもまるで意味が無いんですけど、今の様な状況になるであろうことは少なくとも20年前には分かっていました。バブル崩壊以降停滞する日本経済。そこから脱出するには、それまでの成功の図式から抜け出して新しい日本の社会を作る勇気と行動が必要だったんですが、空気の支配、同調圧力が強い日本社会、Seniority、性差別、選民意識が強くて、そもそも変化を拒む日本人、当事者意識が薄く年輩に甘えてしまう日本人は大きな変化など生出すことも出来ず(掛け声をかける人はあったけど)、迷い、彷徨い、どんどん衰退しています。顕著に影響が現れたのが先日も話題にしている急速な人口減少、少子高齢化。特に地方は大変。ここまで深刻になれば誰でも不安を感じるわけですけど、バブル崩壊から10年ぐらいの変化の無さを見て、さらには大学の職員となってその古臭さ、変われなさを目の当たりにして、このまま行けば日本が二流三流国家に転落すると当時から思っていました。それで当時の学長に「工学部では合格点に差を付ける女子枠入試をやってでもリケジョを増やすべき」とか「留学生向けの学科を作ってでも人材確保に努めるべき」とかメールを送り付けたところ、「ユニークなアイデアをありがとうございます」というオトナの、ジェントルマンの返信を頂いてズッコケていた吉田助手でした。

何でって、そんなの当たり前です。外貨獲得の先鋒であるものづくり産業、その人材を支える工学部は完全に男が支配する世界です。去年ついに初の女性工学部長が信州大学に誕生したのですけど(素晴らしい!!!)、理系って全くもって男社会ですよ。

地域・女性へオープンに 信州大の次期工学部長、香山瑞恵さん [長野県]:朝日新聞

工学部の先生になった30年前なんてもっとそうでした。「女の子が理系に行っても・・・」と親が止めてしまうぐらいです。で、理系のことは女性には合わないのか?と言えばもちろんそんなことはありません。全く同等、男子より向いてるかも。しかし工学部の女子比率は未だに20%にも満たないです。学生から見たって、リーダーシップをとって活躍するリケジョの先輩、例えばトヨタ自動車の社長が女性になるとかいうロールモデルが全くいないわけですから、それも無理はない。若者が悪いんじゃない。社会が悪いだけ。間違いなく深刻化する労働力不足に対して、人口の半分を占める女性が実質的に対象外扱いされているという状況は、何とも勿体ない。長年に渡る性差別の結果なのですから、これを是正しようとすれば逆差別しかない。と、ずっと前から思っていたわけです。そして、2023年になってやっと、本当にやっと、女子枠入試が始まりました。

大学、工学部「女子枠」急増の背景と狙い…女子のみ筆記試験撤廃の大学も | ビジネスジャーナル

学生もそうですが、工学部の先生にも女子枠。

「女性枠」が生む「リケジョ」の可能性とは? 女子学生が語る入学の決め手とは? - ジェンダーをこえて考えよう - NHK みんなでプラス

何でこんなにも時間がかかってしまったのかと思います。前にも書きましたけど、ウチの大学には「だって女性は論文書けないし、研究費も獲れないでしょ」と本当に言ってしまうエライ方がいらっしゃいました。化石。

で、当然その先には留学生です。18歳人口の減少なんてとっくの昔に始まっていますけど、大学の数や定員はほとんど変わっていません。結果的に起こったのは、何と大学進学率62%。あまりにも学生のレベルが低下して、大学で割り算教えたり、"I am"が現在形で"I was"が過去形ですよ、とかいう信じがたい教育をしている学校もあるそうで…。

大学で義務教育レベルの講義 助成金配分で財務省と文科省対立 | NHK | 教育

今後一層人口減少が進む中で進学率が100%めがけてさらに上昇するかと言えば、そんなことは起こらないと思います。そもそも、「大学なんて用が無い」という人はいます。国立大学さえ定員割れすることになるでしょう。いよいよ学校が消滅する時が近づいています。どれだけAIが発達しても、ロボットが高度化しても、日本経済の活力を保とうとすればその担い手は必要になります。大学は高度人材を供給する役割を果たしてきたわけですが、育て、送り出す人材がいなくなれば、日本の産業はそのまま縮小するのか?そんなことは無いでしょう。人材を輸入するだけです。しかし、そのコストは決して低くはないし、日本の社会で育った人材よりも日本独特の仕組みには入ってもらいにくい、ということはあるでしょう。であるならば、我々が先んじて人材を輸入し、育て、社会に送り出す役割を果たさなくてはならない。それが出来ないのであれば、学校としての役割が終わり、消滅することになる。企業が直輸入するのに任せるのではなく、我々が先んじるのです。

