このブログについて

国立大学法人山形大学工学部教授の吉田司のブログです。2050年までのカーボンニュートラル社会実現に向けて、色々な情報や個人的思いを発信します。発言に責任を持つためにも、立場と名前は公開しますが、山形大学の意見を代弁するものではありません。一市民、一日本国民、一地球人として自由な発言をするためにも、所在は完全に学外です。山形大学はこのブログの内容について一切その責任を負いません。

2021年8月31日火曜日

銚子沖洋上風力発電

 千葉県銚子市の沿岸に大規模な洋上風力発電が計画されています。

洋上風力発電 | 銚子市 (city.choshi.chiba.jp)

秋田県、長崎県でも同様な事業が進められていて、先日秋田の建設現場の近くを通りがかって、巨大な風車の建設が進められているのを目撃しました。平地が少ない日本の国土では、最も安上がりな風力発電の陸上設置は困難です。山の上に風車を建設するよりは、洋上が適しているということでしょう。洋上風力は海底に固定されているわけではなくて、浮動式のようです。釣りのウキみたい。何しろ台風に頻繁に襲われる日本で、それも最近は気候変動のために超大型化していますから、それに耐えるのも大変だと思います。技術者の談では、50年に一度の強風に襲われても大丈夫、とのこと。まあ技術の進歩を信じるしかありません。しかし、技術的問題ではない問題が指摘されているようです。

千葉県銚子市沖で進む洋上風力発電計画 “景観一変”の指摘も | NHK

銚子沿岸の屛風ヶ浦は有名な景勝地で多くの観光客が訪れますが、その景観を壊してしまう問題です。上記レポートには完成予想図もありますが、海からにょきにょきと多数の風車が生えている様な景観は、これまで地域の人が親しみ愛してきた景観の美しさを台無しにするだろう、というわけです。観光収入の低下も予想されますが、心に訴えるところの方が大きいかと思います。

ずっと以前、北ドイツ付近の上空を飛ぶ飛行機の窓から無数の風車が牧草地に設置されている景色を見ました。緑はもちろん綺麗ですが、凄い数の風車が回り、電気を生み出している様は圧巻でした。率直に「悪い」とは感じなかったのを白状します。オランダの風車は有名ですが、それも国土を作るため(水をくみ上げるため)に人が設置したものです。恐らくその時景観に対する悪影響など誰も議論しなかったことでしょう。時間が経ち、むしろそれはオランダを代表する景色の一部になりました。脱炭素に向けて大きく社会が変動しようとしています。未来の世界においては、きっと洋上風力発電も景色の一部に溶け込んでいるのではないかな、と私は思います。

時代の変遷と共に、失われたものもあれば、新たに生まれたものも多くあります。例えばパリのルーブル美術館の入り口のガラスのピラミッドも、登場した時には相当な反発もあったそうですが、今やパリを代表する景色の一つになっています。アパルトマン様式の建物は、数世紀前と変わりませんが、下に目をやると路上を通るのは馬車ではなくて、自動車です。それを悪く言う人はいませんよね。だから、変化に対してそれを全て拒むということではないでしょう。今回の洋上風力の大規模設置については、当然脱炭素という未来志向のモティベーションがあってこそです。それと、さびれていく地域の活性化への期待もあるようです。そうした正の効果も十分議論した上で、地域の人々が選択すべき問題かと思います。仮に銚子の人たちが、景観を損ねるならば計画を撤回して欲しい、と望むならば、きっと他のどこかの地域が手を上げることになるだろうと思います。

2021年8月30日月曜日

EVシフトを考える⑯

 本当は最新のIPCC6次報告書について投稿したいと思っていたのですが、まだちょっと読み込みが足らないので、小ネタの紹介。

これをEVシフトのハナシと関連付けて良いものかどうかは分かりませんが、予てから噂されていた、マツダのロータリーエンジン復活が秒読み段階に入っていると思われます。

「ロータリーエンジン」復活か!? 電動化示唆する新ロゴをマツダが製作 「早く世に出したい」と意気込む | くるまのニュース (kuruma-news.jp)

