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国立大学法人山形大学工学部教授の吉田司のブログです。2050年までのカーボンニュートラル社会実現に向けて、色々な情報や個人的思いを発信します。発言に責任を持つためにも、立場と名前は公開しますが、山形大学の意見を代弁するものではありません。一市民、一日本国民、一地球人として自由な発言をするためにも、所在は完全に学外です。山形大学はこのブログの内容について一切その責任を負いません。

2021年7月1日木曜日

佐藤ゆかり議員、e-Fuel推し!?

 自民党の経産部会長佐藤ゆかり議員のインタビュー記事がありました。

自民党 経産部会長佐藤ゆかり氏に直撃 「e-fuel」は経済戦略の決定打になるや?ならざるや??(ベストカーWeb) - Yahoo!ニュース

環境・エネルギーと産業問題に明るい方なので、佐藤さんが環境大臣でも良い様にも思うのですけど、必ずしも豊田章男モリゾー社長のファンだからとかではなくて、未来のエネルギー問題を幅広い視野で見ておられる様に思いました。例の水素エンジンレースカーのことも話題にしていますけど、自動車の電動化で問題解決とかそんな簡単なことではないし、そういう「究極はコレ」みたいな暴走に与さない姿勢が鮮明です。

これは、まあ例のEV推進の嘘でも取り上げられていたところで、EV化するにあたって電力どうするの?電池に必要な希少元素どうするの?など様々な課題があり、日本の産業構造を根本から揺るがしかねないという指摘は全くもってその通り。EVをやっちゃいけないわけではもちろんなくて、EVは重要な選択肢の一つではあるけど、それ一本じゃないですよ、ということでしょう。水素はもちろん、アンモニアもエネルギーキャリアとして注目されますし、自動車、船舶、航空機などにより親和性が高いグリーン燃料はe-Fuelだ、というわけです。

もちろん、グリーン水素やグリーンアンモニアに対して懐疑的な人もいます。さらに言えばCCSに対しても懐疑的、炭素税はとても受け入れられない税率になるとして、現状を「脱炭素バブル」と称し、それは必ず破綻するとおっしゃる池田信夫氏、はっきり言わないけど(ズルい)、総合すると「私は脱炭素なんて絶対無理だと思いますよ」と表明しているとしか思えません。

「脱炭素バブル」が必ず崩壊する理由(JBpress) - Yahoo!ニュース

じゃあどうするっていうの?脱炭素はどうせ無理だから、破滅への道をスローダウンするぐらいしか出来ないと言う?やりたい放題やって、欲しいものは全部手に入れて、もうじき死ぬ人はそういうことを言うかも知れません。でも、知った顔してそんな事をエラそうに言うあなたもこの状況を放置して、変えることの出来なかった無力な大人の一人ではないですか?

どんな時も、どうなっても、諦めたりしてはなりません。そんな無責任な発言を若い人を諭す様に言うものではありません。人を男か女かで分けたくないけど、どうにも私の同類である男は破壊が好きで困ったものだと感じます。「気候変動の大津波が来るから覚悟しろ!」と言うことを勇敢だと思いません。それを勇敢だと言うなら、私は勇敢じゃなくていいです。次の世代にもそう言う。思い切り怖がっても恥ずかしくなんかない。持続可能であること、守ることへの真心と情熱においては、常に女性が勝って見える今日この頃です。

さて、e-Fuelに話を戻しますけど、技術的には大変なことです。「大気中のCO2を回収して」なんてのはずっと先のことで、まずは火力発電から出てくるCO2とグリーン水素からメタンを作る「メタネーション」でしょうね。

脱炭素化 合成メタン作る「メタネーション」技術開発強化へ | 環境 | NHKニュース

これまた、CO2とH2があれば出来るんですけど、水電解でH2を作るところに貴金属触媒が必要になるので、低価格化が難しいところです。だから吉田研では有機触媒で水素を作る研究をやっているんですよ!それから、e-Fuelの様な液体の有機燃料を得るにはCOとH2を原料とするFischer-Tropsch反応があり、それは第二次世界大戦ぐらいからやっているそうですけど、COはCO2還元で、H2は水を還元して作る必要があります。そして、その電力は再エネにしなくてはならないし、触媒は貴金属ダメです。なので、やっぱり吉田研では有機触媒でCO2を還元することもやっているんですよ!CO2を流通した水の中で、COとH2を1:1の量論比ぴったりのファラデー効率で発生させる触媒とか出来れば、連続でF-T反応に接続してe-Fuelを量産出来るでしょう。金属を含まないけど水素結合性の導電性高分子は水電解やCO2還元の触媒になるんですよ。今研究のホットトピックスになっています!

だから、手段が無いわけではないんです。でも大変困難で、コストはかかるしスケールアップも難しい。難しいからやらないというのはダメです。無理だとか言わず、チャレンジするんです。技術の完成を2030年までには果たして、e-Fuelが実用出来る環境を整えないとなりません。佐藤議員には、是非可能性のある技術開発を幅広く(東大とかメジャー大学だけに任せない)支援して欲しいものです。EVはそんな未来までのつなぎですかね?e-Fuelを誰でも手に入れられる様になったら、エンジンの雄叫びが復活する?

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