このブログについて

国立大学法人山形大学工学部教授の吉田司のブログです。2050年までのカーボンニュートラル社会実現に向けて、色々な情報や個人的思いを発信します。発言に責任を持つためにも、立場と名前は公開しますが、山形大学の意見を代弁するものではありません。一市民、一日本国民、一地球人として自由な発言をするためにも、所在は完全に学外です。山形大学はこのブログの内容について一切その責任を負いません。

2021年5月8日土曜日

その水素、なに色?

 新しくYUCaN研究センターに合流頂いた、名古屋大学の義家亮先生とのメールのやり取りで、水素が色分けされているということを知りました(知っている人には当然のこと?)。

再エネ推進派でも意外と知らない「クレー水素」「ブルー水素」「グリーン水素」の違い(エコノミスト)

水素にはもちろん色は付いていないですけど、どの様に製造された水素かで色分けをしているのです。この色分けは国際的にも通用しているみたいですね。grey hydrogen, blue hydrogen, green hydrogenでそれぞれの意味は同じです。

グリーンは何となく分かると思いますけど、再エネ、例えば太陽光発電の電力で水を電気分解して得られる水素で、CO2の排出はゼロ(太陽電池の製造におけるCO2排出はカウントしないとして)です。一方のグレーは化石燃料由来の水素で製造にCO2の排出が伴います。これはアンモニア合成など、工業原料としての水素の製造で大規模に行われていて、有名なのは石炭の水性ガス反応です。

C + H2O ➝ H2 + CO

CO + H2O ➝ H2 + CO2

この水素を極低温で液化したり、超高圧にしたりして貯蔵輸送することも出来なくないですが、エネルギー的にもインフラ的にも大変です。通常はすぐにハーバー・ボッシュ法でアンモニアに転化されます。

N2 + 3H2 ➝ 2NH3

アンモニアなら、ちょっと加圧するか温度を下げれば液化して、容易に貯蔵運搬出来ます(液化アンモニア、と書かれたタンクローリーをよく路上で見かけます)。なのでアンモニアを水素の運び屋、水素キャリアと見立てて、これを電気化学的に酸化するアンモニア燃料電池や、天然ガスと混ぜて燃焼したり、直接アンモニアだけ燃焼したりするアンモニア火力発電が検討されているわけです。アンモニアだけの燃焼ならば、CO2は出てきません。

4NH3 + 3O2 ➝ 2N2 + 6H2O

なのでゼロエミッション発電と見なされるわけですが、当然グレー水素であればその製造段階でCO2が出てしまっています。

で、話を最後にしたブルー水素とは、化石燃料由来の水素製造で出てくるCO2を環境中に放出せず、貯蔵したり再利用することで、それならば化石燃料を使ってもCO2は出ないことになるから、ブルー、というわけです。

CO2を地中深くや深海に埋めて環境に出てこない様にする技術をcarbon dioxide capture and storage (CCS)、それを再利用する技術をcarbon dioxide capture and utilization (CCU)と言いますが、CCSに対しては私は懐疑的です。埋めたまま出てこない様にすることなど出来るのでしょうか?石炭石油天然ガスを大量に地下から掘り出していますから、空いた隙間に埋めておくということですが、自然は必ず循環する仕組みがあるので、どうしたって出てきそうに思います。永久凍土につかまっていたメタンガスだって、温暖化のせいで出てきてしまっています。「その後が怖い」ということですね。一方CCUであれば良いんですけど、どうUtilizeするのかが問題です。結局CO2って燃えカスですから、外部からエネルギーを投入しない限り有用な含炭素化合物には戻りません。水素と反応させてメタンに戻す、などは当然ナンセンスで、その水素どこから持ってきた?となります。もしそれが石炭由来なら、CO2は増えるばかりです。太陽光のエネルギーでCO2を還元し、有機燃料に戻す、人工光合成ならば太陽光エネルギーでCO2を再燃料化するので良いですが、それはまだまだ実用を語れるレベルにはありません。

水素については、私はまだその知識が浅いので間違った理解もあるかも知れません。しかし、使用末端でゼロエミという点で水素は優れていて、水素をキャリアとしたエネルギーインフラというのはやはり挑戦を続けるべき課題だろうとは思います。CO2は垂れ流してはいけないので、貯蔵まで考えるわけですけど、水素の燃えカスである水は環境中にいくらでもありますからね。貯蔵する必要が無いわけです。今回はまず、水素の色分けの話でした。

