昨日再放送があった、BS1スペシャル面白かったです。資本主義というのは、絶対的なものではなくて、人類の発展の歴史から見ればある一つの形態に過ぎないですよね。
欲望の資本主義2023 逆転のトライアングルに賭ける時 - BS1スペシャル - NHK
色々論点はあるのですけど、今回は短く。機会があったら再放送見て下さい。この番組で日本の経済学者の方が話していた、ステルス値上げの話に考えさせられました。まず、日本の物価というのは、エネルギーとかが極端に上がっている一方、日常的なモノは驚く程値上げされていないんですよね。それは、社会を取り巻く不安が背景にある様にも思いました。賃金が上がらない中で、仕入れのコストが上がったからと言っても値上げは出来ない、そしたらお客さんが離れて行ってしまう、という恐怖もあるのかと。それでも、実際コストは上がってしまうので、値上げしなければ利益が圧迫されてしまいます。そこで出てくるのがステルス値上げで、例えば今まで一袋に10個入っていたソーセージが、いつの間にか8個になってる、とかそういうヤツです。実質的な値上げですよね。
それで、そこから先が面白かった(面白がってはいけない深刻な話)。労働の対価として受け取る賃金もまた、上がらない状況が長く続いているわけです。しかし、より良い仕事というのは、より良い生活のために引き出せるわけで、賃金が上がらないとどうなるか。「労働のステルス値上げ」が起こるんです。つまり、同じ賃金であるならば、より少ない労働で同じ対価を受け取ることによって実質的な労働の値上げを実現しようとする。政府は副業を持つことを奨励していますけど、それもフルタイムで目いっぱい仕事をしていたら出来るわけないですよね。少ない労働、例えば定時で帰ってしまい、その後出来た時間を使って副業をすれば、そこからも収入を得ることで合計の収入として本当に賃上げすることも出来る。人によってはそんな意欲と才能も無いから、副業なんてない、ということもあるでしょう。とにかく、この話が鋭く突いているのは、賃金が上がらないと、仕事の質を下げることによる労働のステルス値上げが起こるということです。最近の日本の雰囲気って、本当にそうですよね。
しかし、これに当てはまるのは、「仕事をさせられている人」だとも思いました(大半はそうですか?)。やりたいからやっているわけではなくて、賃金が労働の対価であるならば、ステルス値上げのために出来るだけ仕事をしない方法を考えるでしょう。一方これとは無関係なのは、やりたいことをやっている人たちです。仕事は自己実現のためであって、そこに目的目標があるから頑張っているのであれば、仕事のコストなんて考えないですよね。我々学者の仕事も本来はそうです(最近はどうだか知らない)。あとは、やっぱりベンチャー企業ですよね。お金儲けは結果であって(もちろん実現出来ないと存続できないけど)、これまで存在しなかった新しいモノを世に届けて世の中の常識を変えたいとか、事業の社会的意義のために頑張っているのであれば、金銭的な損得は頑張る/頑張らないの基準とはなりません。昔の日本企業は、ベンチャー的であったと思います。もちろん、経済成長の中で賃金も上がったから、労働者のやる気も引き出せたわけですけど、例えば自動車を作ることについても、自動車を通じた良い暮らしを提供したいという社会的意義のために頑張ってきたのだと思います。ところが、今は必要品を作る事業は飽和して、不必要なものを必要と思い込ませることで利益を生み出そうとする傾向が強くなっています。社会的意義よりも経済的意義だけになってしまいました。例えばコカ・コーラの話もありましたけど、コカ・コーラは世界の人口増加とほとんど全ての国で販売されている販売網の拡大によって事業を拡大してきました。しかし、人口増加が鈍化する中、清涼飲料水の販売拡大は望めないわけです。利益拡大のために値上げすることも出来ない。そうなると、例えば他社製品に対する優位性を刷り込むことで、シェアを拡大する以外になくなります。一時期、ライバルのペプシが目隠しして2つのコーラを飲んでもらって、「どっちがおいしいですか?」とたずね、ペプシだったのを見たお客さんが「エエー!」と驚くっていうCMをやってましたね。そういうのが今後は増えるんでしょうか。
最後に、ステルスで検索していたら、「ステルス改憲」という記事が出てきました。これも面白かったので、紹介しておきます。本当、酷いよね。みんな騙されている。
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