2030年代半ばには、ガソリン車が禁止になる!?
ガソリン車禁止宣言で揺れる自動車業界、日本が「拙速な転換は不要」と言えるワケ(ビジネス+IT)
2020年の終わりごろから、この様なニュースが飛び交ったことを覚えている方も多いのではないかと思います。「EU、北米、そして中国も急速に電気自動車(EV)化を進めているのに、日本はまだハイブリッド(HV)を売るガラパゴスだ。7月にはEV専業のTeslaの株価総額がトヨタを抜いて世界一の自動車メーカーになった。これに遅れをとらず、日本もすぐEVにシフトすべきだ!」の様な話が飛び出し、小泉環境相を含めた閣僚から2035年ガソリン車禁止の考えが提示されました(正式には決まっていないと思います)。さらに追い打ちをかける様に、小池都知事は「東京は前倒しして2030年にはガソリン車の販売を禁止」と言い始める始末。理念や明確なプランがあって打ち出されたものではなくて、自身のリーダーシップのアピール、政治的駆け引きのネタに使われていたのが見え見えです(コロナ対策でも同じことやっていますよね?)。注意深い方であれば、全部EVにすると言っているのではなくて、プラグインハイブリッド(PHEV)やさらにはHVも認めていて、ガソリンやディーゼル燃料だけで走るクルマを禁止すべき、と言っているだけであることに安心したかと思います。ガソリンスタンドが無くなるわけではありません。それでも、自動車関連の仕事で生活している人に限らず、これから先どうなるのか、とても気になることでしょう。カーボンニュートラル社会実現に向けて避けては通れない重要な課題ですが、同時に日本にとっては産業の根幹に関わる問題でもあり、理想的シナリオだけを考えた甘さは許されない重大問題です。あまりにも重大で、様々な事柄と関わりますから、とても一度には書ききれません。なので、何回かに分けてこのEVシフトの問題を考えたいと思います。
自動車などの移動機械だけがGHG排出の元凶ではないですが、日本人の平均でも一人当たり総排出量の20-30%は自動車の使用、利用によるものであり、さらに産業としての自動車等の生産や廃棄においても多量のGHGが排出されます。また、日本のGDPの約10%を自動車産業が稼ぎ出し、550万人の雇用を自動車関連産業が生み出していることからも、カーボンニュートラル社会の実現に向けて自動車産業を考えることは極めて重要です。
その使用に大きなエネルギー消費が伴い、多量のCO2を排出するために環境悪扱いされて肩身の狭い思いをする自動車ですが、自動車に限らず、航空機、船舶等も含め、モビリティーは人間の根源的な欲求であり、その功の部分にも目を向けて、功罪における功を最大化し、罪をいかに減らしていくかが議論の基本にあるべきと思います。決して、今日から自動車は使いません、全て自転車です、で問題解決ということではないんです。
最近はそう公言すること自体が憚られるのですが、何を隠そう私自身自動車が大好きです(オートバイはもっと好き)。テクノロジーを志すことを決意した高校生の頃から、バイクはその象徴であり、自分を強く惹き付ける工業製品でした。それらが与えてくれる愉しさと世界の広がりを知った後では、モビリティーを捨て去ることはとても出来ません。自分自身を「移動バカ」だと感じます。その乗り物が速かろうと遅かろうと、快適だろうと、不快だろうと、とにかく移動している時間が楽しいのです。もちろん、自分自身で運転したいです。自分でしなくてはならないことが多い分、快適で楽になり過ぎてしまった自動車以上にやっぱりオートバイが好きです。
こんな人物なので「お前にカーボンニュートラルを語る資格は無い!」とお叱りを受けるかも知れません。しかし、その価値を知らなければ、どうしてこれほど世界中で必要とされる産業へと成長したのかも説明出来ません。自動車好きでなかったとしても、その恩恵を受けていない人はいません。その功と大切さをわきに追いやって、罪を滅ぼすことだけを考えたら当然歪んだ考えに行き着いてしまいます。また、自動車産業とそれを支えるテクノロジー、さらにはグローバルな産業構造を理解していることも大切です。「全部EVにしたら問題は解決」というのはもちろん間違っています。「EVはゼロエミッション」というのも誤りです。
私の限られた知識やあいまいな数値を元に話を進める前に、ご関心のある方には是非以下のYouTubeビデオをご覧になることをおススメします。
加藤康子さん、池田直渡さん、岡崎五郎さんによる座談会で、何と既に第7回まで連載されています(まだ続くみたいです)。各回40分程度なので、全部見るのには時間がかかりますけど、毎回大変参考になります。やや「日本の国益」というところに偏っている感じもしますが(カーボンニュートラルはそれぞれの国益を超えた重大さを持つに至っているから)、とても冷静な分析がされていると思います。私は95%ぐらい賛同出来ます。特に岡崎五郎さんは、私が一番好きなモータージャーナリストで、自動車愛に溢れる一方で押し付けがましいところが全く無く、共感を呼ぶその語り口は、是非見習いたいと思う方です。YUCaN研究センターが正式に設立されたら、是非ゲストとしてセミナーでご講演頂くことを交渉したいと思っています。
ひとまず、1回目はここまでにします。本件についてご興味のある方は、上記ビデオをどうぞご覧ください。それで大体視界が開かれると思います。
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