このブログについて

国立大学法人山形大学工学部教授の吉田司のブログです。2050年までのカーボンニュートラル社会実現に向けて、色々な情報や個人的思いを発信します。発言に責任を持つためにも、立場と名前は公開しますが、山形大学の意見を代弁するものではありません。一市民、一日本国民、一地球人として自由な発言をするためにも、所在は完全に学外です。山形大学はこのブログの内容について一切その責任を負いません。

2021年6月29日火曜日

カラフルアップサイクル繊維

 内丸もと子さんという方が設立した「カラーループ」というベンチャー会社が、再生繊維からカラフルなプロダクトを生み出す、アップサイクル事業を始めたレポートを見ました。

リサイクルをカラフルに!|おはBiz キーワード解説|NHK NEWS WEB

このNHKのレポートだけでなく、以下のレポートも御覧ください。

テキスタイルデザイナーが起業 廃棄繊維を色で分別しアップサイクル | 繊研新聞 (senken.co.jp)

この内丸もと子さんのインタビューが印象的です。元々服飾のデザイナーさんだったそうですが、作って、売り、使われて、まだ使えても捨てられてゴミになり、消費され続ける衣類に対して「ひょっとして私はゴミを沢山作っているのか?」と疑問に思ったとのこと。そして、子育てが終わったのを機に京都工繊大の博士課程に入学し、このカラフルアップサイクル技術を研究されたそうです。苦節5年で完成させた(まだ高いのが問題の様ですけど)そうで、なんと素晴らしい。

家具などでスカンジナビアンデザインはそれ自体がブランド化していますけど、再生繊維をプレスして作った厚手のフェルトを座面にした椅子とかなかなかカッコ良くて、上手いなあと思いました(例えばこれ)。とは言え、このレポートの通りで、全部の繊維を一緒にして再生すると、中間的な色であるグレーになっちゃうんですよね。もし何度でもリサイクルを繰り返せば、世の中の繊維製品は全部グレー一色になっちゃいます。やはり色というのは、デザインの基本中の基本なので、まずは色が選べるというだけでも凄いですよね。恐らく模様を入れるところまでは行っていないのかな、とは思いましたけど。ゼロから新品を作るなら、どんな色でも模様でも入れられますけど、リサイクルという前提になると、これは容易ではない。そこに目を付けたということですね。服を長らくデザインされてきた人からすれば当然のことなのかなと想像します。それにしても、先日話題にした柿コーヒーも女性社長でした。エコロジーに対するセンスと行動力は明らかに女性の方が優れていますね。

しかーし、結局のところ、まずはリサイクルの対象になる廃品を色分けしている様子がビデオに出てきますよね。それも人力で。それは大変だし、コストが上がるのも当然です。ゴミを減らすのは良いけど、リサイクルがあまりにも高くついてしまうと、リサイクルしたというバリューがあっても合理化出来ません。ここを何とか省力化、自動化出来ると良いですよね。瞬時に色だけでなくて繊維の種類も映像から判別して、自動仕分けする様な設備を開発すれば、リサイクル品をもっとカラフルに出来るかも知れませんね。

2021年6月27日日曜日

EVシフトを考える⑭

 長らく続いた未来ネット「EV推進の嘘」のシリーズも、遂に第11回、最終回が公開されました。

『EV推進の嘘 #11』EV車とガソリン車 これから買うべきクルマは?(加藤康子・池田直渡・岡崎五朗) - YouTube

私は結局全部見ましたけど、結論としては賛同できない部分が多く、おススメは出来ません。ただ、私の主張に懐疑的な方は、御覧になるのも良いと思います。異なる視点があって当たり前です。

最初のうちは、中立的と思える語り方でしたし、データを元にした議論も「ナルホド!」と思わせる説得力もありました。メディアが報道する表面的な内容や、短時間で分かりやすいけど実はかなり歪んだ政治家の発言などに惑わされてはならない、と認識を新たにしたところです。しかし・・・総合すると、あまりにもこのご三方はナショナリスト的過ぎると思いました。自動車好きというのは良いんですけど、自分たちの都合の良いように他者に攻撃的になっています。さらに、気候変動の問題も、本当には信じていない人たちであるとも思いました。岡崎五郎さん、ファンだったけど、残念です。加藤康子さんは、グレタトゥンベリさんを「インチキ」の様に言ってましたね。