明らかにロータリーエンジンのローターを型どっていますし、アルファベットのeの形もしており、電動化技術とロータリーエンジンの関係を示すものです。マツダは既にMX-30というコンパクトSUVクーペ(そう呼んでいいのか?)のEVモデルを販売しています。モーター類が納められているエンジンルームがスカスカで、そこに”レンジエクステンダー”が搭載されるだろう、とデビュー当初から言われていました。レンジエクステンダーとは、小型の発電用ガソリンエンジンで、EVのバッテリーが無くなりそうになったらこれを駆動してバッテリーを回復させるというものです。動力装置(電気モーターとガソリンエンジン)と燃料タンク(バッテリーとガソリンタンク)を2セット積むので、非効率の様にも思えます。日産のノートeパワーと何が違うのか、と言えなくもありません(あれはエンジンをほぼ常時駆動するのでバッテリーが小さい)。シリーズ方式ハイブリッドの一種とも言えます。ただ、レンジエクステンダーは緊急用という感じで、燃料タンクは小さいみたいですし、エンジンも小さいです。そのままでクルマを駆動することは出来ません。最も効率の良い状態で定常速度運転をして、電気を作ることに専念しますので、排気量の割りには効率が良い、ということになります。でもまあ、何だそれだけ、という感じでしょうか?

しかし、今回マツダはこれを伝統のロータリーエンジンを復活させることで成立させようというわけで、そこに面白さがあります。ロータリーエンジンはマツダが発明したわけではなくて、元々Wankelというドイツの会社が発明し、1950年代にNSUというメーカーのクルマに搭載されていました。その技術ライセンスをマツダが購入して、コスモスポーツとか、1960年代に販売します。それを受け継いだのが有名なRX-7というスポーツカーです。私の昔の友達がRX-7に乗っていて、何度か運転させてもらいました。何ともパンチの無いエンジンで、すーっとスピードを上げていく独特のフィーリングですが、べらぼうに速いです。通常のエンジンの様にシリンダーとかピストンとかが無くて、まゆ型のハウスの中におむすび型のローターが入っていて、それが1回転する中で吸気/圧縮/爆発/排気が行われる仕組みです(詳しく知りたい人はWikipediaとか調べてください)。小排気量でも非常にパワフルで、振動がほとんど無いのが利点ですけど、燃費が物凄く悪いので、マツダ自身もやめてしまいました。それが今復活するというわけです。何で?恐らく負荷変動の無いレンジエクステンダー用であれば、効率は悪くないのだと思います。それから、コンパクト軽量に出来ることは明らかなメリットです。

そして、実はそれが一番重要なんですが、恐らくは将来水素ロータリーにすることを目論んでいます。マツダは既に水素ロータリーエンジンを搭載したRX-8を限定的に販売したことがあります。つい先日のトヨタの水素エンジン程にはパワフルではなくて、当時の水素エンジンはガソリンエンジンに対してパワーで劣っていましたが、それもレンジエクステンダー用であれば解決できるということでしょうか?いずれにしても、そうなればレンジエクステンダーを使ってもゼロエミということになりますから(グリーン水素を使うこと前提ですけど)、レンジの小ささと充電の手間というEVの最大の問題点を解決できる可能性がありますよね。

昔っからのロータリーファンには、なーんだ、かも知れません。ロータリーエンジンでクルマを動かすわけではなくて、それで作った電気でEVが走るだけですからね。でもまあ、必ずしも新しい技術だけではなくて、既存の技術を新しい目的に活かすというのは大切な考え方だとは思います。水素になると、2ストロークエンジンも再度脚光を浴びるかも知れないし。


2021年8月27日金曜日

本物の「ソーラー水素」製造

 これぞ本当の脱炭素クリーンエネルギーと言える研究成果がNEDOからプレスリリースされました。

世界初、人工光合成により100m2規模でソーラー水素を製造する実証試験に成功 | NEDO

次世代エネルギーの本命と目される水素については、色々な話がありますが、よく調べると石炭や天然ガスから製造した水素(CO2が出てしまう)だったりします。しかしこれは太陽光のエネルギーで直接水を酸素と水素に分解し、その水素を回収する大規模実験に成功したというニュースです。人工光合成もついにここまで来ました!太陽光と水から燃料を作れるんですよ!

