今日は、日本国政府が2030年までにEV用充電スタンドを今の5倍にあたる15万基に増やす目標を掲げたことが報道されました。
クルマの電動化加速へ新目標 EV充電スタンドを5倍の15万基に 政府(NHK)
これは言うまでもなく、2035年までの自動車電動化目標(まだ法律ではありません、BEV, PHEV, HV, FCV全てを含みますので、非ガソリン化ではありません)への変化を加速したい、そのためにはインフラ整備が重要、ということです。しかし、現実には補助金まで使って建てたまだ使える充電スタンドが利用が少ないことなどを理由に撤去され、充電スタンドの数が減少傾向にあることは前にお伝えしたとおり。やるからには、民間任せではなくて、採算性など関係なく必要な場所に十分行き届く様に計画的な設置を進めることが重要と思います。
しかし、「ガソリンスタンド並みに利便性を高める」という目標に対しては、15万基でも果たして十分かは疑問です。国内では自動車の数が増えない上に、燃費が大幅に向上して(良いことだ!)ガソリンの需要が低下し、ガソリンスタンドの数はピーク時の6万店舗の半分以下、2万9千店舗程度に減少しています。
ガソリンスタンド店舗数で、平成の30年間を振り返る! - 最新版・ガソリンスタンド店舗数推移- (gogo.gs)
山形にもよくある様な山間部の集落に居住する人にとっては大変で、自動車が必須な環境で生活するにも関わらず、ガソリンを補給するためだけに20キロ走らないとならない、という状況が発生しています。それ自体も問題なのですけど、でもまだガソリンを手に入れるのはEVの充電よりずっと簡単だと思います。上記の2万9千はガソリンスタンド、すなわち店舗の数で、給油機は大抵1店舗で4基ぐらいはあるので、EV用充電器の数を15万にしてもその数にはあまり違いがありません。さらに、ガソリン補給は3分もあれば済みますが、充電は急速充電であっても30分はかかります。しかも今後登場すると思われる100 kWhモンスター級EVだと、今主流の20 kWに満たない急速充電では走行50キロ分も充電出来ないと思います。これらのことを考えると、15万基あってもまだまだ、という感じがします。ただまあ、先客がEVスタンドを使っていても、すぐ近くに空きが見つかる、という様な状況にはなるかも知れませんね。ガソリンスタンドの給油機だって、使われていない時間の方が長いです。
もう一つ、海外との比較ですが、アメリカはバイデン政権になって、全米に50万基のEVスタンドを設置するための公共投資を宣言しました(達成時期は不明)。一方EV世界ナンバーワンに既に躍り出た中国は、今年のうちに60万基の設置を完了する見通しです。アメリカや中国の国土の広さを考えると、単なる数の比較ではないことは明らかですけども、中国のこのスピード感は計画経済こそが成し遂げるものと言えますね。
再三書いている様に、EV化推進が脱炭素への唯一の解ではないし、日本の自動車産業の崩壊につながる危険性さえあります。水素や合成ガソリンのことも上記の記事では触れられていて、日本政府はそうした技術が拡大することへの期待も示しています。しかし、上記の中国の動きを見ていると、EV推進が脱炭素に本当に貢献するかどうかなどは無関係に、EV化自体は世界的なデファクトとなって、この変化は止まらなくなるように思われます。
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