最終回の話、結論が傑作です。これだけ議論を尽くしてきたはずなのに、「国は何も規制をするな」みたいになっている。開いた口が塞がらない。それでいいわけないです。何のための議論?さらに、加藤康子さんの「どのクルマを買ったら良い?」の問いに、「好きなクルマを買ったら良い」なのも、いかにも自動車ジャーナリストらしい無責任回答でした。クルマが庶民の憧れの対象だったり、自分を表現するライフスタイルアイテムだったり、純粋にこれを趣味とする人が沢山いたりしたのは、ずっと以前のことであり、それらは全て終わっているんです。大半の人は、「(趣味として)欲しい」クルマを買っているわけではなくて、経済的条件や使用条件に最適なクルマを選んでいるだけです。それぐらい、ある意味日本における自動車の位置づけは成熟したとも言えるでしょう。そうすると、日常の使用環境(ガソリンスタンドか充電スタンドか、ガソリン代VS電気代はどうか、税制上の違いや補助金の有無は?)などが、車の大きさやタイプなどの他に重要な判断材料になります。すなわち、過剰なほどにでも政府がEVを優遇する様な事があれば、EVが優位になり、そちらに消費者が流れるのは当然ですし、それをどう誘導するのか、したいのか、したいならそれは何故か、正しいのか、をはっきりさせなくてはならない、ということです。岡崎さんの言う「俺は6リッターのV12に乗りたいんだ!」なんてことを思うのは、旧時代からの生き残り、もうすぐ死滅する恐竜世代だけで、その嗜好は未来の世代には全く影響を与えません。本来なら、そういうクルマに乗りたい人には重税ではなくて、e-Fuelを義務付けて、リッターあたり1000円の燃料代を払ってもらうのが一番良いと思いますが、世の中から安いガソリンを無くすわけにはいかず、安いガソリンが趣味の馬鹿野郎に悪用されてしまいます。何故安いガソリンが必要かと言えば、農機具や軽トラ、除雪機などの道具を動かすためです。田舎に来たら分かります。生活の足にも使われているけど、軽トラが本当に生活、仕事を支えている事実が。軽トラをEVにするなんて、しばらくは考えられません。除雪機も、あれだけのパワーを出すにはガソリンしかありません。そして、それらは安い燃料で動かせることが、まだこの先20年以上必要になるでしょう。だからガソリンスタンドは無くなっては困りますし、ガソリン価格も超重税をかけて高くされては困るのです(田舎の人が生活できなくなる)。一方で、都会に生息するその6リッターV12のアストンマーチンだかフェラーリだかは今すぐやめてもらう必要があります。リッター150円の安いガソリンで3キロぐらいしか走らないクルマね。ならば、やっぱり年間500万円ぐらいの重税とかで責任をとってもらうしかないですかね?

自動車ジャーナリストは、趣味としての自動車を信じていますし、クルマを好きだからこそ、やれこれからEVなんでしょ?とかHVとディーゼルのどっちが良いの?とか気にせずに「好きなのに乗ったら良いんだよ!」と言いたくなる気持ちも分かります。私自身はクルマ好きですから、その気持ちはとても分かります。しかし、EVシフトの是非の議論は自動車好きのためにしているんじゃないんです。そして、恐らく95%以上の人は、自動車に物凄くこだわったりしていません。それでも、自動車の保有率は高いのです。それは国民が皆自動車好きだからではなくて、本当に自動車が必要とされているからです。私が、それを確信を持って主張出来るのは、さらに趣味性が圧倒的に高く、実用上は全く不要な二輪車をこよなく愛する馬鹿であり、その愛する二輪車が絶滅寸前の状況になっていることを知っているからです。

日本におけるバイク(原付除く)の販売台数は最盛期の1/3程度に低下しました。さらに傑作なのは、購入する人の平均年齢が、二年ごとに調べられる統計で毎回ほぼ二歳ずつ上がっているということです。2020年の調査では、なんと54.7歳です!