で、エネルギー問題は解決!とは残念ながらいかないんです。今回の実験で得られた太陽光から水素へのエネルギー変換効率は最大で0.76%とあります。一般的な太陽電池による太陽光から電気エネルギーへの変換効率が15から20%ですから、とても低い。しかしこの光触媒の反応量子効率はほぼ100%なんだそうです。量子効率と変換効率の区別が付かない人のためにちょっとだけ説明しますと、量子効率とは光触媒が吸収した光がどれだけ目的の反応に使われたか、の効率ということです。一方の変換効率は降り注いできた太陽光のエネルギーをどれだけ水素のエネルギーに変換できたか、の効率です。植物の光合成も量子収率はほとんど100%ですが、変換効率は0.3%程度です。それは自分が作ったエネルギーのほとんどを生きるために使ってしまうからで、食べたり燃料に転化出来たりする有機物への変換効率は非常に低いということですね。

一方、今回の光触媒の変換効率が低い理由は明らかです。写真を見て、パネルが真っ白なことから分かりますが、太陽光の主成分である可視光線を全く使えていません。使用されているチタン酸ストロンチウムという半導体は、太陽光に僅かに含まれている紫外線しか吸収できないのです。今後可視光も利用できる改良を進め(色が付くということです)、変換効率を5-10%程度に向上することが目標、とあります。もちろんね、でもそれが容易じゃないんです。恐らくは、太陽光発電の電力を使って水を電気分解する方がエネルギー変換効率はずっと高くなります。光から直接水を分解しようとするから効率が低くなる。

でも、どっちにしてもまだまだ問題があります。水電解の装置(光は使わない)は既に完成されていますが、その触媒には貴金属が使用されます。今回の人工光合成システムも、植物の様に有機物を使っているわけではなくて、全部無機材料です。チタン酸ストロンチウムの表面には、水の酸化と還元を起こすための反応の場所になる助触媒として、その表面にRh, Cr, Coの化合物が微量修飾されています。微量であっても、将来必要となるスケールを考えたら貴金属の使用は許容出来ません。しかし水の酸化と還元というのはかなり厳しい反応で、大抵の物質は水を分解しないで自らが反応して失われてしまうのです。それが貴金属を必要としている理由で、容易に代替物質は見つからないわけです。

今は貴金属を使ったとしても、実証をある程度のスケールで行い、展望を与えることが重要でしょうね。グレー水素が混ざったとしても、海外から水素を輸入して使用するインフラ整備を進めて、いずれ太陽光を利用したグリーン水素のコストが石炭やLNGに匹敵する状況を目指す。より現実的な取組みとしては、NEDOの支援と民間主体でそれが進められています。

NEDO、水素の輸入や発電を支援 CO2削減後押し: 日本経済新聞 (nikkei.com)

太陽光による安価な水素(あるいはアンモニア、ハイドロカーボン)の大量製造に向けては解決できるかまだ分からない問題が多く残されているわけですが、本当にサステイナブルな世界を実現するには絶対に避けられない課題なわけで、日本は真面目にそれに取組んでいるわけです。間に合うかどうかが大変な問題ですねえ。


2021年8月26日木曜日

CO2を吸収するTシャツ!?

 「このTシャツは二酸化炭素を吸収します!」そんな触れ込みだったので、驚きました。

大気中のCO2を吸収する、“藻”で染めたTシャツ | 世界のソーシャルグッドなアイデアマガジン | IDEAS FOR GOOD

英国のVOLLEBAKというメーカーが販売していますが(1着110USDと高価!)、ポイントはアメリカのLIVING INKというベンチャー会社が開発した植物プランクトン(スピルリナ)由来のインクを染料につかっているということ。通常黒い衣類は石油由来のカーボンブラックで染色されているけど、光合成によってCO2を吸収しながら育った黒色の藻を使うことで、その生育過程で吸収したCO2をずっと閉じ込めておける、という主張。さらに、「なんと着ている間にもCO2を吸収し続けるんです!」と上記の日本語レポートにありますが、それはウソ。ちゃんとVOLLEBAK社のウェブには

"Once the t shirt has been built and printed, the black algae ink continues to lock in the carbon dioxide that it absorbed when it was alive. And it will do this for over 100 years. So the t shirt you’re wearing is storing carbon emissions."

とあります。要するに、生きた藻がくっついているわけではありません。そりゃ洗濯出来ないでしょう。ウェブには”Hand wash with cold water”と指示もありますが、それは色落ちしやすいというだけのことでしょうね。

CO2を吸収する服というのが、実は他にも色々出てきました。

CNN.co.jp : 未来のデザイン 二酸化炭素を吸収する「生きた」服

これも「生きた服」ってのにビックリしますが、説明を見てる限りバイオプラスチックを使った安っぽいレインコートです。どこが生きているんでしょうか?色も付いていませんから明らかに光合成しません。カビでも生えれば生きていることになる?