2021年5月7日金曜日

ドイツ連邦議会選挙

 長らくドイツの首相を務め、EUの顔でもあったメルケル氏が、今年9月にドイツ連邦議会の総選挙が行われるタイミングで政界を引退することを受けて、次期首相候補をめぐる動きが注目されます。現在レースのトップに躍り出たのが、緑の党の共同党首で、何と40歳で二児の母のアンナレーナ・ベーアボック氏(Annalena Baerbock)です。

ドイツ総選挙、緑の党の計算(NIKKEI)

最新の世論調査では、ベーアボック氏が首相として最も適任という回答が30%を超え、緑の党の支持率もキリスト教民主同盟(CDU)とバイエルンのキリスト教社会同盟(CSU)連立を大きく上回り、激戦の末に統一首相候補となったCDUの次期党首ハベック氏(メルケル氏の後継)に大きく差を付けているようです。

外から見る限り、それでもとても良くやっていると思うメルケル首相ですが、コロナ対応のマズさなどからCDUの支持率が急落した背景があるようです。同時に、脱炭素に向けた社会の機運がかの地では高まっていて、それを最重要課題として推進することを公言している緑の党、ベーアボック氏に対する支持が集まっている様です。

社会の大変革を支持する民意の高まりと、それを率いる若き女性リーダー、凄いですね。CDUやCSUは大連立も模索している様です(政治が停滞する?)。最終的にどうなるか分かりませんが、大きな変化に期待したいところです。

2021年5月6日木曜日

西岡秀三先生

 YUCaN研究センターのアドバイザーを頂いている、JAMSTECの山形俊男先生から、国立環境研究所地球環境戦略研究機関参与の西岡秀三先生の記事をご紹介頂きました。生々しい切迫感の伝わる話だったので、このブログからもリンクさせて頂きます。

脱炭素社会はなぜ必要か、どう創るか(地球環境研究センターニュース)

私の幼稚な理解や、稚拙な文章が恥ずかしくなってしまいます。西岡先生は2013年IPCCの第5次評価報告の取りまとめにも関わられたそうで、科学的見地から地球規模気候変動の実態を知る先生です。以前の「低炭素」と今日語られる「脱炭素」は違うこと、残された時間と気温上昇を2℃以下に抑制する上でまだ許される炭素排出量(炭素予算)は極めて限られていて、問題を先送りする程目標の達成が困難になることが具体的且つ危機感を持って説明されています。「やるやらない」とか「どこまでならば実現可能か」などの議論は不毛であると断罪されていて、脱炭素は絶対に達成しなくてはならないこと、それ無くして人類は存亡出来ないとされています。

「もう予測(forecast)の時代は終わった」と言われているとも思いました。ゼロエミを今世紀後半の早期に実現しないとどうなるかは分かっているのだから、その着地点からbackcastして、行動計画を立てるべきであり、僅か30年程の間にこの人類史上初の大転換を実行し、経験することは孫子に誇れることだ、とさえおっしゃっています。自分の考えがまだまだ甘く、生ぬるいのかと思いました。

今までとは全く違う生活様式や社会の在り方が求められていて、その構成員全員が大きな意識変革を迫られるとも述べられています。脱炭素が必要となる科学的根拠や、必要とされる対応策の理由に辛抱強く耳を傾け、共に考えることが出来る人ばかりならば、全世界が一致協力してこの大事業を成し遂げられるのかも知れません。しかしそれはかなり実現可能性が低いことと思われてなりません。だからこそ、我々大学の教育者には、サイエンスとテクノロジーの世界を一般の人々に分かりやすく伝える伝道師としての役割があり、社会の変化を誘導し、実行に付き添うパートナーとしての役割があるのだと思いました。

最後にもう一つ「魔法の技術イノベーションはあまりあてにしない」というのもグサッときました。私が学生だった30年前には夢物語に過ぎなかった人工光合成は、今日では具体的な技術として語ることが出来るレベルにまで進歩しましたが、かと言って2030年の46%削減に少しでも貢献出来る様に社会実装を進める段階かと言えば、まだ全然それは見えていません。残された時間が僅かな状況において、大学の研究者が誇らしげに語る「未来の技術」にどれ程の意味があるのか、発言に責任を感じてしまいます。少なくとも、退職まであと10年少々となった私にとっては、獲得した研究費や論文の数やインパクトファクターを自慢することは全く無意味となりました。この残された時間のうちに出来る最良の事を考え、そのために精一杯努力したいと思います。

2021年5月5日水曜日

EVシフトを考える①


2030年代半ばには、ガソリン車が禁止になる!?

