東工大のグループが、ごく低温でアンモニアから水素を生成する、貴金属フリーの触媒を開発したと報じられました。
貴金属フリーでアンモニアから水素を生成する高性能触媒、東工大が開発 | TECH+ (mynavi.jp)
かの有名な細野秀雄先生らのグループです。アンモニアを窒素と水素に分けるのですから、別にエネルギーを生産しているわけではないのですけど、少し冷やすか圧力をかければ簡単に液化するアンモニアは、水素に比べたらはるかに貯蔵輸送しやすいです。しかし、アンモニアを直接利用する燃料電池は触媒の不活化の問題があり、直接燃焼する場合もNOxの生成を抑制しなくてはならないなど、燃料としては水素の方が扱いやすい、という事情もあります。簡単なコンバーターで、液体アンモニアから水素を抽出できるようになれば、水素酸素燃料電池や水素エンジンを搭載した移動機械には大きなメリットになりますよね。
ポイントは、CaNH(カルシウムイミド)という物質の表面に、アンモニア分解触媒として知られるNiナノ粒子を担持したことにあるようです。CaNHにはNH2-が欠損した欠陥があり(水酸化物になっている?あるいはフリーエレクトロンがある?)そこにNH3が捕捉され、NがNiに強く引き付けられて低温での分解が進行する様になる、ということらしいです。NH2-はアンモニアから脱プロトンした化学種ですから、それを安定化するカルシウムイオンが大切で、NH2-の欠損したサイトにNH3が水素を放出しながら吸着され、Ni上でN2が生成するということでしょうか。
しかし、気になるデータが示されています。繰り返し実験でNH3が吸着されて水素が生成しているのは最初の3回ぐらいで、すぐに反応しなくなっています。同時に、欠陥に由来する黄色い着色が反応後に無くなっています。NH2-欠陥が無くなると、NH3は吸着しなくなると説明されています。だとしたら、それを触媒と呼んで良いのでしょうか?単なる化学反応であって、物質が消費されてしまっています。これは50℃くらいの低温での実験データなので、高温動作させれば欠陥が再生するのであれば、まあ触媒になるのかも知れませんけどね。この欠陥の挙動と末路を理解することが大切そうです。
原田です.
返信削除城石研究室時代の直属の先輩の論文でした.(米沢にも来たことあります)
リンク先を見て驚きました