このブログについて

国立大学法人山形大学工学部教授の吉田司のブログです。2050年までのカーボンニュートラル社会実現に向けて、色々な情報や個人的思いを発信します。発言に責任を持つためにも、立場と名前は公開しますが、山形大学の意見を代弁するものではありません。一市民、一日本国民、一地球人として自由な発言をするためにも、所在は完全に学外です。山形大学はこのブログの内容について一切その責任を負いません。

2022年7月13日水曜日

リアクト米沢訪問

 米沢市役所の計らいで、米沢市にある「リアクト米沢」さんを見学してきました。

reactyonezawa.com

近隣で飼育される家畜(乳牛)の糞尿や、スーパーで廃棄されてしまった農作物等からバイオガスを生成し、これを用いた発電に取組んでいます。同時に生成される堆肥は地域の農作に利用されていて、ゴミを出さない循環型農業のモデル事業です。


「はまだ牧場」の乳牛さんたち

見学の最初は、「はまだ牧場」です。広い牛舎の中で、沢山の乳牛がエサを食べていました。一部土の様なモノを食べていたので、何か尋ねると、ゼオライトだそうです。お腹の調子を整えているそうで、自発的に食べるんだとか。生まれて間もない子牛も別の牛舎にいて、可愛かった。

搬出される牛糞

当然ながら、牛たちは沢山ウンチをします。それをもみ殻と混ぜて、トラックで運びだします。もみ殻も一緒に発酵されますが、混ぜるのは水分(オシッコも混ざっているので)を吸収させて、搬送途中で盛大に漏れ出さない様にするためだそうです。

リアクト米沢の施設外観

はまだ牧場から500メートルぐらい離れたところにある、リアクト米沢さんに到着しました。写真に見える様な発酵槽が2基、大きいのと小さいのがありました。

廃棄物を砕いて混ぜるミル、ミキサー

搬入口を入ると、牛のウンチだけでなくて、廃棄された野菜なども全部混ぜて粉々にするミキサーがありました。緑色っぽいのはキャベツでした。これ、写真では分かりませんけど、猛烈に臭かったです!まあ、そりゃそうですよね。

分離された固形分は堆肥として利用

ドロドロになった廃棄物は、洗濯の脱水機の様な仕掛けで固形分と消化液に分離されます。固形分は全く臭わず、これが近隣の農家のアスパラガス栽培などの肥料に用いられているそうです。

発酵槽、中央上部に見える赤いのは攪拌用モーター

消化液は地下に埋設された管を通って発酵槽に入り、嫌気性細菌によってメタンガスへと分解されます。硫化水素の生成を抑制するために多少空気を入れるそうですが、酸素があると二酸化炭素と水まで行っちゃいますから、酸素は基本的には遮断されています。温度は43℃ぐらいが良いそうです。攪拌する方が良いのか、しない方が良いのかなどは色々テストするそうです。この攪拌モーターの電力は、ここで発電された電力を使っているそうです。発酵で温度が上るわけでもないそうで、寒い時は温めるそうです(それも、施設内で生み出した電力による)。大体数週間で完全にクリーンになって、そのまま下水に流すことが出来るので、いっぱいになって止まってしまうことは無いそうです。生成したメタンは上部の半球形ドームで回収されます。

ガス分離装置

生成するガスはメタンだけではありません。余計なガスがエンジンに入るとエンジンが壊れるので、このガス分離装置で純化するそうです。

発電機のエンジン、写真に写るのは案内して下さった、株式会社ハイポテックの高橋さん、ハイポテックがこのバイオガス発電プラントの運用をしています。

そして、生産されたメタンガスは、御覧のエンジンの燃料になり、発電機を動かします。エンジンの回転軸は発電用のダイナモに直結されていて、負荷はマグネットで制御する仕組みだそうです。最大出力は470 kWとのことです。てっきりガスタービンエンジンだと思っていましたが、普通のレシプロエンジンでした。片バンク6気筒、V型の12気筒エンジンで(チェコ製だとか)、スパークプラグも見えました。効率悪そうにも思うのですけど、恐らく小型の設備についてはガスタービンよりも良いんでしょうね。燃焼すると、当然二酸化炭素が出るわけですが、元々バイオマス由来ですから、完全カーボンニュートラル、というわけです。燃料さえカーボンニュートラルならば、いままで通りエンジンを使ったら良いです!自動車だって、何も全部EVにする必要はナシ!
こんなに先進的なバイオガス発電施設が米沢にあるということが驚きでした。全国でもこういう施設はまだまだ少ないそうで、連日全国から視察があるようです。設備のほとんどは輸入部品で構成されていますが、設備の設計や施工は独自にされたそうです。こういう施設を見るのは初めてでしたので、スゴイなあ、という印象ではありましたが、ヨーロッパで大規模に取組まれている施設と比較すると、可愛いモノだそうです。実際、470 kWというのは、これだけの設備にして「まあそんなもの」という小ささです。同じ敷地に太陽電池を敷き詰めてもそれぐらい発電出来そう。
でも、そういうことじゃないんです。循環型農業、さらにはカーボンニュートラルな電力生産の取組み、素敵じゃないですか!ご案内頂いた濱田さんや高橋さんの生き生きした表情も大変印象に残りました。我々が何らかの形で、こうした取組みの進化や拡大に貢献出来たら良いなあと思います。リアクト米沢さんの場合、効率的な運用方法は独自に研究検討していて、大学等と共同しているわけではないそうです。エライ!(っていうか、役に立つことが出来ていない大学の研究者が情けない!?)
ここまでやっても、まだまだ道半ばであることの一つとしては、最初に出てきた牛さんたちが食べている穀物飼料や干し草は、やっぱり全部輸入品なんだそうです(外国の土壌、お日様で育った穀物を燃料を使って輸送している)。昔の牧畜というのは、餌も地域で生産し、家畜が育ち、廃棄物は再び土壌に戻るという完全循環でしたが、今は安い輸入穀物飼料を使う効率的な大規模生産が当然になってしまいました。国産は高い上に品質が安定しない、雨が多いせいで牧草がカビたりする、というのが国産飼料にはなかなか切り替えられない理由だそうです。しかし、稲わらの飼料など研究はされているそうですよ。出来ることなら、地域で生産された飼料で家畜が育ち、そこから食料とエネルギー両方を頂いて、再びそれが土壌に戻って飼料を育てる完全循環、その全てが太陽の光の力で回っている、という仕組みを実現したいものですね。
そしたら、国産家畜飼料の話題が先日放送されていました。
鹿児島、指宿での飼料の国産化の取組みです。天候不順による不作、ウクライナ紛争、急激な円安、コロナによる物流停滞などで、輸入穀物飼料の価格が急騰しているために、早くから取り組んできた国産飼料が十分現実的競争力を持つようになったそうです。上記のカミチクホールディングスさんがスゴイのは、餌づくりに始まって、最後に食肉が提供される外食産業まで多角的に取組んでいるところです。でも、そうした方が、入口と出口がつながって、循環する仕組みを作りやすい様にも思いますね。大変ではあるけれど、分業による効率化よりも、連携によるシステム化が今後の鍵でしょうか。これからは、コストだけではなくて、持続可能であることが優先されるべきファクターになると思います。もちろん、採算性が全くないことには取り組めないので、一歩ずつ理想形に近づいて行って、いつかは東北地域から食料とエネルギー両方を全国に供給できる様になったら良いなあと思います。









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