で、賢い人は当然そんなこと考えてますよね。やっぱり頭の良さが違うなあ、東大。

東大 70年ぶりの新学部 再来年秋に設置へ 5年間の一貫教育課程 | NHK | 教育

学部長は外国人、学生の半数以上留学生、何より凄いのが9月入学(国際標準に合わせる)。こうした取り組みをきっかけにして、今後どんどん留学生を増やしていこう、というビジョンが見えます。地方にこそ外国人の力が必要なのに、いつも先を越される…。目の前の都合のハナシしか出来ない田舎大学のリーダー、困りますね。東大や京大の先を越さなくちゃ。

長くなったので、次回に続きます・・・


2025年5月7日水曜日

トランプ

 もちろん、カードゲームではありません。あの人です。

「トランプ大統領再び」は、しばらくお休みしていた間に起こった一番大きな出来事でしょうね。このブログの主題であるカーボンニュートラル、持続可能な世界、という目標に対しては大きく後退し、元々難しかったこれらの目標の達成がもはや不可能になったとさえ思える様な変化が急速に進行していると感じます。もう万策尽き果てたとさえ感じて、希望を語る力もありません。今の幸せが一体いつまで続くのか?人類は簡単に絶滅したりしないと思うけど、人が世界の覇者となった、私たちが記憶する世界はあっさり終わってしまうかも。何も準備していなければ、地獄に真っ逆さま。いつまで逃げられるか、どこに逃げるべきかは分からないけど、疎開する準備をした方が良いか?

人が好きで、人を理解したくて、自分も人らしくありたいと思っています。自分にとって、自然科学と社会科学と人文科学には境目が無くて、色んな知識がパズルのピースの様に入ってきて、それを組み立てて「世界とは何か?」を知ろうとするのだけど、自分の経験も知識も少なすぎて、足らないピースが多すぎて、根拠の無い「希望」に逃げ込むナイーブな私。心の奥底では性善説を信じていて、善の力は必ず勝利すると思っているナイーブな私。自分がダメなヤツでも次の世代はもっと賢いと信じている無責任且つナイーブな私。そんな自分よりもさらに経験・知識が少ない上に不勉強且つ超ナイーブな人たちが世界には大勢いるとも思う。信じたいことだけを信じて、現実から目を逸らすことが「夢見ること」「希望を持つこと」なのか?そうやって「何もしない」ことで世界は一直線に滅びへと向かって行く耐え難い事実。でも結局自分に出来ることなど何も無い様で、60年近く生かさせていただいたオッサンとして、次の世代の伴走者である先生として、そして父親として、自己嫌悪なのです・・・。

「知の巨人」みたいな方々の言説には素直に耳を傾けて、「これは一体何なの!?」「なんでこうなるの!?」「これからどうなっちゃうの!?」という疑問へのこたえを探し求めています。その人たちがどれくらい私よりも経験と知識に富んでいるのかは分からないし、ナイーブに信じちゃうのもイケないのかも知れないけど、やっぱり自分よりもずっと先を見ていると感じる人がいます。国外はさておき、日本人だと佐藤優さん、古賀茂明さん。「うーん」と唸らされます。最近読んだ古賀さんの論説を2つ紹介します。

145%の関税で中国が屈すると考えたのは甘かった…トランプ大統領が知らない「粟と歩兵銃」の精神 古賀茂明 | 概要 | AERA DIGITAL(アエラデジタル)

