このブログについて

国立大学法人山形大学工学部教授の吉田司のブログです。2050年までのカーボンニュートラル社会実現に向けて、色々な情報や個人的思いを発信します。発言に責任を持つためにも、立場と名前は公開しますが、山形大学の意見を代弁するものではありません。一市民、一日本国民、一地球人として自由な発言をするためにも、所在は完全に学外です。山形大学はこのブログの内容について一切その責任を負いません。

2022年2月23日水曜日

ウクライナ

 連日報道されている、ウクライナ危機を注視しています。「何でロシアがウクライナに軍事侵攻するの?」と全く背景をご存知無い方は、ひとまずこれを見て下さい。

【詳しく】ロシアがウクライナに軍事攻勢?その背景に何が? | ロシア | NHKニュース

2月22日には、ウクライナ東部を独立国家として承認する、とロシアのプーチン大統領が宣言する事態となっています。ウクライナ情勢に関する最新のニュースは以下でチェックできます。

ウクライナ情勢のニュース一覧 | NHKニュース

このブログに以前も書きましたが、私は過去6回ウクライナに行きました。ウクライナの学生をポスドクとして1年間受け入れたこともありますし、今年はウクライナの先生を学振のプログラムで6月から半年間受け入れる予定になっています。ウクライナには多くの友人があります。今この状況に対して、大きな不安、恐れと共に、世界にはびこる不公正、強者による弱者の支配に強い憤りを感じています。それがどうカーボンニュートラルに関係するのか?もちろん関係します。そうした不公正、支配と搾取の構造の中での全く持続不可能な発展(?)を続けた結果が今世界全人類が直面する気候変動の問題であり、そうした人類の愚かさが正されない限り、カーボンニュートラルへの挑戦は成功しないであろうと思います。グリーンニューディールとか、グリーン成長とか、「グリーン」と付けば何でも許されるかの様な最近の風潮も、反省の無さが露わになっているかの様で、とても空しく響きます。

ロシアの言い分が正しいとか、アメリカの言い分が正しいとか、そういうことではないんです。ウクライナの将来がどうなるのかをウクライナの人々が決められない様な状況がそもそも正しくないのです。中国もまた、この状況の行く末を注視していると思います。軍事的な関与は考えられませんが、ロシアが部分的であれ、ウクライナ全土であれ、実効支配を進めることを国際的な同意の元に抑止出来ないのであれば、中国も同じことが出来るでしょう。しかし、NATOが軍事行動に出てまでロシア軍を追い払うことはあってはなりません。それは全面戦争に突入することになるからです。なので、強い経済制裁とロシアの国際社会からの孤立を進めるという脅しでロシアの行動をけん制していますが、それでプーチン大統領が「ごめんなさい」と引き返すとも思えません。アメリカのバイデン大統領が「プーチン大統領は軍事侵攻することを既に決意していると思う」と発言したのは、確たる証拠があるからではなくて、同盟国に対して踏み絵を踏ませる行為だと思います。「プーチンは本気だよ」というのを「アメリカがそう言うんだからきっと本当なんだろう」と思わせることで、同盟国に対して覚悟を問うため、その後の計画を整えるため、であると思います。いずれにしても、どうですか?結局ウクライナの人たちがどう考えているのか、何を望んでいるのか、は全く関係ないですよね。国際的な覇権争いの中でひたすら翻弄される立場です。弱い者はいつもそういう目に遭う。そういう不正義が許せません。プーチンの言い分も、バイデンの言い分も分かります。でもウクライナはウクライナの人々のものです。日本と日本人に置き換えたら分かりますよね。

今となっては、果たしていつ次にウクライナを訪れることが出来るのか、全く見通せません。かの地を訪れ、ウクライナの人たちの優しさに触れ、現地の美味しい食べ物を一緒に食べ、学問を語り合い、スラブ民族が辿ってきた歴史と今日の問題、将来への希望を学ぶ機会を得たことは、自分自身にとってとても大切な経験であったと痛感しています。何しろ、私は今ロシアの実効支配下にあるドネツクにも2度行きました。最近のニュースでも見かけた、中央広場にあるレーニン像も覚えています。当時とんでもなく大変な状況にあり、傷心していた私を優しくかくまってくれたドネツクの家族、英語は下手だけどその温かさを決して忘れることはありません。首都キエフにも何度も行き、今日に至ってその学術交流はより親密化しつつあります。心と心で分かりあえる、人と人としてつながり合える。とても大切なことです。なので、最近の報道に大変な憂いと心痛を感じるのです。そうした経験が無ければ、ロシアによる軍事侵攻の脅威も、やはり「対岸の火事」としか映らないかも知れません。

その長い歴史を証言出来るほどの知識は持っていないですけど、ウクライナの東部と西部では全く人々の考え方が違います。東部のドネツクやルガンスクに暮らすのは、ロシア系住民が多く、ロシア語を話しますし、私の友人もI am a Russian!と何のためらいも無く言います。一方首都キエフのある西部はウクライナ人としてのアイデンティティーを強く持っていて、ウクライナ語を話しますし、ウクライナはロシアの影響力を排除して、NATOに加盟、将来はEUの一員となるべきだ、と考えている人が多いです。すなわち、国内に国境線がある様なものです。それは初めてウクライナに行った時にすぐに感じたことでした。当時は平和でしたし「ああ、東西の融和はここから始まるんだ!」とナイーブにも喜んでいたのを覚えています。ところが、実際に起こった事はその真逆でした。世界の分断はここから始まる・・・。最悪のシナリオが冷戦(熱戦?)時代への逆戻りです。

何故ウクライナ人がロシアに対して大きな不信を持っているのかは、きっと色々あるのだと思いますが、有名なのは1930年代に当時のソ連で起こった人工的な大飢餓によるジェノサイド、ホロドモールです。ウクライナの国旗の下半分の黄色は小麦、上半分の水色は青空を象徴しますが、大穀倉地帯のウクライナはソ連の食糧庫でした。外貨獲得手段として、スターリンによる小麦の徴発が行われ、それに応えられなかった農村については全住民が強制的に移住、労働に駆り出されるなど、大変な目に遭います。そして、1932年に大不作に陥った際にも、食料の全てを奪う程の徴発が行われ、400万人から1450万人ものウクライナ人が餓死したと伝えられています。これもまた、強者による弱者の支配、搾取の歴史です。そんなことを知れば、ウクライナ人がロシア人を決して信用できないのも当然でしょう。世界には知らないことの方が全然多いです。学ぶことの大切さをあらためて痛感します。自分に都合の良いことだけを信じ、支持するのではなくて、立場を変えて物事を見る、考えることが出来る様になること、真に公正な世界を追求すること、それが持続可能な人類社会のために一番大切なことだと思います。

とにかく、今の自分の心境としては、私の友人たちが決して大変な目に遭わないこと、平和で幸せな生活を取り戻してくれることを心から願っています。



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