国産車新規購入ユーザーの平均年齢が54.7歳に【自工会 二輪車市場動向調査】│WEBヤングマシン|最新バイク情報 (young-machine.com)

サザエさんのお父さんの波平さんの設定年齢が54歳だそうです。だから「バイク乗りは波平さん」と言われています。かく言う私はそれより一つ年上の55歳。保有するバイクは4台(1200のロードバイク、450のオフロードバイク、125のスポーツバイク、125のカブ)。ね、ドンピシャでしょ?要するに、私の世代でバイク趣味ってのは既に終わったのです。今や「バイクって良いものだよ!」という声には誰も反応してくれませんし、全く周囲は共感してくれません。いまどきバイクに乗る若い子は、かなり変わった子ですよ(偉いぞー!)。

バイクは、その小ささ、軽さゆえに、走行距離あたりの燃料消費は四輪車よりもはるかに少ないです。しかも、基本的にマニュアル、とっても趣味性の高い乗り物で、相応の身体能力が無いと安全に乗ることも出来ません。例えば、うちの1200のバイク、リッター30キロぐらいは普通に走りますよ。カブに至っては50キロ以上。どんなエコカーを持ってきてもこれらには敵わないでしょう。しかも、純粋に趣味で乗っています。だから、そういう趣味としての乗り物が欲しい人は、こういう選択肢だってあるのです。さらには、電動キックスケーターとか、先日紹介の三輪車Noslisuとか、バイクの良さを電動化することで、もっと環境に良いミニマルな移動手段ってのは可能で、二輪車を見直しても良いハズと個人的には思っています。まあそれはさておき・・・。

結局、この二輪車が辿った運命は、これから先にそうした趣味性の高い四輪車が辿るであろう運命を示しています。つまり、それが新たに生産されることは無いでしょうし(バイクの新型車は実質旧モデルの改良程度が多い)、求める人も極めて少ない。そして、それで良いんです。四輪車は特に趣味性など関係ない(自動車も大好きな私としてはとても寂しいですけど)。必要だから買っている人の方が圧倒的に多いわけですから。とするなら、それをどの様に変えていくのか、脱炭素を見据えた誘導をしていくのか、これは政府だけでなく、自動車産業に関わる人たち全てが真剣に取り組まなくてはならない課題です。両者は対立していてはいけません。協力しつつ、脱炭素時代のモビリティーをどうするのか、そこにどの様な先進的取組みをするのか、を考えてすぐに実行してもらいたいです。EUやアメリカがEVどんどんやっているから、EVで追いつき追い越す、ではないのです。日本が出遅れたのに、今さら同じことを考えて焦ることではないでしょう。日本の得意とする軽規格を基準として、例えばバッテリー容量を15 kWh以下に制限する代わりに税金ゼロのマイクロEVカテゴリーを新設すべきと私は思います。

趣味の自動車は・・・?博物館行きです。クローズドコースで、e-Fuel使って遊んだらいいじゃないですか。趣味でクルマに乗りたい人のためには、それらを末永く使える環境は残しておいて欲しいですね。バイクもフル電動化は難しいし、そもそも需要が無い(実用性で乗るものではない)ので、今のバイクはやっぱり博物館行きです。マイクロEVや電気スクーター、電動キックスケーターなどに置き換えられ、生活はそれで大丈夫です。極力小さいバッテリーで、発電所を沢山作る必要もなく電化を進めるのが一番スマートじゃないですか?水素製造は日本では土地が足らなくなりますから、それこそ日射条件の良い国で大量に生産してもらい、それを輸入するスタイルになるでしょう。そしてFCVが長距離レンジ、バス、トラックなどを担うことになります。さらには、船舶や航空機も水素で行けるでしょう。平地の少ない日本の環境を逆手にとった独自の戦略が日本には必要と思います。

まだまだ考えるべきことはあるし、行動を起こし、変化を導くことが政府や技術者の責任です。大学の我々も未来を先導する立場だし、その責任がある。未来ネットのお三方は、そういう意味で思考停止してしまっています。そして怒りの矛先を他国にばかり向けるナショナリストぶりを発揮しているので、ちょっと最後はガッカリでした。