中身は是非見て下さい。自分が言うのも生意気ですが、「その通り!」と膝を叩きまくりました。トランプさんは、そしてそれを支持するアメリカ国民も、無知です。中国、中国人を全く分かっていない。自分たちの弱さも分かっていない。カネも力かも知れないけど、人の命も力です。日中戦争でも、ベトナム戦争でも、人の命そのものが武器になりました。中国を見くびった日本はとても痛い目に遭いました。ロシアも人の命を大変軽く扱い、それを武器として大量消費することが今のウクライナの戦争でも明らかです。絶対数だけでなくて、どう扱うかも重要なので、インドは中国程の脅威にはならないかも知れないけど、人口の力は物凄いです。だからインドもどんどん怖い国になる。アメリカやヨーロッパは民主主義の正義に負けるので(私はそっちが良い!)、人口が3億あっても消耗品扱いは出来ません。だから先に音をあげるのはアメリカです。でも、人の命を軽く扱うのは嫌、負けて良い。アメリカが貧しかった頃を覚えている人はもういない。豊かな暮らしに慣れ切った人はそれを失うことの痛みに耐えることは出来ない。でも中国のリーダーは貧しかった頃の中国を生きてきた人たちです。「Xiaomi = 小米 = 粟(あわ)」の話がへえー、でした。日本を蔑視する時に「小日本 = Xiao Riben」と言うので、そっか「小米!ちっちぇえアメリカ!」とアメリカを見下してXiaomiか!と一瞬思ったけど、中国語でアメリカは美国(Meiguo)なんですよね!そもそも何で日本語でアメリカは米国なんですかね?中国人はアメリカ大っ嫌いなのに何で美国?教養が無くて知りません。(あ、すいません。中国人がアメリカ大っ嫌いは違うと思います。)

さらに凄かったのがこちらの論説。

米中「関税戦争」最悪のシナリオは“台湾有事” 米国は戦わず日本の自衛隊が“最前線”に立たされるリスクも 古賀茂明 | AERA DIGITAL(アエラデジタル)

トランプさんも、一旦上げてしまった拳を下げることは容易ではない。でも中国はアメリカの脅しに絶対屈しないから、トランプさんが「いやあ、習近平はマブダチだからさ、アイツを困らせたくないんだよね」とか言って全部取り下げればともかく、この関税戦争が本当の戦争に発展する危険性は極めて高いです。衝撃なのは、これってまさにアメリカが望むこと、というハナシ。台湾メーカーも、韓国メーカーも、日本メーカーも、先端半導体は全部アメリカで作らせる。中国に渡さないためには早々に台湾の工場を潰せばいい。中国のミサイルで。アメリカはきっと中国を非難しまくるけど派兵しない。ウソでしょ!?本気で言ってんの?日本も同じ扱い?と耳を疑うものの、確かにスジが通る!最低の人種、人間性のカケラも無い連中が考える様なこと、と思いつつも、それこそが人間性か?と益々人が分からなくなるのでした。アメリカ人も、中国人も、私の友人には全く当てはまらないんですけどね。リーダーが狂人だからこうなるのか?自分自身も含め、全ての人の本性がこうだからなのか?ならば我々は進んで破滅への道を選んでいる様に思える。それとも、個々の人はやはり善人なのに、どうにも出来ない魔の力が人々を破滅へと追い込もうとしているのか?私たちはその魔物に打ち勝つことが出来るだろうか?

2025年4月25日金曜日

ただいま!

 皆様、物凄くお久しぶりです。もう2年くらい何も書いていなかったです。この間何もしていなかったわけではなくて、色々と思い悩み、色んなことにチャレンジして、良いことも悪いこともあったのですが、単に書いている時間が無かっただけです。

さて、この2年で気候変動対策、温室効果ガス削減について著しい前進があったとは残念ながら思えません。これまで、色んな新しいニュースを共有しつつ、自分なりのコメントを付けるというスタイルでしたが、大きな出来事が無い限りそれをやってもあまり意味が無いように思います。これからは、気候変動とかカーボンニュートラルに関することだけでなくて、気になったことについて日記的に書き残していくようにしようかと思っています。

