こういう報道はとっても気になります。アラブ首長国連合(UAE)からアンモニアの供給を受けて、燃やしてもCO2を発生しないアンモニア火力発電に、JERAが本格的に取組むということが「脱炭素に向けた」アクションとして報道されているのです。
“アンモニアで火力発電” 脱炭素へ日本事業者がUAE企業と連携 | 環境 | NHKニュース
これを聞いて、本当にCO2を出さないアンモニア火力発電の時代が始まる、と誤解する人があっても不思議じゃありません。「INPEXがUAEの国営石油会社と協力して天然ガスを原料に現地でアンモニアを製造します」とキッパリと書いてあります。そのうえで「脱炭素」であるとも。それのどこが脱炭素なのでしょう?
天然ガスを原料とするアンモニア製造とは、長年続けられているハーバー・ボッシュ法によるアンモニア製造に他ならず、その過程で盛大にCO2が発生します。すなわち、グレーアンモニアなわけです。日本に輸入されたアンモニアで発電する時にはCO2は発生しないでしょうけど、UAEでアンモニアを製造している時にCO2を出しているわけですから、ちっとも脱炭素じゃないですよね。CO2分子にはMade in Japanか、Made in UAEかは書いてありませんし、温室効果という点では全く相違ありません。レポート中の表現だと、あたかも日本はCO2排出量を削減した様に見えるでしょうけど、明らかにインチキですよね。
もちろん、いずれは太陽光発電による水電解で製造した水素を使って、グリーンアンモニアにすれば本当に脱炭素になるわけで、ひとまずアンモニア火力発電の技術確立を急ぐためにも、グレーアンモニアでも良いから事業を始めて、順次グリーン化するから今全てが完璧である必要はない。そういう主張は、もちろん分からないではないですし、一定の合理性がある様にも思えます。しかし、世の常として、一旦動き始めると、当然このUAEでのアンモニア製造は採算性のある事業になるでしょうし、安定的取引が始まってグローバルな資金の流れの一部に組み入れられます。そうすると、その存在がグリーンアンモニアへの変化を妨げることになるでしょう。だから、明らかに健全ではないやり方については、最初からアンタッチャブルなものとして、手を出さない方が良いのではないかと思うのです。
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