2021年6月25日金曜日

新彊ウイグルの多結晶シリコン輸入禁止、米国

 ウイグル族の人たちの(児童労働を含むと疑われる)強制労働、ジェノサイドに抗議するための経済制裁が拡大しています。先日はユニクロが制裁対象になりましたが(強制労働による綿花を使っている疑い)、そうした農産品に限らず、いわゆるハイテク産業も制裁対象になっているようです。今回はその中でも大変影響の大きい制裁で、太陽電池パネルの生産に必須となる多結晶シリコンとそれを含む製品が禁輸対象になりました。

米国、中国・新疆で生産の太陽光パネル関連製品の一部を輸入禁止 - Bloomberg

まず驚きなのは、世界の太陽電池用多結晶シリコンの半分以上が新疆ウイグルで生産されているということです。今回ジェノサイドが疑われ、禁輸対象になったのはHoshine Silicon Industryという会社の製品ですが、調査の行方次第ではさらに他メーカーへも拡大する可能性があります。これは、機能しているグローバルサプライチェーンを自ら破壊する行為なので、今後関連産業が代替のポリシリコンの供給を模索することになります。そして恐らく極めて安価になった太陽電池の価格が上昇することにつながり得るでしょう。

もちろん、ジェノサイドを見過ごすわけにはいきません(中国はこれを強く否定しています)。先日話題にしたコーヒーやカカオ豆と同じで、貧しい農家をいじめまくった結果の児童労働なわけです。何故ポリシリコンの半分以上が新疆ウイグルで生産される状況に至ったのか?これこそ、ルールなど二の次三の次で金を増やすことだけを追求する資本主義経済の競争が生み出した結果です。無理や矛盾を押し付けられる先が、弱者であるウイグル族の人になり、求められる品質と激安価格のポリシリコンの供給を可能とし、太陽光パネルの価格破壊が一気に進んだわけです。すなわち、持続性とか公正性の観点からは全くそれを無視した成長(膨張)であったことを受け入れなくてはなりません。

果たして、アメリカの言う正義が本当に正義か?という疑問は当然残ります。中国の主張も疑わざるを得ません。フェアトレードをすればコーヒー一杯の価格が上がるように、正当な対価を受け取らず強制労働させられるウイグル族の人を利用しなければ、太陽電池の価格も上がります。一方での脱炭素への動き、再エネの頂点に存在する太陽光発電。今や圧倒的に安価な発電手段となった太陽電池は脱炭素への頼みでもあります。しかし脱炭素は持続可能な社会の実現のためであり、それを持続不可能な手段で達成するということもあり得ないでしょう。日本や欧米のメーカーが新疆ウイグル産と同じ価格でポリシリコンを提供することは絶対にできないでしょうね。今後どうなっていくのか注目されます。

2021年6月23日水曜日

ASEAN脱炭素協力の裏話?

 つい先日話題にした、ASEAN諸国の脱炭素を進めるために日本が1兆円を超える資金提供と技術供与を行う、という話にオマケがありました。

脱炭素 CO2地中貯留などの技術 東南アジア各国と協力し普及へ | 環境 | NHKニュース

ASEAN諸国は化石燃料への依存度が高く(それを日本が誘導している?)、脱炭素を進めるにはCCUSが不可欠、それを協力して進めましょう、というのがASEAN諸国エネルギー担当相オンライン会議における梶山経産大臣からの話の続きでした。

そもそも、私はCCSについて懐疑的です。一方CCUはほとんど確立されておらず(ポリカーボネートぐらいですか?)。高圧の地中に注入された二酸化炭素はすぐに炭酸塩として鉱物化するから大丈夫、ということなんですけど、ケミストリーの感覚からすると、炭酸塩なんて可逆的に溶解して二酸化炭素に簡単に戻りそう。果たして本当に何千年も何万年も埋まったままでいてくれるのでしょうか?CCSにはかなりお金がかかるそうですけど、それはとりもなおさず、高圧で二酸化炭素を注入するには相当なエネルギーを要するということ。二酸化炭素を始末するのに新たに二酸化炭素を作っていてはどうしようもないですよね。そんなこと素人に指摘されるまでもなく、当然収支としてはCCSで始末出来る二酸化炭素よりもずっと少ない二酸化炭素の発生で済むわけでしょうけど、万一でも戻ってきてしまえばCCSをやった分だけ環境には二酸化炭素が無用に増えるわけです。