ガソリン車禁止宣言で揺れる自動車業界、日本が「拙速な転換は不要」と言えるワケ(ビジネス+IT)

2020年の終わりごろから、この様なニュースが飛び交ったことを覚えている方も多いのではないかと思います。「EU、北米、そして中国も急速に電気自動車(EV)化を進めているのに、日本はまだハイブリッド(HV)を売るガラパゴスだ。7月にはEV専業のTeslaの株価総額がトヨタを抜いて世界一の自動車メーカーになった。これに遅れをとらず、日本もすぐEVにシフトすべきだ!」の様な話が飛び出し、小泉環境相を含めた閣僚から2035年ガソリン車禁止の考えが提示されました(正式には決まっていないと思います)。さらに追い打ちをかける様に、小池都知事は「東京は前倒しして2030年にはガソリン車の販売を禁止」と言い始める始末。理念や明確なプランがあって打ち出されたものではなくて、自身のリーダーシップのアピール、政治的駆け引きのネタに使われていたのが見え見えです(コロナ対策でも同じことやっていますよね?)。注意深い方であれば、全部EVにすると言っているのではなくて、プラグインハイブリッド(PHEV)やさらにはHVも認めていて、ガソリンやディーゼル燃料だけで走るクルマを禁止すべき、と言っているだけであることに安心したかと思います。ガソリンスタンドが無くなるわけではありません。それでも、自動車関連の仕事で生活している人に限らず、これから先どうなるのか、とても気になることでしょう。カーボンニュートラル社会実現に向けて避けては通れない重要な課題ですが、同時に日本にとっては産業の根幹に関わる問題でもあり、理想的シナリオだけを考えた甘さは許されない重大問題です。あまりにも重大で、様々な事柄と関わりますから、とても一度には書ききれません。なので、何回かに分けてこのEVシフトの問題を考えたいと思います。

自動車などの移動機械だけがGHG排出の元凶ではないですが、日本人の平均でも一人当たり総排出量の20-30%は自動車の使用、利用によるものであり、さらに産業としての自動車等の生産や廃棄においても多量のGHGが排出されます。また、日本のGDPの約10%を自動車産業が稼ぎ出し、550万人の雇用を自動車関連産業が生み出していることからも、カーボンニュートラル社会の実現に向けて自動車産業を考えることは極めて重要です。

その使用に大きなエネルギー消費が伴い、多量のCO2を排出するために環境悪扱いされて肩身の狭い思いをする自動車ですが、自動車に限らず、航空機、船舶等も含め、モビリティーは人間の根源的な欲求であり、その功の部分にも目を向けて、功罪における功を最大化し、罪をいかに減らしていくかが議論の基本にあるべきと思います。決して、今日から自動車は使いません、全て自転車です、で問題解決ということではないんです。

最近はそう公言すること自体が憚られるのですが、何を隠そう私自身自動車が大好きです(オートバイはもっと好き)。テクノロジーを志すことを決意した高校生の頃から、バイクはその象徴であり、自分を強く惹き付ける工業製品でした。それらが与えてくれる愉しさと世界の広がりを知った後では、モビリティーを捨て去ることはとても出来ません。自分自身を「移動バカ」だと感じます。その乗り物が速かろうと遅かろうと、快適だろうと、不快だろうと、とにかく移動している時間が楽しいのです。もちろん、自分自身で運転したいです。自分でしなくてはならないことが多い分、快適で楽になり過ぎてしまった自動車以上にやっぱりオートバイが好きです。

こんな人物なので「お前にカーボンニュートラルを語る資格は無い!」とお叱りを受けるかも知れません。しかし、その価値を知らなければ、どうしてこれほど世界中で必要とされる産業へと成長したのかも説明出来ません。自動車好きでなかったとしても、その恩恵を受けていない人はいません。その功と大切さをわきに追いやって、罪を滅ぼすことだけを考えたら当然歪んだ考えに行き着いてしまいます。また、自動車産業とそれを支えるテクノロジー、さらにはグローバルな産業構造を理解していることも大切です。「全部EVにしたら問題は解決」というのはもちろん間違っています。「EVはゼロエミッション」というのも誤りです。

私の限られた知識やあいまいな数値を元に話を進める前に、ご関心のある方には是非以下のYouTubeビデオをご覧になることをおススメします。

EV推進の嘘(未来ネット)

