日本における2030年時点での発電コスト予測が総合資源エネルギー調査会に提出され、日本でも初めて太陽光発電が最も安価となり、原発を3割以上下回るという予測が示されました。今後、エネルギー基本政策の見直しにおいて、この資料が根拠とされると思います。
同ページからもリンクがありますが、大元の資料(膨大!)は以下のリンクで入手出来ます。
いやはや、こういう資料を作る方の根気良さに脱帽です。私なら絶対途中で嫌になってしまいます。どうやってモティベーションを保つんでしょうね?「これが日本の未来を決する重要な判断材料なのだから!」という使命感でしょうか。でも、それにしては最初から結論ありきの様なところが散見される様に思えてなりません。
そもそも、グローバルにはとっくの昔に太陽光発電が最も安価な発電方式になっていました。海外では既に2円/kWhを切る例も多数報じられています。日照条件が違うから、とかではなくて、再エネ拡大で出遅れた日本では何かとコストがかかり過ぎているというだけだと思います。日本だけの事情などというのは早々に関係なくなりますから、基準はグローバルなものであるべきでしょう。LNGを安価に見積るのも、グローバルスタンダードに反している様に思います。化石燃料については、炭素税をどうするかだけで形勢は大きく変わるでしょう。CCSも全然確立されたとは言えない。そして、原発。安全対策だけではなくて、放射性廃棄物の最終処分をどうするのか、トリチウム汚染水をどうするのか、などについて解の無い状態で、どうコスト見積もりが出来るというのでしょうか?福島の後片付けに、一体あとどれだけの時間と費用がかかるのか、それさえ明らかではないですよね。「絶対安全」などという線引きはそもそも不可能なのかも知れませんが、核ミサイルの直撃を受けても大丈夫なぐらいに安全対策をした場合、どれぐらいのコストになるのでしょう?それを国民が原発再稼働の条件としたら、どうなりますか?
だから、以前もそういうことを書きましたけど、どうにも、導いて欲しい結論の方向性が既に決まっていて、それに合わせてこういう試算を準備した様に思えてならないんです。結局再エネは安くなったし、大幅に拡大していきましょう、でも原発も、石炭LNG火力もやめるわけにはいかない、だから「ベストミックスですよ」という結論が議論の前から準備されている感じがします。
失敗するわけにはいかないから、出来るだけ精度の高い予測をするんです、とばかりに、多くの優秀な研究者を動員して、一生懸命この超長いペーパーを準備したんでしょうね。ご苦労様です。でも、その優秀な人材にこんなこといつまでも計算させてももったいないんじゃないかなー。原発には未来ナシ。CCSも急場しのぎで根本的解決にはならず、で、再エネ発電+蓄電、そしてグリーン燃料サイクルへと一直線に向かった方が良い様に思う。変に道草を食うと、またしてもEUに先に行かれてしまいますよ。優秀な研究者を集めて作った太陽光発電のロードマップ、PV2030が見事に外れたことは、以前書いたとおりです。どんなに優秀でも、グローバルな変動を予測することなんて不可能です。需要のあるところには必ずソリューションが提供され、求める人が多ければコストは下がり、競争が激化する、は常に繰り返されることです。その変化の力は、技術革新による変化を大きく凌駕しているように思います。
最後にある電力貯蔵のコストも気になりました。レドックスフローがリチウムイオンの倍ぐらいコスト高に見積もられています。しかしそれもリチウムイオン電池が完成技術であるのに対して、レドックスフローがまだ途上にあるからでしょう。それと、電池の寿命が試算に反映されているのか疑問です(リチウムイオンはせいぜい5年、レドックスフローは20年以上)。そもそも規模がまだ数十MWh程度ですから、実際に必要とされる蓄電設備(将来的には数十GWhレベルではないでしょうか)とは数桁違います。NaSも高いことになっています。必要な規模を展望すると、リチウムイオン電池の様なマテリアルコストの高い技術には将来性が無いと思います。
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