今世界は荒れに荒れてますよね。2つの戦争はちっとも終わらず、トランプ関税で株価や為替も毎日上がったり下がったり。何しろ毎日言うことが変わりますから。どれだけ制裁を科したとしても、ロシアも中国も絶対に屈服しないでしょう。お互いへの憎悪と不信を拡大させているだけです。そもそも、相手を見下した様な発言を慎むべきです。私は沢山の良いアメリカ人がいることを知っていますが、こんなことが続いたら友達いなくなりますよ。日本は絶対にアメリカと敵対することなど出来ないし、そうすべきでも無いのですけど、あまりにも横暴なことをすればアメリカの方を持つことも出来なくなる。例のボーリングの玉の話とか、もちろんナンセンス極まりないし、どうもトランプ大統領は日本がロシアと戦争したことがある(日露戦争)ことも知らないそうで、「○○ちゃうか?」という言葉がのど元まで来ているんだけど、言えない、言っちゃダメ。ギリギリの折衝に挑む方々には頭が下がります。凄いストレス耐性が必要ですよね。でも、アメリカの自動車なんて、絶対日本では売れないでしょう。日本市場向けの自動車を作れないし、作る気も無い。なんせ日本は縮小市場ですから。GAFAMに代表されるように、脱製造業を自ら選び、進めてきたアメリカが製造業に回帰する必要はなくて、「自動車ごとき日本に作らせておけば良い」「半導体(デバイス)はTSMCに作らせておけば良い」じゃないの?と思います。日本もカナダもメキシコも台湾もアメリカに従属させるなら(台湾は・・・)、皇帝トランプはアメリカの取り分なんて気にする必要ない。それこそ、100年の後も日本は日本だろうか?通貨は円だろうか?ドル?人民元?State of Japan?日本省?相互不信と憎悪に満ちた昨今の帝国同士の覇権争いを見ていると、とても平和が続く様に思えない。もちろん、日本人としては日本は日本であって欲しい。でも、中立的でいることはどんどん難しくなりそう。先の大戦からたったの80年ですよ。それでこんなに悪くなるなんて・・・。

さらにはショッキングな人口統計が発表されました。

日本の総人口 推計1億2380万人余 14年連続減 日本人の減少幅最大 | NHK | 総務省

細かく見ていくと、その急速な変化に驚きます。2024年に日本の人口が過去最大の55万人(0.44%)減ったのですが、それは外国人も含めた総数。日本人に限ると90万人減(0.77%)。つまり外国人は35万人増で総数は約350万人(2.83%)。相対ではなんと125万人(約1%)バランスが変わった。今後急速に景色が変わっていくということです。このペースが続くと100年経てば日本人は5800万人以下、不足する労働力を外国人で補うことは出来なくて、秋田県なんて計算上は13万8600人になっちゃいます(今は97万人)。あまりにも変化が速く、健全な社会システムの維持は大変難しくなります。山形も大変なことになります。いい所なんですけどね。もちろん、上記の外国人は不法滞在者ではありませんよ。ちゃんと労働して税金も納める隣人です。果たして、島人はその変化を受入れられるか?外国人排斥運動とか起こりそうで怖い。日本の安全神話も終わってしまうかも。

気候変動については、2024年は1.5℃目標を既に突破し、世界の平均気温は+1.6℃、北極の氷は過去最少サイズになり、いよいよ終わりの始まりが見えてきた感じです。先日講演をした時、参加された方から「先生の話を聞いてとても暗い気持ちになりました」とか「先生はもっと明るい話、夢のある話をしないと!」というお叱りも受けたのですけど、単なる願望とか根拠の無い夢とかって言いたくないんですよね。現実から目を逸らして、あるバウンダリーから先を不可視化して自分に都合の良い薔薇色世界を語っても、仮にそれがある期間実現されたとしても、より悪くなった世界がその反動で返ってきます。ましてや「私の○○が究極!」なんてのは絶対ウソなので、騙して、引きずり込んで、なんてしたくない。決して絶望を振りまいているんではないんです。その視野の狭さ、自分に都合の良いことだけを信じる、というのを改めて、現実から目を逸らさないで、と訴えているだけです。