加藤康子さん、池田直渡さん、岡崎五郎さんによる座談会で、何と既に第7回まで連載されています(まだ続くみたいです)。各回40分程度なので、全部見るのには時間がかかりますけど、毎回大変参考になります。やや「日本の国益」というところに偏っている感じもしますが(カーボンニュートラルはそれぞれの国益を超えた重大さを持つに至っているから)、とても冷静な分析がされていると思います。私は95%ぐらい賛同出来ます。特に岡崎五郎さんは、私が一番好きなモータージャーナリストで、自動車愛に溢れる一方で押し付けがましいところが全く無く、共感を呼ぶその語り口は、是非見習いたいと思う方です。YUCaN研究センターが正式に設立されたら、是非ゲストとしてセミナーでご講演頂くことを交渉したいと思っています。

ひとまず、1回目はここまでにします。本件についてご興味のある方は、上記ビデオをどうぞご覧ください。それで大体視界が開かれると思います。

2021年5月4日火曜日

持続可能性を有限な人生の中で追求するということ

 コロナウイルス感染症の第4波が襲来し、各地で特別警戒が発せられた2021年のゴールデンウイークは、様々なイベント等も中止されて、普段通りの生活を維持することの大切さを改めて実感させています。自然豊かで人も少ない山形は幸いです。ショッピング等もせず、普段行ったことのない場所、観光地でも何でもない、誰もいない田舎に行き、子供たちと野山を散策しています。野生動物に遭ったり、新緑や自然の草花の思わぬ美しさに出会ったりして、多様性に富んだ世界にいることの幸いを噛みしめています。子供たちにも、この野山で遊んだことを記憶したまま大人になって、それを守り、残していく人になって欲しいと思います。

人生は有限であって、有限であるからこそ光り輝くのだと思います。だからと言って、その有限な人生の中で可能な限り色々な経験をし、色々な物を手に入れ消費し、人より多くの楽しいことをすることが、より良い人生を生きるということではないと思います。エネルギー、資源、食糧、社会システムなどの持続可能性が有限な人生を生きる人にとってなぜそれほど大切と思えるのか。自分の人生が終わる時に、丁度資源を使い尽くせば自分自身はその恩恵を最大に受けることが出来て、その後訪れるであろう苦難は経験せずに済む?死んでしまえば痛みも感じない?それはもちろん違います。人間は過去を学び、記憶することも出来れば、未来を予想してそこに思いを馳せることも出来るのです。つまり、過去も未来も今を生きる自分の中に存在しています。だから、当然自分が地球の恵みを使い尽くして、未来の世代からそれを奪うことは、今を生きる自分にとっての苦しみであって、それを傍観し、許すことが出来ないわけです。

そんなこと、ここに書くまでもない、当たり前のことですよね?しかし、今を生きることに必死になっている状態であれば、自分が経験することの無い未来に対して備えることに一生懸命になることは、やはりそう簡単ではないだろうと思います。持続可能であることの価値が、物質的な消費を拡大することの価値を明確に上回るということに世界中の人々が気づいたなら、持続可能性のために努力することは我慢でも何でもなくなり、より良い生き方を追求する自分自身の成長のための価値ある努力になるはずです。

私自身は、日本の高度経済成長期に生まれ育ち、テクノロジーに憧れ、新たな物質的価値を創造することの重要さを次の世代にも伝える職業に就いたことで、この価値観の大転換に対してかなり遅れた生き方をしてきたと思います。未だに変われていないことも多くあると思います。しかし全部間違っていたというのも極論過ぎで、生活の質を大きく向上させる数々の素晴らしいテクノロジーが存在し、それを提供し消費する循環が経済的成長をもたらしてきたことも事実です。経済成長はそれ自体が目的化してはいけないでしょうけど、お金が無ければ病院も建たず、病気になっても誰にも助けてもらえません。お金が循環しなければ、安全で健康的な食糧を安定的に手に入れることも出来ません。様々なことを学び、経済的成長と共に便利さや豊かさをもたらすテクノロジーを生み出すことは、人としての成長に反するものではないでしょう。

今必要なのは、やはり価値観のシフトだと思います。過去の全否定、破壊から新しい生き方を創造するということではありません。より大きく、より速く、より豪華に、の様な20世紀型の古臭い価値観には別れを告げ、もっと発展的な生き方としての持続可能性の追求に、我々の英知を結集し努力する必要があります。その進化を遂げられなければ、人類は恐竜の様に絶滅することになってしまいます。

