このブログについて

国立大学法人山形大学工学部教授の吉田司のブログです。2050年までのカーボンニュートラル社会実現に向けて、色々な情報や個人的思いを発信します。発言に責任を持つためにも、立場と名前は公開しますが、山形大学の意見を代弁するものではありません。一市民、一日本国民、一地球人として自由な発言をするためにも、所在は完全に学外です。山形大学はこのブログの内容について一切その責任を負いません。

2023年1月7日土曜日

カーボンニュートラルというビッグビジネスチャンスと鉱物資源危機

 昨年11月に行われたシンポジウムで産総研の近藤先生から基調講演を頂きました。エジプトで開催されたCOP27に参加されていたそうで、そのことも話題になっていました。特に印象に残ったのが「それが良いことか悪いことかは別として、事実としてカーボンニュートラルはビッグビジネスチャンスとなっている」という話でした。COPでは各国政府の代表が気候変動対策の枠組みを議論する会議だけでなく、併設されるパビリオンで脱炭素に関する技術見本市も開催されます。エネルギー消費やエミッションが大きい従来型の産業やサービスに未来はなく、銀行もお金を貸してくれなくなります。一方それを大きく変えていくクリーンエネルギーやローエミッションな産業技術には将来性があり、各国が血眼になって自分のところの技術やサービスを売り込もうとしているわけです。まさに、カーボンニュートラルはゲームチェンジャーであり、社会や産業のシステムが大きく変わる時、勝者と敗者が生れることになるでしょう。だから、従来通りのメンタリティーでもって、勝ちあがりたいですから、これはビッグチャンスなわけです。しかし、そこには大きな落とし穴がある。

長引くコロナによる停滞に戦争の影響も加わって、世界経済の主役級の国々で好景気に沸く国などありません。失策としか思えないゼロコロナで自らの首を絞め、不満の矛先が政府に向かった途端に方針の変更というより崩壊が起こって酷いことになっている中国ですが、2023年は反転攻勢、GDP5%増を目指すようです。延期されるハズだった広州モーターショーが急遽開催され、中国メーカーは様々な新型EVを登場させたようです。

中国 感染拡大で延期した国内最大のモーターショー急きょ開催 | NHK | 中国

さすがの中国も、2022年の自動車販売台数は減少に転じてしまったようですが、EVを軸に内需を拡大して(輸出が伸びないし)経済成長のエンジンにしたいということなのでしょう。しかし、中国のエネルギーインフラを考えると、そのEVに使う電力は相変わらず石炭由来です。14億の人口と広大な国土にクリーンモビリティーを行き渡らせるのは容易ではありません。ならば太陽光発電や風力発電も拡大して、となりますが、これらカーボンニュートラル社会実現に向けた新しい産業技術は全て鉱物資源への依存が極めて高いという問題が浮上します。

EV、風力発電、電化社会・・・脱炭素時代にとるべき鉱物資源戦略とは | EnergyShift (energy-shift.com)

リチウムイオン電池に必要なリチウム、コバルト、ニッケルなどだけではありません。強力な磁石に必要なネオジム、ジスプロシウムなどのレアアース、さらには電線に必要な銅さえも、供給不安、価格高騰のリスクがあります。上記ウェブからもリンクされている、資源エネ庁がまとめた資料を見ると良く分かります。地球上に遍在する鉱物資源の地政学的リスクもそうですが、その原料を精製した化成品の供給がかなり中国に支配されています。戦争の拡大さえ心配される世界の分断と対立を考えると、こうした再エネ関連産業の足元がいつすくわれても不思議ではないです。

この様な危うさの中でも、各国がカーボンニュートラルのビッグビジネスチャンスを逃すまい、乗り遅れまいと躍起になっている状況に大きな不安を感じます。「儲かるから!」地球を穴ぼこだらけにしても、鉱物資源をどんどん掘り出し、消費浪費する。持続可能社会実現の名の下に、それとは正反対な持続性を無視した様な開発を進めようとする今の状況に、相変わらぬ人の強欲さが見えます。それは、持続可能な安定を求めているのではなくて、死に急いでいるのではないでしょうか。

持続可能な食の実現のために、昆虫や雑草を食べなくてはならないかも知れない。産業技術やエネルギー消費もまた、持続可能な範囲にとどめるという方針転換が必要ではないでしょうか。

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125

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