このブログについて

国立大学法人山形大学工学部教授の吉田司のブログです。2050年までのカーボンニュートラル社会実現に向けて、色々な情報や個人的思いを発信します。発言に責任を持つためにも、立場と名前は公開しますが、山形大学の意見を代弁するものではありません。一市民、一日本国民、一地球人として自由な発言をするためにも、所在は完全に学外です。山形大学はこのブログの内容について一切その責任を負いません。

2021年7月29日木曜日

水素技術競争力世界ランキング

本当にそうなるかどうかはまだまだ分からないとは思いますが、脱炭素時代の燃料として一番有望視されているのが水素です。それをどの様にして得るのか、貯蔵運搬するのか、そして利用するのかについては、様々な関連する技術開発がありますが、その技術競争力の世界ランキングが報じられていました。

水素技術「総合的競争力ランキング」トップ10にトヨタほか日本4社。専門家は「特許数への慢心」に警鐘 | Business Insider Japan

その競争力をどう評価するの?と思いますが、実際このランキングは特許の数だけです。どれだけ水素関連の技術開発に熱心であるかの指標にはなるかと思いますが、本当の意味での競争力をこれだけで評価するのは適切ではないでしょう。とは言え、このランキングを見ていると、気づかされることがあります。

まず、国別のランキング。圧倒的1位が日本です。10年間でその数ほぼ1000万。凄いですね。中国、アメリカ、韓国、ドイツと続きます。意外に思ったのが10位にランクインしたデンマーク。デンマークって、人口600万人に満たない小国ですよ。自動車メーカーもない。自動車メーカーのあるイタリアや、同様に人口が少ないスウェーデンを差し置いてランクインしているというのは、それだけ水素に対して熱心だということでしょうか?

メーカー別で見ると、日本の約1000万のうちの225万がトヨタ自動車。日産とホンダを合わせると40%が自動車メーカー。その他、電池関連の材料化学メーカーが多数日本からランクインしていますね。他国でも自動車メーカーが多く、やはりモビリティーが水素の技術開発を牽引していることが明らかです。興味深いのは、5位の中国科技院。日本のNIMSみたいな存在ですが、産業と密接につながっているので実質AISTに近い存在か?中国ではメーカーが自ら研究開発をすることはあまり無くて、大学等の研究機関が製品開発レベルに踏み込んで研究開発するみたいです(嫁さんのハナシによる)。それを背後でコントロールしているのはもちろん中国共産党です。18位にランクインしている精華大学も同様ですね。前言覆しますが、20位の「中国石化」は中国で一番大きい石油会社です。やっぱりエネルギー関連産業は研究開発も担っているということか、あるいは単なるパテントホルダーなのかも知れません。9位のフランスの組織は原発関係、EDFですね。フランスは原発で脱炭素が既にかなり進んでいるわけですけど、次は一足飛びに太陽光発電ではなくて、太陽光水素なのでしょう。それで、日本からは産総研、NIMS、東大、東工大とかは全くランクインしておりません。研究機関がやることではなくて、やはり産業技術開発は民間企業が主体ということですね。それが正しいと私は思います。特に日本の場合、学者に産業のセンスはまるでありません。大学のリーダーに経営感覚がありません(特に国大)。だから、そういうのには手を出さないのが賢明と思います。新しい技術は是非民間に(日本限定)タダであげるべきだと思います。特許出しても良いけど、日本企業に対してはライセンス料ゼロで。それって国際問題になりますか?

で、このレポートで警鐘を鳴らしていますけど、特許の数を驕るなということですよね。電機業界の過去の失敗が取り上げられていますけど、日本のオジサン(おじいさん、村の長老)に任せておいたら、きっと同じようなことが繰り返されます。囲い込みをして、勝ったつもりになってしまう。それはとりもなおさず、交渉力とかコミュニケーション力が無いからです。異質なものからは学ぼうとせず、排除する方向に動く。自分の周囲を自分にAgreeする人ばかりで固めようとする。同じ空気じゃないとイヤ。経産省も「オールジャパン」とかいう言葉が大好き。オールジャパンで良いですよ、日本に税金を納めてくれる組織に儲けてもらわなくちゃ。でも日本人である必要はありません。男性である必要も、年長者である必要もありません。むしろ逆で、自らを多様性に満ちた集団とし、それを機能させるリーダーシップがあったならば、持ち前の真面目さと創造力の高さを発揮して、もっと日本の産業は強くなれることでしょう。

日産自動車のすったもんだも見苦しかったですよね。幹部でさえ、基本的にガイジンを嫌っていたことが良く分かりました。そういう日本人の弱さが国際的なオープンイノベーションに乗っていけない、ついていけない一番の問題なのだろうと思います。だから、若い人、それから女性にはどんどん遠慮しないで広い世界に飛び出して欲しいです。そして老人はまず交代。オッサン退場。自分には理解できないものを歓迎する度量を持ちましょう!

0 件のコメント:

コメントを投稿

125

 「125」この数字が意味するのは何でしょう?はい、私はオートバイが大好きで、特に手に余らず、使い切れるパワーで軽量な125ccクラスのバイクが好きです。高速道路は乗れないけど、バイクで高速道路走っても、ちっとも面白くないし、二人乗りだって出来るし、燃費良くて維持費安いし。今ウチ...