2021年5月2日日曜日

Ursula von der Leyen

 欧州の2050年のカーボンニュートラル目標について、第13代欧州委員会(European Comission)委員長のUrsula von der Leyenさんのスピーチを見ました。是非ご覧になってみてください。

Europe's plan to become the first carbon-neutral continent | Ursula von der Leyen (TED)

von der Leyenさんは、よくニュースで出てきますから、見たことある方も多いかと思います。経済学を学んだ後に医学に転向し、医学研究に従事していた時期もある方なんですね。それで、政界入りしてドイツのメルケル政権で閣僚を務めた後に2019年から現職です。
EUのリーダーとして、約4億5千万人のEU加盟国民へ、そして世界へとなんとも力強いメッセージでしょう。力強い眼差しには、同時にEUと地球の未来に向けた愛情も感じられます。言葉の一つ一つに力があり、心を打たれるメッセージだと思いました。具体的な数値目標が繰り返されたり、技術課題について言及するわけではないですけど、科学に目が向けられ、それが政策の根拠であることが明確に伝えられている様にも思います。
打って変わって、日本の首相官邸からもカーボンニュートラル2050に向けた日本のゼロカーボンシティについて、短いビデオが英語版で出されています。
趣旨はちょっと違うのかも知れませんが、発信元は首相官邸です。これはちょっと無いんじゃないでしょうか?2050年カーボンニュートラルを宣言した自治体の取組みを数例示したビデオですが、出演する日本人は長野県知事だけです。ナレーションは恐らくネイティブの方が綺麗な英語で話しています。途中で良く分からないMunozさんという(スペインの人?)が出てきます。菅総理も、小泉環境相も登場しません。綺麗にまとめることが重要なわけではないです。たどたどしい英語でも良いから、ご自身で語って欲しかった。このビデオを見て、日本のリーダーからのカーボンニュートラルにかける思いを受け止める人は一人も居ないと思います。
このゼロカーボンシティの構想も、あまりにも今までとやり方が同じと感じられます。
カーボンニュートラルの実現に向けては、EUがそうであるように、日本国政府が明確に目標と根拠を提示し、協力を呼びかけ、これを主導する責任があります。全国で一様に展開するのは難しいから(地域の特性を活かすという点では正しい)、カーボンニュートラルを宣言する自治体から積極的に変化を起こして欲しい(成功例を全国展開する)、ということでしょう。そして、例によってそこには補助金が来ます(たぶん)。お金が無いとやりたくても出来ないというのは確かにそうかも知れませんが、色々な場面で補助金が別の目的に使われてきた歴史を我々は知っているではないですか(とにかくお金が欲しい地方自治体も多いでしょう)。お金を出すから、あとはなんとかしてください、という責任放棄の様に聞こえます。例えば原発再稼働にしても、こっそりやるのではなくて、国民を巻き込んだ議論が必要です(科学的根拠に基づくメリットとデメリットを隠さず両方示して)。首相や関係の大臣には是非von der Leyenさんの様に、国民をガン見して熱いメッセージを送ってもらいたいと思います。それから、是非サイエンスとテクノロジーをちゃんと勉強してください。根拠の無い言葉は人を動かしません。
カーボンニュートラルを実現するのはテクノロジーではなくて、人だと思います。人が動かなければ、変化は起こりません。金の問題だけでもありません。もっと強いリーダーシップと、国民への愛情、そして謙虚に言葉に耳を傾ける姿勢を期待します。2030年46%について報じる小泉環境省の記者会見が、ひたすら先輩政治家の皆さんへのねぎらいと感謝の言葉になっていたのにもガッカリしました。もっと国民に向けて語って欲しい!
ちなみに、ゼロカーボンシティ宣言都市には山形市、鶴岡市、米沢市も含まれております。

水素エンジン

 クリーンなエネルギーキャリアとして、水素が注目されています。まずは石炭、石油、ガスなどの有機燃料の燃焼から、再エネによる発電と社会システムのオール電化、そして究極的にはカーボンニュートラルな化学燃料に戻る、というのが理想でしょう。なぜ化学燃料が優れているかと言えば、これは圧倒的なエネルギー密度の高さ(小さいけど力持ち)と貯蔵が容易であるという点です。エネルギー密度の高さという点では水素はとても良いですが、貯蔵は簡単ではありません。もう一つの水素の大きなメリットは、使用の場でゼロエミッション(水蒸気しか出ない)ことでしょう。すなわち、排気ガスの処理が事実上不要になります(NOxは多少問題?)。但し、どの様に水素を作るかがやはり課題で、工業的に大規模に行われている石炭の水性ガス反応ではCO2が出てしまいますから、カーボンニュートラルになりません。太陽光発電の電力で海水を電気分解する、などが必要になります。

