ついに半年が過ぎました。しかし、過去の紛争の例を考えると、半年などまだ序の口だと思います。戦争が終わって平和が取り戻されることを願うばかりですが、この状況が続くことを心配するのでは楽観が過ぎると思います。同じ状況が続くのならばまだ良いほうであって、心配すべきは世界の分断が進み、世界が闇に包まれ、かけがえのない幸せの基盤が崩壊し、人類がその繁栄を終えることです。それぐらい心配しても、し過ぎではありません。目の前の問題など取るに足らず、今後数十年、数百年の幸せを心配すべき状況です。何しろ、今回の対立は世界の二大軍事大国である米ロです。経済制裁など効くわけもありません。中国やインドが稼いだ外貨でロシアのエネルギー資源が買われているのです。
この紛争の原因を作った当事者である、豊かな国々の人たちは、既にこの戦争に対する関心を失いつつあることでしょう。いつの時代もそうでした。数年前の記憶などすぐに薄れていきます。目の前にある問題こそが問題であって、既にどうしてこんな戦争が起こっているのか、どうしてそのとばっちりを受けなくてはならないのか、と感じる人が増えていることでしょう。だから、そうした利己的な人類の忘却力の犠牲となる人がこの世界に絶えず生まれるのです。自らには責任はない上に、むしろこの紛争の犠牲者だ、ぐらいに思っている人々が、実は当事者中の当事者なんです。あまりにも歴史を知らないこと、世界の広さと多様性を知らないこと、人の本性を知らないこと、自らの都合しか考えないこと、都合の良いことだけを信じること、想像力が欠けていること、これらが世界の大半である以上、この戦争を止める力は存在しないことでしょう。一年前の自分は、まだ希望に満ちていたと感じます。今となっては、世界がその終わりに向かって突き進むのを傍観し、共に死んでいくことしか出来ないのではないかと、絶望しています。カーボンニュートラルな持続可能社会に向けた国際協力など、夢のまた夢。
いわゆる「支援疲れ」を通り越して、「誰だこんな風にしたのは!」と怒りの矛先を変える人さえ出ていることでしょう。ロシアの侵攻が始まった直後には、己の正義感に打ち震えて悪を打倒するといきり立っていた人たちも、今は物価高騰やエネルギー供給不安に苦しめられる自分を犠牲者と感じているのではないですか?それがいけないんです。いつもそんな風だから、この戦争を許してしまったのであり、今の状況は身から出た錆です。それを本当に反省出来るなら、即時停戦と相互を認め合い共存する世界の再構築に敵対する両陣営がすぐに取組むべきです。嘆かわしいばかりの人の愚かさの犠牲となって、命と生活を奪われたウクライナの人々、さらには戦場に送られて死んでいったロシア辺境の若者も、可哀そうでなりません。これを止める力を持たない自分も、自らと愛する人々を破滅へと導く愚か者の一人です。だからそう遠くない将来に、自分もその一人となって冷たくなっていることでしょう。
つい先日の報道で、ドイツ、フランスでは「ロシアへの制裁強化とウクライナへの軍事支援を支持する」と答えた人が70%以上だと言っていました。本当でしょうか?日本はどうですか?アメリカではウクライナ紛争に関心があると答える人は人口の3%に満たないそうです。一方で物価高騰には関心がある。日本も似たようなものではないですか?それでも、世界140ヶ国以上がロシアへの制裁に同調しました。しかし今もなお、悪の帝国に正義の鉄拳を浴びせることで、ロシアがどこかの段階で反省し「すいませんでした、もうやめます」と言うだろうと本気で思いますか?私は絶対にそれはないと思います。かつての大日本帝国がそうであったように、全てを失い、破滅の危機に瀕するまで、自らの犯した過ちを認めることは出来ないでしょう。80年前の大戦においては、完成したばかりの最新兵器であった原爆2発でついに日本を降参させることが出来ました。日本は壊滅的に破壊され、日本人は地獄を目の当たりにしましたが、世界が滅びることはありませんでした。しかし今は時代が違います。ロシアは6000発もの核弾頭を持っているのです。広い国土を持ち、資源大国ではあるけれど経済的にはトップ10にも入れないロシアにとって、核による脅しは大国としての地位と発言力にはっきりと機能しています。だから、中国やインドがそれに続き、北朝鮮の様な国も核を欲するのです。平常心であれば誰もが嫌い、愚かだと断罪する暴力が、やはり一番強い力になっているのです。ならば、と日本もケンカに強い国になるべきなのですか?再び?第二次世界大戦でのロシアは、3700万人もの犠牲(戦闘による死者ばかりではないですけど)を払ってでもナチスドイツを撃退し、国土と国の統一を守ったのです。人口が近い日本の死者は軍人、民間人合わせて310万人です。そのロシアが降参するでしょうか?核を使えばどうなるのかはロシアも分かっています。だからこそ、核による恫喝をやめないのです。