お次は、ファッションの本場フランス。プジョーシトロエングループの高級車ブランド、DSとファッションメーカーのコラボだそうです。

表面を生きた藻でコーティング CO2を吸収する「光合成する洋服」の可能性 | ELEMINIST(エレミニスト)

まあ、カッコイイかどうかは個人の判断に任せるとして、「生きた藻でコーティングされている」のだそうです。であればこれが本命?でも、Tシャツは全体がコートされているという割には色が付いていないですよね。

こういうハナシを米英は単に金もうけに使いそうなのに対して、フランスの人ってこういうことを真面目に主張しそうな感じがしますけど、だいたい詰めが甘いというか、実効性が無いんですよね、フランスの製品には。コンセプトは良いけど、クオリティーが低い、という印象です。DSのクルマって、実際そうですよ。

さてさて、最初は「おっ、スゲー!」と思った今回のネタでしたが、どうやらカーボンニュートラル流行りに乗じたインチキ商品っぽいです。そもそもね、インクを作るのに天然産生の色素を使うというのであれば、伝統的な藍染がそうですよ(ジーンズのインディゴ色素)。あれは防虫効果もあるそうですね。で、コットンはどうですか?光合成で生産されていますよ。しかし、これらも現代においてはカーボンニュートラルかと言えばさにあらず。農機具使います。農薬も化学肥料も使います。さらに繊維を作ったり染色したりのプロセスエネルギーの投入も必要。最後は燃やしても生分解されても閉じ込められていた炭素は再び二酸化炭素になって環境中に放出されます。だから、バイオマスは最良のケースでもカーボンニュートラル(投入エネルギーを全て太陽光発電などで賄ったとして)、ネガティブにはならない。実際にはプラスです。

石油由来の合成染料を使わない様にするというのは、アリでしょうね。それも既に大規模に行われています。漬物とかに色を付ける食用の着色料は天然産生のものが多いです。実際の毒性がどうなのかは良く分かりませんが、やはりイメージとしても合成着色料よりもそちらの方が良いですよね。発色性や耐光性には劣るのかも知れませんが、体に直接触れる衣服の染色にも天然色素が良いのではないでしょうか。要するに草木染ですね。

着心地が良いとか、汗の吸収が良いとか、伸縮性があるとか、発色が良いとか、そういう理由で元々天然の素材で作っていた衣服が、いつの間にか合成繊維と合成染料に完全に置換されていた、それだけのことですか?持続性を考えたら、天然素材に回帰するというのは当然の流れでしょうか。ただし、エネルギーの収支も含めて本当に循環可能、持続可能な産業にしていくということが大切です。

そういう真面目な考え方を基準とすると、ちょっと今回の光合成Tシャツのハナシは単なる便乗金もうけとしか思えませんね。

2021年8月25日水曜日

日本の脱炭素は座礁する?

 う~ん、と考えさせられる記事がありました。

「46%削減」の帳尻合わせに追われる日本の脱炭素は座礁する 非現実的政策に惑わされるな、企業は実践的な戦略でチャンス掴め(1/8) | JBpress (ジェイビープレス) (ismedia.jp)

上記は有料会員向け記事ですが、今は全文読めます。図表がなくなっちゃいますけど、読めなくなったらYahooに全文ありますので、こちらを見てください。

「46%削減」の帳尻合わせに追われる日本の脱炭素は座礁する(JBpress) - Yahoo!ニュース

脱炭素に対する後ろ向き発言は、あまり喜ばしくないんですけどね。指摘はもっともで、政府や経済産業省のやり方に大きな問題があることはその通りだと思います。「実現困難」を「野心的目標」と言い換えるのが霞が関用語、というのは笑ってしまいました(NEDOプロでよく聞いたなあ・・・)。その通りでしょう。言ってる本人が最初っから実現不能だと思っているのであれば、どこまで計画を真剣に練り、実行に対するコミットメントの意識があるでしょうか?

石炭からLNGまでの全ての火力発電が座礁資産になる、と。原発全部再稼働なんて、絶対に市民が許すわけないです。風力は洋上しかないでしょうから、コストも時間もかかりますよね。頼みの太陽光発電も、実は既に設置可能場所を確保することが難しくなってきている。お先真っ暗?

