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国立大学法人山形大学工学部教授の吉田司のブログです。2050年までのカーボンニュートラル社会実現に向けて、色々な情報や個人的思いを発信します。発言に責任を持つためにも、立場と名前は公開しますが、山形大学の意見を代弁するものではありません。一市民、一日本国民、一地球人として自由な発言をするためにも、所在は完全に学外です。山形大学はこのブログの内容について一切その責任を負いません。

2021年5月30日日曜日

EVシフトを考える⑦

 日産とNECが合弁で設立した車載用Liイオン電池メーカーAESCが中国Envisionグループに売却され、再スタートを切ったエンビジョンAESCが、茨城県に6GWh/年の生産能力を持った工場を建設し、「国内での電池生産への投資が加速する」と報じられました。

EV向け電池の大規模工場 茨城に新設へ 日産出資の電池メーカー(NHK)

「おお、いいことだね!」と思われてしまいそうですが、これは注意深く今後の動きを見る必要があると思います。まず、報道で言う「日産出資」というのは株式の20%で、Envisionが80%、すなわち実際には中国のメーカーである、と考えるべきです。以下のエンビジョンAESCのウェブにある、プロモーションビデオにちょっと寒気がしました(全編、中国語の字幕が出ます、東工大、東大、京大とかの名前出すのも寒気…)。

Envision AESC (envision-aesc.com)

日本の技術者等が代わる代わる如何に同社のバッテリー技術が優れているかを語り、今後の業界のリードに対する強い自信を語っています。その言葉は別に嘘ではなくて、何しろ9年の実績がある日産リーフはAESCの車載専用バッテリー(テスラの汎用品とは違う)を使い、一度も火事を起こしたことが無い、さすがのMade in Japan製品でした。しかし、競争力が無い、採算性が悪いからこそ、身売りせざるを得なくなり、中国資本に身を委ねた(毒まんじゅうを食べた)のです。茨城工場の6 GWh/年は凄いと思いましたが、中国では既に20 GWh/年を生産する巨人です。しかも、それは手に入れた日本製技術を使って。CATLやBYDと同様、今後グローバルに拡大して、中国の経済を潤すことになるのでしょうか。日本の技術が中国に流出する・・・先のビデオも、そう考えると中国側の投資家に配慮した感がアリアリ。

いや、事態はさらに複雑で、その先があると思っています。これはまた次回以降議論しますけど、EUはさらにしたたかな戦略、アジア製品を合法的にEU市場から締め出す準備をしています。VWグループは特にその先兵で、中国への進出の仕方が凄いです。当然、中国のEV用バッテリーメーカーと協業することになるでしょう(Envisionを含めて!)。そして、それはスウェーデンのクリーンな水力発電電力で、極めて低いCFP(カーボンフットプリント)で作られることになります。あるいはフランスの原子力か?すなわち、中国や日本が自国のクリーン電源化を大きく進めない限り、アジア製のEVバッテリーはCFPが大きすぎて、EU市場から追い出されることになります。悔しいことに、きっとノースボルトが製造するバッテリーに日本の技術が使われることになるのですよ!

Why Northvolt | Northvolt

それがCOP26の真の目的かと勘繰りたくなってしまいます。ああ、エグイ。経済戦争は無慈悲というか、そこに技術者に対するリスペクトなんて全然ないですよねえ。


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