今回の戦争で、ロシアが国際的な信用を失ったことは確実です。経済的取引において優位に立つためにはその信頼がとても重要です。ですから、ルールを守れない、自分のルールを押し付ける、ということをすれば、必ず国の発展に対して不利に働きます。だからもう十分です。これ以上ロシアを追い詰めるべきではありません。プーチン大統領も、ゼレンスキー大統領も、そしてバイデン大統領も、これ以上人を殺してはいけません。世界がその終わりを迎えるまで、戦いをやめないつもりですか?人種も宗教も政治体制も関係ないです。人の幸せなんて、どこでも同じです。ロシアを滅ぼしたら、次は中国ですか?インドですか?そんなこと出来るハズもないし、考えるのも愚かです。相手を大好きになれとは言いません、でも最低でもその存在を尊重し、幸せを追求する権利を認めるべきです。だから今からでも遅くはないです。可能な限り早く停戦すべきであり、これ以上犠牲を生まず、共存する世界を再構築しなくてはなりません。ロシアにガスを売ってもらいましょう。ユニクロもトヨタもロシアの人たちに良いものを送り届けてあげてください。どれだけ時間がかかっても、相互の尊重と信頼を取り戻し、お互いがその幸せを追求できる世界を維持しなくてはならないです。唯一、その状況において、カーボンニュートラルに向けた協力も可能になります。
今、一生懸命救出しようとしているウクライナの友人たちに対しては、こんな私の本心を伝えることが出来ません。裏切り者とののしられるかも知れません。でも、私はロシアが今やっていることを憎んだとしても、ロシア人を憎んではいません。私には、ドネツクに住む親ロシアの研究者の友人もあります。穏やかでとても優しい、心温かい彼が激しくウクライナ(政府)を糾弾する様に、何も出来ずうろたえる自分がありました。何という悲劇でしょうか。どうしてこんな憎しみが生まれて、遂に戦争となってしまったのでしょう。愚かな人間の定めなのでしょうか。神様が救ってくれるなら、祈りたい気分です。
(追加)
2014年にロシアが一方的に併合したクリミア半島のロシア軍拠点が攻撃を受けていることが大変心配です。ゼレンスキー大統領は、ウクライナ東部のみならず、クリミアを奪還すると息巻いています。先日Nスぺでやっていた「デジタル・ウクライナ」という番組が衝撃でした。人工衛星による監視の目が今や凄いことになっているんです。Space-Xのロケットで打ち上げられた民間の人工衛星の膨大な監視画像が提供されていて、ロシア軍の動きを逐一把握出来ているようです。アメリカは、ウクライナがロシア本土を攻撃しないように、長距離ロケット砲を供与しない様にしているようですが、クリミア半島や黒海艦隊は十分に射程に入るようです。それを始めてしまった。そうすると、ロシアに「ロシア本土への攻撃」とこれを見なす口実を与えてしまうことになり、いよいよ核使用への危険が高まります。ロシアはこの戦争に膨大な戦費を費やしています。中国やインドが助けているとはいえ、経済制裁の影響はロシア経済を長期的に苦しめます。さらに、この戦争で既に1万5千人以上のロシア兵(多くは辺境から前線に送られた非スラブ系の若者)が犠牲になっているようです。そうなると、戦争の長期化はやはりプーチン大統領の政権基盤を揺るがすことになります。今年70歳となり、健康不安も囁かれるプーチン大統領が、多くの国民を道ずれにしたとしても必ずこの戦争に勝利しようとするのは、当然ではないでしょうか。それも、可能な限り近い将来に。自らの権力基盤を維持するために粛清に次ぐ粛清を行ったスターリンも、文化大革命で中国の知識人を抹殺した毛沢東も、天寿を全うして死にました。「プーチン大統領は正気ではない」と論評する報道には呆れてしまいます。彼は全く正気です。冷静さを失っているようにも全く見えません。誤算はあったかもしれないけど、全ては彼のシナリオ通りであり、その行く末にどれだけの血が流れたとしても、偉大なロシアを守る偉大なリーダーとしての決意が見えます。だから、プーチンとの対話を拒み続け、ロシアを攻め続けることは世界の終りに突き進むことなのです。
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