何も太陽光発電を日本の国土に設置する必要は無いですよ。土地が余って日射条件が良い国にどんどん設置してもらいましょう。そこから水素なりグリーン燃料を製造して、輸入することでもエネルギーの脱炭素は進められます。ただ、時間はかかりますよね。お金も相当出さなくてはならない。でも、そこにこそ日本は技術開発で貢献すべきでしょう。技術は輸出してエネルギーは輸入するWIN-WINが達成出来たら良いですよね。

まあ、とにかく、問題点を指摘してやっつけるだけでは良くないです。政府が弱腰になるわけにもいきませんから、「野心的」と言っておくしかないじゃないですか。だから我々大学人は行政に寄り添うのではなくて、民間に寄り添うべきだと思います。研究のお金は政府から頂くけど、お上のために仕事をするのではありません。国民のためです。

2021年8月24日火曜日

メタンにも削減目標

 温室効果が二酸化炭素の25倍とも言われるメタンガスについても、具体的な国際的削減目標を設定する動きが報じられました。

メタン削減 国際的枠組み設置へ 米とEU調整 日本にも参加要請 | 環境 | NHKニュース

赤外線を吸収する温室効果は分子種によって異なるので、その排出量は実際の量ではなくて、同じ温室効果をもたらす二酸化炭素の量に換算されています。牛のゲップに含まれるメタンの影響は有名ですが、それはGHG全体の4%(温室効果において)にもなるそうです。なので、これを減らさなくては、という目標の設定を恐らくはEUが主導して、EUと米国間で協議していて、それに日本も加われ、ということです。酪農が盛んな欧米ですから、10年で30%削減はどうやって達成するつもりなんでしょう?牛に「ゲップするな!」と教え込むことは出来ないし、牛の数を減らすわけにもいかないし。以前にもレポートしましたが、ある種の海草を餌に混ぜるとゲップの中のメタンが減る、ということはあるそうですが、それでどの程度減らせるのか。

日本の場合は、家畜によるメタンよりも、水田から出てくるメタンが問題になります。YUCaN研究センターの農学部の程為国先生は、その研究をされています。稲の根っこなどが分解代謝される時、その環境次第で二酸化炭素まで代謝されるか、途中のメタンで放出されるかが変わるようです。どっちにしても温室効果ガスではありますが、メタンの排出を抑制する方法って考えられるのでしょうか?メタンを積極的に回収して、エネルギー転用出来たら良いんですけどね。

2021年8月23日月曜日

バービーもカーボンニュートラル!

 1959年生まれで、今年62歳になるバービー人形。2030年までに全てリサイクル素材で製造される様に変身中だそうです。

バービー史上初!海洋プラスチック再生素材を使用した地球にやさしいシリーズがデビュー!「バービー うみとともだち(Barbie Loves the OceanTM)」 - (sotokotonews.com)

"The future of pink is green."っていうキャッチフレーズが良いですね。今回リリースされる「バービー うみとともだち(Barbie loves the ocean)」シリーズでは、素材のほとんどが海洋プラスチックごみから再生した素材だそうです。パッケージもリサイクル紙のシンプルなものです。上記リンク中で見れるYouTubeビデオでは、BarbieたちがSDGsについて語ってくれますよ!

「そもそもおもちゃなんて無駄なんだよ」などと言ってはなりません。遊ぶことを大切にするのが人間です。心の食べ物ですよ。カーボンニュートラルを目指して、女の子たちの憧れの対象であるバービーたちも変わっていく。それで遊んだ子たちが大人になった時のことを想像してみてください。

男の子たちのおもちゃも、例えばラジコンとか変身ロボットとかも是非変わって欲しいですね。ユニセックスですけど、有名なLEGOブロックも、ペットボトルから再生したプラスチックへの置き換えを目指して開発が進められているそうです。

CNN.co.jp : レゴ、再生プラスチックから作ったブロックを公開

簡単そうですけど、色を付けられないそうです。顔料をブレンドするか、塗装するとかでカラー化出来ないですかね。

しかし・・・リサイクルプラスチックを使うことで、材料自体は再利用されたとしても、プロセスエネルギーも含めた脱炭素、さらには輸送や販売も含めたゼロカーボン化、おもちゃを作り、遊び、廃棄するまでのトータルで、LCA的観点でのカーボンニュートラルについては、どれぐらい課題が残されているのでしょうか。特に今回原料が海洋プラスチックごみともなると、その分別、洗浄をする過程で相応のエネルギーとコストがかかっていることは明らかです。新規にプラスチックを生産するよりもCFPが高くなる様では本末転倒です。そういうことも含めて、バービーたちがこれからも進化し続けて、それで遊ぶ子供たちの未来を変えて欲しいものです。

本当に変われるだろうか?

