このブログについて

国立大学法人山形大学工学部教授の吉田司のブログです。2050年までのカーボンニュートラル社会実現に向けて、色々な情報や個人的思いを発信します。発言に責任を持つためにも、立場と名前は公開しますが、山形大学の意見を代弁するものではありません。一市民、一日本国民、一地球人として自由な発言をするためにも、所在は完全に学外です。山形大学はこのブログの内容について一切その責任を負いません。

2022年7月4日月曜日

大混乱時代に突入

 コロナウイルス感染症によって疲弊した世界は、戦争によってさらにその分断が進み、モノの動きが止まって経済が混乱する中、これに追い打ちをかけるようにして気候変動の影響が顕在化している様に思います。世界はいよいよ大混乱時代に突入し、蓄積する不満が新たな紛争に対して引き金を引かせるのではないかと心配です。「終わりの始まり」の様に思えてなりません。果たして人類はここで立ち止まって考え、持続可能な新たな生き方に対して協力協調して、この難局を切り抜けることが出来るほどの英知を持った生き物なのでしょうか?

基本的人権や自由、個人の尊重と民主的な社会システムは、人が人らしく生きるための基本であるとは思いますが、動物的に生き延びること、生命が守られることが大前提として優先される基盤であることは明らかです。イデオロギー、思想など、それらに比べれば取るに足らない?

象徴的なニュースの一つはこれです。今年11月に行われる米議会中間選挙を睨んでのことでしょうか、中国に対する敵対的関税の見直しをバイデン政権が検討しています。

アメリカで対中関税の見直し論が浮上 なぜ?今後の行方は? (nhk.or.jp)

そもそも、トランプ前政権時代に米国の製造業を守ることを理由に始まった対中製品への高い関税ですが、今ロシアのウクライナへの軍事侵攻に対する経済制裁のために、世界的な物価高が進み、消費者に不満が蓄積しています。その緩和策として、対中制裁を弱めようということです。それって、全然おかしくないでしょうか?結局理屈も思想もポリシーも関係なくて、負の影響があれば場当たり的にそうした制裁を撤廃する。だったら初めからやらなければいい。そしてそんな不平不満を言っているのは、結局200円のサラダ油が400円になっても、買うことの出来る豊かな日本の消費者ですよ。もっと酷い目に遭っているのは、穀物が止まって餓死している貧困国の人たちです。その人たちにはイデオロギーなんて余計関係ない。選挙で負けることを恐れて簡単に捻じ曲げるぐらいなら、最初からそんな敵対的な関税をかけたりするなと言いたい。「それはトランプがやったこと」は言い訳です。間違っていると思うならば、交代直後に撤廃すべきでした。明らかに、バイデンも中国に敵対的です。そして、ロシアに対しても。ロシアについては、何しろ人殺しが進行中ですから、痛みが伴ってもロシアに対する敵対的な行動、軍事的手段による現状変更の試みに対して反対する姿勢を鮮明にすることは重要でしょう(でないと、抑止力が全く働かない)。しかし、それがこういう経済的混乱を生むことは、当然分かっていたはずですし、今こうなったからと言ってそれに耐えられないと泣き言は言えないはずです。この苦しみもまた、ロシアや中国が悪いからだ、と思う人が多いでしょうが、それは違うと思います。そもそも、ロシアの軍事行動を許してしまった国際社会全体に責任があります。邪悪な集団だからやったと言うのは簡単ですが、邪悪な集団(例えばテロリスト)を生んだのは、自分自身がそれらの人を抑圧したとは全く思っていない、しかし貧困国から搾取しまくって豊かさを享受してきた銃後にいる我々(一般的な日本国民やアメリカ国民)です。好きか嫌いか、考え方が合うか合わないかではなくて、相手にもその幸せを追求する生活があるのです。それを尊重出来ない限り、こうした対立とそれに伴う混乱、最悪事態としての戦争も無くなりはしないでしょう。結局、多様性を受け入れる寛容さが無いのです。強者が決めるルールに弱者を従わせることを多数決、民主と思っている限り、本当の民主主義は成立しないです。

