このブログについて

国立大学法人山形大学工学部教授の吉田司のブログです。2050年までのカーボンニュートラル社会実現に向けて、色々な情報や個人的思いを発信します。発言に責任を持つためにも、立場と名前は公開しますが、山形大学の意見を代弁するものではありません。一市民、一日本国民、一地球人として自由な発言をするためにも、所在は完全に学外です。山形大学はこのブログの内容について一切その責任を負いません。

2021年7月15日木曜日

EUに学ぶ?政治のリーダーシップとは?

 気候変動対策を理由に国際社会での発言権を高め、ルールメーカーとして自らが優位となる国際的秩序の形成(新たなる帝国主義)に躍起になるEUは、2035年までのEU域内でのガソリン、ディーゼル車の販売禁止(HVも含む、すなわちEVかFCVに限定するということ)と金属、セメントなどの素材をはじめに国境炭素税を導入することの議論を加速しています。

EU、気候対策を大幅加速-自動車や貿易など全産業で抜本的改革 - Bloomberg

トヨタやホンダは販売する自動車のおよそ80%を2030年までに電動化することを表明していますが、それは「電気を使って走る」という意味であって「電気だけで走る」ではありません。すなわち、HV(ハイブリッド車)やPHV(プラグインハイブリッド車)を含むので、バッテリーに貯めた電気で走るBEVや燃料電池で発電した電気で走るFCVは恐らく20%にも満たない状況しかまだ想定していないでしょう。それが適正であり、無暗にコストが高く、希少資源を使いまくるBEVやFCVを増やすべきではありません。LCA的観点では現状最も低炭素なHVを主力にしようとする日本の戦略は正しいと思います。EUが出来るというなら、やってごらんなさい、日本は自動車を供給しませんよ、なんて喧嘩腰になるのも感心出来ませんが、自動車メーカーとしては今後の行方が大変気になることでしょう。

しかし、これは根底にあるEUの(もっと言えば、ドイツ、フランスの)策略が表面化した一部に過ぎないでしょう。繰り返し指摘している、「善人の顔をして悪事を働きまくる欧州人」らしいやり方です。それをもっと冷静に分析し、問題を的確に指摘している以下のコラムには全く共感します。

ルールメイカーを気取る欧州の「国境炭素税」に勝算はあるか? 気候変動対策に前のめりのEUと米中や資源国の綱引きが始まる(1/4) | JBpress (ジェイビープレス) (ismedia.jp)

気候変動問題を盾に取られると、反対しにくいので、まさにそこに付け込むのがEUの狙いですけど、根底にある本当の狙いを読み取れないほどみんなバカではありません。表向きは多国間主義、自由経済と多様性の尊重を標榜しておきながら、実際には保護主義的な仕組み(独り勝ち状態)を導入しようとするEUの魂胆は、既に多くの国から反発を買っています。実際のところ、EUはその域内でも経済格差や社会構造の違いが大きく、とても一枚岩にはなれないだろうとも思います。この新帝国主義も、EUのリーダー格の国家には同意出来ても、そうでない国家からは賛同が得られない可能性が高く、足元から崩れていくことも予想出来ます。日本は米国とだけではなくて、中国やロシア、ASEANとも協調して、本当に公正な国際的ルールとその下での脱炭素の実現に向けた働きかけをすべきと思います。

この暴走気味とさえ言えるEUの動きは、脱炭素に向けた国際協調をまとめ上げるどころか、国家間の対立を顕在化させ、世界を分断に導き、大きな混乱を生んで脱炭素を遠のかせるのではないかと心配になります。いい加減、自分たちだけが正義であるかの様な考え方を捨てて、本当の意味で多様性を認め、異なる事情を持った人たちを受け入れて同じ目線で対話することを学ばないとなりません。それはEUに限った話ではありません。アメリカも、中国も、そしてかつて帝国主義に邁進した日本も、肝に銘じておかなくてはならないことです。

とは言え、実態はそんなレベルには程遠いですね。特に日本では場当たり的な対応しかしない、次の選挙のことしか頭にない政治家のリーダーシップの欠如が甚だしいです。それと対比すると、野心むき出しのEUの方が政治が機能していると思えます。その意味では、決してそれに怯んではなりません。日本もしっかりと国際的な場で主張すべきことは主張しなくてはなりません。でも、EU、アメリカ、中国、ロシア、それぞれの野心に対して、日本がその野心をむき出しにして戦ったのでは、上記のとおりで世界の分断が進みます。もっと未来志向で一つの地球、一つの世界におけるリーダーシップが大切ですよね。とっても難しい。

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125

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