そして、結論はいつもこうなります。若者が未来、教育こそが力。心配だから、どうにかしてあげたいと思っても、私は先に死にます。未来は分からないし、想像よりもっと大変かも知れない。どんな世界であっても自分が幸せに生きられるバイタリティーを身に着けて欲しい、かなり厳しい要求だけど。夢じゃなくて希望です。大人たちは、自分が守ってきた価値観から若者を開放してあげる勇気を持つことも大切なんでしょうね。信じることです。

2023年6月22日木曜日

125

 「125」この数字が意味するのは何でしょう?はい、私はオートバイが大好きで、特に手に余らず、使い切れるパワーで軽量な125ccクラスのバイクが好きです。高速道路は乗れないけど、バイクで高速道路走っても、ちっとも面白くないし、二人乗りだって出来るし、燃費良くて維持費安いし。今ウチには125だけで4台のバイクがあります。CT125, GROM, CRF125F, そして一番最近加わったアドレスV125G。CRFはレース用なのでナンバーは付いていません。オートバイに関心のある方、大きくてエラそうなバイクが楽しいわけじゃないんですよ!

いや、そんな話ではなくて、これのことでした。

ジェンダー平等 日本125位に後退 政治参加の分野で格差大きく | NHK | ジェンダー

何ともまあ、情けない!世界経済フォーラムが毎年発表している、男女格差(もちろん、格差が大きい方がランクが下)で日本は昨年の116位からさらに後退して、今年の発表では125位になったのです!調査対象は146か国、なので日本はほぼ最低ランクってことです!あーあ!

衝撃的な数字ですが、冷静に考えると驚きではありません。逆に、もしランキングが上がっていたら驚いていたことでしょう。だって、この一年を振り返って女性の地位が向上したとは全く感じないから。むしろあからさまな性差別が目立ちますよね。そんな状況に絶望して、ついには山形を離れていってしまう女子がたくさんいるんですよ!分かり合える存在、協力し合える存在であり、変化を生み出すために欠くことの出来ない人たちだったのに、これで余計に何も出来なくなる気がしています。

しかし、このデータを見て、日本の状況を「もったいない」と言うのは全くその通りです。「政治参画」「経済参画」「教育」「健康」の4つの尺度で、日本は後二者ではほぼ満点、性差は見られないのに、前二者では平均を下回り、特に政治参加での格差が極めて大きいです。つまり簡単に言って、日本の女性は頭が良くて健康なのに、活用されていないってことですよね。政治の差ってのは、必ずしも行政機関における差だけではなくて、要は意思決定に関わる女性が少ないということだと思います。ルールやポリシーは全て男性が決めて、女性は利用されるだけの側にある。それで、そのリーダーシップってのが最近は時代遅れが甚だしく、失敗続きで、諸悪の根源なのに、その中枢にいる人たちにはそれが分かっていない。それこそ「いやあ、まだ君には無理だろう。それは私の役割ですよね。」とばかりに何の反省もなく同じことを繰り返す。まあ、このデータを見ると、実は世界の平均でも格差が大きいのは前二者ですよね。だからこれは世界共通の問題で、その中でも相当遅れているのが日本である、ということでしょう。

いっつもそれを言ってますが、多様性こそが変化、進化への機会なのです。女性に限らず、外国人や色々な理由で疎外されている人、そういう人たちから見える必要なこと、変化へのアイデアってのは、古い人間には絶対に分からないんです。気候変動、少子化、資源・エネルギー枯渇、食料問題、世界の分断、戦争、日本を取り巻く環境は著しく悪くなっています(これまた世界共通ですけど)。ところが、窮地に追い込まれると、変化を目指すのではなくてむしろ今までの図式にしがみつくんです。オジサン達は過去の成功にしがみつきます。それを効率化することで何とかなる、という考え方しか出てきません。だから以前にも増して女性を排除し、同じ方向を向いている人たちだけで物事を進めようとします。これって完全に逆行しているのです。

それでも、賢い人たちはその問題に気づいてはいます。「キャノンショック」と言われているそうですが、今年の株主総会が荒れているそうで。

「大物経営者にも反対票」株主総会に異変 NOを突きつけるワケ | NHK | ビジネス特集

あのグローバル大企業、キャノンに女性の取締役が一人も居ない!敏腕経営者の伝説がある御手洗氏に実質NOが叩きつけられたわけです。どんな理由を並べたところで、そんな状況を許しているキャノンには未来が無いので投資できない、という明確なメッセージが発せられたのです。

