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国立大学法人山形大学工学部教授の吉田司のブログです。2050年までのカーボンニュートラル社会実現に向けて、色々な情報や個人的思いを発信します。発言に責任を持つためにも、立場と名前は公開しますが、山形大学の意見を代弁するものではありません。一市民、一日本国民、一地球人として自由な発言をするためにも、所在は完全に学外です。山形大学はこのブログの内容について一切その責任を負いません。

2021年6月25日金曜日

新彊ウイグルの多結晶シリコン輸入禁止、米国

 ウイグル族の人たちの(児童労働を含むと疑われる)強制労働、ジェノサイドに抗議するための経済制裁が拡大しています。先日はユニクロが制裁対象になりましたが(強制労働による綿花を使っている疑い)、そうした農産品に限らず、いわゆるハイテク産業も制裁対象になっているようです。今回はその中でも大変影響の大きい制裁で、太陽電池パネルの生産に必須となる多結晶シリコンとそれを含む製品が禁輸対象になりました。

米国、中国・新疆で生産の太陽光パネル関連製品の一部を輸入禁止 - Bloomberg

まず驚きなのは、世界の太陽電池用多結晶シリコンの半分以上が新疆ウイグルで生産されているということです。今回ジェノサイドが疑われ、禁輸対象になったのはHoshine Silicon Industryという会社の製品ですが、調査の行方次第ではさらに他メーカーへも拡大する可能性があります。これは、機能しているグローバルサプライチェーンを自ら破壊する行為なので、今後関連産業が代替のポリシリコンの供給を模索することになります。そして恐らく極めて安価になった太陽電池の価格が上昇することにつながり得るでしょう。

もちろん、ジェノサイドを見過ごすわけにはいきません(中国はこれを強く否定しています)。先日話題にしたコーヒーやカカオ豆と同じで、貧しい農家をいじめまくった結果の児童労働なわけです。何故ポリシリコンの半分以上が新疆ウイグルで生産される状況に至ったのか?これこそ、ルールなど二の次三の次で金を増やすことだけを追求する資本主義経済の競争が生み出した結果です。無理や矛盾を押し付けられる先が、弱者であるウイグル族の人になり、求められる品質と激安価格のポリシリコンの供給を可能とし、太陽光パネルの価格破壊が一気に進んだわけです。すなわち、持続性とか公正性の観点からは全くそれを無視した成長(膨張)であったことを受け入れなくてはなりません。

果たして、アメリカの言う正義が本当に正義か?という疑問は当然残ります。中国の主張も疑わざるを得ません。フェアトレードをすればコーヒー一杯の価格が上がるように、正当な対価を受け取らず強制労働させられるウイグル族の人を利用しなければ、太陽電池の価格も上がります。一方での脱炭素への動き、再エネの頂点に存在する太陽光発電。今や圧倒的に安価な発電手段となった太陽電池は脱炭素への頼みでもあります。しかし脱炭素は持続可能な社会の実現のためであり、それを持続不可能な手段で達成するということもあり得ないでしょう。日本や欧米のメーカーが新疆ウイグル産と同じ価格でポリシリコンを提供することは絶対にできないでしょうね。今後どうなっていくのか注目されます。

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