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国立大学法人山形大学工学部教授の吉田司のブログです。2050年までのカーボンニュートラル社会実現に向けて、色々な情報や個人的思いを発信します。発言に責任を持つためにも、立場と名前は公開しますが、山形大学の意見を代弁するものではありません。一市民、一日本国民、一地球人として自由な発言をするためにも、所在は完全に学外です。山形大学はこのブログの内容について一切その責任を負いません。

2026年9月10日木曜日

AfD圧勝に思う終わりの始まり

 9月6日に行われた、旧東ドイツのザクセン=アンハルト州(Land Sachsen-Anhalt)の州議会選挙で、急進する極右政党「ドイツのための選択肢」(AfD = Alternative fuer Deutschland)が実に44%の票を集めて圧勝しました。

ドイツ極右AfDが大勝、東部州議会選 過半数にはわずかに届かず - BBCニュース

単独過半数には僅かに届かないため、直ちに州政府政権与党とはならないかも知れませんが、極左政党との連立が模索されている模様。他の政党はAfDには絶対に協力しないファイアーウォールを張っているんだとか。どうなるのか、眼が離せません。これがドイツ全体にすぐに波及するわけではないと思いますが、今回同州の投票率は76.7%もの高さだったということなので、十分民意を反映した結果だと言えます。

合わせると全部で10カ月以上、人生の1%以上をドイツで過ごし、ドイツ人の友達も多い私としては何となく理解してるつもりですし、丁度今月ドイツから来た博士課程の学生とこの件について話しても「やっぱり」という感じなんですが、旧東独の経済的にやや取り残されている同州では不満の蓄積度が高く、その怒りの矛先が移民に向かっていて(他州より移民の絶対数、割合はずっと少ないのに)、移民排斥を強く主張するAfDに支持が集まったということでしょう。低賃金、物価高、雇用不安から起こる不安や不満に基づく自国ファースト思想、右傾化はドイツに限ったことではなくて、今やグローバルな現象。実際のところは、大抵の地域(特に先進国)において、自国民がやりたがらないキツイ、安い仕事を請け負ってくれているのが移民であり、移民を追い出すことによって地域が豊かになることは絶対ないです(むしろ逆)。社会保障、医療や教育にかかる資源を移民が盗み取っているというのも事実誤認で、大抵移民の労働者は若くて元気ですから、むしろ高齢化、弱体化する地域の社会保障を支えてくれているのも移民(外国人も税金払います)。全く筋違いなんですが、怒りをぶつける先として好都合なので外国人排斥に同調してしまう。もちろん、そういう人に外国人の友達や仲間はいませんし、自分の国どころか街を出ることもほとんどなくて、世界で何が起こっているのかなんて関心もない人たちです。だからこそ、「悪者」を作り上げるハナシは人々が窮地に追い込まれた時に特に強く支持されるわけです。そう、悪意に基づくヘイトではないんです。AfDの支持者も、MAGA派も、きっと心底外国人を憎んでいるわけではないんです。そもそも憎む理由を見つけられる程理解はしていない。良く分かんないからこそ、怒りをぶつける相手として外国人は好都合なんです。根源にあるのは、そうした「蓄積された不安・不満」でしかありません。それを利用して自分への支持を集めようとするポピュリスト政治家こそが悪人なんですが「民意ですから」の民主主義プロセスを経ているのでこの結果を断罪する力は存在しない。ヒトラーも民主主義プロセスを経て国の頂点に立ったことを忘れてはなりません。

で、これからどうなるか。まず、ドイツについては連邦制で各州の権限が強いので、ザクセン=アンハルト州が極右となれば、教育や医療、社会保障、就労などで極端な外国人への差別が起こる可能性はあります。そしたら移民は逃げ出すかも知れませんが、地域経済はより悪くなります。そうすると、新しい「敵」を生出す選民思想へと発展していきます。「無知から生じる低俗なポピュリズム民主主義」は自らを破壊します。それから脱却する、恒久的な平和と安定を目指す、真の先見性を持った政治が主導する民主国家は実現可能か?わかんない人を責めるのではなくて、そういう人も含めて誰一人取り残されない、一人一人が尊重されつつ、長期的にも国家を滅亡に導いたりしない優れたリーダーシップ?それは無理でしょうねえ。そんな神様みたいな人って存在しない。残念ですけど。このまま行けば、今は比較的豊かな西側ドイツでも右傾化が進むでしょう。他のEU諸国も同じ。他人事じゃなくて、日本もそう。その先にあるのはファシズムの台頭、あるいは恐怖の社会主義専制政治体制への革命。どっちも嫌ですけど、どちらも蓄積された不安・不満を解消するかの様に見えてしまうので、民衆の熱烈な支持を得る可能性があります。やはり、不満の蓄積こそが根本原因。

AfDの勝利に、トランプさんからも、ロシアからも祝意が送られたそうで。もちろん、トランプさんはロシアや中国を強くはしたくないでしょう。極右政党の台頭にアメリカとロシアが同じ希望を見出しているわけではない。EUの要であるドイツが自国第一の極右に陥れば、EUは崩壊します。バラバラになれば、アメリカの横暴に対してEUとして一致団結した対抗は出来なくなる。弱小化した個々の国家は再びアメリカに従属せざるを得なくなるでしょう。アジアにはEUに匹敵する民主同盟はそもそも存在しないですから、当然日本はアメリカ従属です。日本と中国の仲が悪いのは明らかにアメリカを利するということ。一方で、EUが分裂した時、ハンガリーの様な親ロシア的な国は再びソビエト連邦に取り込まれることになりそうです。「どちらかを選べ」と踏み絵を踏まされることになるわけですな。「どっちが強いか」の二極はダメなんです。三極が重要。例えば資源や食料を豊富に持つグローバルサウスの国々が団結して、「金は要らない、クルマもスマホも要らないから出て行け、お前たちに資源は売らない」という選択肢をとって地産地消の食料自給に専念する、ということは出来ないですかね?食料や資源を輸入に頼る日本は即降参ですよ。お互い相手の言い分を聞かなきゃいけない。

そうして、世界は終わってゆく。こともあろうか、且つてその道を辿って大きな過ちを犯したドイツで、極右政党AfDが大勝したことは「終わりの始まり」を象徴する出来事と思えてなりません。そしてこれは一過性のものではなく、遠く離れた世界のことではなく、日本を含む世界全体に及び、深刻化していきます。冷戦時代、世界は二極化し(第三世界は取るに足らなかった)、一触即発の危険な状態にありました。しかし核のボタンは「世界を終わらせるボタン」であることを理解していたから、それが押されることを回避出来ました。ところが、サイバー攻撃や殺人ドローン等を使ったピンポイントの攻撃が可能になったことで、今日では開戦への敷居がうんと下がってしまいました。一旦始まると、終わらせることが如何に困難であるかは最近の事例が再認識させています。地域の戦争がある閾値を越えれば、それは世界大戦になって一瞬で世界を終わらせてしまうことでしょう。

これはカーボンニュートラルのブログなんですけど、最近はこういうハナシばかりですね。考えれば考える程、そこに行き着くからです。生き残りのために、世界全体が協力できる平和が一番大切。「夢のような、魔法の様な技術が現れて気候変動問題を解決し、持続可能な発展が可能となりました。世界のみんなが幸せに暮らしましたとさ、メデタシメデタシ」はもちろんあり得ません。一人一人の研究者は自分に出来る精一杯のことを勉強して、分かったことを書き残していけば良い。「私の研究で世界が救われる」ことはない。即効性は無いけど、教育にしか未来を創る力はないと思っています。声のある限り、語り続けます。

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