 だいぶ間が開いてしまいました。ブログをやめてしまったわけではありませんよ。カーボンニュートラルに関わる話題や変化はとどまるところを知りませんので、まだまだ続きます。しかし、同じような話の繰り返しになっても良くないですね。脱炭素に向けて○○社が△△を宣言した、とかの話題は尽きないのですけど、その後どうなった?ということになると闇に消えていくケースが多いです。このブログをどのタイミングで見る様になるかは、色々あると思いますから、同様のインフォメーションが繰り返されることもそれなりに大切なのだと思います。しかし、個人的には近い将来へのもっと大きな潮流だとか、グローバルな動きをしっかりウォッチして、それを皆さんと共有しておきたいですね。

この間、夏休みなどもあり、家族と過ごす時間を多くとっていました。それが少し中断してしまった理由ではあるのですけど、実に多くの問題が直近の2-3週間の間に起こってしまったと思います。その全てをリアルタイムで追いかけていたわけでないため、どうコメントして良いかも分からず、小休止しつつカーボンニュートラル実現への課題を再考していました。

一番大きな問題としては、コロナウイルスの感染爆発でしょうね。実質的な感染拡大抑制の手段がワクチンしかないというのが日本の現状だと思います。法律を変えて、ロックダウンでもしない限り、第6波、第7波と繰り返されて、まだ2,3年は正常な状態には戻らないでしょう。そうこうしているうちに、永久凍土の融解で環境中に放出された未知のウイルスなど含め、次の感染症が世界規模で起こっても不思議ではありません。

そして、泣きっ面に蜂だったのは、西日本を中心に、ほぼ全国規模で起こった記録的豪雨と水害でした。2018年の岡山、2019年の長野、2020年の熊本に続き、今年は熱海の土砂崩れの衝撃がありましたが、それだけでは済まなかった。各地で記録を塗り替える降水量が報告されました。明らかに温暖化の影響であり、大気中の水蒸気量が増えたがために、雨の降り方のスケールが変わってきたということでしょう。繰り返される大規模水害に対して、集中豪雨発生の予測精度を高めることとか、治水工事を行うとかの議論はされますけど、根本の問題である気候変動についての議論には波及しないのが日本の意識のようです。

そして、この間起こった出来事で、実は一番気になったのは、タリバンによるアフガニスタンの掌握のニュースです。気候変動と全然関係ないし、脱炭素とは無関係と思われるかも知れません。しかし、これから起こるであろう変化や世界の潮流を象徴する出来事で、カーボンニュートラルな世界を実現することが到底不可能なのではないかと、さすがに気弱になってしまいました。コロナは乗り越えます。水害はむしろ脱炭素への動機になります。しかしそれら脱炭素実現への正の動機が十分であり、技術的努力によってそれが十分に可能であったとしても、世界を分裂させて、自らの社会を破壊することが避けがたい人の本性なのではないかと思われます。博愛主義、世界人類皆兄弟などは全くの嘘っぱちで、SDGsの達成など、絶対に不可能なのではないかと思えます。そうであるならば、カーボンニュートラル社会もやはり実現出来ないでしょう。一部の国家がそれを達成したと主張したとしても、それは目の前のゴミを片付けただけで、隣(貧困国)にゴミの山が出来ています。問題が「不可視化」されただけです。当然ながら、我々人類の存亡のため、持続性のある幸福な世界のためには、グローバルなカーボンニュートラル達成が必須です。

EUはタリバンのリーダーとの交渉の準備がある、と早速表明しました。対話しないよりははるかにマシですが、まともな法治国家が新たに誕生するとは到底思えません。民主主義とは対極にある、暴力が支配する無法地帯が生じると考えて良いです。相手は「ならず者」であり、自らをエリートと思っている国家、特にアメリカに対しては積年の恨みがあります。この状況は決して新しいものではなくて、冷戦下で列強の対立の場となって国土が荒廃しきった後に、その終結とともに見捨てられ、忘れ去られたアフガニスタンがテロリストの巣窟になり、そして2001年9月11日のアメリカ当時多発テロが起こったのです。今年あの衝撃的な事件から20年となります。あの時、私はパリに留学中で、研究室の仲間が"An airplane crashed into the world trading center in NY!" と騒いでいて、最初何のことだか分からず、テレビの映像を見て愕然としたのを覚えています。その後大規模な軍事作戦によりアフガニスタンは再び戦火に包まれ、タリバンは弱体化したものの、決して平和と安定、民主国家が成立はせず、アメリカの無責任な撤退によってならず者タリバンが暴力による支配を再び確立してしまったのです。

