皆さん、このニュースをご存知でしょうか?ぶったまげて、最初笑ってしまいましたが、何とも悩ましいニュースです。
JR東日本 駅のロシア語案内板 覆い隠すも批判受けて元の状態に | NHK | ロシア
JR東日本の駅には、ロシア語での案内標識もあるそうですが(さすが東京)、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が始まり、幾人かの乗客が「不快だ」と言ったとかで、その標識を「調整中」と書かれた紙で覆ったそうです。JR東日本ともあろう、大きな会社が。そして、逆にSNS上で「それは差別だ」という批判が相次いで、「やっぱりやめます」とその覆いを取り除いた、というニュースです。それだけのこと?と思うかも知れませんが、そこに今回の事態に対する日本人の本当の反応と、自らに明確な判断基準が無く、「お客様本位」で流されてしまう、全体主義的な怖さが隠れていると感じました。
どっちが正しいのか?といえば、言うまでもなく良識のある判断は、何もしない、ということであったと思います。見たわけじゃないし、私はそこに関わっていませんけど、SNS上での反発の方が当然です。繰り返し書いていることですが、ロシアによる軍事侵攻は非難されるべきことですが、それをもってロシア人は悪だ、ロシア人なんて見たくない、そいつらが話す言葉が日本の路上にあるなんて不快極まりない、というのは完全に間違っています。今の状況を見れば、ウクライナの人々への同情とロシアの蛮行に対する憎悪を禁じ得ないのは当然ですが、背景を学びもせず、過去と未来に思いを馳せることもせず、単純に善悪を二極化して自らの正義感に燃えている人は、世界に対立と憎悪を広めて、反省もせず、世界を戦争の時代に引き戻すことに加担してしまう人たちです。もちろん、紛争の解決手段として暴力を振るったロシアが非難されるのは当然ですが、この様な事態を招いたことについてはアメリカやEU、そして日本も同じぐらい罪を犯してきたということを理解すべきです。
JR東日本ほどの大きな会社であれば、社内には良識のある知識人も少なからずいらっしゃると思います。現場が「お客さんから苦情があるんで、隠そうかと思います」と言ってきたとして「いや、それはマズいよ」と制止する人はいなかったんでしょうか。お客様本位というよりは、ただただトラブルを避けたいだけの、思考停止状態における反射的反応としか思えません。でもきっと1日ぐらいはかけて、わざわざ覆い隠す紙を準備して、いくつもある標識を隠す作業を職員にさせたのですよ!JR東日本には「こうであるべき」という様な思想やその主体が存在していないということですね。SNS上での反発を受けて「差別であるという誤解を与えないために」という苦し紛れの説明をするのも、同様に反対方向の反射的反応をしたに過ぎず、結局どうあるべきと考えているのか、に対する思考はそこに入っていないようです。
それだけのこと?と思うことなかれ。この一連のドタバタからは、日本人の典型的な行動様式とその危険性が見えてきます。多様性を許容するキャパシティーが無く、依存と甘えが強い日本社会においては、思考停止して主流に従う全体主義に陥りやすいです。今回の戦争で、ロシアが悪、アメリカを中心とする西側が善、という単純な二極化を強調すれば、それが一番分かりやすく、考えないでそれに従っておくのが無難だ、となります。もちろん、世界からロシアを消去することで、世界の秩序と平和が保たれるわけではないのです。「和」という言葉が大好きな日本人(私は、ある意味では好きですが、実際目の当たりにする範囲においては嫌いです)。事なかれ主義、多勢に無勢、目先の対立を避けるためなら喜んで思考停止し、犠牲となる少数派には目をつむる(障害者、LGBTQ、女性や外国人は差別される)。だから、80年前の戦争となってしまったのではないのか?気づきがない、反省がない、学びがない、成長がない。想像してみてください。もしも中国が台湾に軍事侵攻したら?日本中にある中国語の案内標識を全部撤去しますか?
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