またしても、長らく中断してしまいましたが、再びウクライナの問題です。ロシアによる軍事侵攻が始まってもうすぐ8か月となりますが、事態は改善するどころか、一層深刻になり、終わりが全く見えない上に、凄惨な結末を生むことを本気で心配しなくてはならない状況です。恐れていたことが、次々に現実に起こっています。どうにかして、この状況を止めて欲しい。しかし、その力を誰も持っていない様に思われます。
こうしている間にも、学振に招へいされているOleg Dimitrievさんは、第三国を経由して綱渡り的に来日することを目指し、その準備を着々と進めています。また、山形大学が立ち上げたSTEP-YUプログラムによっても、数名のウクライナ人学生を救済するために、関係者が頑張っています。一人でも多くの人たちの命を救い、ウクライナの再建を果たすために、国際社会は一致協力すべきです。
しかし、その「国際社会」が何を意味するのか、それが一種類ではないことは繰り返し訴えてきた通りです。プーチン大統領を悪だ、狂気の殺人者だと言う人たちがいても、プーチン大統領や少なからぬロシア国民にとっては正義の戦いであって、絶対に負けることの出来ない戦争です。ロシアが袋叩きに遭う中で、中国やインドは微妙な距離感を保っているとはいえ、ロシアを世界地図から消してしまいたいと躍起になる西側諸国が正しいわけでもありません。ロシアの軍事行動を非難する国連決議に反対したり、棄権したりする国が多数あることを忘れてはなりません。世界はその多様性を基礎とすべきであり、善と悪の二極ではないのです。
クリミア大橋の爆破をきっかけに、大規模な報復攻撃がウクライナ全土に広がり、キーウ周辺にいる私の友人たちにも危険が迫っています。ロシアは徴兵に踏み切り、ベラルーシが参戦を表明し、この混乱に乗じて北朝鮮が頻繁な弾道ミサイル発射と核実験による挑発行動を活発化して、世界のルールを無視した核保有国としての既成事実化、力によって相手を恫喝し、交渉のテーブルにつかせようとする動きが露わになっています。これを単に邪悪な心がもたらす行動と思うなら、その世界観は歪んでいます。相手の立場になって考え、そして人の行動心理を素直に受け入れたなら、これらの国々がとる行動は、全くもって合理的です。中国やインドもしかりです。決して米国、EU、日本に同調はしないでしょう。これら全ての国々がしようとしていることも、やはり力によって相手をねじ伏せようとしているだけなのです。力とは軍事力だけではありません。自らだけが正義の旗手であるかの様に振舞うのは明らかに間違っています。
相手が小国であれば、力でねじ伏せることも出来るのかも知れません。しかし、今は大日本帝国が滅亡した80年前とは違うのです。二発の原発と首都東京が焼野原になり、沖縄が占領されてやっと、日本とその人民の存亡が危機に瀕していることを認め、やっと日本は降伏しました。しかし、ロシアは6000発もの核弾頭を保有し、中国も巨大な核保有軍事強国であり、北朝鮮もあっという間に強大な核軍事力を手に入れたのです。台北が、東京が、ソウルが焼野原になってでも相手を屈服させれば正義の戦いに勝利したというのでしょうか?もちろん、その時はモスクワも北京も焦土と化します。ニューヨークも、ロンドンも、ベルリンも、パリも。すなわち、世界が終わるまで、この戦争を続けるのでしょうか?
今の各国政府、対話を拒み続けるリーダーたちの下ではこの戦争を止めることは出来ません。一方で国連は完全な機能不全に陥っています。大切なのは、世界の人々の想像力です。これをこのまま放置すれば、どういう結末に向かうのか、想像力を働かせなくてはなりません。そうすれば、どの様な妥協をしてでも共存への道を模索しなくてはならないことが分かるはずです。責任ある各国のリーダーは自らの思い込みを一旦脇に置いて、イマジネーションを働かせて、事態の緊急性に向き合い、対話による解決へのリーダーシップを発揮すべきです。
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