まあ技術的信頼性については、これを推進する研究者の主張を信じるしかないです。とは言え、上記のASEANとの交渉については、日本政府の脱炭素への貢献アピールがひも付きなんだなと分かります。「日本の近海だと漁業関係者との調整が難しいので」というのがヒドイ話です。経済的に弱い立場のASEAN諸国なら、日本のゴミを受け取るしかないわけですか?それって、プラゴミの輸出と変わらないメンタリティー?日本近海にも相当なCCSポテンシャルがあるという話でしたけど、東南アジア全域で捨てやすいところを探したい、そこに日本の二酸化炭素も投棄したい、というのが本音なわけですね。

先日のYU-SDGs cafeでお話頂いた九州大学の辻先生がおっしゃっていた「石炭火力の推進のためにCCSをやっているとは思われたくない。とにかく時間稼ぎのためにもCCSが必要なんです。」が思い出されます。CCSを石炭火力継続の免罪に使われたら、悪の手先みたいに思われますよね。ただ、やっぱり地球のことなので、100%大丈夫か、と言えばそれは分からないけど、何千年と言う程度では恐らく大丈夫、ならば時間稼ぎにはなる、ということのようです。

しかしまあ、本当に世界各地でCCSが大規模に行われ、その人為的CO2注入によって炭酸塩の鉱物層が形成される様になれば、将来本当にそれは「人新世」を記憶する地層になるんですかね?

2021年6月22日火曜日

2035年北極海の氷が消滅!?

 ドイツの調査船Polarsternが北極海を1年ほどかけて調査し、帰港したそうです。それによると、130年前と比較して氷の厚さは半分ほどになり、面積も半分以下に縮小、ホッキョクグマの生息域が急激に縮小しているそうです。ドイツ語ですけど、そのレポートは以下のZDFのウェブページで見ることが出来ます。

北極の氷の減少を懸念する極地の研究者 - ZDFheute

氷の厚さを推定するのは簡単ではないようで、人工衛星から海面と氷山の高低差を見積もることは出来ても、上に積もった雪がどの程度なのかよく分からないみたいです。軽い雪が大きく堆積していると、高く見えても実際の氷の厚さはそれほどでもない、ということになります。最新の研究において、より高精度に雪の厚さを見積もったところ、氷の厚さの減少は従来推定されていたよりも倍ぐらい速く進んでいることが分かったそうです。

Arctic sea ice thinning faster than expected (phys.org)

先日も話題にしましたが、北極海の氷が溶けて船が通れるようになると、特にヨーロッパと中国、日本への海運を短縮出来て、結果的にGHG排出も低減できるというメリットがあるとは言えます。一方では、氷が溶けたことで石油、ガス、レアメタルなどの海底資源へのアクセスが可能となり、ロシアはそれに期待しているわけです(GHGは増える)。

いずれにせよ、状況は急速に変わってしまうかも知れません。何しろ、早ければ2035年には、北極海の氷が消滅するかも知れないというのです。

Arctic summer sea ice could be gone by as early as 2035 (nationalgeographic.com)

今からたったの14年ですよ。そんなことになれば、本当にシロクマに会えるのは動物園だけになってしまうかも知れません。宇宙から見て、北極の白い氷が黒い海に変われば、それだけ太陽光の吸収が増えて地球はより熱せられることになります。シベリアの永久凍土の融解とメタンの大量放出にしても、そこには誰も住んでいませんから、よく分からないことだらけだと思いますが、温暖化の暴走は我々が思う以上に速く進行しているのかも知れません。

果たして、我々にはどれぐらいの時間が残されているのか?2035年に北極海の氷が無くなりそうならば、2030年にGHG半減ではとても追いつかないのではないかと心配です。実際、上記レポートでも、脱炭素だけでは不十分で、大気中からのGHG除去が必要と言われています。本当のところはなかなか分からないので、あまり悪い方のシナリオでは考えたくないですけど、万一こんなことが現実となれば、その時にはきっと打つ手がない状態になるでしょう。だから、最悪の状況さえ心配して、行動を取る必要があります。取り越し苦労で済むなら、それは嬉しいことです。無駄だったということじゃないでしょう。

2021年6月21日月曜日

ASEAN諸国の脱炭素へ資金・技術供与

 今日、ASEAN諸国のエネルギー相のオンライン会議が開かれ、梶山経済産業大臣は、脱石炭等を含めた途上国、新興国の脱炭素化に対して、今後日本が1兆円規模の資金供与と、技術協力を行う考えを示したそうです。パチパチパチ!