さて、水素の話をしたら長くなるので、本題の水素エンジンに移ります。水素で走る燃料電池車としてトヨタは既にMIRAIの第二世代を一般向けに販売しています。水素をいつでも買える環境にある方なら購入を検討するに値します(高いですけど、補助金も沢山付きます)。燃料電池は、水素を電極上で燃焼して発電し、電気モーターを動かしますから、MIRAIは実質電気自動車です。これに対して、水素を従来のエンジンの様にシリンダー内で爆発燃焼させる水素エンジンも開発されています。歴史は結構古くて、BMWやMAZDAが試作車を出していたのは私もよく覚えています。今回、トヨタが燃料電池とは別に水素エンジンも開発を進めていて、それを積んだカローラスポーツでいきなり耐久レースに出るそうです。エンジンは、同社のGR YARISに搭載されているモノをベースとしているそうです。詳しくは、実際の走行動画も出てきますので、以下のYouTubeビデオ(モータージャーナリストの島下泰久さんと難波賢二さんが運営しているRIDE NOWというチャンネル)を是非見て下さい。

密着取材!トヨタ水素エンジンレーシングカー初テスト(RIDE NOW)

必ずしもエコの観点からの興味で話しているわけではないので、やれ内燃機関の振動とか音が・・・と新しい世代には古臭く思えるコメントもあるかも知れません(私は・・・とても共感します!)。驚く程普通に見えるところが(若干遅いか?)逆に凄いと思いました。従来のガソリン用に作られたエンジンで、燃焼を制御するだけで水素が使えてしまうわけです。プロパンガスで走るタクシーは昔からありますが、あれと同じで、マルチ燃料の自動車というのも作れてしまうかも知れません。当然水素(しかも、人工的に作った純水素で不純物無し)なら水しか排気しませんが、例えば液化アンモニアを燃焼して水と窒素を排気する内燃エンジンも将来可能かも知れません。

作りやすさ(一次エネルギーを再エネにすることを条件に)と貯蔵、運搬のしやすさ、そして将来のコストを考えた時、水素に限らず様々なエネルギーキャリアを検討できるだろうと思います。そして、それをパワーに変換する手段は燃料電池とは限らず、この様にただ空気で燃やしてしまうという選択もあるでしょう。トータルとしてカーボンニュートラルであることが大切ですし、例えば既存の自動車の燃焼制御をガソリンからメタノールに変更するぐらいならば、その自動車をまだまだ使い続けられることになり、LCA的なエミッションを低減できる大きな可能性があります。簡単に買い替えるわけにはいかない飛行機については、バイオ産生の低炭素燃料が既に検討されています。既にあるインフラを使い続けるというのもカーボンニュートラルに向けた重要な考え方で、必ずしも新しいモノに置換するのが最良なわけではありません。

もう一つ、内燃機関を存続させられる可能性として、水素だと2ストロークエンジンも有望?というコメントが大変気になりました。元々クリーンな水素ですから、多少燃え残りがあっても環境汚染しないことに加え、とても発火しやすいので、2ストロークとの相性が良いようです。古くからのバイクファンなら知っていると思いますが、2ストエンジンはとてもコンパクトでハイパワーなので、クリーンであるならば復活させるに値する技術だろうと思います。

未来のエネルギーの主役はまだ確定したわけではないと思いますし、「これが究極!」と一つに絞ることは可能性を潰すことになります。物質も技術も多様な選択肢の中から探し続けるべきでしょう。それぞれに、問題点はあるでしょうが、良さもあると思います。今回、水素を燃やすエンジンを通じて改めてそう思いました。まだまだ多様な可能性があり、とてもワクワクします。トヨタ頑張っていますね。

還暦

 私、1966年生まれ、丙午(ひのえうま)です。2026年になりましたので、還暦を迎えました。すなわち、今1歳です。あと何年生きられるでしょうか?ひとまず、60年で色々経験させてもらい、色々なことを学び、考え、行動することが出来るようになりました。出来ることが増えた一方で出来なく...