そしてもう一つの気候変動。この前の冬、米沢はすさまじい豪雪でしたが、打って変わって暑いです。でもまあ、米沢なんて可愛いほうです。今年は、6月から40℃越えを記録するなど、異常な暑さが続いていますね。長期予想では、7月も日本全国で平年より気温が高い状態が続くそうです。この猛暑は日本に限ったことではなくて、ヨーロッパ西部、南部やインド、パキスタンも記録的な暑さのようです。

【気候変動による世界の被害】各地で異例の猛暑 ヨーロッパやインドは40℃超え - Yahoo! JAPAN

一方、反対側のオーストラリアでは豪雨による水害、アメリカでは乾燥による大規模な山火事と、とにかく気候が極端になっている感じですね。YUCaNのご意見番をお願いしている、JAMSTECの山形俊男先生と先日メールをやり取りさせて頂いた時に、この異常気象についての説明を頂きました。関連する部分を抜粋して紹介させて頂きます(専門用語が私には分からず・・・ですけど)。

(山形俊男先生より)

今年はインド洋に負のダイポールモード現象が発生し、インドモンスーンが活発です。これにひかれて消滅に向かっているラニーニャ現象がだらだら生き延びています。活発なモンスーンはロスビー長波を励起してそれが西進し、ヨーロッパ南部で下降気流を生み、猛暑をもたらすのですが(モンスーンー砂漠機構と言います)、それが北ヨーロッパの冷気と混ざって大気擾乱を生み、その擾乱が偏西風という導波管を伝わって東に戻ってきます。この擾乱はストークスドリフトで空気塊を東に運び、導波管が弱まるユーラシア大陸東部(日本の西日本あたり)にその空気塊を蓄積して、対流圏全体に及ぶ背の高い高気圧を形成します。今年はこの高気圧が形成されているようです。昔の予報官は経験的に<クジラの尾>といわれるパターンとしてこれを知っていました。

てことで、全体の平均が暑くなるのは気候変化(地球温暖化)だけど、気候が激しく揺れ動くのは気候変動で、その変動ぶりが温暖化によって激しくなっているようです。電気の正負のごとく、大気(海洋も)の熱冷のダイポールが発生し、その熱いところに位置する地域は極端な高温にさらされるわけですね。一方巨大低気圧なども発生して、別の地域では洪水を発生させると。地球規模の気候の仕組み、複雑な相関は我々素人にはとても理解出来ませんけど、なんとなくイメージは出来ます。この気候の激しい乱れもまた、我々が引き起こした問題なのでしょう。

地域によっては梅雨が2週間で終わってしまうなど、今年は酷い洪水が発生しなかった一方で、降水量が足らない地域が多かったのではないかと心配です。このまま猛暑が続くと、全国的な水不足に陥るのではないでしょうか。東北地域は、冬の間に降った雪がまだまだあって、それが水源となるために滅多なことでは渇水になりません。それでも、普段当たり前に起こっていることが絶妙なバランスを保っていて、水や食料が得られているわけで、このバランスが崩れると一気にパニック状態に陥るかも知れません。つくづく、普通を維持することが容易ではないことを思い知らされます。

地球が緊急事態に陥っているなかでも、覇権争いをやめることが出来ず、自らの生活を破壊し、更なる負荷を自然に対して与えることをやめない人類。世界の全ての人たちが、生き方を変えて、持続可能であることを最優先とすることは、果たして可能なのでしょうか?世界が狭くなり、食料が水が足らなくなれば、相手を殺して自分だけが生き残ろうとする、それが自然ですかね?でも、恐らく最後は全部が絶滅することになります。いや、核戦争が起こったとしても、ちょっとぐらいは生き残るかな?多分地球に10億人ぐらいならば、持続することはそんなに困難ではないでしょうね。

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125

 「125」この数字が意味するのは何でしょう?はい、私はオートバイが大好きで、特に手に余らず、使い切れるパワーで軽量な125ccクラスのバイクが好きです。高速道路は乗れないけど、バイクで高速道路走っても、ちっとも面白くないし、二人乗りだって出来るし、燃費良くて維持費安いし。今ウチ...