それでも、産業界はそうやってちゃんと自浄作用が働くからいいですよね!役所や大学はそうはいきません。全国の国公立大学の工学部に、女性の学部長って一人もいません!(います?)それを変えようって動きもちっとも見えません!是非、山形大学には全国初の女性工学部長が誕生してほしいですね!中にいる人から選ぶんじゃないんですよ。凄腕の女性経営者とかに落下傘で来ていただくのです。それで大ナタふるって大改革して欲しいな♡。


2023年5月9日火曜日

男性目線

 先月末に、2回に渡って「”男性目線”変えてみた」というタイトルのNスぺが放送されました。しょっちゅうNHKの番組を話題にするので、「お前はNHKの回し者か!?」と思われる方もあるかも知れません。しかし、相当反響を呼んでいるようですね。実は世の中のことの多くが男性基準で決められていることに、当の男性が気づけていないという問題は、世界的に共通するところですが、特にこの日本ではヒドイ。御覧になっていない方は、是非NHKオンデマンドで(やっぱりNHKの回し者?いや、私は実はオンデマンド利用しておりません。録画しています。)

第1回は主に医療のこと。男女同じ扱いであることが社会的に求められる昨今ですが、こと体の仕組みについてはやはり性差はあり、同じ扱いは不適切というわけです。しかし、差別すべきところで適切な差別が行われておらず、医療的な診断法や処置が男性を基準に作られているために、女性に不利益を生じているというのです。これについては、特集記事もあります。

シリーズ“男性目線”変えてみた第1回 性差医療の最前線 - NHKスペシャル - NHK

番組見なくても、この記事でも分かります。これはこれで、知らなかったことも多かったし、面白かったです。家族にも大切な女子がいますし、是非医療の現場では公平であるために差別して欲しいものです。さらに言えば、性差以外の差も当然ありますよね。年齢や生活習慣。そもそも一人一人違って当たり前なわけで、理想を言えば一人一人に適した診断、処置を行って欲しい。まあ一番コストがかかるわけですけど。

さて、実はもっと面白かったのは(私の意見)、第2回目「無意識の壁を打ち破れ」で、特に男性が意識出来ていない社会的な差別を扱っています。特集記事が以下にまとめられています。

【#BeyondGender】4月30日(日)夜9時放送の「NHKスペシャル」で「“男性目線”変えてみた 第2回」が放送されます。

最初に出てくる、スウェーデンの除雪の取組については、別個特集記事があります。

【NHKスペシャル】ジェンダー平等の先進国・スウェーデンの取り組み|“男性目線”を変えて社会が変化

まあ、こちらは「ふーん」という感じでした。女性ももちろん自動車を運転します。でも、高齢者や子供にとっては、歩道を優先して除雪して欲しいのは当然ですよね。転倒事故が減って、医療費削減できたとか、それはまあ、こういう取組みを合理化する理由ってことでしょう。

一番学び、気づき、反省すべきは特に仕事における性差別、男性が無意識のうちに作り、女性を排除すると共に自らを(不当に)守ってきた壁です。OBNという言葉が出てきます。まさにそれ、それなんです。これに胡坐をかいでいる男性(特にオッサン、ジイサン)の何と多いことか!ええ、弱い男性はそこに入れないんですよ。具体的には妻がいて、家庭の仕事から解放されて、仕事100%の生き方を許されている男性が、能力は低くても有利な立場になりますから、それによって築いてきたOBNなわけです。ハイ、だから退場してもらうしかないんです。等の本人は、そのことに気付けてさえいないですから、やることなすこと間違いだらけ。何も変わらないどころか、どんどん悪くしている。

この第2回の内容について、杉江美樹さんという方が、解説、コメントしています。

DE&I変革のカギは"OBN"の解消〜NHKスペシャル「"男性目線"変えてみた」まとめ|杉江美樹|note

うん、その通りだと思いますよ。変な誇張とか、過剰反応をしているとは思いません。一連のハナシで大変不都合を感じ、感情的に反発したくなる(OBNの恩恵にあずかっている)男性も多いでしょうね。でも、この通りなんですよ。分かっていて、思わず目を背けたくなる痛みを感じる男性にはまだ希望があります。タチが悪いのは、気づいてさえいなくて、権力の中枢に居座ってしまっている男性です。

