前の話と一緒に書こうかと思ったんですが、ウクライナのことなので、こっちのシリーズに書きます。でも、関連します。
ウクライナのオレグさんが日本に来て2週間が経ちました。少しずつ日本の生活にも慣れて、物静かな彼が見せてくれる笑顔に嬉しくなります。自分の半径5メートルぐらいしか見えていない人には、戦争がもたらす悲劇、恐ろしさ、苦しさは全く想像出来ないだろうと思います。その世界を生き延び、手で触れることの出来る距離にまで彼が来てくれたこと、その力になることが出来たことは、56年の今までの人生で一番誇れることの一つです。
彼とは、この間にも戦争のこと、ウクライナだけでなく、ロシアの人々や他の地域も含めて、罪の無い普通の人々がどうしたら苦しめられずに済むのかということについて、色々と話をしています。例えば今日、日帰り温泉に一緒に行って、くつろいだ中で話しました。ウクライナには多くの友人がいますが、私はまだ見ぬロシアの友人のことも心配なのです。いや、いたな。ずっと前、確か1996年にインドで太陽光エネルギーの国際会議で仲良くなった、ロシア人のオッサンがいました。リャブチュクさんという人です。一緒にタバコ吸ってて、タバコの時間の度に一緒にしゃべって、歳は凄く違うのに、やたら仲良くなって、学会会場でも会うたびに"Hi, Hello!"って、挨拶してたっけ。生きてるかなあ、リャブチュクさん。そう、国の制度が何だろうと、どんな神様を信じていようと、肌や目の色が何色だろうと、何をいつも食べていようと、友達になれるんです。要するに、人は人。ほとんど違いが無い。よく知ったかぶりして「○○人は、大体△△」とか違いを強調したがる人がいますが、私の知る限り、違いよりも共通することの方がずっと、ずっと多いです。この戦争の行く末に、ロシア人はどうなるのか、ロシアという国はどうなるのか、ということへの心配です。想像してみてください。ウクライナの人々にとっては、今起こっていることは到底受け入れ難いことであり、ロシアという国、そしてロシア人を憎むなということはとても難しいです。それでも、オレグさんは私の言うことに耳を傾け、否定するでもなく、むしろ私の恐れに共感してくれました。何と素晴らしい友人を持ったことでしょう。自分を高め、育ててくれる友人を持つことは幸運なことです。
私が話していたことは「ロシアはこの戦争に負けることは出来ない。負けはロシアという国家の崩壊を意味する。ロシアの崩壊はテロリストを大量生産することになる。」ということです。ロシアの敗戦はプーチンの失脚では済みません。もしこの戦争に負ければ、ロシアを構成する様々な民族、地域はもうモスクワの言うことを聞かなくなります。戦争の責任を問われても、モスクワはそれを合理化することが出来ないでしょう。すなわちそれはロシアの崩壊、分断を招きます。経済的に疲弊した、弱小な地域をマフィア的なリーダーが統治する無法地帯が多数生じます。大変都合が悪いのが、それら弱小且つ不安定な地域が核兵器を保有するということです。すなわち、タリバンが統治するアフガニスタンの様な地域が10個ぐらい生産されて、それが核を持つということです。その管理や適正な運用が出来るはずもありません。悲劇的な頭脳にすさまじい筋力の恐ろしいテロリスト集団を生み出します。なので、ロシアを敗戦に追い込んではいけないのです、絶対に。
アメリカやEUは何を考えているのでしょうか?ロシアが「負けました、降参です」と言う日を迎えるまで戦争を激化させるつもりでしょうか?降参にまで追い込めば、それはプーチンの失脚ではなくて、上記のロシア崩壊を招くのです。ロシアの国体を守らねばなりません。ロシアの人々が、ロシア人としての尊厳を守れる様にして、この戦争を終わらせなくてはならないんです。当然ながら、プーチンはこの戦争を早く終わらせたいと思っているのです。どの様にすれば、戦争を終わらせることが出来るのか、についてバイデン米国大統領とプーチンがその合意点を見出す以外に方法はありません。この状況において、プーチンがその権力の座に留まることに固執するなら、ロシアという国家を道ずれにして崩壊させることになります。すなわち、プーチンの亡命と保護を条件として、民主的プロセスによるロシアの再生を約束する以外にないのです。ウクライナの損失も、ロシアの損失も、この戦争を許してしまった国際社会が総力で償う以外方法は無いです。プーチンは消えても良いけど(殺しちゃダメ)ロシアという国は絶対に守らなくてはなりません。この終戦プロセスについて、アメリカが口出ししないことも大切です。ロシアの未来を選ぶのはロシア人であるべきです。ロシアの弱体化は避けられないでしょう。ロシアの人々はそれを受入れなくてはなりません。しかし、経済や軍事などよりも、長い歴史に裏付けられたロシア人としてのアイデンティティーは決して失ってはなりませんし、私たちはそれをリスペクトしなくてはならないのです。
10年以上続いたアフガン戦争を終わらせたゴルバチョフ氏は、ソビエト連邦を崩壊させました。その時は、まだ崩壊しても大丈夫なソ連だったのです。でも、今度はロシアの崩壊になってしまいます。それはあってはなりません。欧米が、これまでに行ってきたロシアへの敵対政策の過ちを認め、この戦争を明確には非難していない多数の国家に対しても、それらをリスペクトすることが出来るなら、この戦争を終わらせる方法を共に考えることが出来るハズです。今はまだそれが全く見えないのですが、世界の賢人たちに気付きと想像力があれば、きっとその道が見えてくると思います。
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