先日こんなニュースがありました。
海草のCO2吸収量 約1万1000世帯分か 全国の主要港などで推計 | 環境 | NHKニュース
浅い海に繁殖するアマモと呼ばれる水草(海藻ではなくて海草)を日本の港湾に植えることで、二酸化炭素を吸収する計画で、国土交通省が取組み、その削減分を国内企業に対して二酸化炭素排出権として売るというのです。「これって本当に大丈夫?」と思ったので、YUCaNの仲間と議論しました。何が心配かと言うと、植物と言うのは確かに成長期においては二酸化炭素を吸収しますけど、死んで分解されるとまた二酸化炭素を出しますから、生まれて、それが完全に消滅するライフサイクルにおいてはカーボンニュートラルであって、ネガティブカーボンではないだろう、と思ったからです。例えば最初は吸収してくれるけど、死んで分解されたら差し引きゼロではないかと。
それで、農学部の程為国先生からご説明頂きました。今までアマモが生えていなかったところにアマモを繁殖させれば、それは砂漠を草原に変える様なものなので、やはりネガティブカーボンを生み出すと考えて良いということです。ナルホド。それから、死んだアマモは全部分解されるわけでなくて、有機物として海底に堆積するので、ある程度はネガティブカーボンを生み出し続けるのです。例えば釧路湿原の様な場所は、水草が長年堆積して、泥炭(ピート)の層を形成しています。それはいずれ石炭になるのでしょう(人間は使えないぐらい時間かかると思います)。しかし、やはり時間が経過すると、吸収量と排出量がバランスし始めて、ほぼニュートラル状態になるみたいです。例えば白神山地の様な古い森林の場合、成長分と同じくらい枯死と分解による排出があるので、吸収能力は期待できないということです。それで、実際どれぐらいの二酸化炭素吸収能力があるのかを正確に見積ることは非常に難しい、とのことです。
全く理にかなった説明で、納得なんですけど、そうするとやはり心配ではあります。それは、人の心理から来るものです。このアマモの繁殖に取組む方からすれば、その二酸化炭素削減効果を声高に主張したくなるでしょう(過大評価につながる)。一方、それを排出権としてわざわざ購入したサイドからすれば、自分たちはお金を使って二酸化炭素を削減したのだ、と主張し続けたいでしょう。しかし、恐らくは毎年の二酸化炭素吸収能力の変化(低下し続けると思われる)を見積もることはしないでしょう。このニュースには全国でやると年間4万5千トンとありますが、それに単純に年数をかけ算して、「これだけ削減した!」となるに決まっています。
なので、やっぱりバイオマスによる二酸化炭素削減効果については、正確な見積もりを可能とする科学的根拠が不十分であると思います。例えばCCSで地中に埋める場合はこれだけ埋めたと言えるでしょうけど、戻ってくる分もあるバイオマスの場合はそんなに簡単ではありません。もちろん、だからやっても仕方ないと言っているのではありません。注意が必要だというだけです。
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