それで、ここらでやめとかないとならないんですけど、大学のハナシも出てきますよね。そーう、その通り!当方からすると、紹介されている国内大学の事例は、それでも羨ましい限りなんですけど、こんなのまだまだ。日本のガラパゴスぶりは凄いですよ、学術も、政治も。OBNを基礎とする世襲の様な人事。女性枠、というといつも学位とりたてのひよっ子ばかり(ゴメンナサイ)。そりゃあ、オッサンが手名付けられますよね。言いなりです。むしろ、男性教授が頭が上がらないぐらいの凄い女性教授が欲しい。せめて1/4。そしたら、文化が変わりますよ。男性か女性かでの差別なんて絶対出来なくなる。今は「女性を守るために」という名目で逆に女性を差別しまくる人がいるんです。例えば、育児のための支援が女性に対してだけ与えられるとか、オカシイでしょ?

「いやあ、女性は研究する時間が無いでしょ」とか「女性じゃ研究費取れないでしょ」とか「女性増やすと論文減るでしょ」とか平気で発言する、信じがたい様な化石男子もいました。それが全て間違っているのは、ちゃんと証明されています。過渡的に上記のようになったとしても、必ず良くなります。多様性こそが進化の仕組みです。目標が一つの時は、同質な人材を揃えることで目標達成へのスピード、効率は上がるでしょう。しかし、そういう組織は変化する能力を失うのです。高度成長期の日本は一つの方向を向いていた。男性中心の社会も、年功序列、終身雇用も、その時は機能したんですよね。でも、今は完全に邪魔なものになっている。自分とは違う人、扱いにくい人、すなわち自分には無い能力を持っている人、を上手くリードし、活用できる人こそが優れたリーダーですよね。でもOBNにどっぷり浸かってきた人には無理。だから静かに退場して、まずは女性にリーダーをお願いしましょう。(え、具体的には誰とか全然言ってませんよ!)

2023年4月21日金曜日

宝もの③

 またしても、宝ものを頂いてしまいました。ありがとう!(ケーキはもう食べちゃったけど)

昨日、57歳になりました。この歳になると、誕生日はあまり嬉しくないのですけど、昨日はサプライズの連続でしたね。忙しくバタバタしていたところに、オレグさんがケーキを持って学生たちが私のオフィスにやってきて、オレグさんが独特のトーンで、Happy Birthday to You!"と歌ってくれました(誰かにビデオ撮って欲しかった!)覚えていてくれたのね、嬉しいです。

それから、先日までドイツに行っていた中村君から「これ、鶴さんからです」と頂いたのは、クロアチア産のネクタイ(写真のやつです)。なんでも、クロアチアがネクタイ発祥の地なんだそうで、クロアチアで買ってきてくれたそうです。鶴君はうちの研究室で博士論文研究をやった2018年卒業生ですが、今はオーストリアで炭酸ガス還元関係の仕事をしています。中村君が帰国前にリンツに行って、鶴君に会った時に渡されたそう。この仕事をしていると、世界中に研究仲間がいることを嬉しく思いますが、世界中に次世代の研究者となる息子や娘がいるのはもっと嬉しいですね。

そして、家に帰って晩御飯を作りましたが(誕生日でも作るのは私)、家族が花束とケーキを買ってきてくれました。本日二度目のケーキ!ウっ!いや、その時の写真、宝ものの子供二人と映っているデレデレの写真もあるのですが、さすがにそれはここに載せるのやめておきます。大学の子達も、ウチの子達も、こうした幸せと平和が続く世界に生きて欲しいと強く願います。


女子枠

 報道のとおり、山形大学工学部システム創成工学科にR8年度入試から女子枠が設けられるそうです。 山形大学工学部「女子枠」 副学部長“組織が変わる起爆剤に”|NHK 山形県のニュース 遅すぎる、小さすぎる。「定員50名のうちの3名は意外に大きい」というのが単なる言い訳にしか聞こえま...