(注・追記;歴史についての認識が甘いので、正確な書き方をしていないと思います。1979年のソ連によるアフガニスタン侵攻で戦ったのがムジャヒディーンという反政府組織で、これをアメリカが軍事的に支援します。その反ソの戦いに参加していたビンラディーンが組織したのが、アルカイダで、2001年米国同時多発テロの首謀者です。アメリカが育てた反ソ組織がテロリスト化してアメリカを攻撃したというわけです。で、結局これらが元になってタリバンという組織になっているようです。イスラム国とかも、結局分派というか、考え方や地域が異なる派閥が色々な組織を形成しているようです。暴力団とかギャングも派閥の分裂とか統合とか繰り返しますからね。テロ組織と認定されている組織はとても多くあり、複雑すぎて分からない。)

結局やっていることは同じことの繰り返し。起こってしまった問題からの学び、過去の過ちへの反省が全くありません。当事者が異なり、構図が多少違ってはいても、世界大戦以後も民族間の対立、不信に基づく紛争は絶えることなく続きました。列強はそれを忘れ去り(銃後の世界はそれを知りもせず)弱者は徹底的に傷つけられ、搾取の対象となって貧富の差は拡大し続けました。膨大な難民が生じ、住むところを奪われ、人生そのものを破壊された人たちは生きる力だけを糧に世界をさまよい続けます。直近では、ミャンマーの軍事クーデターも多くの難民を生むでしょう。恐怖政治が支配する非民主国家では、貧困な地域を支配する暴力的な政府に善良な市民が苦しめられています。恨みは募るばかりで、それを晴らしてくれるなら、テロリストはヒーローにさえなります。

その全てを正確に語れるだけには十分に学習していませんが、資本主義システムによる近代化が始まり、加速し続けたこの100年くらいの間に起こった世界各地での紛争、戦争、難民の大量生産の歴史を振り返ると、メンタリティーとしては全く進化しておらず、反省もなく、他者の失敗からも学ばず、人の欲望の暴走は止まらず、過ちを何度も繰り返していると思います。問題なのは、暴力の技術的手段はこの100年で大きく進化しているということです。貧困国のテロリストでも容易に入手出来そうな殺人ドローンなどはこれから起こるテロの姿を変えることでしょう。核兵器でさえ、テロリストが入手できないものと断言は出来ません。これだけ世界に核兵器が拡散してしまったのです。北朝鮮、インド、パキスタン、中国、ロシア、本当にその流出を絶対に起こさせないでしょうか?まともな国家間の戦争は、恐らく破壊的兵器によってではなく、サイバー攻撃によることでしょう。しかし、テロリストは相手を恐怖に陥れることを優先します。次のテロは、マンハッタンでスーツケース核爆弾が炸裂するのか、あるいは生物兵器が使われるのか。そんなことが起これば、世界は一気にその終わりへと突き進んでしまうことでしょう。

コロナのことも、豪雨と水害のことも、結局は人間の愚かさが自ら招き入れた問題としか思えません。ゆえに、過去を反省し、より良い世界を実現するために全人類が協力することなくして、持続性を最上位概念とした世界にはたどり着けそうにありません。だからSDGsはカーボンニュートラルの上位概念だと思うのです。そしてその実現というのは、過去の過ちからの学びの無さを思うと、残念ながら全くもって不可能としか思えないのです。