梶山経産相 アジア各国の脱炭素化へ資金や技術面の支援を提案 | 環境 | NHKニュース

石炭依存が高く、それをやめるどころか輸出産業にしようとする日本に対して不名誉な「化石賞」が贈られるなど、嘆かわしい状況が続いていましたが、ここにきてこういう宣言が出てきたことは素直に喜びたいです。とは言え、日本だけの問題でなくて、世界各国が苦しんでいるとはいうものの、コロナウイルス感染拡大で疲弊しきった国民からすると、「ウチにそんな余裕あるの?だったら助けてよ!」と言いたくもなるかも知れませんよね。でも、ポストコロナ、脱炭素の未来っていうのは、もはやお金の大小だけではないだろうと思います。隣人も幸せそうにしている世界でなければ、我々だけが幸せそうにしている、なんていう状況はないですよ。気候変動が進んでしまえば、その未来には勝者は誰もいないだろうと思います。

しかしですね、一方ではこれらアジアの隣国に対して日本はプラスチックゴミを輸出しているのですよ。日本で始末するよりも、その方が安上がりだから。他国にプラスチックゴミを押し付けることは国際法で禁止されたそうですが、つい先日もこんな事件がありました。

汚れたプラスチック輸出規制で事業者に行政指導 環境省 | 環境 | NHKニュース

技術供与、資金供与といっても、一方でこんなことがあっては、隣国から恨まれるだけで感謝やリスペクトは得られませんよね。

2021年6月20日日曜日

トリチウム分離技術公募

 福島第一原発で問題となっている、大量のトリチウム汚染水からトリチウムを分離する技術開発を東京電力が公募しています。

東電 トリチウム分離技術を公募 福島原発の処理水問題で | 福島第一原発 処理水 | NHKニュース

公募はNine Sigmaを通じて行われています。公募情報のページは以下です。

NineSights Community - Need Gallery: ‪NineSigma Asia Pacific Gallery‬

様々な放射性物質を含む汚水は、多核種除去装置によって処理され、重い放射性物質を除去したALPS処理水となり、これがあの多数のタンクに貯蔵されています。しかし、三重水素、トリチウムは水分子に取り込まれ、HTO(分子量20)として存在し、H2O(分子量18)に混ざっていますから、これを短時間で大量に、効果的に除去する方法が確立されていません。ゆえに、海洋投棄しかない、という政府の決定になっているわけです。トリチウムは半減期12.3年でベータ崩壊して安定なヘリウムの同位体3He(通常のヘリウムより軽い)になります。

(3)T ➝ (3)He + e- + ν (18.6 keV)

なので、高濃度になれば当然危険です。通常の運転であっても、原子炉では常にトリチウムは生成しており、これを除去することが出来ないので、全ての原子力発電所からはトリチウムが海洋投棄されています。だから福島第一原発の汚染水についても、海洋投棄はやむなし、という考えなわけです。

しかし、以前も話題にしたとおり、だから問題ナシで、トリチウムが投棄された海から獲れた魚を喜んで食べるよ、とは誰も思わないわけです。「風評被害を防ぐために丁寧な説明をして」というのが全く無力であることに、ようやく気付いたのでしょうか。出来る出来ないでは許されず、出来るまで挑戦しろ、ということです。思考停止してはいけませんね。

電気化学的な反応とか、H+とT+を分離できる高分子電解質とか、何か出来ることはあるかも?もしトリチウム分離に成功すれば、事故の後処理だけではなくて、世界中の原発からのトリチウム排出を無くせるかも知れません。機会があるならば挑戦したい課題ではあります。今科学を学ぶ皆さんも、是非一緒に考えましょう。

還暦

 私、1966年生まれ、丙午(ひのえうま)です。2026年になりましたので、還暦を迎えました。すなわち、今1歳です。あと何年生きられるでしょうか?ひとまず、60年で色々経験させてもらい、色々なことを学び、考え、行動することが出来るようになりました。出来ることが増えた一方で出来なく...