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国立大学法人山形大学工学部教授の吉田司のブログです。2050年までのカーボンニュートラル社会実現に向けて、色々な情報や個人的思いを発信します。発言に責任を持つためにも、立場と名前は公開しますが、山形大学の意見を代弁するものではありません。一市民、一日本国民、一地球人として自由な発言をするためにも、所在は完全に学外です。山形大学はこのブログの内容について一切その責任を負いません。

2021年7月30日金曜日

その魚、どうするの?

 今朝見たこのニュースに唖然としました。

福島第一原発 放出濃度の処理水で魚の飼育試験 実施へ | 福島第一原発 | NHKニュース

海洋投棄される予定のトリチウム汚染水(を規定の濃度に薄めたもの)の中で、ヒラメなどの魚を飼育して、安全性を確認するというのです。いかにも、らしい、と言えばその通り。これが全く意味をなさない、無力なことだと当事者は分かっていると信じたいです。こんなことで、風評被害が無くなるとか低減されると思ったら大間違い。

万一魚に異常が起こるとかだと、これはもちろん「やべェ」わけですが、恐らく魚は育ってくれるかな。で、その魚はどうなるのでしょう?恐らくは切り刻まれ、放射線量を測定されるだけで、捨てられるのでしょう。それは虐待ですよ。命をもてあそんでいる。放射線量に問題が無いとして・・・じゃあ食べますか?東京電力の社員食堂で提供する予定?社長さんが役所の人との会食で一緒に食べる?それやったら、恐らく多くの人が東京電力を退職しますよね。要するに、みんな絶対食べたくないと思っているわけで、それこそが風評被害なのです。放射線量がどうのこうの、ではない。放射線量に問題が無いのに拒絶されるのは正しくない、と本気で思うなら、やっぱり社員食堂で出してください。例えば日本海側のヒラメの半額でそれを出してみるとかね。

前にも書きましたが、風評被害は絶対無くなりません。そして、その被害に対して金さえ払っておけば良いというのも大きな間違いです。漁業者が求めているのは、一生懸命働ける環境を取り戻すこと。美味しい魚をとって、提供する自らの仕事に誇りを持って取り組めることです。お金さえもらえれば良いとは誰も思わないでしょう。だから、取れる方法はただ一つ、トリチウム分離回収技術が確立されるまで、汚染水を貯め続けるしかありません。その現実に向き合い、原発と共に生きる未来は無いのだと認めることです。

まだ反発する向きもあるでしょう。しかし、では「私の責任」とばかりにヒーロー気取って東電の幹部の方がそのヒラメを食べたとします。でも、それをあなたたちの可愛い孫にも食べさせますか?ためらいはありませんか?それが風評被害なのです。他人事にして片付けないで、自分ごととして考えたら誰にでも分かることではないですか?

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