8月のお盆休みは、我々日本人にとって過去への反省を新たにする特別な時期でもあります。つい先日、博士論文を志す学生と対話していて知った衝撃の事実があります。「8月15日は何で休みなの?」「知りません」「!」終戦の日です。76年前、300万人以上の日本人が亡くなった太平洋戦争が日本の無条件降伏によって終結しました。「ところで、広島に原爆が落ちたのは何月何日?」「え?」8月6日です。8月9日が長崎の原爆。日本の大学生ならば、当然知っていると思っていたので、少なからずショックでした。学校で教えないから、満州で行われた関東軍731部隊による残虐行為(生物兵器開発)などを知らないのは仕方ないかと思っていましたが、今日に至る重要な起点である終戦がいつだったのかぐらいは知っていると思っていました。その学生を責めようというのではありません。それが今という時代なのだと認識を新たにしました。しかし、社会の忘却力の高さ、不勉強さ、都合の良いことだけを言い、聞き、信じ、都合の悪いことは意識の外に置く、興味ない。世界中でそれが行われているから、何度でも紛争や戦争は繰り返されるのです。

だからお願いです。このブログを見てくれている、志を持った若者たちは、是非自ら歴史を学び、外の世界に視野を広げて下さい。大戦からまだたったの76年なのです。平和が(日本に限ったことですが)100年も続くことなく、再び戦火に覆われるのではないかと心配です。その時は、きっと復興も出来ないくらいに、世界は破壊されつくすことになるでしょう。「カーボンニュートラルを!」などと言っていた頃が懐かしい、などとなっていないこと(口がきけるなら)を願います。まずは知ってください。そして、自らの頭で考えてください。「続くことを確信できること」が幸せの基盤であるという共通認識の下に、皆がより良い世界を創る当事者となってくれることを願います。


 

2021年8月4日水曜日

抵抗勢力?

 今朝こんなニュースがありました。

2030年度時点の発電 総合的には太陽光はコスト高に 経産省試算 | 環境 | NHKニュース

つい先日、(やっと日本でも)太陽光発電が一番安上がりな発電方式になる、と認めたところでしたが、「いやいや、やっぱり原発とLNG(さらには石炭?)ですよ!太陽光そんなに増やしたら、電気代高くなりますよ~!」という脅し?

太陽光や風力では発電量が一定しないため、それを補うためのバックアップ用火力発電の増設が必要だから、というわけです。太陽光が揺らぐ・・・そんなの小学生だって知ってるわい!バックアップに火力?じゃあCO2は増えるのね?そんなこと出来るわけありません。当然CCSなりCCUで出てきたCO2は環境中に放出しないことが新造の条件です。で、そのコストはLNGの発電コストにちゃんと入ってますか?さらに言えば、原発の後処理にかかるコストは?福島第一原発の後片付けにいくらかかるのか?放射性廃棄物の最終処分方法も決められていない状態で、「本当の原発のコスト」など誰にも分からないと思います。分からないから、自分の都合の良い方で計算する(除外する)。LNGや石炭もそう。CCSのコストははっきりしないし、リスク分析もちゃんと出来ていない。それを化石燃料起源の発電コストにちゃんと組み入れることは出来ないでしょう。だから、そうしない。なのに、太陽電池を増やすと、火力発電が増えると言ってコスト高であるという数字を見せる。何故?何故それほどまでして自分たちの既得権にしがみつき、新しい挑戦に進もうとしないのか?若者諸君、そんな霞が関を許すな!

2050年カーボンニュートラル宣言が本気なら(そう言っている長老が恐らくみんな生きていないんですよね・・・2050年には。だからこういうのがまかり通る)、CO2をバンバン出す石炭やLNGをこれから増やすなんて絶対無いんです。最初っから、それは除外です。太陽光発電を増やしたら、発電量が揺らぎまくって大変です。そうです。大変です。だから大規模蓄電技術と水素、アンモニア、e-Fuelへの転換技術開発を急いで、最初は酷くコストが高くとも、これらを実装しなくちゃならないわけです。だから、恐らくは本気でやると、今回の試算以上に太陽光発電のコストは上がります。でも、石炭やLNGは無い。原発も基本的には排除の対象で、無くすまでのロードマップ整備が必要。今は時間稼ぎのために再稼働することは確かに有効です。日本は既に炭素予算を使い過ぎました。だから、いつまでに原発への依存をゼロにする、というシナリオの提示が必要ですね。LNGや石炭も出来るだけ早期にやめたい。政府には是非いついつまでに石炭、LNG、原発をやめる、という目標も設定して欲しいものです。

125

 「125」この数字が意味するのは何でしょう?はい、私はオートバイが大好きで、特に手に余らず、使い切れるパワーで軽量な125ccクラスのバイクが好きです。高速道路は乗れないけど、バイクで高速道路走っても、ちっとも面白くないし、二人乗りだって出来るし、燃費良くて維持費安いし。今ウチ...