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国立大学法人山形大学工学部教授の吉田司のブログです。2050年までのカーボンニュートラル社会実現に向けて、色々な情報や個人的思いを発信します。発言に責任を持つためにも、立場と名前は公開しますが、山形大学の意見を代弁するものではありません。一市民、一日本国民、一地球人として自由な発言をするためにも、所在は完全に学外です。山形大学はこのブログの内容について一切その責任を負いません。

2021年6月15日火曜日

環境分野ノーベル賞、平田仁子氏

 環境分野のノーベル賞とも言われる、アメリカの「ゴールドマン環境賞」を今年、京都の環境NGO「気候ネットワーク」理事の平田仁子(ひらたきみこ)氏が受賞したそうです。

「環境分野のノーベル賞」 日本のNGOの平田仁子さんが選ばれる | 環境 | NHKニュース

受賞理由は、日本の石炭火力発電拡大への動きに反対する活動を展開し、2011年の福島第一原子力発電所の事故以降に計画された50基の石炭火力発電所新造計画について、13基の計画を中止に追い込み、計画全体の見直しや、脱炭素への動きへと転じさせたことへの貢献とのことです。素晴らしい功績だと思います。おめでとうございます。ありがとうございます。

と言いつつ、この報を受けて私自身の無知さを恥じると共に、脱炭素への変化の遅さとその達成の困難さへの焦燥感が募りました。まず、ゴールドマン環境賞という賞を知りませんでした。アメリカのゴールドマン夫妻が1990年に設立した、環境保護への功績を称える賞だそうです。そして、気候ネットワークの存在も、平田さんの活動や功績も、全く知りませんでした。さらには、原発事故後に50基もの石炭火力が計画されたという事実も知りませんでした。全くもってお恥ずかしい。自分自身は、常に環境エネルギー問題に高い意識を持ち、それに貢献することを目指して研究教育活動を行ってきたという自負があったのですが、これらを知らないということだけでも、社会から白眼視されてしまいそうです。しかし、言い訳ではないのですが、そんな立場にいる私でさえこれらを知らなかったという状況が生まれること自体が、脱炭素への機運がまだまだであることを示している様にも思うのです。事実、YouTubeで「平田仁子」で検索すると、ご講演されているビデオが多数出てきますが、その視聴回数が数十回程度なのです。それぐらい認知度が低いわけですから、私が知らなくても当然かと思いますし(言い訳です!)、その認知度の低さを考えると今回の受賞ってなぜ?とさえ思えてきます(失礼!)。上記レポートの内容を見る限り、平田さんの果たした功績はとても重要と思います。しかしそれがメディア等で報じられる機会は少なかったと思います。

このことを通じてあらためて考えるのは、脱炭素への社会全体の大変革を成し遂げるために絶対に必要な、社会の全ての人々がそれをより良い社会への変化であると考え、それを求める努力としてこれに貢献したい、という社会的気運を生むことの難しさです。このところ話題にした、G7で鮮明化した国際的対立は大きなスケールでの協調、全ての人類の参加に対する大きい障害ですが、自分の周囲や足元を見ても全セクターが参画共同する環境を醸成することは極めて困難と感じます。大半の人にとっては、いまだもって気候変動は全く他人事です。ここ数年の巨大台風等による甚大な被害を経験して、それに備えるための強靭な防災対策が始まり、個人としての防災への備えの意識を高めることにはなっている様に思いますが、その根底にあるGHGの環境への放出の問題を自分事として捉え、進んでこの根本問題の解決に取組もうとする変化を生じるには至っていないと感じられます。その点で、石炭火力の拡大に強く反対し、その功績が国際的に評価されて今回の受賞に至ったことは、市民に出来ることの重大さを証明しているのですが、国民の関心を呼ぶ大きなニュースにもなっていません。環境NGOという団体は、一部のファナティックな人たち、例えば道端にゴミを捨てる人を烈火のごとく叱りつける説教臭い人の集団、の様に思われてしまいがちです。そのせいで、その声に耳を傾けてもらい、周囲の人たちが自らを考える機会を拡大することにあまり貢献できていないのではないでしょうか。要するに、波及効果が無いのです。YUCaN研究センターの活動やこのブログでの訴えもまだ始まったばかりではありますが、果たしてどこまで貢献出来るのか、心配です。

未来志向で、懸命に課題に取組み、発信しようとしている人たちは、この国の中にもいるのですけど、それらがつながりあって、大きなうねりを生むところまでは行っていない、ということですよね。バラバラだと変な団体に見えてしまいますが、団結したら、それが新しい社会を構築するための最新トレンドなのだ、という影響力を発揮できると思います。産官学を越えて、環境エネルギー問題に取組む団体のネットワーキングを進めて、相互のその活動を見える化することが必要と思います。微力ながら、少しずつでも変化を起こしていきたいと思います。

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