昨日(11月7日、日曜日)夜9時から放送された、NHKスペシャル「グレート・リセット」御覧になったでしょうか?
世界で加速する脱炭素社会への大転換 NHKスペシャル「グレート・リセット ~脱炭素社会 最前線を追う~」|予告動画 |NHK_PR|NHKオンライン
正直、今さらこの内容?と思う程で、ズッコケました。登場人物に、例えば環境研の江守先生にまで「グレートリセット」という言葉を言わせるあたり、ちょっとクサイなあと思いましたが、そんなことはともかく、一体これのどこが「グレート」リセットなの?と思う内容の浅さでした。
肉を食べない様にする、とか、飛行機じゃなくて電車に乗る様にする、とかのどこが「グレート」なんでしょうか?産業革命以降、本格的には第一次世界大戦と相前後する頃からこれまでの経済発展の基礎となった資本主義、これを改めることが「グレート・リセット」なのではないですか?このタイトルを見た時に、「おお、NHKも遂にそこに踏み込むのか!」とワクワクしたのですけど、実際の内容は上記の通りで、「肉を食べるのをやめましょう」ですから、相当ガッカリです。
こういうことを考えさせられる材料は、番組の中でも沢山紹介されてはいました。例えば、ロイヤルダッチシェルが環境対策が不十分であると市民団体から訴えられ、敗訴したこと。そして、フランスの石油メジャーTOTALが原子力ではなくて、太陽光、風力、水素などのオルタナティブエネルギーに参入し、これを牽引するマルチエネルギー企業に転身しようとしていること、などです。シェルの件は、あくまで民主主義的なプロセスによる社会主義国家、自由経済ではなくて、計画経済の社会を目指せるのかどうか、という問いかけになります。一方でTOTALの件は、金儲けの矛先が変わっただけで、企業の本質は何も変わらない、変えられないということをよく説明しています。社会が求める価値の変化に対して、率先して行動して市場を支配し続け、自らを太らせ続けようとする資本主義の権化の姿そのものです。やっていることが変わるだけであって、思想には全く変化はありません。時代の要請に応じて・・・は資本主義が常にやってきたことです。
従来の資本主義、自由経済の仕組みに任せた経済発展と決別すること、それこそ「グレート・リセット」ではないですか?100年続いた資本の支配、金が金を生むルールは、格差をこの上なく拡大しました。今や世界トップクラスの大富豪は、一国家を上回る程の富を蓄えてしまったのです。こうした仕組みをリセットすること、それぐらいであればグレートとも言えるでしょう。そして、それぐらいのことをしなければ、この気候変動によって人類は破滅への道を歩み続けることになってしまうでしょうから。
もう一つ、番組で印象に残ったのが北京大学の先生へのインタビューです。「中国は共産党の優れた指導力の下で国民が一致団結して、必ず脱炭素への約束を果たすでしょう」という確信に満ちた言葉。北京らしい、政治と一体化した発言ですけど、これは本当だと思います。「国民が一致団結」は「国民が犠牲を払うことで」と読み替えられます。それを可能にするのが中国の仕組みだからです。一方の自由経済に基づく社会のバラバラさ、結局のところ、経済成長を全く諦めようとはせず、自らの生き残りのためには他者の犠牲を厭わない、変わらない人間の本質を見ると、恐怖政治によって民衆を完全支配することによってしか、この気候変動を回避することは出来ないのではないか、とさえ思えてしまいます。
嫌ですね。自由は何物にも代えがたい。だから、一人一人が学び、共に考え、話し合うことで、民主主義的なプロセスによって、持続可能であることを経済成長に優先させる社会民主主義を成立させること、組合の様な考え方が必要なのではないかと思います。トップダウンではなくて、ボトムアップで社会主義を成立させる社会の大変革へ、それこそグレートリセットだろうと思います。
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