パナソニックが栃木工場での有機ELテレビの生産を3月末に終了し、国内でのテレビ製造から既に撤退していたことが報じられました。
パナソニック テレビの国内生産から撤退 海外での生産に集約へ(NHK)
カーボンニュートラルとどう関係するのか?と思われるかも知れません。一時期は結構電気を沢山使う家電製品でしたが、最近では消費電力は大したことは無いです。とは言え、テレビの生産終了は、グローバルな産業構造の変化と日本の状況を考える上では重要です。特に学生の方にはこれから自分がやるべきことを考える上で知っていなければならない事実でしょう。
1952年に白黒テレビの生産が始まって以来、実に70年近くの歴史に幕が下りたことになります。この間、お茶の間の中心となる家電製品の最重要地位を得て、テレビの大型化や高価格化なども経て電機メーカーの稼ぎ頭、エース中のエースになった時期があります。その頃は、大学や大学院で学んだ人材の中でも、最も優秀で期待されるエースがそうした黒物家電の開発に配属され、それに学生も憧れる時期がありました。
当のパナソニックは、テレビ事業で大きく成功したとは言い難いかと思います。2000年頃の薄型テレビ競争の中でプラズマに賭けて敗れ、早々と海外生産の液晶パネル供給を受けることになります。有機ELテレビを国内生産していたこと自体知りませんでしたが、それも撤退となったわけです。無理もないでしょう。中国ハイセンスの50インチ4K有機ELテレビが10万円程度で買えてしまう世の中です。日本のメーカーにとってその事業を続ける意味などありません。そもそもテレビという製品の価値自体が相対的に大きく低下し、作っては消費されるコモディティー化したということです。私などは、テレビ隆盛期に子供だった「テレビっ子(死語)」ですから、リビングにテレビが無いなど想像できなかったりするわけですが、今やテレビを持たない家庭も増えてきている様です。
思い返すと、白黒だったテレビがカラーになり、大きさがどんどん大きくなり、家庭用ビデオテープレコーダーが登場するぐらいまでの変化のスピードに対し、2000年代に入ってからのテレビ薄型大画面高精細化、プラズマ対液晶の戦い、そして有機ELの登場と衰退という後半の変化のスピードがえらく速い感じがします。それは、例えば自動車産業など、他の産業分野についても言えるのでしょうね。そのスピード感の中で常に先頭に立ってこその研究者人生と思う人もあるでしょうが、私には能力の無駄遣いとしか思えません。こんな戦いに巻き込まれ、消耗し消費されていく人材は哀れです。全員とは言いませんが、より多くの優秀な若者にカーボンニュートラルを志向する研究開発にその人生を賭して取り組んで欲しいと思います。目先の利益を大切にしなければ、その次を語ることも出来ないわけですが、お金に換算することが出来ない価値である一方、その解決がまだ全く見通せないカーボンニュートラルは、今大学で学ぶ世代にとって人生の全てを賭けて取り組むに値することだと思います。どちらにしても、カーボンニュートラル達成に失敗したら、その次は無いのですから。
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